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2019年9月14日 (土)

アコースティックなサウンドで派手さはないものの

Title:Emily Alone
Musician:Florist

Emily Spragueという女性ボーカリスト率いる男女4人組、ニューヨークはブルックリンを中心に活動を行っているポップバンドFlorist。本作はそんな彼女たちの3枚目となるアルバム。日本では残念ながらほとんどその名前を知られていないグループなのですが、アメリカでは徐々に注目を集めているグループのようで、本作もアメリカのWebメディアPitchforkの「Best New Music」に選ばれるなど高い評価を受けています。

「お花屋さん」というバンド名からイメージされる通り、楽曲はインディーバンドによくあるような先駆的、刺激的という雰囲気ではなくアコースティックなサウンドの暖かい雰囲気のポップが魅力的。サウンドとしてはほとんどアコギのアルペジオのみで構成されており、時折ピアノの音色が入ってくる程度。静かでフォーキーな雰囲気が大きな特徴となっています。

またボーカル、Emily Spragueの歌声も大きな魅力。「Time Is A Dark Feeling」のようなウィスパー気味の歌声で優しく歌い上げているのですが、アルバムのプロダクションとしてボーカルを前に押し出しているような構成になっており、ヘッドフォンで聴いていると彼女が優しく耳元で歌っているようなそんな感覚に陥ってきて、思わずうっとりと聴き惚れてしまいます。

メロディーラインも透き通るように美しいフレーズを聴かせてくれており、特に「I Also Have Eyes」などは切ない雰囲気のくるおしいようなフレーズを聴かせてくれます。ただ、全体的にはしんみりとして聴かせる曲が多いのですが、「Now」のようにメロディアスで明るさを持ったポップなどもあり、決して悲しいポップという印象は受けません。むしろ全体的にはフォーキーで爽やかという印象を受け、聴き終わった後もいい後味を残してくれるようなポップスとなっています。

また、単純にアコースティックなポップというだけではなく、例えば「Celebration」ではバックに鳥の鳴き声やストリングスを入れつつ、ポエトリーリーディングを聴かせるというほかとは異なるスタイルで、どこか幻想感を覚えるナンバーに。「M」などもバックに砂利道を歩く人の足音が入っており、リスナーのイメージを膨らませます。単なるアコースティックでフォーキーなポップを奏でるグループ、とは異なる楽曲の奥行を感じることができます。

もっともアルバム全体としてはとにかくメロディーラインの良さ、シンプルなサウンド、そしてボーカルEmilyの魅力的な歌声が合わさり、正直、全体的に地味さは否めないものの最後まで飽きることなく、最初から最後まで耳を離せない魅力を感じさせる傑作に仕上がっていました。派手さはないグループなだけに確かに日本ではなかなか注目が集まりにくいだろうなぁ・・・とは思うのですが、比較的多くのポップスリスナーが楽しめるアルバムだと思います。日本でももっと売れてもいいと思うんですけどね~。

評価:★★★★★

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