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2019年9月30日 (月)

エレクトロサウンド主体ながらも暖かさを感じさせる傑作

Title:i,i
Musician:Bon Iver

セルフタイトルだった2011年のアルバム「Bon Iver」が高い評価を得て大ヒットを記録。一躍人気ミュージシャンの仲間入りを果たしたジャスティン・バーノンを中心となるフォークロックバンドBon Iver。その2011年のアルバムは非常に美しいメロディーラインが胸をうつ傑作アルバムで、私もすっかりと気に入ってしまった1枚となりました。しかし前作「22,A Million」はメロディーを聴かせるというよりはサウンドのアイディアを聴かせるような内容で、正直言えば前々作のような内容を期待していた立場としてはかなり期待はずれな内容に・・・。正直なところBon Iverの良さを十分に生かされているとも感じられず、その挑戦心は買うものの、出来としてはいまひとつと感じてしまったアルバムでした。

それに続く本作はさてどのような方向性で行くのか、このアルバムを聴くのは期待半分不安半分というのが正直な感想でした。まず全13曲で39分という短めの長さ。1曲あたり3分という短さで次々と展開していくスタイルは前作「22,A Million」を彷彿とさせます。イントロ的な1曲目に続き、事実上の1曲目となる「iMi」は最初、ちょっと不思議な雰囲気のエレクトロサウンドからスタートし、やはり前作を踏襲した内容なのか・・・ちょっとガッカリして聴きすすめていったのですが、その感覚は曲を聴くにつれ変わっていきます。実験的なエレクトロサウンドの中から聴こえてきたのは優しい雰囲気のアコギのメロとファルセットボイスで美しく聴かせる歌。前々作を彷彿とさせるジャスティン・バーノンの歌声に心惹かれる楽曲になっていました。

今回のアルバムはこの「iMi」と同様、前作「22,A Million」を彷彿とさせるような実験的なサウンドを用いつつ、前々作「Bon Iver」を踏襲する美しいメロディーと歌が強く印象に残るアルバムに仕上がっていました。その後も例えば「Holyfield,」ではエレクトロサウンドのノイズを聴かせつつ、ファルセットボイスとストリングスの音色を入れ、荘厳な雰囲気の歌を美しく聴かせてくれますし、「Jelomore」も乱数的に不協音を鳴らし続けるエレクトロサウンドをバックにしっかりとした美しいメロの歌声がしっかりと響く楽曲になっています。

さらに純粋に透き通るような美しいサウンドと歌声、そしてメロディーラインを聴かせてくれるポップソングも本作では目立ちます。例えば「Marion」ではアコギと静かなホーンセッションでシンプルな美しい音色を聴かせつつ、流れる歌声もハーモニーを美しく聴かせる非常に幻想的なもの。そのサウンドと歌声、そしてメロディーに酔いしれる作品になっていますし、「Salem」もシンプルでリズミカルなエレクトロサウンドをバックにしつつ、ファルセットボイスで美しいメロディーを聴かせる、比較的シンプルなポップソングに仕上げています。そして最後を締めくくる「RABi」も静かなピアノとギターをバックにしっかりと歌とメロディーを聴かせるナンバーで締めくくり。最後までメロディーと歌声に惹かれる作品になっていました。

今回のアルバムはまさに「Bon Iver」と「22,A Million」を見事融合させた作品といった出来に仕上がっており、この流れからすると、かなり違和感を覚えた前作「22,A Million」もこのアルバムがリリースされた今となっては必要不可欠な作品だったんだな、ということにあらためて気が付かされます。また、エレクトロサウンドを多分に取り入れた作品でありつつも、一方ではアコギやピアノ、あるいは美しい歌声が流れるゆえに、非常に暖かさを感じさせる作品に仕上がっていた点も大きな特徴と言えるでしょう。前々作「Bon Iver」は凍てつくような冬を感じさせる音楽だったのですが、今回の作品はエレクトロサウンドの無機質な雰囲気の中でも暖かさを感じさせる・・・そういう意味では幻想的な冬の空気感の中、どこか春を感じさせるような暖かさも垣間見れた作品と言えるのではないでしょうか。「Bon Iver」は2011年の私的ベストアルバムの3位にセレクトしましたが、個人的にはそれに匹敵する、本年度を代表する傑作アルバムだと思います。Bon Iverが「22,A Million」を経ることによりさらに一歩上のレベルに到達した、そうとも感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

Bon Iver 過去の作品
Bon Iver
iTunes Session
22,A Million


ほかに聴いたアルバム

Care Package/DRAKE

急遽配信オンリーでリリースされたDRAKEの新作は、いままでSoundcloudなどで発表されたものの、正式にリリースされなかったり、アルバム未収録となっていた曲を集めたコンピレーションアルバム。リリース当時話題となった「Girls Love Beyoncé」やリック・ロスとの共作「Free Spirit」なども収録。2010年以降にリリースされた作品が収録されているため、エレクトロトラックが多く、かつ歌モノの曲が多いという共通項はあるものの、全体的にはバラバラという印象。今風なサウンドの曲もある一方、ちょっと懐かしさを感じさせるようなトラックも。ただ、Soundcloudのみでの公表とはいえ完成度の高くしっかりと聴かせる楽曲ばかりで、DRAKEの魅力はしっかりと感じることのできるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS
More Life
SCORPION

Not The News Rmx EP/Thom Yorke

先日リリースしたソロアルバム「ANIMA」に収録された「Not The News」のリミックスをまとめた4曲入りのEP。よりスケール感の広がりを感じさせるマーク・プリチャードのリミックスに、細かいビートでメタリックな色合いが濃くなったダンスホール・レゲエ・デュオのイクイノックスによるリミックス、さらに当サイトでも何度か紹介したWARPを代表するエレクトロミュージシャンClarkのリミックスは生音を取り入れつつ、どこか歪んだサウンド構成が耳を惹くリミックスに。リミキサーそれぞれの個性が反映され同じ曲なのに雰囲気の異なるリミックスが収録された聴きごたえるEPとなっていました。

評価:★★★★

Thom Yorke 過去の作品
The Eraser Rmx
Tomorrow's Modern Boxes
Suspiria(Music for the Luca Guadagnino Film)
Suspiria Unreleased Material
ANIMA

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