ブルースへの愛情を深く感じる作品
Title:ブギ連
Musician:ブギ連
これはすごいユニットが登場してきました。日本を代表するブルースバンド、憂歌団のギター、内田勘太郎がご存じブルーハーツ、ハイロウズ、クロマニヨンズで活躍してきた日本を代表するロックボーカリスト、甲本ヒロトと組んでユニットを結成。その名もブギ連。さらにアルバムも1枚、作ってしまいました。
そしてこれがまたブルースへの愛情あふれるアルバムに仕上がっていました。基本的に演奏は内田勘太郎のひくブルースギターと甲本ヒロトのブルースハープのみという非常にシンプルなもの。また甲本ヒロトもボーカルもいつものヒロト節は封印。そのため、ブルハやハイロウズ、クロマニヨンズのイメージからすると少々違和感を覚えるかもしれません。ただ、シンプルな演奏だけに聴いていて、まずヒリヒリとする緊迫感あふれる演奏になっています。またヒロトのボーカルもブルースの楽曲に合わせたように、どこか渋みのあり、より自らの感情を込めた歌い方となっており、ボーカリストとしての凄みすら感じます。この2人の演奏+ボーカルだけでまずはゾクゾクとさせられる内容になっています。
またブルースからの愛情という意味では多くの曲がブルースの名曲をモチーフとしています。例えばバンド名にもなっているタイトルチューン「ブギ連」はジョン・リー・フッカーの「Boogie Chillen」、「腹のほう」はマディ・ウォーターズの「I Can't Be Satisfied」、さらに「ナマズ気取り」も同じくマディの「Catfish Blues」をモチーフにしており、聴き比べてみるのも楽しいかもしれません。さらに「ブルースがなぜ」では歌詞にエルモア・ジェイムスやマディ・ウォーターズも登場。ブルースへの深い愛情が随所に感じられます。
ただし、本作はただ単に昔ながらのブルースを2人がそのままカバーしたアルバム・・・ではありません。ブルースの名曲をモチーフにしながらもしっかりと自らの言葉で、それもブルースのマナーに沿った形で歌っています。例えば「ヘビが中まで」では
「家ん中まで ヘビがのろのろ
家ん中まで ヘビがのろのろ
ガラガラヘビの 脱皮中」
(「ヘビが中まで」より 作詞 甲本ヒロト)
という歌詞。見たまんまなようにも読み取れるのですが、一方では「ヘビ」が歌い手の心象風景の描写のようにも読み取れます。ブルースといえば歌い手の心の叫びを歌にのせた音楽なのですが、今回のブギ連の曲ではしっかりと日本語で、彼らの心の叫びを歌詞にした曲に仕上がっており、そういう意味でも単純なブルースのカバーとは異なる、ブルースへの愛情を強く感じさせる内容になっていました。
また「道がぢるいけえ気ィつけて行かれえ」の「ぢるい」は「ぬかるんでいる」という意味の方言。甲本ヒロトの出身、岡山地方の方言らしく、こういう地方性を出してくるあたりもブルースらしいと言えるかもしれません。
そんな訳で2人のブルースへの愛情がさく裂した、実に味わい深いアルバムに仕上がった本作。また、あのパンクバンド、ブルーハーツの甲本ヒロトがボーカリストとしてこの領域にまで達した、という点でも感慨深いものもありますし、一方ではこういう歌を歌えるのもまた、ヒロトだからこそ、とも思ったりもします。
本格的なブルースなだけに最初はちょっと取っつきにくいかもしれませんが、何度か聴くうちに間違いなく味が出てくる傑作アルバムだと思います。このユニット、これからも継続的に活動を続けてほしいなぁ。2人での活動を続ければ、より味わいが深い楽曲が登場しそうな予感もします。今後の活動は不明なのですが・・・是非、2枚目3枚目のアルバムも聴いてみたいと思わせる作品でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Have a Nice Day!/Scoobie Do
オリジナルアルバムとしては約1年9ヶ月ぶりとなるファンクバンドScoobie Doの新作。7月リリースということで真夏のファンクをイメージした爽快さを感じるファンキーナンバーが並び、全体的にはぶっといグルーヴを聴かせるというよりは軽快にポップにまとめあげている印象のあるアルバムとなっています。軽快なファンクチューンは暑い夏の時期にでも心地よく聴ける反面、少々薄味気味な印象も。
評価:★★★★
SCOOBIE DO 過去の作品
ROAD TO FUNK-A-LISMO!
BEST OF CHAMP YEARS 2007~2016
CRACKLACK
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事
- 彼女の幅広い音楽性を感じる(2019.12.26)
- 80年代に一世を風靡した女性ロックシンガー(2019.12.28)
- 2つの異なるスタイルで(2019.12.14)
- ミュージシャンとしての矜持を感じる(2019.12.17)
- 2019年最大の注目盤(2019.12.13)
コメント