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2019年9月29日 (日)

アフリカ音楽入門の入門

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回紹介するのは、アフリカ出身のパーカッショニスト、ムクナ・チャカトゥンバによるアフリカ音楽の入門書、「はじめまして!アフリカ音楽」です。ムクナ・チャカトゥンバは1990年により日本を拠点に音楽活動を行い、劇団四季のミュージカル「ライオンキング」の初代パーッカショニストを3年務めるなど活躍したものの2014年に66歳で逝去しています。本著はもともと2003年に「アフリカン・ドラムは魂の響き」というタイトルでリリースされた本を2015年に一部再編・改題し再発刊したもの。以前から気になっていたのですが、最近、図書館でみかけてざっと中身を読んでみたところ、あらためて内容に興味を惹かれて、遅ればせながら購入し読んでみた1冊となります。

本書はタイトルやこの記事の表題の通り、アフリカ音楽を全く知らないような初心者に対して、アフリカ音楽とはどういうものか、を紹介したもの。第1章ではざっとアフリカの音楽について概略を紹介した後、第2章では彼の生い立ちを通じて主に彼の出身国、コンゴ民主共和国での人々と音楽の関わり、第3章ではコンゴの音楽の紹介、第4章ではコンゴの音楽のリズムパターンの紹介、そして第5章では主にコンゴの文化についての紹介しています。

アフリカ音楽と一言で言っても、アフリカ大陸は非常に広く、音楽的にも様々な種類があります。ただ、ムクナ自身がコンゴ出身のミュージシャンということもあって、ここで紹介されているのはコンゴの音楽がメイン。他の地域の音楽については第1章でざっと触れられているだけです。そういう意味ではこの本を持って「アフリカ音楽入門」と言ってしまうには紹介されているジャンルが狭すぎると言えなくもないのですが、コンゴといえばKonono No.1やKasai Allstars、今は活動休止状態のようですが、一時期日本でも大きな話題となったStaff Benda Bililiなど数多くのミュージシャンを輩出している地域であり、かつ一般的にイメージされるような典型的な「アフリカ音楽」を聴けるような地域でもあったりします。そういう意味ではアフリカ音楽の最初の一歩としてコンゴの音楽を知るのはピッタリなのかもしれません。

本書では徹底的に初心者に対して書かれた本であるため、専門用語等はほとんど用いられていません。アフリカの音楽の特徴であるコール・アンド・レスポンスやポリリズムなども紹介されているのですが、その用語自体は登場してきません。ただ一方ではアフリカの音楽でよく使われる楽器については写真付で細かく紹介されているほか、コンゴの音楽のリズムパターンについても代表的なものについて細かく紹介されています。さらに本書にはCDもついており、そこでまた楽器のことやリズムのこと、さらにはコンゴで歌われている歌なども紹介。本書の最後にはCDの内容について詳細な解説ものついており、本を読むだけではなく耳からもアフリカの音楽で使われている楽器やリズムについて詳しく知ることが出来ます。

ただここで紹介されているアフリカ音楽の入門の入門的な知識については正直言うと、アフリカの音楽に興味を持ってワールドミュージックの音楽ガイドなどを読んだりCDを聴いたりしても、意外となかなか説明してくれない知識のように感じます。実際、私もアフリカの音楽が好きで、CDを多く聴いたり、ガイド本をいろいろと読んだりしているのですが、この本を読んではじめて知ったことも少なくありません。これはアフリカ音楽に限らない話かもしれませんが、評論家やライターはともすれば「ある程度知っている」前提で文章を書きがちであり、基礎中の基礎の知識を書かなかったり、あるいはこの本で書かれているコンゴのリズムパターンの話のような、音楽自体の純理論的な知識については意外と書けない評論家が多いため、入門の入門のような本書の記載が、逆にアフリカ音楽の説明としては意外と新鮮味を感じさせる結果になっているように感じました。また、アフリカの音楽を知るためにその背景となるコンゴの文化も紹介されている点も大きなポイント。これによりコンゴの音楽についてより深い視点から理解することが出来るようになっています。

若干残念だったのは、これでアフリカ音楽に興味を持った人が次に聴くべきミュージシャンやアルバムなどの紹介がほとんどなかった点。コンゴの音楽が影響を受けたキューバのミュージシャンたちの紹介はあったものの、肝心のコンゴのミュージシャンたちの紹介はありませんでした。この点は入門書としてはちょっと残念。簡単なディスクガイドとかがあったら良かったのに、と思ってしまいました。

もっともその点を差し引いてもアフリカの音楽を知るための最初の一歩としては最適な1冊だったと思いますし、意外とアフリカ音楽について既に興味を持っていて、いろいろと聴いている人にとっても、この本を読むことによってさらに深い理解を得られる1冊のように感じます。まさにアフリカ音楽の入門の入門として幅広くお勧めできる良書だと思います。アフリカの音楽に少しでも興味がある方は読んでおいて損のない1冊です。

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