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2019年9月15日 (日)

キュートなポップがより魅力的に

Title:LOLIPOP SIXTEEN
Musician:SOLEIL

現在16歳の女子高校生、それいゆを中心としたバンド、SOLEILのニューアルバム。それいゆの高校受験という非常に「らしい」理由により一時活動を休止したいたのですが、無事はれて高校に進学。ニューアルバムのリリースとなりました。とはいえ、前作「SOLEIL is Alright」からわずか10か月というスパンでのリリースなので、久しぶりという感じは全くないのですが・・・。

ちなみにSOLEIL、昨年も2枚のアルバムをリリースしており、この2年で3枚目というハイペースでの活動となります。ちょっとうがった見方をすると、SOLEILの活動はそれいゆのアイドル的なルックスに依る部分も大きいため、売れるうちに売っておこう、ということがあるのでしょうか?ちなみに今回のアルバムリリース後、ギターの中森泰弘が脱退。現在はそれいゆとサリー久保田の2人組のバンドとなってしまいました。

そんな彼女の3枚目となるアルバムはいままで2枚のアルバムに比べると、よりキュートなガールズポップというバンドの方向性が明確になっているように感じました。例えば1曲目を飾る「ファズる心」。ファズギターのレトロなサウンドが心地よいキュートなギターポップなのですが、歌詞も高校生の女の子らしい歌詞が印象的。同じくベルの音がキュートさを演出している「メロトロンガール」、モータウンビートで軽快なポップチューン「アナクロ少女」と続いていきます。どの曲も60年代のガールズポップを現代によみがえらせたようなキュートなギターポップチューン。それいゆのキュートなボーカルが見事に生かされたポップチューンとなっています。

そんな今回のアルバムの目玉のひとつが、中盤のカバー曲「ハイスクールララバイ」。フジテレビ系バラエティ番組「欽ドン!良い子悪い子普通の子」から誕生した1981年のヒット曲。原曲はテクノポップのナンバーなのですが、原曲の疾走感をそのままに見事ガレージポップにカバーしています。高校をテーマとした歌詞もそれいゆにピッタリですが、中ほどの登場するセリフもピッタリでかわいい(笑)。このアルバムのポップ路線をより強調するような選曲となっています。

その後もロックンロールなナンバーながらもキュートなメロが魅力的な「5-4-3-2-1」「それいゆのカノン」はタイトル通り、それいゆのかわいらしさを強調したような軽快なポップチューン。そしてタイトルチューンとなる「Lollipop Sixteen」も50年代のガールズポップそのままの可愛らしいポップに。最後はちょっと寂し気な夏休みの終わりを彷彿とさせるサマーポップなインストチューン「なつやすみ」で締めくくり。インスト曲をあえて入れてくるあたり、バンドとしての矜持を感じるラストとなりました。

いままでのSOLEIL同様、50年代、60年代あたりのオールドスタイルなギターポップを現代によみがえらせたようなサウンドを聴かせつつ、それいゆの可愛さを存分に生かしたアルバムに仕上げています。3枚目にしてある意味、このスタイルでは「完成形」とも思われるような出来栄えに仕上がっており、それだけに「やれるだけのことをやり切った」という中森泰弘の脱退理由がわからないでもありません。ただ一方ではそれいゆ自身はまだ16歳(!)。この手のオールドスタイルなガールズポップで、これだけ幅広いリスナー層に波及しそうな魅力を持ったバンドは珍しいだけに、まだまだこれからに期待できると思うんですけどね。あと、10代半ばの「子ども」をバンドとして活動させ、わずか3年程度で脱退というのは大人としてちょっと無責任な気がしないでもないのですが・・・。

そんな訳でSOLEILの魅力がしっかりとつまった傑作アルバム。これがひとつの「完成形」とはいえ、それいゆのキュートなボーカルでまだまだ魅力的なポップソングを楽しめそう。2人組となってしまいましたが、これからの活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★★

SOLEIL 過去の作品
My Name is SOLEIL
SOLEIL is Alright

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