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2019年9月27日 (金)

チャラン・ポ・ランタンはなぜブレイクできないのか

Title:いい過去どり
Musician:チャラン・ポ・ランタン

ももと小春の2人組姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタン。今回紹介するアルバムは2009年の結成から10周年を記念してリリースされたベストアルバム。昨年11月にインディーズ時代の曲を網羅したベストアルバム「過去レクション」をリリースしましたが、今回のアルバムは2014年のメジャーデビュー以来の楽曲からセレクトしたベスト盤。「いい過去」をテーマとした選曲した構成になっているそうです。

今回のベスト盤では新曲「置行堀行進曲」からスタート。「おいてけぼりこうしんきょく」と読むこのナンバーはチャラン・ポ・ランタンらしい悲しげな歌詞ならがもリズムは軽快でコミカル。アルバム全体を総括するような歌詞にも感じられる曲となっており、彼女たちらしい曲と言えるでしょう。

その後の構成は基本的にメジャーデビューシングル「忘れかけてた物語」から発表順に構成された展開。バルカン音楽にシャンソン、スカにジンタなど世界の様々な大衆音楽の要素を取り入れたユニークな楽曲が特徴的。「サーカスで流れているような曲調」といったらピッタリあてはまるかもしれません。明るく軽快、だれもが楽しめるけど、ただどこか物寂しさも感じる。それがチャラン・ポ・ランタンの音楽の大きな特徴となっています。

歌詞にしても同様。コミカルでとても楽しい雰囲気がありつつも、もの悲しいネガティブな要素が入った独特の音楽性。このポジティブとネガティブのほどよいバランスがとられているために妙に癖になるのが彼女たちの音楽。「ムスタファ」のようなコミカルな物語を楽曲の中に違和感なく取り入れているのも彼女たちならでは、といった感じでしょうか。

オリジナルアルバム単位でいうと、アルバム毎に徐々にその音楽性を広げている印象があるのですが、ベストアルバムとして彼女たちの代表曲をピックアップすると、正直言うと初期の作品から作風の大きな変化はありません。ただ、聴いていて楽しくなる軽快な音楽と、前述のように様々なジャンルを取り込んでいるその音楽性から、最後まで聴いていても全く飽きることはありません。また、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のオープニングに起用された「進め、たまに逃げても」も収録。楽曲の中では特に万人受けを意識したようなポップで聴きやすい作風なだけに、このベスト盤の中盤でのひとつのインパクトとして機能しています。

ただ、これだけ軽快で楽しいポップソングが並んでいるにも関わらず、正直言うと、今のところ残念ながらチャラン・ポ・ランタンはブレイクした、とは言いにくい状態です。ブレイクしていない、とはいってもライブではホールクラスで全国ツアーを行える程度の人気は確保していますし、このアルバムもオリコン最高位35位と、それなりには「売れている」とはいえるのですが・・・。バルカン音楽やシャンソンといった音楽的な要素に若干、忌避感を持ってしまう方がいるのか、それともこのタイプのポップスグループはロックフェスなどで人気を伸ばすのが難しいので、どうしてもなかなか売上を伸ばすことが難しいのか・・・。このベスト盤は最後まで本当に楽しいポップソングが並んでいるだけに不思議に感じてしまいます。

もっとも今回のベスト盤でちょっと残念だったのが、事実上、彼女たち最大のヒット曲となった松井玲奈とのコラボシングル「シャボン」が収録されていなかった点。この曲、現時点でアルバム未収録ですし、収録すれば売上が伸びると思うんですが。また2016年にリリースしたカバーアルバム「借りもの協奏」で披露したカバー曲でも名カバーがあっただけにここからもピックアップしてほしかったかも。そこらへん、ちょっと残念な部分もあったのですが、全20曲、チャラン・ポ・ランタン初心者が最初に聴くベスト盤としては最適な1枚ですし、これを機に、是非チェックしてほしいアルバムです。ベスト盤リリースで活動にひとつの区切りがついたわけですが、まさかこれでメジャー離脱ってことはないですよね?これからもまた底抜けに楽しい名曲を期待しています。

評価:★★★★★

チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏
トリトメモナシ
ミラージュ・コラージュ
過去レクション
ドロン・ド・ロンド


ほかに聴いたアルバム

STARDUST REVUE 楽園音楽祭 2018 in モリコロパーク/スターダストレビュー

スターダストレビューが毎年夏に実施している野外ライブツアー「楽園音楽祭」。本作は昨年10月に愛知県モリコロパークで行われた野外公演の模様をおさめたライブ盤。スタレビといえばライブに定評があります。正直、演奏自体についてはベテランらしい安定感があるものの、それ自体を聴かせるような迫力や緊迫感みたいなものはありません。ただ、盛り上がる曲では思い切り盛り上げつつ、一方では聴かせる曲ではしんみりと聴かせるというメリハリ。代表曲の出し惜しみなしのセットリスト。そんな中で、途中では「木綿のハンカチーフ」「ひだまりの詩」などおなじみのナンバーのカバーを取り入れたりして、ファンどころかおそらくスタレビ初心者にも飽きさせないように工夫されたライブ構成には感心させられます。この内容ならライブは文句なしに楽しいだろうなぁ、ということを感じさせてくれるライブ盤でした。

評価:★★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
還暦少年

Captain Sad/The Wisely Brothers

これが2枚目のアルバムとなる3人組ガールズポップバンド。チャットモンチーのブレイク以降、女の子のみのガールズバンドが次々と誕生しており、彼女たちもそのうちの1組といった感じなのですが、ただサウンド的にはアコースティックな感触のつよい温かみあるポップチューンがメイン。かと思えば、ノイジーなギターを前に押し出したバンド色の強い作品もあったりするのがおもしろいところ。イメージとしては空気公団をもうちょっとロックよりにした感じでしょうか。楽曲にもうちょっとインパクトが欲しいかな、とも思うのですが、チャットモンチーフォロワーのようなオルタナ系ギターロックバンドが多いガールズバンドの中では個性を放っているバンドであって、そういう意味では今後の活躍が楽しみです。

評価:★★★★

The Wisely Brothers 過去の作品
YAK

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