アフリカ音楽の歴史を探るコンピ第2弾
Title:Early Congo Music 1946-1962:First Rumba,To The Real Rumba
以前、当サイトでアメリカ初のポピュラーミュージックと言われるパームワインの1930年代から60年代の貴重なSPを収録したコンピレーションアルバム「PALMWINE MUSIC OF GHANA」を紹介しました。今回はその第2弾ともいえるアルバム。同作を監修・選曲した音楽評論家の深沢美樹氏選曲・監修によるコンピレーションアルバムで、「ルンバ」と呼ばれるコンゴのポピュラーミュージックのうち1946年から1962年のSP音源を収録したコンピレーションとなっています。
この1946年から62年にかけて「ルンバ」という音楽スタイルが確立していったそうで、本作はそのスタイルが確立していく過程を追ったコンピレーションアルバムとなっています。まさにサブタイトルである「最初のルンバから真のルンバへ」というのがこのアルバムのキーフレーズ。「最初のルンバ」というのは「ルンバ」の音楽スタイルが確立していない40年代あたり、単なる「カッコいい音楽」的な意味で「ルンバ」という呼称が使われていたとか。それが徐々に「ルンバ」という音楽のスタイルを確立していく過程がこのアルバムで体感することが出来ます。
実際、このコンピレーションを聴いて強く感じるのがこの16年間におけるコンゴの音楽の大きな進歩でした。アルバムは「ルンバ」と記載されたコンゴ・ポピュラーミュージック史上最初のレコード、Orchestre Odeon-Kinoisというバンドの「Fatouma」「Jeanne」という曲からスタートするのですが、正直、素人の吹奏楽団レベルのイメージのちょっとチグハグさを感じる曲。独特なテンションを感じるリズム感に独自性は感じるのですが、音楽的スタイルも確立していませんし、全体的に未熟さを強く感じます。
Disc1はまさにそんな「ルンバ」が音楽的に確立される前の「最初のルンバ」を集めたもの。楽曲的には確かにスタイルは確立されておらず、トライバルな色合いが濃い曲や、冒頭でも書いたパームワインからの影響も濃い曲などが並びます。もちろん、後の「真のルンバ」につながるようなラテンテイストの強い曲も。全体的には「ルンバ」といっても統一感が薄く、音楽的にも未熟さが残る感があるのですが、ただ個人的にはこの未熟さが楽曲の勢いにもつながっており、Disc1の収録曲は結構気に入っています。
一方、Disc2になると、まさに「真のルンバ」として音楽的に確立した後の曲。ラテンらしいリズムパターンも確立し、演奏も洗練されてきています。Moujos executee par L'Orchestre O.K.Jazzというグループの「Yo Te Ilma Moucho」はキューバンな雰囲気もかなり強く、一般的な「ルンバ」のイメージにも近い印象もあります。
ただその反面、どこか感じるアフリカらしい独特のリズム感が大きな魅力に感じるのもDisc2の曲で、Henri Bowane na bana Loningisaの「Yo Kolo Ye Kele」はメロディーやギターの演奏こそメロウで洗練されているのですが、手拍子のリズムやコール&レスポンスのコーラスにトライバルな部分を強く感じさせる曲となっています。
Disc2の最後の60年代あたりの演奏となるとさらに演奏も洗練。録音状況がよくなったという部分も大きいのですが、Disc1の最初から聴くと、隔日の感があります。ある意味、「たった16年」なのですが、その間の大きな進歩には驚かされました。
ちなみに本作のもうひとつ大きな目玉が41ページにもわたる深沢美樹氏による楽曲解説。「ルンバ」成立に至る過程がかなり綿密に記載されており、このコンピレーションのガイドブックとして、解説片手に音楽を聴き進めると、よりコンゴの音楽を深く知ることが出来ます。まさに力作ともいえるブックレットで、ストリーミングがメインとなりつつある最近の音楽シーンの中で、このような分厚い解説の存在こそ、フィジカルが今後も力を持ち続ける道のように感じます。ただ一方、こちらの解説、固有名詞が多く、正直なところ若干わかりづらい部分も・・・。また、「ルンバ」というと一般的にはキューバの音楽をイメージするのですが、その「ルンバ」とコンゴの「ルンバ」との関係性なども知りたかったような・・・。
そんな訳で、実に聴きごたえのあるコンピレーションアルバムだった本作。ちょっとマニアックな感がなきにしもあらずなのですが、その点を差し引いても、純粋にアフリカの音楽的魅力を存分に味わえることの出来る作品でした。
評価:★★★★★
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