デビュー20周年のベストアルバム
Title:bird 20th Anniversary Best
Musician:bird
1999年にシングル「SOULS」でデビュー。今年、デビュー20周年を迎えた女性シンガーbirdの活動を総括したベストアルバムがリリースされました。birdといえば1999年、大沢伸一のレーベルからシングル「SOULS」でデビュー。当時はMISIAが大ブレイクし、「女性R&Bシンガー」が一種のブームとなっていた頃。彼女もそんな「R&Bシンガー」の枠組みの中でレコード会社からもかなりのプッシュを受けていた記憶があります。残念ながらデビューシングル「SOULS」はさほど大ヒットとはいかなかったのですが、その後リリースしたデビューアルバム「bird」は見事ベスト10ヒットを記録し、大きな注目を集めました。
そんなことをリアルタイムに覚えているだけに、それから20年というのは個人的には早いなぁ・・・と思ってしまいます。残念ながら人気の面では一時期ほどではなくなってしまったものの、今でも一定以上の人気を確保し、コンスタントにアルバムもリリースし続ける彼女。本作は彼女の代表曲が発表順に並べられており、まさに彼女の音楽活動を俯瞰できるベストアルバムとなっています。
彼女は高音域をアピールすることが多い女性シンガーの中でも比較的中音域で魅力的な歌声を聴かせてくれるシンガーで、楽曲も含めてオーガニックな雰囲気が強い作風が大きな個性と魅力となっています。ただ彼女の作品は基本的にいままでのアルバムもコンスタントに聴いてきたのですが、個性もありシンガーとして魅力的、かついままでもいろいろな作風にも挑戦しているのですが、全体としてどうもパンチの弱さが気になってしまっていました。
今回のベストアルバムで彼女の過去の作品を発表順に聴くことが出来たのですが、やはりそれでもこのパンチの弱さというのが気になりました。そのひとつの要因として考えられるのが、いろいろな作風の曲に挑戦はしているのですが、いろいろな方向に吹っ切れていない、というのがひとつの要因ではないでしょうか。
例えば今回のアルバムの中、彼女のいろいろな作風への挑戦が感じとれます。ファンキーなリズムがカッコいい「マインドトラベル」やシタールを入れてエキゾチックな要素を加えた「チャンス」、「髪をほどいて」は作曲が堀込高樹のため、完全にキリンジなAORになっていますし、「童神」では沖縄民謡にも挑戦。「ah」は歌謡ロックな楽曲に仕上がっていますし、さらに「道」ではここ最近のジャズの傾向に沿ったサウンドを入れてきています。
このバリエーションの多さ、フットワークの軽さは間違いなく彼女の魅力でしょうし、もちろんそれはプラスに働いている部分も多々あります。ただ一方、それらの音楽的要素の取り入れ方にどうも中途半端さを感じてしまいます。全体的には初期のbirdと同様のオーガニックな要素を貫いていて、それはひとつの個性であることは間違いないのですが、どうせならそんなイメージを完全に崩すようなひとつの方向に突っ走ってしまった方がおもしろいのでは?
・・・とまあ、ここまでマイナス方向の感想のみ書いてきましたが、もちろん基本的に収録されているのは良作ばかり。特に「マインドトラベル」を含めたこの頃の作品が、シンガーとしても一番脂がのった感じがあり楽曲にも勢いのある名曲が揃っています。今後、彼女がどのような方向に進むのかわかりませんが、まだまだいろいろと挑戦して、数多くの名曲も残してくれそう。これからの活躍にも期待です。
評価:★★★★
bird 過去の作品
BIRDSONG EP
MY LOVE
NEW BASIC
9
lush
波形
ほかに聴いたアルバム
調べる相対性理論/相対性理論
相対性理論初となるライブアルバム。2016年に行われた日本武道館公演「八角形」以降のステージからピックアップしたライブ音源を収録した内容。原曲に比べるとバンドサウンドを前に押し出したような構成となっており、原曲に比べると楽曲からいわば「人間味」を感じさせる楽曲となっています。そういう意味で原曲とはまた異なった相対性理論の魅力を感じさせる内容に。さらに楽曲は真部脩一と西浦謙助脱退前の曲も収録されており、やはりこの頃の相対性理論の曲はよかったなぁ、と感じさせるような選曲になっていました。
評価:★★★★★
相対性理論 過去の作品
ハイファイ新書
シンクロニシティーン
正しい相対性理論
TOWN AGE
天声ジングル
Kenichi Hagiwara Final Live~Forever Shoken Train~ @Motion Blue yokohama/萩原健一
今年3月に急逝したショーケンこと萩原健一が、事実上、ラストライブとなってしまった昨年6月10日に行われたMotion Blue Yokohamaでのライブの模様を収録したライブアルバム。私の世代だとショーケンといえばもっぱら俳優のイメージでミュージシャンとしての印象は皆無なのですが、もともとはザ・テンプターズのボーカル出身ですし、その後も音楽活動を断続的ではあるものの続けてきたようで、今回のアルバムでもそんなミュージシャンとしてのショーケンを聴くことが出来ます。分厚いバンドサウンドをバックに歌うロックな彼の姿を感じることはできるのですが、録音の状況もあるのかもしれませんが、残念ながらいかんせん声があまり出ておらず、正直言うとちょっと厳しい印象も・・・。純粋な評価的には★3つだと思うのですが、これが最期という追悼の意を込めて下の評価に・・・。
評価:★★★★
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