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2019年9月17日 (火)

奇跡の再結成に合わせてリリースされたライブ盤

Title:LIVE ALBUM「感電の記憶」 2002.5.19 TOUR「NUM-HEAVYMETALLIC」日比谷野外大音楽堂
Musician:NUMBER GIRL

1999年にメジャーデビュー。2002年の解散までわずか4年の活動でしたが、圧倒的なバンドサウンドと楽曲の個性を持って、多くのミュージシャンたちに絶大な影響を与えたNUMBER GIRL。今年、奇跡の再結成を果たし大きな話題となりました。その再結成に際してリリースされたのが今回のライブアルバム。レコード会社の公式サイトによると、今回のライブアルバムについては公式サイトで次のように説明されています。

「今や伝説となっているNUMBER GIRL2002年の野音公演。LIVE TOUR 『NUM-HEAVYMETALLIC』の一環として行われたそのステージから、全20曲のセットリストをCD2枚に完全収録した、彼らの再結成を盛り上げるスペシャル盤です。」

私はデビュー当初からNUMBER GIRLのライブに何度か足を運んでいまして、これははっきりいってちょっとした自慢なのですが(笑)、今回のライブアルバムで収録されたライブ、その現場に居ました。以前、当サイトでも当日のライブレポートを掲載していましたが、旧サイトがなくなってしまったため、今回、参考までに再掲させていただきます。拙い文章で、一部MCなどの記載に間違いがありますが、リアルタイムでのレポートになるのでその当時の空気を感じていただければ幸いです。

NUMBER GIRL Live tour NUM-HEAVYMETALIC ライブレポート(再掲)

この日のライブが本当に伝説になっているのか、正直言うとちょっと微妙な感もあるのですが、実際、直後に書いたライブレポを読んでみると、ライブの内容としてはかなりすごい内容だったようにその当時も感じていた記載があります。ただ、このライブツアーの直後の9月に解散を発表したことからもわかるようにバンドの状態としてはこの時期、決して良いものではありませんでした。向井秀徳の事実上の自伝である「三栖一明」によると「ツアーの直後で中尾憲太郎が『ナンバーガールを辞めたい』という告白があり、それでナンバーガールは解散することになる」という記載がありますし、この日のライブの直後、6月22日の郡山でのライブの時、本編の演奏が不完全燃焼でアンコールで盛り返そうと思い、収まりが効かなくなった結果、一時間くらいアンコールを演ることになり、最後は田渕ひさ子嬢がピックを投げ捨てて帰ったというトラブルがあったそうで、本人も「アレが解散が決まった瞬間だったかもしれない」と語っています。

しかし、今回のライブアルバムを聴くと、CD音源を通じても、すごさを感じたというライブを見た直後の感想が間違いではないことを実感できます。ライブレポートにも1曲目「NUM-AMI-DABUTZ」のイントロが流れた瞬間に衝撃を感じた、という記載がありましたが、その衝撃はこのライブアルバムでも感じることが出来ると思います。

実際、このライブ音源を聴いても、バンドの演奏は非常にエッジが効いており、迫力を感じさせます。バンドの状況は最悪だったと思うのですが、それだからこそ逆にバンドの中に緊迫感が生じ、演奏に対する集中力が増したのかもしれません。「関東地方、曇のち酒」のような向井秀徳らしいユーモラスなMCが入るものの、全体的にMCは少な目。当時のライブではお約束だった「ドラムス、アヒト・イナザワ」からはじまるドラミングという掛け合い意外にメンバー間のやり取りもほとんどなく、その直後に解散している、という事実を知っているからかもしれませんが、バンドの中に流れる妙な空気感が、この日のステージの緊迫感を生み出す良い要因になっているように感じます。もっとも、翌月に郡山で生じた事件を考えると、このバンドの空気感は一歩間違言えると大きなマイナスになる可能性もある訳で、そういう意味ではこの日のバンドの演奏は解散寸前のバンドの空気が奇跡的にプラスに作用した、まさに稀有なステージだったと言えるかもしれません。

選曲的にはアルバム「NUM-HEAVYMETALLIC」のリリースツアーという位置づけでしたので、同アルバムからの楽曲がメインで、ベストな選曲ではありません。おそらく再結成に際してナンバガにはじめて触れるようなリスナーに対してリリースされたアルバムかもしれませんが、もしライブなどの事前予習として聴くにはラストライブの模様を収録した「サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態」の方がよいかもしれません。ただ、間違いなくNUMBER GIRLのライブバンドとしての凄みを感じられる作品となっており、この日のライブを音源としてリリースするという選択に対しては諸手を挙げて賛同したい、そんな傑作になっていました。今回の再結成を機に、リアルタイムでの彼らを知らない世代にも一気にNUMBER GIRLというバンドの名前が広がることになりましたが、はじめてナンバガを聴く人にも彼らのすごさを伝えるために是非とも聴いてほしい作品だと思います。またリアルタイムでナンバガを聴いていた世代にとってもあらためて彼らの実力を感じることが出来る傑作でした。

ちなみにNUMBER GIRLはオリジナルアルバム4枚のほかにライブアルバムがこの本作を含めて3枚リリースされています。オリジナルアルバム4枚もいずれも傑作ですが、初心者にはライブアルバムから聴くのがお勧めといわれるほどライブアルバムの評判が高いバンド。そんな彼らの傑作ライブアルバムがまた1枚加わったといって間違いありません。全ロックリスナー必聴の傑作です。

評価:★★★★★

NUMBER GIRL 過去の作品
School Girl Distortional Addict 15th Anniversary Edition
SAPPUKEI 15th Anniversary Edition
NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition

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