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2019年9月 2日 (月)

ドラマのスコアをまとめた最新作

Title:Kiri Variations
Musician:CLARK

最近ではオーケストラや舞台音楽などへの楽曲提供など精力的な活動を見せているCLARK。今回のアルバムは前作「Death Peak」から約2年4か月ぶりとなる新作となります。ただ、純然たる新作ではなく「Kiri」というイギリスのテレビドラマに使われた楽曲をまとめたアルバムになっています。

前作「Death Peak」はメタリックで複雑なビートで構成された、比較的挑戦的な意欲作となっていたように感じます。ただ今回のアルバムに感じたのは、やはりテレビドラマに使われた楽曲ということもあってでしょうか、前作に比べると良くも悪くも聴きやすい作品に仕上がっていたという感想抱きました。

例えばアルバムの2曲目「Simple Homecoming Loop」はピアノにシンセの音色が重なり、とても美しい空間を作り出している楽曲になっていますし、続く「Bench」もバイオリンのメロディアスな音色が印象に残ります。さらに「Kiri's Glee」はシンプルな笛の音をアコギによってシンプルで可愛らしい雰囲気の楽曲に仕上げています。

その後も悲しげなストリングスが印象に残る「Tobi Thwawrted」やエレクトロニカのビートに載せて男女のボーカルが厳かに静かに歌う、歌モノの「Cannibal Homecoming」など、楽曲によって様々なアイディアを取り込んだエレクトロサウンドをベースとしつつも、全体的には聴きやすく、メロディアスという印象の強い曲が並びます。

また、ドラマのイメージなのでしょうか、アルバムを通じて荘厳な雰囲気を感じさせるアレンジが多く、「Primary Pluck」「Banished Hymnal」など、シンセを取り入れつつ、少々ゴシック調な要素も感じさせる曲も目立ち、アルバム全体としても重厚な雰囲気を強く感じさせるアレンジが大きな特徴に感じられました。

もちろん一方では「Forebode Pluck」のようにゴシック風のチェンバロが不協和音のアルペジオを奏でるようなナンバーや、「Forebode Knocker」のようにピアノの単音でサウンドが構成されているような、挑戦的なナンバーもチラホラ。そういう意味ではもちろん単純なポップのアルバム・・・とはちょっと異なるのは言うまでもありません。

そういう意味でいろいろと聴きどころのあるアルバムには間違いありません。ただアルバムの後半の方はピアノやシンセを用いて荘厳な雰囲気をただ作り出しているだけといった感じの、どちらかというと良くも悪くもドラマのBGM的な曲も多く、若干飽きてしまった部分も。もちろん総じて彼のファンならば満足できる作品だとは思うのですが、傑作が続いていたここ最近の作品に比べると若干見劣りがする・・・かな?

評価:★★★★

CLARK 過去の作品
Totems Flare
Iradelphic
CLARK
Death Peak


ほかに聴いたアルバム

Brandon Banks/Maxo Kream

本作がメジャーデビュー作となるアメリカのラッパーによるアルバム。トラップを取り入れたダークでダウナーな雰囲気のラップとサウンドが特徴的ですが、ポップな要素に加えてどこかコミカルさも感じさせる楽曲もあり、アルバム全体としてはいい意味で聴きやすさを感じます。全47分という長さながらも15曲入りと1曲あたり3分程度の長さであるため、次々と曲が展開していく構成も聴きやすさの要因に。今後のブレイクも予感させる1枚です。

評価:★★★★

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