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2019年9月

2019年9月30日 (月)

エレクトロサウンド主体ながらも暖かさを感じさせる傑作

Title:i,i
Musician:Bon Iver

セルフタイトルだった2011年のアルバム「Bon Iver」が高い評価を得て大ヒットを記録。一躍人気ミュージシャンの仲間入りを果たしたジャスティン・バーノンを中心となるフォークロックバンドBon Iver。その2011年のアルバムは非常に美しいメロディーラインが胸をうつ傑作アルバムで、私もすっかりと気に入ってしまった1枚となりました。しかし前作「22,A Million」はメロディーを聴かせるというよりはサウンドのアイディアを聴かせるような内容で、正直言えば前々作のような内容を期待していた立場としてはかなり期待はずれな内容に・・・。正直なところBon Iverの良さを十分に生かされているとも感じられず、その挑戦心は買うものの、出来としてはいまひとつと感じてしまったアルバムでした。

それに続く本作はさてどのような方向性で行くのか、このアルバムを聴くのは期待半分不安半分というのが正直な感想でした。まず全13曲で39分という短めの長さ。1曲あたり3分という短さで次々と展開していくスタイルは前作「22,A Million」を彷彿とさせます。イントロ的な1曲目に続き、事実上の1曲目となる「iMi」は最初、ちょっと不思議な雰囲気のエレクトロサウンドからスタートし、やはり前作を踏襲した内容なのか・・・ちょっとガッカリして聴きすすめていったのですが、その感覚は曲を聴くにつれ変わっていきます。実験的なエレクトロサウンドの中から聴こえてきたのは優しい雰囲気のアコギのメロとファルセットボイスで美しく聴かせる歌。前々作を彷彿とさせるジャスティン・バーノンの歌声に心惹かれる楽曲になっていました。

今回のアルバムはこの「iMi」と同様、前作「22,A Million」を彷彿とさせるような実験的なサウンドを用いつつ、前々作「Bon Iver」を踏襲する美しいメロディーと歌が強く印象に残るアルバムに仕上がっていました。その後も例えば「Holyfield,」ではエレクトロサウンドのノイズを聴かせつつ、ファルセットボイスとストリングスの音色を入れ、荘厳な雰囲気の歌を美しく聴かせてくれますし、「Jelomore」も乱数的に不協音を鳴らし続けるエレクトロサウンドをバックにしっかりとした美しいメロの歌声がしっかりと響く楽曲になっています。

さらに純粋に透き通るような美しいサウンドと歌声、そしてメロディーラインを聴かせてくれるポップソングも本作では目立ちます。例えば「Marion」ではアコギと静かなホーンセッションでシンプルな美しい音色を聴かせつつ、流れる歌声もハーモニーを美しく聴かせる非常に幻想的なもの。そのサウンドと歌声、そしてメロディーに酔いしれる作品になっていますし、「Salem」もシンプルでリズミカルなエレクトロサウンドをバックにしつつ、ファルセットボイスで美しいメロディーを聴かせる、比較的シンプルなポップソングに仕上げています。そして最後を締めくくる「RABi」も静かなピアノとギターをバックにしっかりと歌とメロディーを聴かせるナンバーで締めくくり。最後までメロディーと歌声に惹かれる作品になっていました。

今回のアルバムはまさに「Bon Iver」と「22,A Million」を見事融合させた作品といった出来に仕上がっており、この流れからすると、かなり違和感を覚えた前作「22,A Million」もこのアルバムがリリースされた今となっては必要不可欠な作品だったんだな、ということにあらためて気が付かされます。また、エレクトロサウンドを多分に取り入れた作品でありつつも、一方ではアコギやピアノ、あるいは美しい歌声が流れるゆえに、非常に暖かさを感じさせる作品に仕上がっていた点も大きな特徴と言えるでしょう。前々作「Bon Iver」は凍てつくような冬を感じさせる音楽だったのですが、今回の作品はエレクトロサウンドの無機質な雰囲気の中でも暖かさを感じさせる・・・そういう意味では幻想的な冬の空気感の中、どこか春を感じさせるような暖かさも垣間見れた作品と言えるのではないでしょうか。「Bon Iver」は2011年の私的ベストアルバムの3位にセレクトしましたが、個人的にはそれに匹敵する、本年度を代表する傑作アルバムだと思います。Bon Iverが「22,A Million」を経ることによりさらに一歩上のレベルに到達した、そうとも感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

Bon Iver 過去の作品
Bon Iver
iTunes Session
22,A Million


ほかに聴いたアルバム

Care Package/DRAKE

急遽配信オンリーでリリースされたDRAKEの新作は、いままでSoundcloudなどで発表されたものの、正式にリリースされなかったり、アルバム未収録となっていた曲を集めたコンピレーションアルバム。リリース当時話題となった「Girls Love Beyoncé」やリック・ロスとの共作「Free Spirit」なども収録。2010年以降にリリースされた作品が収録されているため、エレクトロトラックが多く、かつ歌モノの曲が多いという共通項はあるものの、全体的にはバラバラという印象。今風なサウンドの曲もある一方、ちょっと懐かしさを感じさせるようなトラックも。ただ、Soundcloudのみでの公表とはいえ完成度の高くしっかりと聴かせる楽曲ばかりで、DRAKEの魅力はしっかりと感じることのできるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS
More Life
SCORPION

Not The News Rmx EP/Thom Yorke

先日リリースしたソロアルバム「ANIMA」に収録された「Not The News」のリミックスをまとめた4曲入りのEP。よりスケール感の広がりを感じさせるマーク・プリチャードのリミックスに、細かいビートでメタリックな色合いが濃くなったダンスホール・レゲエ・デュオのイクイノックスによるリミックス、さらに当サイトでも何度か紹介したWARPを代表するエレクトロミュージシャンClarkのリミックスは生音を取り入れつつ、どこか歪んだサウンド構成が耳を惹くリミックスに。リミキサーそれぞれの個性が反映され同じ曲なのに雰囲気の異なるリミックスが収録された聴きごたえるEPとなっていました。

評価:★★★★

Thom Yorke 過去の作品
The Eraser Rmx
Tomorrow's Modern Boxes
Suspiria(Music for the Luca Guadagnino Film)
Suspiria Unreleased Material
ANIMA

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2019年9月29日 (日)

アフリカ音楽入門の入門

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の紹介です。

今回紹介するのは、アフリカ出身のパーカッショニスト、ムクナ・チャカトゥンバによるアフリカ音楽の入門書、「はじめまして!アフリカ音楽」です。ムクナ・チャカトゥンバは1990年により日本を拠点に音楽活動を行い、劇団四季のミュージカル「ライオンキング」の初代パーッカショニストを3年務めるなど活躍したものの2014年に66歳で逝去しています。本著はもともと2003年に「アフリカン・ドラムは魂の響き」というタイトルでリリースされた本を2015年に一部再編・改題し再発刊したもの。以前から気になっていたのですが、最近、図書館でみかけてざっと中身を読んでみたところ、あらためて内容に興味を惹かれて、遅ればせながら購入し読んでみた1冊となります。

本書はタイトルやこの記事の表題の通り、アフリカ音楽を全く知らないような初心者に対して、アフリカ音楽とはどういうものか、を紹介したもの。第1章ではざっとアフリカの音楽について概略を紹介した後、第2章では彼の生い立ちを通じて主に彼の出身国、コンゴ民主共和国での人々と音楽の関わり、第3章ではコンゴの音楽の紹介、第4章ではコンゴの音楽のリズムパターンの紹介、そして第5章では主にコンゴの文化についての紹介しています。

アフリカ音楽と一言で言っても、アフリカ大陸は非常に広く、音楽的にも様々な種類があります。ただ、ムクナ自身がコンゴ出身のミュージシャンということもあって、ここで紹介されているのはコンゴの音楽がメイン。他の地域の音楽については第1章でざっと触れられているだけです。そういう意味ではこの本を持って「アフリカ音楽入門」と言ってしまうには紹介されているジャンルが狭すぎると言えなくもないのですが、コンゴといえばKonono No.1やKasai Allstars、今は活動休止状態のようですが、一時期日本でも大きな話題となったStaff Benda Bililiなど数多くのミュージシャンを輩出している地域であり、かつ一般的にイメージされるような典型的な「アフリカ音楽」を聴けるような地域でもあったりします。そういう意味ではアフリカ音楽の最初の一歩としてコンゴの音楽を知るのはピッタリなのかもしれません。

本書では徹底的に初心者に対して書かれた本であるため、専門用語等はほとんど用いられていません。アフリカの音楽の特徴であるコール・アンド・レスポンスやポリリズムなども紹介されているのですが、その用語自体は登場してきません。ただ一方ではアフリカの音楽でよく使われる楽器については写真付で細かく紹介されているほか、コンゴの音楽のリズムパターンについても代表的なものについて細かく紹介されています。さらに本書にはCDもついており、そこでまた楽器のことやリズムのこと、さらにはコンゴで歌われている歌なども紹介。本書の最後にはCDの内容について詳細な解説ものついており、本を読むだけではなく耳からもアフリカの音楽で使われている楽器やリズムについて詳しく知ることが出来ます。

ただここで紹介されているアフリカ音楽の入門の入門的な知識については正直言うと、アフリカの音楽に興味を持ってワールドミュージックの音楽ガイドなどを読んだりCDを聴いたりしても、意外となかなか説明してくれない知識のように感じます。実際、私もアフリカの音楽が好きで、CDを多く聴いたり、ガイド本をいろいろと読んだりしているのですが、この本を読んではじめて知ったことも少なくありません。これはアフリカ音楽に限らない話かもしれませんが、評論家やライターはともすれば「ある程度知っている」前提で文章を書きがちであり、基礎中の基礎の知識を書かなかったり、あるいはこの本で書かれているコンゴのリズムパターンの話のような、音楽自体の純理論的な知識については意外と書けない評論家が多いため、入門の入門のような本書の記載が、逆にアフリカ音楽の説明としては意外と新鮮味を感じさせる結果になっているように感じました。また、アフリカの音楽を知るためにその背景となるコンゴの文化も紹介されている点も大きなポイント。これによりコンゴの音楽についてより深い視点から理解することが出来るようになっています。

若干残念だったのは、これでアフリカ音楽に興味を持った人が次に聴くべきミュージシャンやアルバムなどの紹介がほとんどなかった点。コンゴの音楽が影響を受けたキューバのミュージシャンたちの紹介はあったものの、肝心のコンゴのミュージシャンたちの紹介はありませんでした。この点は入門書としてはちょっと残念。簡単なディスクガイドとかがあったら良かったのに、と思ってしまいました。

もっともその点を差し引いてもアフリカの音楽を知るための最初の一歩としては最適な1冊だったと思いますし、意外とアフリカ音楽について既に興味を持っていて、いろいろと聴いている人にとっても、この本を読むことによってさらに深い理解を得られる1冊のように感じます。まさにアフリカ音楽の入門の入門として幅広くお勧めできる良書だと思います。アフリカの音楽に少しでも興味がある方は読んでおいて損のない1冊です。

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2019年9月28日 (土)

豪華作家陣による久々のオリジナル

Title:ID
Musician:渡辺美里

途中、「Lovin' you」「ribbon」の30周年記念盤のリリースがあったものの、オリジナルアルバムとしては約4年4ヶ月ぶり。おそらく過去のオリジナルアルバムの中では最も長いスパンとなってしまった渡辺美里のニューアルバムがリリースされました。前作「オーディナリー・ライフ」はデビュー30周年記念アルバムということでかなり力の入ったアルバムでしたが、今回のアルバムも特に作家陣が豪華。真心ブラザーズの桜井秀俊、NONA REEVESの西寺郷太、元Superflyの多保孝一、ソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉、川村結花、さらにはアレンジャーとしてポルノグラフィティやいきものがかりのプロデュースでおなじみの本間昭光も参加しています。正直、「ヒット」からすっかり遠ざかっている彼女ですが、これだけ豪華なミュージシャンを揃えられるというのはやはり過去の功績の大きさ故でしょうか。もっとも、「ヒット」から遠ざかっているとはいえ、前作も本作もチャートでベスト20入りするなど一定以上の人気は維持しており、今の世の中、十分すぎるほど「売れている」ミュージシャンなのかもしれませんが。

さて、前作「オーディナリー・ライフ」の出来がここ数年来では断トツの出来だっただけに今回のアルバムも期待していました。で、1曲目「Ready Steady Go!」。これが往年の彼女を彷彿させるようなパワフルなロックナンバー。ある意味ベタベタなナンバーだけども、いい意味で彼女のパワフルなボーカルにマッチしており、彼女の良さが出ていた楽曲になっていました。「お、これは!」とガッツポーズする思いでその後を聴き進めていったのですが・・・。

その後の楽曲についても決して悪くはありません。上にも書いた通り、豪華な作家陣のナンバーが続いているだけに、それなりにしっかりと聴かせるナンバーが続きます。ただ悪くはないのですが、どの曲もインパクトは薄め。西寺郷太にしても桜井秀俊にしても、もうちょっとフックを効かせた楽曲を書けるミュージシャンだと思うのですが、これは渡辺美里自身のセレクトかもしれませんが、下手に「大人なポップ」を志向した結果、薄味なナンバーになってしまっており、聴いた後の印象が非常に弱く感じてしまいました。特に多保孝一なんて、個人的にはSuperflyに提供するようなナンバーを書けば、渡辺美里のイメージにもピッタリマッチするように思うんだけどなぁ。

ただ、そんな中、良かったのが田中明仁作曲によるナンバー。前述の「Ready Steady Go!」もよかったのですが、終盤の「IT'S ALL RIGHT」も同じく、全盛期を彷彿とさせるようなにぎやかなロックチューン。こちらもベタといえばベタなのですが、パワフルで分厚いアレンジとインパクトあるメロディーラインが渡辺美里の声量あるボーカルにマッチしていました。あ、田中明仁の功績もあるのでしょうが、アレンジの奥野真哉の仕事ぶりも、なにげに渡辺美里との相性の良さもうかがわせます。

そしてラストを締めくくるの曲もこのアルバムの大きな目玉でしょう。「すきのその先へ」と題された曲は1989年にリリースされたシングル「すき」の続編として作成された曲。作詞作曲は最近、すっかりジャズピアニストとなってしまった大江千里が(おそらく)久々にポップスミュージシャンとして作った曲となっていて、ポップミュージシャンとしての彼が好きな方にとってはうれしい1曲ではないでしょうか。メロディーラインもあきらかに「すき」を意識してつくられた爽やかなナンバーで、ファンとしては「にやり」としてしまうような曲になっています。

ただ、残念ながら肝心の歌詞の出来がいまひとつ。いや、決して悪くないのですが、風景や心象心理が自然に浮かんでくる原曲と比べると、歌詞が悪い意味で抽象的すぎて「『すき』のカップルの30年後」と言われても、その30年間の物語が浮かんできません。これ、原曲と同じく作詞は渡辺美里が手掛けた方がよかったのでは?確かに、昔に比べると最近の彼女の詞は「・・・」というものも少なくないけど、やはり原曲を手掛けた人がその続きを書いた方がいいと思うんですけど・・・。

そんな感じで豪華な作家陣の割には、とも思ってしまう惜しい内容。とはいえ、決して出来栄えは悪くありませんし、少なくともここ数年(というか向こう20年)くらいのアルバムの中では前作に続くくらいのいい出来だと思います。ここ最近、ずっとアルバム毎に参加している作家陣が変わってしまうのですが、田中明仁とか奥野真哉とか、結構渡辺美里との相性もいいように思うので、次のアルバムにも参加してほしいなぁ。これだけの内容のアルバムが続くと、次回作も期待できそうです。

評価:★★★★

渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
Serendipity
My Favorite Songs~うたの木シネマ~
美里うたGolden BEST
Live Love Life 2013 at 日比谷野音~美里祭り 春のハッピーアワー~

オーディナリー・ライフ
eyes-30th Anniversary Edition-
Lovin'you -30th Anniversary Edition-
ribbon-30th Anniversary Edition-

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2019年9月27日 (金)

チャラン・ポ・ランタンはなぜブレイクできないのか

Title:いい過去どり
Musician:チャラン・ポ・ランタン

ももと小春の2人組姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタン。今回紹介するアルバムは2009年の結成から10周年を記念してリリースされたベストアルバム。昨年11月にインディーズ時代の曲を網羅したベストアルバム「過去レクション」をリリースしましたが、今回のアルバムは2014年のメジャーデビュー以来の楽曲からセレクトしたベスト盤。「いい過去」をテーマとした選曲した構成になっているそうです。

今回のベスト盤では新曲「置行堀行進曲」からスタート。「おいてけぼりこうしんきょく」と読むこのナンバーはチャラン・ポ・ランタンらしい悲しげな歌詞ならがもリズムは軽快でコミカル。アルバム全体を総括するような歌詞にも感じられる曲となっており、彼女たちらしい曲と言えるでしょう。

その後の構成は基本的にメジャーデビューシングル「忘れかけてた物語」から発表順に構成された展開。バルカン音楽にシャンソン、スカにジンタなど世界の様々な大衆音楽の要素を取り入れたユニークな楽曲が特徴的。「サーカスで流れているような曲調」といったらピッタリあてはまるかもしれません。明るく軽快、だれもが楽しめるけど、ただどこか物寂しさも感じる。それがチャラン・ポ・ランタンの音楽の大きな特徴となっています。

歌詞にしても同様。コミカルでとても楽しい雰囲気がありつつも、もの悲しいネガティブな要素が入った独特の音楽性。このポジティブとネガティブのほどよいバランスがとられているために妙に癖になるのが彼女たちの音楽。「ムスタファ」のようなコミカルな物語を楽曲の中に違和感なく取り入れているのも彼女たちならでは、といった感じでしょうか。

オリジナルアルバム単位でいうと、アルバム毎に徐々にその音楽性を広げている印象があるのですが、ベストアルバムとして彼女たちの代表曲をピックアップすると、正直言うと初期の作品から作風の大きな変化はありません。ただ、聴いていて楽しくなる軽快な音楽と、前述のように様々なジャンルを取り込んでいるその音楽性から、最後まで聴いていても全く飽きることはありません。また、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のオープニングに起用された「進め、たまに逃げても」も収録。楽曲の中では特に万人受けを意識したようなポップで聴きやすい作風なだけに、このベスト盤の中盤でのひとつのインパクトとして機能しています。

ただ、これだけ軽快で楽しいポップソングが並んでいるにも関わらず、正直言うと、今のところ残念ながらチャラン・ポ・ランタンはブレイクした、とは言いにくい状態です。ブレイクしていない、とはいってもライブではホールクラスで全国ツアーを行える程度の人気は確保していますし、このアルバムもオリコン最高位35位と、それなりには「売れている」とはいえるのですが・・・。バルカン音楽やシャンソンといった音楽的な要素に若干、忌避感を持ってしまう方がいるのか、それともこのタイプのポップスグループはロックフェスなどで人気を伸ばすのが難しいので、どうしてもなかなか売上を伸ばすことが難しいのか・・・。このベスト盤は最後まで本当に楽しいポップソングが並んでいるだけに不思議に感じてしまいます。

もっとも今回のベスト盤でちょっと残念だったのが、事実上、彼女たち最大のヒット曲となった松井玲奈とのコラボシングル「シャボン」が収録されていなかった点。この曲、現時点でアルバム未収録ですし、収録すれば売上が伸びると思うんですが。また2016年にリリースしたカバーアルバム「借りもの協奏」で披露したカバー曲でも名カバーがあっただけにここからもピックアップしてほしかったかも。そこらへん、ちょっと残念な部分もあったのですが、全20曲、チャラン・ポ・ランタン初心者が最初に聴くベスト盤としては最適な1枚ですし、これを機に、是非チェックしてほしいアルバムです。ベスト盤リリースで活動にひとつの区切りがついたわけですが、まさかこれでメジャー離脱ってことはないですよね?これからもまた底抜けに楽しい名曲を期待しています。

評価:★★★★★

チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏
トリトメモナシ
ミラージュ・コラージュ
過去レクション
ドロン・ド・ロンド


ほかに聴いたアルバム

STARDUST REVUE 楽園音楽祭 2018 in モリコロパーク/スターダストレビュー

スターダストレビューが毎年夏に実施している野外ライブツアー「楽園音楽祭」。本作は昨年10月に愛知県モリコロパークで行われた野外公演の模様をおさめたライブ盤。スタレビといえばライブに定評があります。正直、演奏自体についてはベテランらしい安定感があるものの、それ自体を聴かせるような迫力や緊迫感みたいなものはありません。ただ、盛り上がる曲では思い切り盛り上げつつ、一方では聴かせる曲ではしんみりと聴かせるというメリハリ。代表曲の出し惜しみなしのセットリスト。そんな中で、途中では「木綿のハンカチーフ」「ひだまりの詩」などおなじみのナンバーのカバーを取り入れたりして、ファンどころかおそらくスタレビ初心者にも飽きさせないように工夫されたライブ構成には感心させられます。この内容ならライブは文句なしに楽しいだろうなぁ、ということを感じさせてくれるライブ盤でした。

評価:★★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT
スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
還暦少年

Captain Sad/The Wisely Brothers

これが2枚目のアルバムとなる3人組ガールズポップバンド。チャットモンチーのブレイク以降、女の子のみのガールズバンドが次々と誕生しており、彼女たちもそのうちの1組といった感じなのですが、ただサウンド的にはアコースティックな感触のつよい温かみあるポップチューンがメイン。かと思えば、ノイジーなギターを前に押し出したバンド色の強い作品もあったりするのがおもしろいところ。イメージとしては空気公団をもうちょっとロックよりにした感じでしょうか。楽曲にもうちょっとインパクトが欲しいかな、とも思うのですが、チャットモンチーフォロワーのようなオルタナ系ギターロックバンドが多いガールズバンドの中では個性を放っているバンドであって、そういう意味では今後の活躍が楽しみです。

評価:★★★★

The Wisely Brothers 過去の作品
YAK

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2019年9月26日 (木)

オールタイムベストで1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

オールタイムベスト盤が見事1位獲得です。

今週1位を獲得したのはPerfumeのベストアルバム「Perfume The Best "P Cubed"」でした。CD販売数、ダウンロード数、PCによるCD読取数いずれも1位を獲得。2006年にブレイク以前の楽曲をまとめたベスト盤「Perfume~Complete Best~」をリリースしていますが、同作は彼女たちにとっての初のアルバムであり、それまでの既発表曲をまとめたコンピレーション的な要素が強いアルバム。本作はいままでのオールタイムベストとなり(といっても中田ヤスタカがプロデュースした後の作品のみとなりますが)、事実上、初のベスト盤といってもいいようなアルバムとなります。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上9万7千枚で1位獲得。前作「Future Pop」の7万9千枚(1位)からアップ。ここ数作、アルバムの初動売上が22万6千枚→16万5千枚→12万2千枚→7万9千枚と右肩下がりの状況が続いていましたが、ベスト盤ということもあり、売上を持ち直し。購買者層が熱心な固定ファン以外に広がりにくいアイドル系はベスト盤の売上がオリジナルを下回るケースが多いのですが、彼女たちのベスト盤は直近のオリジナルよりもアップ。面目躍如の結果となりました。

2位初登場はりぶ「Ribing fossil」。動画投稿サイトへの歌唱動画のアップが話題となった「歌い手」の男性シンガー。CD販売数2位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数17位。オリコンでは初動売上2万4千枚で3位初登場。前作「singing Rib」の1万8千枚(4位)からアップしています。

3位は先週まで2週連続の1位だった竹内まりや「Turntable」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位にジャズピアニスト上原ひろみ「Spectrum」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数38位で総合順位でベスト5入り。2016年に上原ひろみザ・トリオ・プロジェクト名義でリリースした「SPARK」がアメリカビルボードの総合ジャズチャートで1位を獲得するなど、日本のみならず世界的に高い人気を集める彼女。最近は「ザ・トリオ・プロジェクト」名義でのリリースが続いていたため、ソロ名義では2009年の「Place to Be」以来、実に10年ぶりとなるアルバムとなりました。オリコンでは初動売上7千枚で8位初登場。上原ひろみのリーダー名義のアルバムでは前作「SPARK」の初動1万2千枚(4位)からダウンしています。

7位には韓国の男性アイドルグループSEVENTEENの韓国でのアルバム「An Ode」がランクイン。Billboardでは輸入盤はCD販売数にカウントされていないのですが、ダウンロード数で2位を獲得。PCによるCD読取数37位と合わせてCD販売数ランク対象外ながらもベスト10入りしてきました。オリコンでは初動売上5万2千枚で2位初登場。同じく韓国盤の前作「YOU MADE MY DAWN」の4万7千枚(1位)からアップしています。

8位も同じく韓国の男性アイドルグループ。2PM「2PM BEST in Korea 2~2012-2017~」がランクイン。彼らの韓国で発表された楽曲を収録したベスト盤で、2012年にリリースした「2PM BEST 〜2008-2011 in Korea〜」の第2弾。こちらは国内盤のためBillboardでもCD販売数で6位にランクインしていますが、そのほかのチャートにはランクインせず、総合順位は8位に留まりました。オリコンでは初動売上8千枚で7位初登場。国内盤の前作「GALAXY OF 2PM」の9万5千枚(1位)から大きくダウン。同じ企画の前作「2PM BEST 〜2008-2011 in Korea〜」の2万9千枚(5位)からも大きくダウンしています。

初登場最後は10位に、KREVA「AFTERMIXTAPE」がランクイン。ご存じKICK THE CAN CREWのMCとしても人気を博したラッパーによるニューアルバム。今年、ソロデビュー15周年を迎えた彼は9ヶ月連続リリースと題してシングルやベストアルバムなどをリリースしてきましたが、本作はその第10弾(9ヶ月連続なのに10弾というのは、9月にもう1作、映像作品をリリースしているため)。CD販売数9位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数83位。オリコンでは初動売上5千枚で9位初登場。直近のベスト盤「成長の記録 〜全曲バンドで録り直し〜」の4千枚(14位)からアップ。オリジナルフルアルバムとしては前作「嘘と煩悩」の1万1千枚(6位)から大幅ダウンという結果となっています。

続いてロングヒット盤です。まずはのベスト盤「5×20 All the BEST!! 1999-2019」。こちらは先週の3位から4位にダウン。CD販売数4位、PCによるCD読取数2位を記録し、これで通算13週目のベスト10ヒットに。またRADWIMPS「天気の子」は6位から9位にダウン。CD販売数18位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数3位。こちらは10週目のベスト10ヒットとなっています。

また先週ベスト10に返り咲いた米津玄師「BOOTLEG」は11位に、BUMP OF CHICKEN「aurora arc」は14位にダウンしてしまいました。ただ、どちらもまだ根強い人気を誇るため、初登場の少ない週に再度のベスト10入りもありえるかも?

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年9月25日 (水)

1位は圧倒的強さのAKB48ではあるが・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週1位は無難にAKB48が獲得。

まず今週1位はAKB48「サステイナブル」が獲得。CD販売数は1位、PC販売数6位、Twitterつぶやき数7位を獲得したものの、ダウンロード数は56位、ラジオオンエア数は15位にとどまっており、固定ファン層以外の広がりのなさを感じます。楽曲的には80年代あたりのアイドルソングを彷彿とさせるようなちょっと懐かしい雰囲気の清純派王道路線。奇をてらわない姿勢はAKBグループの中心としての風格を感じさせますが。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上138万枚で1位獲得。前作「ジワるDAYS」の126万2千枚(1位)からアップしています。

2位には先週からワンランクダウンで米津玄師「馬と鹿」がランクイン。CD販売数は3位にダウンしましたが、ダウンロード数、ラジオオンエア数、You Tube再生回数で1位を獲得。PCによるCD読取数でも2位を獲得し、圧倒的な人気ぶりを見せています。さらに3位は先週と変わらずOfficial髭男dism「Pretender」がこれで3週連続の3位をキープ。ストリーミング数は今週も1位をキープしており、こちらも根強い人気を維持しています。

今週、実はHot100、Official髭男dismとあいみょんの新譜がランクインし、結果としてなんと米津玄師と合わせて3組のミュージシャンがベスト10のうち7曲を締めるという結果に。チャート的には1位のAKB48に目が行きがちですが、ベスト10全体に目を向けるとこの3組のミュージシャンの圧倒的な強さが目立つ結果となっています。

まず米津玄師は「馬と鹿」のほか、「Lemon」が先週と変わらず9位をキープ。Foorin「パプリカ」は残念ながら12位にランクダウンしてしまったものの、今週も2曲同時ランクインとなっています。「Lemon」は一度ベスト10から陥落し、再びランクアップしてきたものの、その後も驚異的な粘りを見せています。特にいまだにダウンロード数は5位にランクイン。好きな曲を何度も聴くストリーミングやYou Tubeならともかく、一度ダウンロードしたらおしまいのダウンロード数のランキングがまだ上位を維持していることに驚き。あれだけ売れまくったのに、いまさらダウンロードする人がまだ大勢いるってことですよね・・・。

そしてOfficial髭男dism。6位に彼らの新曲「イエスタディ」が先週の13位からランクアップしベスト10入り。映画「HELLO WORLD」の主題歌で10月9日リリース予定のアルバム「Traveler」からの先行配信となります。ポップ界で「イエスタディ」と言えば言わずと知れたビートルズの大ヒット曲がある中、あえてそのタイトルをつける大胆不敵さに感心します。ダウンロード数4位、ストリーミング数3位、ラジオオンエア数2位、Twitterつぶやき数44位、You Tube再生回数17位で配信オンリーながら見事ベスト10入りです。

さらに「宿命」も先週の7位から4位にアップ。結果としてOfficial髭男dismは今週、3曲同時ベスト10入りという記録を達成しています。特にストリーミング数では1位「Pretender」2位「宿命」3位「イエスタディ」とベスト3をヒゲダンが独占という結果に。それだけ繰り返し、彼らの曲が聴かれているということであって、本当の意味で曲が支持されているということを感じるチャートとなっています。

さらにあいみょん。今週、新曲「空の青さを知る人よ」が先週の14位から10位にランクアップ。映画「空の青さを知る人よ」主題歌。10月2日リリース予定のシングルからの先行配信。ダウンロード数3位、ラジオオンエア数8位、ストリーミング数3位、Twitterつぶやき数61位で配信オンリーながらも見事ベスト10入りです。また「マリーゴールド」も先週の8位から7位にアップ。これであいみょんも2曲同時ベスト10入りとなっています。

結果として米津玄師2曲、ヒゲダン3曲、あいみょん2曲でベスト10のうち7曲までが3組のミュージシャンにより独占されるという結果に。いずれもストリーミングやYou Tubeなどで高い順位をキープしており、そういう意味ではミュージシャン本人云々よりも、しっかりと曲を聴かれた結果、支持されているというヒットとしては理想的な傾向になっています。今週はAKB48の新曲が1位を獲得しましたが、ヒットチャート全体としては、「AKB商法」と言われてCDを肝心な中身の曲の良し悪しではなく、ただ単にビジネスアイテム的に毎数だけ売ろうとするAKB48の売り方とは全く逆の支持のされ方をしているミュージシャンの活躍が目立つチャートとなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年9月24日 (火)

アフリカと欧米ポップスをほどよくブレンド

Title:African Giant
Musician:Burna Boy

今回紹介するのは今、注目されているナイジェリアのシンガーソングライター、Burna Boy(バーナボーイ)のニューアルバムです。本作は2010年にデビューした彼の4作目となるアルバム。アフリカ系アメリカ人やマイノリティーに贈られるアメリカの文化賞であるBETアワードで本年度のBest International Actを受賞。最近ではBeyonceのアルバム「The Lion King:The Gift」にも参加しているほか、Fall Out BoyやLilly Alenのアルバムにも参加しており、アフリカのみならず世界的な注目を集めているミュージシャンで、本作もイギリスのアルバムチャートでは最高位16位を獲得するなどヒットを記録しています。

彼についてはBeyonceのアルバム「The Lion King:The Gift」でその存在を知り、今回のアルバムも高い評価を受けているみたいなので聴いてみました。もともとアフリカ系のミュージシャンには高い関心がありいろいろと聴いているのですが、これは確かにヒット!高い注目も納得の傑作アルバムに仕上がっていました。

アルバムはタイトルチューンである「African Giant」でスタートするのですが、タイトル通り、アフリカの空気を感じさせるようなトライバルなリズムが壮大なアフリカの大地を感じさせるような楽曲。ただ一方、哀愁感たっぷりのメロディーラインは逆に西洋的なあか抜けた雰囲気を感じさせます。そんなタイトル通りのアフリカの空気を感じさせつつも、レゲエやラテンの要素が強いのも大きな特徴。続く「Anybody」はレゲエの要素を、「Wetin Man Go Do」はラテンの要素を感じさせるナンバー。そこにトライバルなリズムが融合されている点がBurna Boyの大きな魅力でしょう。

ただ、それに加えてBurna Boyの大きな魅力といえるのが「African Giant」のメロディーラインでも感じられたように、欧米のポップスと地続きのようなあか抜けたサウンドとメロディーライン。例えば「Dangote」ではメロウなエレピが入りつつ、音数を絞ったシンプルなサウンドを聴かせてくれており、シンプルに刻むリズムも含め、今時の音作りを感じさせます。メロディーラインにしても例えば「Gum Body」ではイギリスのシンガー、Jorja Smithをフューチャーしてメロウな歌声を聴かせてくれているなど、アフリカ的な要素、レゲエやラテン、さらに西洋的なポップスを上手く入り交ぜたポップチューンを聴かせてくれています。

アルバム全体としてはナイジェリアの音楽の魅力をほどよく感じさせつつ、一方では欧米のポップミュージックの要素を色濃く取り入れているためいい意味でバランスの取れた、多くのリスナー層にとって聴きやすい楽曲が大きな魅力と感じました。確かに、こういう音楽性なら多くのミュージシャンが彼をゲストとして招きたくなるのも納得です。今後、さらに大きくブレイクしそうな予感のする彼。日本でもその名前を聞く機会が増えていきそうです。

評価:★★★★★

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2019年9月23日 (月)

ブルースへの愛情を深く感じる作品

Title:ブギ連
Musician:ブギ連

これはすごいユニットが登場してきました。日本を代表するブルースバンド、憂歌団のギター、内田勘太郎がご存じブルーハーツ、ハイロウズ、クロマニヨンズで活躍してきた日本を代表するロックボーカリスト、甲本ヒロトと組んでユニットを結成。その名もブギ連。さらにアルバムも1枚、作ってしまいました。

そしてこれがまたブルースへの愛情あふれるアルバムに仕上がっていました。基本的に演奏は内田勘太郎のひくブルースギターと甲本ヒロトのブルースハープのみという非常にシンプルなもの。また甲本ヒロトもボーカルもいつものヒロト節は封印。そのため、ブルハやハイロウズ、クロマニヨンズのイメージからすると少々違和感を覚えるかもしれません。ただ、シンプルな演奏だけに聴いていて、まずヒリヒリとする緊迫感あふれる演奏になっています。またヒロトのボーカルもブルースの楽曲に合わせたように、どこか渋みのあり、より自らの感情を込めた歌い方となっており、ボーカリストとしての凄みすら感じます。この2人の演奏+ボーカルだけでまずはゾクゾクとさせられる内容になっています。

またブルースからの愛情という意味では多くの曲がブルースの名曲をモチーフとしています。例えばバンド名にもなっているタイトルチューン「ブギ連」はジョン・リー・フッカーの「Boogie Chillen」、「腹のほう」はマディ・ウォーターズの「I Can't Be Satisfied」、さらに「ナマズ気取り」も同じくマディの「Catfish Blues」をモチーフにしており、聴き比べてみるのも楽しいかもしれません。さらに「ブルースがなぜ」では歌詞にエルモア・ジェイムスやマディ・ウォーターズも登場。ブルースへの深い愛情が随所に感じられます。

ただし、本作はただ単に昔ながらのブルースを2人がそのままカバーしたアルバム・・・ではありません。ブルースの名曲をモチーフにしながらもしっかりと自らの言葉で、それもブルースのマナーに沿った形で歌っています。例えば「ヘビが中まで」では

「家ん中まで ヘビがのろのろ
家ん中まで ヘビがのろのろ
ガラガラヘビの 脱皮中」
(「ヘビが中まで」より 作詞 甲本ヒロト)

という歌詞。見たまんまなようにも読み取れるのですが、一方では「ヘビ」が歌い手の心象風景の描写のようにも読み取れます。ブルースといえば歌い手の心の叫びを歌にのせた音楽なのですが、今回のブギ連の曲ではしっかりと日本語で、彼らの心の叫びを歌詞にした曲に仕上がっており、そういう意味でも単純なブルースのカバーとは異なる、ブルースへの愛情を強く感じさせる内容になっていました。

また「道がぢるいけえ気ィつけて行かれえ」の「ぢるい」は「ぬかるんでいる」という意味の方言。甲本ヒロトの出身、岡山地方の方言らしく、こういう地方性を出してくるあたりもブルースらしいと言えるかもしれません。

そんな訳で2人のブルースへの愛情がさく裂した、実に味わい深いアルバムに仕上がった本作。また、あのパンクバンド、ブルーハーツの甲本ヒロトがボーカリストとしてこの領域にまで達した、という点でも感慨深いものもありますし、一方ではこういう歌を歌えるのもまた、ヒロトだからこそ、とも思ったりもします。

本格的なブルースなだけに最初はちょっと取っつきにくいかもしれませんが、何度か聴くうちに間違いなく味が出てくる傑作アルバムだと思います。このユニット、これからも継続的に活動を続けてほしいなぁ。2人での活動を続ければ、より味わいが深い楽曲が登場しそうな予感もします。今後の活動は不明なのですが・・・是非、2枚目3枚目のアルバムも聴いてみたいと思わせる作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Have a Nice Day!/Scoobie Do

オリジナルアルバムとしては約1年9ヶ月ぶりとなるファンクバンドScoobie Doの新作。7月リリースということで真夏のファンクをイメージした爽快さを感じるファンキーナンバーが並び、全体的にはぶっといグルーヴを聴かせるというよりは軽快にポップにまとめあげている印象のあるアルバムとなっています。軽快なファンクチューンは暑い夏の時期にでも心地よく聴ける反面、少々薄味気味な印象も。

評価:★★★★

SCOOBIE DO 過去の作品
ROAD TO FUNK-A-LISMO!
BEST OF CHAMP YEARS 2007~2016
CRACKLACK

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2019年9月22日 (日)

日本ロック界の首領(?)内田裕也の音楽的実績

Title:MY LIFE IS R&R!
Musician:内田裕也

今年3月、79歳でこの世を去った内田裕也。マスコミでは「日本ロック界の首領(ドン)」などと称され、最後に口癖のように「ロケンロール」とだけ口にして去っていくそのキャラクター性が強いインパクトを与えた彼ですが、はっきり言ってしまって音楽的な側面での功績は非常にわかりにくい部分が少なくありません。少なくとも本人も自虐的に語っていましたが、ヒット曲は皆無。「日本のロック史」的な本を読んでも、ミュージシャンとして内田裕也が登場してくることはありません。その名前が登場するのは、おそらくフラワー・トラベリン・バンドのプロデューサーとしてでしょう。

内田裕也が日本のロック史上において「何」を行ったか、についてはTogetterにちょうどよいまとめ記事を見つけました。

誰も聴いてなかった内田裕也

これを読み感じだと、彼はいわゆる日本のロックシーンにおけるフィクサー的な存在。裏社会とのつながりもあった日本の芸能界の中に良くも悪くもロックという根付かせてきた存在といったイメージでしょうか。そのため日本の芸能界ともっともリンクのあった存在が彼であり、そのためメディアでは「ドン」なんて呼ばれ方をして、まるで日本ロックの代表格のように扱われたのでしょう。裏方として日本のロックシーンにおいて一定の功績があったことは間違いなさそうですが、ただ、あくまでも裏方である彼がロックの代表格として扱われるような日本のメディアの状況が、日本に本当の意味でのロックミュージックが根付いていなかった、ということも言えるかもしれません。

もちろん、とはいっても彼もミュージシャンとして活躍してきた実績がありました。本作は彼への追悼企画として60年代中盤に、当時の東芝音楽工業(のちに東芝EMI、EMIミュージックを経て、現在はユニバーサルミュージック)に残されたシングル音源をまとめたベストアルバム。そんな彼がどんなロックンロールを奏でていたか気になるところですが、最初、本作を聴きだすとちょっとビックリするかもしれません。1曲目「ひとりぼっちのジョニー」はロックというよりは完全にカントリーウエスタン。続く「ヤング・ワン」はハワイアン風とロックンロールというイメージからはかけ離れています。

その後も「キューティー・パイ」あたりはロックンロールという範疇に入る楽曲となっていますが、「ジプシー・キャラヴァン」は完全に歌謡曲と、ここらへん、ロックンロールという音楽の解釈の在り方も含めて、非常に時代性を感じさせる楽曲が並びます。ただ、そのイメージが変わるのが後半。ビートルズのカバーでもおなじみのチャック・ベリーの「ロール・オーバー・ベートーベン」あたりから。この曲、歌詞は完全にギャグ路線のような感じになっているのですが、軽快なリズムはロックンロールそのもの。その後も今の耳で聴いても間違いなくロックンロールな楽曲が並んでいます。

ただ、正直なところ音楽的には最後の最後まで微妙な出来。時代的に仕方ないのでしょうし、同時代にロックンロールを奏でていたミュージシャンと比べて劣っているわけではないのでしょうが、洋楽のロックンロールのそのままの模倣という枠組みを出ていません。音楽的にはほとんど話題になることのない彼ですが、確かにこの出来では・・・と思ってしまいます。おそらくこういう機会でもない限り、彼の音楽を聴くこともないでしょうから、興味を持った方はどうぞ、といった程度のアルバムといったところでしょうか。

彼のようなフィクサー的な存在がロックの代表格的に扱われている時点で、ある意味、実に日本的なものを感じてしまう内田裕也。彼の死はひょっとしたら日本の音楽シーンにおいてひとつの終わりを告げたのかもしれません。今回、本作を聴くにあたって、あらためて彼はどのような存在だったのか調べはじめると、そう感じるに至りました。あらためてご冥福をお祈りいたします。

評価:★★★


ほかに聴いたアルバム

Moon Dance/WONK

最近では様々なミュージシャンへのアルバムにも参加。注目を増しているソウルバンドWONKの最新作は5曲入りのEP。全体的にメロウなサウンドを聴かせるメロディアスなAOR路線が主体。正直言うと、目新しいという印象はないのですが、「歌」をしっかりと聴かせる曲が並んでおり、聴き惚れてしまう感の強いアルバムになっていました。わずか5曲入りということでちょっと物足りさなもあるのですが、それだけに次のアルバムに期待できそうなEPになっていました。

評価:★★★★

WONK 過去の作品
BINARY(WONK×THE LOVE EXPERIMENT)

いちご/木村カエラ

今年6月にデビュー15周年を迎えた木村カエラの約2年9ヶ月ぶりとなるアルバム。「Continue」ではいまをときめくあいみょんが楽曲を提供。ほかにもCharaやノルウェーのアートロックバンドPom Pokoが楽曲を提供しているほか、渡邉忍や曾田茂一などおなじみのメンバーも楽曲を提供。15周年の記念盤らしい、にぎやかな作家陣が参加したアルバムとなっています。ただアルバム全体としてはいつもの木村カエラといった印象。ギターロックに仕上げたり、エレクトロサウンドを入れてきたり、サウンド的には自由な作風に仕上げている一方、軽快で明るいポップチューンというメロディーラインでアルバム全体が統一され、結果としていつもの彼女のアルバムと同様、楽しい雰囲気のポップアルバムに仕上げていました。悪くいえば15周年の記念盤なのに無難な、よく言えば実に彼女らしいアルバムといった感じでしょうか。

評価:★★★★

木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years
MIETA
PUNKY
¿WHO?

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2019年9月21日 (土)

デイリーライブ3度目

あいちトリエンナーレ2019 円頓寺デイリーライブ

環ROY

会場 円頓寺駐車場 日時 2019年9月13日(金) 19:00~

以前も何度かここでライブレポをお送りしたあいちトリエンナーレ2019の企画、円頓寺デイリーライブ。また、良さげなライブがあったので足を運んできました。今回のライブは環ROYというラッパーのステージ。音源などは聴いたことないのですが、名前は良く聞くラッパー。どんなステージを見せてくれるのか興味があったため、再び円頓寺まで出かけてきました。ちなみに、以前のデイリーライブでは一緒に足を運んだU-zhaanのChilla: 40 Days Drummingは、このデイリーライブの行われた週の月曜日に終了したため、今回見に行ったのはデイリーライブのみとなります。

Tamaki_roy1 

19時を過ぎてすぐに環ROYが登場。この日はベアのステージに、脇にDJセットが設置されているだけのステージ。ライブは完全に環ROYのみのステージで、バックで流れるトラックも彼がDJセットをいじりつつ進行していくステージでした。まず彼が登場するとおもむろにアカペラでラップを披露。会場は8割程度の人の入りといった感じだったのですが、後ろまで声が届いているのか散々に質問をなげかけている・・・のですが、フリーライブの悲しさか、後ろの方の反応はいまひとつ・・・。とはいえ、そんな雰囲気にもめげずに、しばらく続いたアカペラのラップに続き「On&On」へ。いままでのトラックなしのラップとは一転してダイナミックなトラックの楽曲になっており、まずは会場を盛り上げます。

その後は「Offer」「食パン」と続きます。最初にも書いた通り、彼の曲は基本的に今回はじめて聴いたのですが、特に「食パン」は力強いビートが鳴る中、郷愁感を覚えるトラックが印象に残るナンバー。メロディアスな雰囲気のサウンドが強く印象に残りました。

3曲が終わるとMCへ・・・と思いきや、そのままフリースタイルのラップへと移行。そのフリースタイルはなにか一貫したストーリーがあるわけではなく、頭の中で思いつくまま韻を踏んだ単語が次々と登場してくるようなスタイル。全く異なる言葉がいきなり飛び出したりして、全く先の見えない展開に。コミカルでユニークな言葉が飛び出してくることもあり、聴いているだけでおもしろいステージに。

Tamaki_roy2

その後は「フルコトブミ」へ。この曲もメロウなトラックが耳を惹くナンバー。さらに再びフリースタイルを間に挟み、「古い曲を」ということで「Break Boy in the Dream」へ。この曲は七尾旅人がフューチャーされ、歌パートを歌っているのですが、この日は七尾旅人のパートは彼の歌の録音が流れるスタイルで。さらに「そうそうきょく」「go Today!」と続きますが、いずれもラップながらも歌心を感じるメロディアスなナンバーで、メロディアスなポップスを聴くような感覚で楽しめるステージとなっていました。

さらに再びMCからそのまま続くようにフリースタイルのラップを披露した後、最後は「めでたい」へ。この曲も途中に歌のパートがあるのですが、ここは環ROYが自らマイクを取り歌を披露。その歌声を聴かせます。そして曲が終わったのは20時の5分くらい前。アンコールを求める声ももちろんあったのですが、ちょうど8時までしか使用できない時間制限のようで、アンコールを求める観客とのやり取りがちょっとあった後、20時ほぼちょうどに会場を去っていきました。

そんな訳で例によってピッタリ1時間のステージ。この日、環ROYをその楽曲含めてはじめて聴いたのですが、メロディアスなトラックや歌が流れる曲が多く、ポップという観点からも聴きやすく楽しめる楽曲がほとんどでした。また言葉を自由に行き来するようなユーモラス感あるフリースタイルのラップもとても楽しく、またどこか脱力感のあるキャラもユニーク。予想以上に楽しめた1時間のステージでした。

Tamaki_roy3

↑MCの時に観客から「かっこいい!」と言われていたTシャツ。自作だそうです。

これだけ良いライブを1時間も見れてフリーライブとはなかなかお得感の高いイベント。9月となってこの時間帯はかなり涼しくなってきており、外でライブを見るのもとても心地よくなってきました。ほかにもいろいろと興味あるミュージシャンのライブが続くようですので、またこのイベントには足を運びたいです!

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2019年9月20日 (金)

結成30周年の記念映画

先日、名古屋の伏見ミリオン座で、the pillows30周年記念プロジェクトとして制作された映画「王様になれ」を見てきました。

Ousama

ミュージシャンやバンドの活動の節目に映画を撮る、というケースはよくあります。ただ、そのような映画はバンドの活動を追ったドキュメンタリー映画であることが普通です。しかし、本作はドキュメンタリーではなく、純粋な劇映画。自らも俳優として活躍するほか、主に舞台の脚本・演出を手掛けるオクイシュージがはじめて映画監督して挑んだ作品になっています。

物語はカメラマン志望の若者、祐介がふとしたきっかけでバスターズ(=the pillowsのファン)のユカリという女性に出会い、彼女を通じてthe pillowsを知ることから物語はスタートします。カメラマンを目指していながら、全く芽が出ず、日々の暮らしの中で鬱屈した気持ちを抱えている彼。一方、ユカリにも祐介には言えない秘密があり・・・というようなお話。

今回の映画をあえてドキュメンタリーではなくノンフィクションにしたのは、かつて一度、the pillowsのドキュメンタリーを作成したことがあったこと、また「ストーリーを通してピロウズが如何に多くの人に愛されてきたのかを伝えていきたい」という意図があったことを、原案を手掛けた山中さわおは語っています。

正直言うと今回の映画、最初はあまり食指が動かず、見ようかどうか迷っていました。the pillowsの映画ならばやはりドキュメンタリー形式かライブ映画のようにthe pillows自体にスポットを当てたものを観たい、という思いがあったからです。またストーリーについても、興味を持つような内容はなく、映画自体にはあまり惹かれるものがありませんでした。ただ、試写会などでの感想を読む限りだと、かなり評判は良いようでしたので、やはりthe pillowsファンとしては見ておかなくては・・・という気持ちもあり、今回、映画館まで足を運んでみました。

そんな訳で期待半分、不安半分という感じで見た今回の映画ですが、結果としては「見てよかった」という印象を抱いて映画館を去ることが出来ました。それはまず第一に、思ったよりもストーリーが良かったという点。全体的に王道的なストーリーながらも、変にムダに盛り上げるような「事件」などもなく、比較的淡々と物語は進んでいきます。ただ、この展開が逆にリアリティーがあり、また感動の押し売りやお涙頂戴的な演出もなかったため、素直に物語に没頭することが出来ました。

そして第二に、その物語の中でthe pillowsというバンドの魅力を上手く溶け込ませることが出来ていた点でしょう。映画の中ではもちろん全面的にthe pillowsの曲が使われているのですが、劇中の主人公の心境とthe pillowsの歌詞の内容が実に上手くリンクしており、ファンとしてもうれしくなってくる演出が随所に見受けられます。

さらに何よりよかったのが、劇中の要所要所に登場するthe pillowsのライブシーン。普通の映画のようにワンカットだけ、という感じではなく、ほぼフルコーラス、ライブ映像が使われているのが大きな特徴。物語のテンポが悪くなる、という批評もあるようですが、今回はライブドキュメンタリー的な側面を入れるためにわざとフルコーラスでのライブ映像を入れてきたのでしょう。また、今回、ストレイテナーのホリエアツシとGLAYのTERU、JIROがthe pillowsの曲をカバーしたライブ映像が入っているほか、多くのミュージシャンたちがゲストとして参加し、まるでthe pillowsへのトリビュートのような様相を帯びた内容となっているのも大きな魅力でした。

もっとも、物語としても楽しめる内容ではあったものの、ストーリー的にはよくありがちな展開ですし、the pillowsファン以外に無条件でお勧めできるかと言われると微妙。そういう意味では間違いなくファンズムービーではあると思います。ただし、the pillowsのファンなら、間違いなく満足できる映画だったと思います。the pillowsの魅力が映画全体から伝わってきて、映画を見終わった後、無性にthe pillowsを聴きたくなるような、そんな映画でした。劇映画ということで躊躇している方もいるかもしれませんが・・・もしそうだとしたら非常にもったいないと思います。全the pillowsファン必見の作品です。

以下、ネタバレの感想を・・・。

続きを読む "結成30周年の記念映画"

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2019年9月19日 (木)

2週連続ベテランが1、2フィニッシュ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週はベテランミュージシャン同士が1位をめぐりデッドヒートを繰り広げましたが、今週も同じく2週連続1位2位獲得となりました。

1位は先週と同じく竹内まりやの「Turnable」。CD販売数は2週連続1位、PCによるCD読取数で7位を獲得し、総合順位でも見事2週連続1位を獲得しました。一方、2位も先週から変わらず矢沢永吉「いつか、その日が来る日まで…」が2週連続で2位を獲得。こちらはCD販売数2位、PCによるCD読取数12位という結果になっています。

なお、オリコン週間アルバムランキングでは、先週、矢沢永吉が1位、竹内まりやが2位とHot100と逆の結果になりましたが、今週は順位が逆転し、竹内まりやが3万1千枚を売り上げて1位、矢沢永吉が2万5千枚を売り上げて2位という結果になっています。竹内まりや、矢沢永吉ともに1位獲得という実績が残る結果となっています。

3位はのベスト盤「5×20 All the BEST!! 1999-2019」が先週の4位から3位にアップ。2週ぶりのベスト3返り咲き。これで12週連続のベスト10ヒットとなりました。CD販売数3位、PCによるCD読取数は見事1位を獲得しています。

さて、初登場組の最高位は4位初登場の「SHADOWBRINGERS: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack」。タイトル通り、オンラインPRG「FINAL FANTASY XIV」のサントラ盤。CD販売数5位、ダウンロード数では見事1位を獲得し、総合順位でも4位にランクインです。ちなみに物理媒体はBlu-ray Discでのリリースとなっているので、通常のCDデッキだと再生できないようですので要注意。オリコンでは初動売上1万4千枚で4位初登場。同シリーズの前作「STORMBLOOD:FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack」の1万1千枚(6位)からアップしています。

5位初登場はマカロニえんぴつ「season」。これが初のベスト10ヒットとなる男性4人組ギターロックバンド。以前、一度ライブを見たことがあり、最近、いろいろと話題になっていることも知っていたのですが、正直言って、いきなりブレイクするとは思いませんでした。かなりビックリ。CD販売数4位、ダウンロード数54位、PCによるCD読取数40位。オリコンでも初動売上1万枚で5位初登場。前作「LiKE」の2千枚(32位)から大きくアップしています。

初登場組ラストは10位にロックバンド9mm Parabellum Bullet「DEEP BLUE」がランクイン。CD販売数は7位でしたが、ダウンロード数22位、PCによるCD読取数は62位に留まり、総合順位はギリギリ10位となりました。ちなみにこのアルバム、「9mmの日」と名付けられた9月9日(月)のリリース。オリコンでは2千枚を売り上げ、今週16位にランクインしていますが、先週付のチャートではフライング販売分3千枚が集計され18位にランクイン。2週合わせると5千枚で今週のランキングだと6位相当に。ただし、2週合わせても、前作「BABEL」の初動売上8千枚(10位)からはダウンという結果になっています。

一方今週は返り咲き組も。まずは米津玄師「BOOTLEG」。今週、シングル「馬と鹿」リリースに合わせてのランクアップで、先週の13位からアップして5月20日付チャート以来、18週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。また8位にはBUMP OF CHICKEN「aurora arc」が先週の17位からランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなっており、こちらも高い人気を示す結果となっています。

さらにもう1作。森口博子「GUMDAM SONG COVERS」が先週の12位からランクアップ。8月19日付チャート以来5週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。「水の星へ愛をこめて」や「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」など機動戦士ガンダム主題歌のヒットで歌手としての評価も高い彼女がガンダムの主題歌をカバーしたこのアルバム。予想以上の大ヒットを記録しており、森口博子の、というよりもガンダムの根強い人気を感じさせる結果となりました。

一方、ロングヒット組としてはRADWIMPS「天気の子」。今週は先週と変わらず6位をキープ。これで9週連続のベスト10入りを記録しています。CD販売数は14位までダウンしたのですが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数は2位を記録しており根強い人気を感じさせる結果に。まだまだヒットは続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年9月18日 (水)

嵐を下してまさかの1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まさかの1位獲得です。

今週は嵐のニューシングル「BRAVE」がリリース。当然、1位はこの曲か・・・と思いきや、なんと今週1位を獲得したのが米津玄師「馬と鹿」。先行配信でベスト10入りを続けていましたが、CDリリースにあわせてランクアップ。初の1位獲得となりました。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数、ラジオオンエア数、PCによるCD読取数で1位獲得。Twitterつぶやき数も4位、You Tube再生回数も2位にランクインしています。ちなみにオリコン週間アルバムランキングは初動売上41万2千枚で1位獲得。前作「Flamingo」の22万8千枚からも初動売上は大きくアップ。間違いなく、星野源と並んで、今、もっとも売上を稼ぐことのできるミュージシャンと言えるでしょう。

ちなみに米津玄師は今週も「Lemon」が先週と変わらず9位をキープ。さらに彼が作詞作曲プロデュースを手掛けるFoorin「パプリカ」も先週の12位から10位にアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。これで通算6週目のベスト10ヒットを記録しています。

そんな米津玄師に敗れて2位にとどまったのがのニューシングル「BRAVE」。日本テレビ系ラグビー2019イメージソング。CD販売数は1位。オリコンでも初動売上66万7千枚と前作「君のうた」の37万2千枚を大きく上回ったのですが、ネット配信系を一切行わないジャニーズ系の方針の影響もあり、ダウンロード数、ストリーミング数及びYou Tube再生回数はランク圏外。PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数は3位を獲得したもののラジオオンエア数は56位に留まり、総合順位は2位という結果になりました。

3位はOfficial髭男dism「Pretender」が今週も先週から変わらず3位をキープ。一方、「宿命」は5位から7位にダウンとなりました。ただし、相変わらずストリーミング数は1位2位のワンツーフィニッシュを維持。これで6週連続ストリーミング数の1位2位をこの2曲で占める結果となっています。両曲のヒットはまだまだ続きそうです。

続いて4位以下初登場曲です。まずは4位にテレビ朝日系オーディション番組「ラストアイドル」から登場した秋元康プロデュースによるアイドルグループラストアイドル「青春トレイン」がランクイン。CD販売数3位、Twitterつぶやき数で9位を獲得したものの、ダウンロード数96位、ラジオオンエア数52位、PCによるCD読取数18位に留まり、総合順位もこの位置に。歌い方といい曲の感じといい、AKB48の亜流の域を出ていないような。オリコンでは初動売上7万3千枚で3位初登場。前作「大人サバイバー」(1位)いから横ばい。

初登場はあと1曲。6位に韓国の男性アイドルグループSF9「RPM」がランクイン。CD販売数は4位でしたが、そのほかはTwitterつぶやき数が14位にランクインされたのみで他はすべて圏外という結果に。オリコンでは初動売上4万8千枚で4位初登場。前作「Now or Never」の4万5千枚(3位)からはアップしています。

続いてロングヒット組ですが、今週、あいみょん「マリーゴールド」は先週の6位から8位にダウン。ただ、ストリーミング数は先週から変わらず3位をキープ。まだまだ根強い人気を見せつけています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年9月17日 (火)

奇跡の再結成に合わせてリリースされたライブ盤

Title:LIVE ALBUM「感電の記憶」 2002.5.19 TOUR「NUM-HEAVYMETALLIC」日比谷野外大音楽堂
Musician:NUMBER GIRL

1999年にメジャーデビュー。2002年の解散までわずか4年の活動でしたが、圧倒的なバンドサウンドと楽曲の個性を持って、多くのミュージシャンたちに絶大な影響を与えたNUMBER GIRL。今年、奇跡の再結成を果たし大きな話題となりました。その再結成に際してリリースされたのが今回のライブアルバム。レコード会社の公式サイトによると、今回のライブアルバムについては公式サイトで次のように説明されています。

「今や伝説となっているNUMBER GIRL2002年の野音公演。LIVE TOUR 『NUM-HEAVYMETALLIC』の一環として行われたそのステージから、全20曲のセットリストをCD2枚に完全収録した、彼らの再結成を盛り上げるスペシャル盤です。」

私はデビュー当初からNUMBER GIRLのライブに何度か足を運んでいまして、これははっきりいってちょっとした自慢なのですが(笑)、今回のライブアルバムで収録されたライブ、その現場に居ました。以前、当サイトでも当日のライブレポートを掲載していましたが、旧サイトがなくなってしまったため、今回、参考までに再掲させていただきます。拙い文章で、一部MCなどの記載に間違いがありますが、リアルタイムでのレポートになるのでその当時の空気を感じていただければ幸いです。

NUMBER GIRL Live tour NUM-HEAVYMETALIC ライブレポート(再掲)

この日のライブが本当に伝説になっているのか、正直言うとちょっと微妙な感もあるのですが、実際、直後に書いたライブレポを読んでみると、ライブの内容としてはかなりすごい内容だったようにその当時も感じていた記載があります。ただ、このライブツアーの直後の9月に解散を発表したことからもわかるようにバンドの状態としてはこの時期、決して良いものではありませんでした。向井秀徳の事実上の自伝である「三栖一明」によると「ツアーの直後で中尾憲太郎が『ナンバーガールを辞めたい』という告白があり、それでナンバーガールは解散することになる」という記載がありますし、この日のライブの直後、6月22日の郡山でのライブの時、本編の演奏が不完全燃焼でアンコールで盛り返そうと思い、収まりが効かなくなった結果、一時間くらいアンコールを演ることになり、最後は田渕ひさ子嬢がピックを投げ捨てて帰ったというトラブルがあったそうで、本人も「アレが解散が決まった瞬間だったかもしれない」と語っています。

しかし、今回のライブアルバムを聴くと、CD音源を通じても、すごさを感じたというライブを見た直後の感想が間違いではないことを実感できます。ライブレポートにも1曲目「NUM-AMI-DABUTZ」のイントロが流れた瞬間に衝撃を感じた、という記載がありましたが、その衝撃はこのライブアルバムでも感じることが出来ると思います。

実際、このライブ音源を聴いても、バンドの演奏は非常にエッジが効いており、迫力を感じさせます。バンドの状況は最悪だったと思うのですが、それだからこそ逆にバンドの中に緊迫感が生じ、演奏に対する集中力が増したのかもしれません。「関東地方、曇のち酒」のような向井秀徳らしいユーモラスなMCが入るものの、全体的にMCは少な目。当時のライブではお約束だった「ドラムス、アヒト・イナザワ」からはじまるドラミングという掛け合い意外にメンバー間のやり取りもほとんどなく、その直後に解散している、という事実を知っているからかもしれませんが、バンドの中に流れる妙な空気感が、この日のステージの緊迫感を生み出す良い要因になっているように感じます。もっとも、翌月に郡山で生じた事件を考えると、このバンドの空気感は一歩間違言えると大きなマイナスになる可能性もある訳で、そういう意味ではこの日のバンドの演奏は解散寸前のバンドの空気が奇跡的にプラスに作用した、まさに稀有なステージだったと言えるかもしれません。

選曲的にはアルバム「NUM-HEAVYMETALLIC」のリリースツアーという位置づけでしたので、同アルバムからの楽曲がメインで、ベストな選曲ではありません。おそらく再結成に際してナンバガにはじめて触れるようなリスナーに対してリリースされたアルバムかもしれませんが、もしライブなどの事前予習として聴くにはラストライブの模様を収録した「サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態」の方がよいかもしれません。ただ、間違いなくNUMBER GIRLのライブバンドとしての凄みを感じられる作品となっており、この日のライブを音源としてリリースするという選択に対しては諸手を挙げて賛同したい、そんな傑作になっていました。今回の再結成を機に、リアルタイムでの彼らを知らない世代にも一気にNUMBER GIRLというバンドの名前が広がることになりましたが、はじめてナンバガを聴く人にも彼らのすごさを伝えるために是非とも聴いてほしい作品だと思います。またリアルタイムでナンバガを聴いていた世代にとってもあらためて彼らの実力を感じることが出来る傑作でした。

ちなみにNUMBER GIRLはオリジナルアルバム4枚のほかにライブアルバムがこの本作を含めて3枚リリースされています。オリジナルアルバム4枚もいずれも傑作ですが、初心者にはライブアルバムから聴くのがお勧めといわれるほどライブアルバムの評判が高いバンド。そんな彼らの傑作ライブアルバムがまた1枚加わったといって間違いありません。全ロックリスナー必聴の傑作です。

評価:★★★★★

NUMBER GIRL 過去の作品
School Girl Distortional Addict 15th Anniversary Edition
SAPPUKEI 15th Anniversary Edition
NUM-HEAVYMETALLIC 15th Anniversary Edition

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2019年9月16日 (月)

タイと日本の音楽が地続きに

Title:New Luk Thung
Musician:Juu&G.Jee

今回紹介するアルバムはタイのアンダーグラウンドシーンで絶大な支持を誇るラッパー、Juuとその弟子、G.JeeによるHIP HOPアルバム。日本ではその名前はほとんど知られていないのですが、彼らについて知ったのは本作の中に1曲、当サイトでも紹介したことあるラップクルー、stillichimiyaが参加した曲「ソムタム侍」があり、その曲のMVをYou Tubeで見たことがきっかけでした。

Mr.麿の怪演が強いインパクトを残す非常にユニークなMVなのですが、楽曲もとてもインパクトが残ります。エキゾチックなトラックがアジアンなテイストをむんむんと放出している一方、タイ語と日本語を境目なく行ったり来たりするラップも印象的。Mr.麿のボーカルによる歌の部分はどこか日本のムード歌謡のテイストがあり、日本とタイの音楽が全く同じまな板の上で調理されているようなそんな独特の楽曲になっており、一気に気になる存在となってしまいました。

今回、このアルバムのプロデュースを手掛けたのはstillichimiyaのDJ/プロデューサーでもあるYoung-G。タイの音楽に興味を持った彼は2016年から17年にかけてタイに移住。現地のミュージシャンたちとも交流を深める中で出会ったのがタイのカリスマ的ラッパーであるJuu。そんなつながりにより今回のアルバムリリースにつながりました。そのため本作にはstillichimiyaだけでなく、「深夜0時、僕は2回火を付ける」では鎮座DOPENESSと、同じくstillichimiyaのMMMがフューチャリングで参加しています。

本作のアルバムタイトル「New Luk Thung」の「Luk Thung」=ルークトゥンとは、タイの田舎の大衆音楽のこと。音楽的な形式が決まっているようなジャンルではないそうで、「タイの演歌」という紹介のされ方をすることが多いようですが、イメージとしてはむしろ「歌謡曲」に近いのかもしれません。そのためでしょうか、ある意味、あらゆるジャンルを貪欲的に吸収する歌謡曲と同様、このアルバムにも様々な音楽からの影響を見て取れます。

「深夜0時、僕は2回火を付ける」ではエキゾチックな雰囲気が立ち込めるB級色強いトラック。続く「かわいいキミ」ではG.Jeeとのデゥオとなり、軽快なナンバーに仕上がっています。「シーレイ 田舎でのんびり」ではタイトル通りのタイの田舎を彷彿とさせるエキゾチックさを感じるサウンドをゆっくりと聴かせる楽曲になっていますし、「ハナと僕の道」ではダークなサウンドにはトラップからの影響も?「Give Me The Way」ではAORの要素も感じられ、垢抜けたサウンドを聴かせてくれます。

そんなバラバラな作風でもアルバム全体として統一感もきちんと感じることが出来ます。もともとJuuの音楽はレゲエからの影響が強く、今回のアルバムでもその要素が要所要所に感じることが出来るのも統一感が出ている大きなポイントなのですが、またルークトゥンという音楽がこのアルバムの背景として一本筋を通してるからなのでしょう。

ただ一方で単純に「タイのエキゾチックな音楽」ということで終わらず、「ソムタム侍」にしてもそうですが歌詞の中でいきなり日本語が登場してくる曲があったりして、日本のポップスと地続きに感じられるのも本作の大きな特徴でしょう。もともとYoung-Gがタイの音楽に興味を持ったきっかけとして、彼が訪れたタイ東北部のイサーンの風景が彼の故郷、山梨と一緒だったことからだそうで、彼自身、今回の活動もstillichimiyaでやってきたことをアジアに広げただけ、と述べています。もともとタイの地方に日本の田舎と共通項があったのでしょうし、またタイの音楽を異質なものと捉えるのではなく、自らの音楽と共通するものがあると捉えているからこそ、日本とタイの音楽が地続きのようにつながっている今回のアルバムが誕生したのでしょう。その結果、エキゾチックでありつつも日本人にとってもどこか馴染みやすいという、独特なアルバムに仕上がっていました。

今回のYoung-GとJuuとのつながりは決して一時的なものではなく、今後もコンスタントに活動は続いていきそう。非常に独特でおもしろく、今後の活動にもかなり期待ができそうです。タイのHIP HOPといっても取っつきにくさはほとんどありません。stillichimiya好きはもちろん、そうでなくても幅広い方にお勧めできる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

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2019年9月15日 (日)

キュートなポップがより魅力的に

Title:LOLIPOP SIXTEEN
Musician:SOLEIL

現在16歳の女子高校生、それいゆを中心としたバンド、SOLEILのニューアルバム。それいゆの高校受験という非常に「らしい」理由により一時活動を休止したいたのですが、無事はれて高校に進学。ニューアルバムのリリースとなりました。とはいえ、前作「SOLEIL is Alright」からわずか10か月というスパンでのリリースなので、久しぶりという感じは全くないのですが・・・。

ちなみにSOLEIL、昨年も2枚のアルバムをリリースしており、この2年で3枚目というハイペースでの活動となります。ちょっとうがった見方をすると、SOLEILの活動はそれいゆのアイドル的なルックスに依る部分も大きいため、売れるうちに売っておこう、ということがあるのでしょうか?ちなみに今回のアルバムリリース後、ギターの中森泰弘が脱退。現在はそれいゆとサリー久保田の2人組のバンドとなってしまいました。

そんな彼女の3枚目となるアルバムはいままで2枚のアルバムに比べると、よりキュートなガールズポップというバンドの方向性が明確になっているように感じました。例えば1曲目を飾る「ファズる心」。ファズギターのレトロなサウンドが心地よいキュートなギターポップなのですが、歌詞も高校生の女の子らしい歌詞が印象的。同じくベルの音がキュートさを演出している「メロトロンガール」、モータウンビートで軽快なポップチューン「アナクロ少女」と続いていきます。どの曲も60年代のガールズポップを現代によみがえらせたようなキュートなギターポップチューン。それいゆのキュートなボーカルが見事に生かされたポップチューンとなっています。

そんな今回のアルバムの目玉のひとつが、中盤のカバー曲「ハイスクールララバイ」。フジテレビ系バラエティ番組「欽ドン!良い子悪い子普通の子」から誕生した1981年のヒット曲。原曲はテクノポップのナンバーなのですが、原曲の疾走感をそのままに見事ガレージポップにカバーしています。高校をテーマとした歌詞もそれいゆにピッタリですが、中ほどの登場するセリフもピッタリでかわいい(笑)。このアルバムのポップ路線をより強調するような選曲となっています。

その後もロックンロールなナンバーながらもキュートなメロが魅力的な「5-4-3-2-1」「それいゆのカノン」はタイトル通り、それいゆのかわいらしさを強調したような軽快なポップチューン。そしてタイトルチューンとなる「Lollipop Sixteen」も50年代のガールズポップそのままの可愛らしいポップに。最後はちょっと寂し気な夏休みの終わりを彷彿とさせるサマーポップなインストチューン「なつやすみ」で締めくくり。インスト曲をあえて入れてくるあたり、バンドとしての矜持を感じるラストとなりました。

いままでのSOLEIL同様、50年代、60年代あたりのオールドスタイルなギターポップを現代によみがえらせたようなサウンドを聴かせつつ、それいゆの可愛さを存分に生かしたアルバムに仕上げています。3枚目にしてある意味、このスタイルでは「完成形」とも思われるような出来栄えに仕上がっており、それだけに「やれるだけのことをやり切った」という中森泰弘の脱退理由がわからないでもありません。ただ一方ではそれいゆ自身はまだ16歳(!)。この手のオールドスタイルなガールズポップで、これだけ幅広いリスナー層に波及しそうな魅力を持ったバンドは珍しいだけに、まだまだこれからに期待できると思うんですけどね。あと、10代半ばの「子ども」をバンドとして活動させ、わずか3年程度で脱退というのは大人としてちょっと無責任な気がしないでもないのですが・・・。

そんな訳でSOLEILの魅力がしっかりとつまった傑作アルバム。これがひとつの「完成形」とはいえ、それいゆのキュートなボーカルでまだまだ魅力的なポップソングを楽しめそう。2人組となってしまいましたが、これからの活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★★

SOLEIL 過去の作品
My Name is SOLEIL
SOLEIL is Alright

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2019年9月14日 (土)

アコースティックなサウンドで派手さはないものの

Title:Emily Alone
Musician:Florist

Emily Spragueという女性ボーカリスト率いる男女4人組、ニューヨークはブルックリンを中心に活動を行っているポップバンドFlorist。本作はそんな彼女たちの3枚目となるアルバム。日本では残念ながらほとんどその名前を知られていないグループなのですが、アメリカでは徐々に注目を集めているグループのようで、本作もアメリカのWebメディアPitchforkの「Best New Music」に選ばれるなど高い評価を受けています。

「お花屋さん」というバンド名からイメージされる通り、楽曲はインディーバンドによくあるような先駆的、刺激的という雰囲気ではなくアコースティックなサウンドの暖かい雰囲気のポップが魅力的。サウンドとしてはほとんどアコギのアルペジオのみで構成されており、時折ピアノの音色が入ってくる程度。静かでフォーキーな雰囲気が大きな特徴となっています。

またボーカル、Emily Spragueの歌声も大きな魅力。「Time Is A Dark Feeling」のようなウィスパー気味の歌声で優しく歌い上げているのですが、アルバムのプロダクションとしてボーカルを前に押し出しているような構成になっており、ヘッドフォンで聴いていると彼女が優しく耳元で歌っているようなそんな感覚に陥ってきて、思わずうっとりと聴き惚れてしまいます。

メロディーラインも透き通るように美しいフレーズを聴かせてくれており、特に「I Also Have Eyes」などは切ない雰囲気のくるおしいようなフレーズを聴かせてくれます。ただ、全体的にはしんみりとして聴かせる曲が多いのですが、「Now」のようにメロディアスで明るさを持ったポップなどもあり、決して悲しいポップという印象は受けません。むしろ全体的にはフォーキーで爽やかという印象を受け、聴き終わった後もいい後味を残してくれるようなポップスとなっています。

また、単純にアコースティックなポップというだけではなく、例えば「Celebration」ではバックに鳥の鳴き声やストリングスを入れつつ、ポエトリーリーディングを聴かせるというほかとは異なるスタイルで、どこか幻想感を覚えるナンバーに。「M」などもバックに砂利道を歩く人の足音が入っており、リスナーのイメージを膨らませます。単なるアコースティックでフォーキーなポップを奏でるグループ、とは異なる楽曲の奥行を感じることができます。

もっともアルバム全体としてはとにかくメロディーラインの良さ、シンプルなサウンド、そしてボーカルEmilyの魅力的な歌声が合わさり、正直、全体的に地味さは否めないものの最後まで飽きることなく、最初から最後まで耳を離せない魅力を感じさせる傑作に仕上がっていました。派手さはないグループなだけに確かに日本ではなかなか注目が集まりにくいだろうなぁ・・・とは思うのですが、比較的多くのポップスリスナーが楽しめるアルバムだと思います。日本でももっと売れてもいいと思うんですけどね~。

評価:★★★★★

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2019年9月13日 (金)

待望のデビューアルバム

Title:The Big Day
Musician:Chance The Rapper

おそらく今年、最も注目を集めた「デビューアルバム」のひとつが本作でしょう。アメリカで高い人気を誇るラッパー、Chance The Rapperのデビューアルバム。もともと2012年にリリースしたミックステープ「10 Day」で注目を集めた彼。ただしどのレーベルにも所属せず、あくまでも無料配信でのミックステープという形態でリリースを続けます。さらに2016年にリリースしたミックステープ「Coloring Book」はApple Musicでのストリーミング配信のみという形態で関わらずビルボードチャートで8位にランクインするという快挙を達成。さらに音源を発売していないミュージシャンとしてははじめてグラミー賞を受賞するという快挙も達成。アメリカ、いや世界における音楽流通の形態を大きく変えるという快挙を達成しています。

そしてそんなミックステープのみをリリースしてきた彼がついにアルバム形態でリリースということで大きな話題となったのが本作。ただし、アルバム形態としてもストリーミング&ダウンロードのみでのリリースとなっているため、ストリーミングで聴く限りにおいてはいままでのミックステープとは感覚的に大きな違いはありません。ダウンロードにすると、今回は購入する必要があるため、いままで無料配信だったミックステープとは大きな違いが出てくるのですが・・・。

多彩なゲストが参加していることでも話題の今回のアルバム。そしてそれと同時に今回のアルバムの特徴として非常にメロディアスな歌が流れるポップな作品になっているという点でしょう。まずアルバムの冒頭に配された「All Day Long」はJohn Legendが伸びやかな歌声を聴かせてくれるも軽快で爽快さを感じる楽曲になっていますし、続く「Do You Rember」もちょっと懐かしさを感じさせるエレピの音色に切なさを感じる歌心ある作品に。同作にはDeath Cab For Cutieが参加し、こちらもしんみりとした歌を聴かせてくれています。

その後もタイトルチューンの「The Big Day」は注目のミュージシャンFrancis And The Lightsの切ない歌が印象に残るナンバー。歌とドラムの音色にはどこかノスタルジーを感じさせます。「Ballin Flossin」もShawn Mendesの爽快な歌声が耳に残る軽快なポップチューンに。全体的にちょっと切なさを感じさせるメロディーが目立つような、ポップな歌モノのアルバムとして仕上がっています。

サウンド的にも「Handsome」「Big Fish」のような、今時さを感じさせるトラップのサウンドを取り入れた楽曲も少なくないものの、全体的には決して今時といった印象はありません。そのリリース形態の先駆性とは異なり楽曲的にはむしろちょっと一昔前の雰囲気を感じさせるようなサウンドもチラホラ見受けられ、目新しさというよりも懐かしさを感じさせるような楽曲も。それがアルバム全体の聴きやすさにつながっているようにも感じました。

終盤も彼が美しいファルセット気味の歌声を聴かせて父親への感謝を歌い上げる「Town On The Hill」が強く印象に残ります。こちらもリズムトラックにはトラップの要素を取り入れるもののシンセの音色からは90年代あたりの雰囲気を感じ、ちょっとノスタルジックな雰囲気も。ラストを締めくくる「Zanies And Fools」もトライバルなリズムで軽快に聴かせつつ、ゴスペル風のコーラスをバックに爽やかでポップに仕上げた楽曲に。最後の最後までポップで聴きやすいアルバムとして仕上げていました。

ただ全体的にはちょっとノスタルジックな要素を感じるポップという共通項がありつつ、様々なゲストが参加した結果、アルバム全体としては統一感が薄く感じる作風に仕上がっています。そういう意味では今回、あえてアルバムという形態でのリリースとなったのですが、むしろプレイリスト、あるいはミックステープ的な作品になったようにも感じられました。そういう意味ではなぜ今回アルバムという形態でのリリースとしたのかは不明なのですが・・・ノスタルジックな雰囲気といい、透明なCDを掲げたジャケットといい、昔ながらのCDでのアルバムという形態への懐古があるのかもしれません。今のところCDでのリリースは不明のようですが、近いうちにCDでのリリースもあるかも?

そんな訳でポップな歌モノのアルバムのためHIP HOPをあまり聴かないような方でもアピールできるような作品になっていたと思います。ランキング的には惜しくも2位だったのですが、今年、最も話題の1枚であることには間違いありません。Chance The Rapperの魅力を存分に感じることが出来る傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Chance The Rapper 過去の作品
Coloring Book

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2019年9月12日 (木)

ベテラン勢同士のデッドヒート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は日本のポップスシーンを代表する2人のミュージシャンが1位を巡ってデッドヒートを繰り広げました。

結果、1位を獲得したのは竹内まりやの「Turnable」。デビュー40周年の企画盤で3枚組というボリュームの中でDisc1はベストアルバム「Expressions」におさまりきらなかった名曲を収録した「モア・ベスト」な1枚、Disc2はアルバム未収録のカップリング曲やレア音源などを集めた内容で、Disc3は彼女のカバー曲を集めた内容。CD販売数1位、PCによるCD読取数2位で総合順位で見事1位獲得となりました。

一方、2位初登場は矢沢永吉「いつか、その日が来る日まで」。こちらは前作「Last Song」から約7年ぶり。途中、ベスト盤やライブ盤のリリースがありましたが、オリジナルアルバムとしては久しぶりとなる新作となりました。CD販売数2位、PCによるCD読取数4位で、こちらは総合順位で2位に。

結果、2人のベテランミュージシャンのデッドヒートは竹内まりやに軍配が上がったのですが、オリコン週間アルバムランキングだと逆。矢沢永吉が初動売上11万1千枚で1位、竹内まりやが初動売上9万6千枚で2位という結果になっています。矢沢永吉は直近のベスト盤「LIVE HISTORY 2000-2015」の初動2万7千枚(5位)から大幅アップ。前作「Last Song」の5万4千枚(2位)から倍増という結果になっています・・・が、こちらおそらく初回盤が2種類リリースされており、ファンが2枚買った影響ではないでしょうか。前作から初動売上枚数がほぼ倍という点からもその線が濃厚な感じが・・・これ、矢沢永吉の売り方としてはあまりにもみっともないですよね・・・(苦笑)。竹内まりやは前作「TRAD」の初動11万8千枚(1位)からダウンとなっています。

3位初登場は一ノ瀬トキヤ(宮野真守)「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム一ノ瀬トキヤ『Target is you!』」。女性向け恋愛シミュレーションゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」のキャラクターによるタイトル通りのベストアルバム。CD販売数3位、PCによるCD読取数12位で総合順位もベスト3入り。オリコンでも初動売上3万3千枚で3位初登場。同シリーズの前作、四ノ宮那月(谷山紀章) 「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 四ノ宮那月『SUKI×SUKIはなまる! 』」の2万1千枚(5位)からアップしています。

続いては4位以下の初登場盤です。まずは5位。ヴィジュアル系バンドシド「承認欲求」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数43位で総合順位でも5位を獲得。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。前作「NOMAD」の1万6千枚(4位)からダウン。

7位初登場は竹原ピストル「It's My Life」。CD販売数6位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数50位で総合7位。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「GOOD LUCK TRACK」の初動1万枚(8位)からダウン。前作リリースの前に紅白に初出場し、一気に知名度を上げた彼。紅白後にリリースした前作の次のアルバムということで同行に注目されましたが、ビルボードで7位、オリコンで初動ダウンの7千枚で7位というちょっと微妙な結果に。

9位にはOAU「OAU」がランクイン。BRAHMANのメンバーが中心となって結成されたアコースティックバンドで、以前はOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDと名乗っていましたが、今年4月より略称であるOAUに名称を変更。本作は変更後、初となるアルバムとなります。CD販売数8位、ダウンロード数26位、PCによるCD読取数60位で総合順位では9位に。オリコンでは初動売上5千枚で10位初登場。前作「FOLLOW THE DREAM」の4千枚(22位)よりアップ。オリコンでのベスト10ヒットはこれが初となります。

最後10位には梶浦由記「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿-魔眼蒐集列車 Grace note- Original Soundtrack」がランクイン。テレビアニメ「ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-」のサントラ盤。CD販売数11位、PCによるCD読取数62位ながらもダウンロード数が9位にランクインし、総合順位でもベスト10入りを果たしました。オリコンでは初動売上4千枚で13位初登場。

次にロングヒット盤ですが、まずは先週1位を獲得した嵐「5×20 All the BEST!! 1999-2019」は今週は4位にダウン。ただし、PCによるCD読取数は今週も1位をキープしており、これで11週連続のランクイン。根強い人気を伺わせます。一方RADWIMPS「天気の子」は先週の5位から6位にダウン。ただしこちらもダウンロード数が先週の4位から1位にアップし3週ぶりに1位返り咲き。これで8週連続のベスト10入りとなり、こちらもまだまだロングヒットは続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年9月11日 (水)

ロングヒットが目立つチャート

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もまた、ロングヒットが目立つチャートとなりました。

そんな中、1位を獲得したのが乃木坂46「夜明けまで強がらなくてもいい」が先週の15位からCDリリースにあわせてランクアップし1位獲得となりました。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数1位、ダウンロード数9位、ストリーミング数17位、ラジオオンエア数4位。一昔前の雰囲気を漂わせる哀愁たっぷりのアイドル歌謡曲で、この手の王道路線が乃木坂らしさでしょうか。オリコン週間シングルランキングでは96万4千枚で1位獲得。前作「Sing out!」の100万4千枚(1位)からはダウン。

2位には米津玄師「馬と鹿」が先週の5位からランクアップして3週ぶりにベスト3返り咲き。ダウンロード数は4週連続で1位、ラジオオンエア数及びTwitterつぶやき数2位など相変わらずの強さを見せていますが、今週、MVがYou Tubeで解禁となりその影響でYou Tube再生回数で2位を獲得。今週のランクアップの大きな要因となっています。

ちなみに今週は「Lemon」も先週の10位から9位にアップ。今週も2曲同時ランクインとなっています。ただし、先週までベスト10入りしていた彼がプロデュースを手掛けた菅田将暉「まちがいさがし」は先週の9位から11位にダウン。Foorin「パプリカ」も7位から12位にダウンしています。

3位も同じくロングヒット組。Official髭男dism「Pretender」が先週の2位からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。「宿命」もベスト3からはダウンしたものの今週も5位をキープ。こちらも2曲同時ランクインとなりました。ちなみにストリーミング数は今週も1位2位をキープ。まだまだロングヒットは続きそうです。

続いては4位以下の初登場曲です。まず4位には刀剣男士formation of 三百年「鼓動」が初登場。ゲーム「刀剣乱舞」から派生したミュージカルの出演俳優によるシングル。CD販売数2位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数では23位にランクインしたものの、その他のチャートでは圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上8万4千枚で2位初登場。刀剣男士関連としては直近作は刀剣男士team幕末 with巴形薙刀「決戦の鬨」となり、同作の9万6千枚(2位)からダウンしています。

7位には鈴木愛理「Escape」が初登場でランクイン。元℃-ute、Buono!のメンバーとして活躍していた女性アイドルのソロデビュー作。ラテン風のEDMナンバーはちょっと前によく流行っていた感じの曲調。CD販売数は3位でしたが、ダウンロード数65位、ラジオオンエア数11位、PCによるCD読取数22位、Twitterつぶやき数33位にとどまり、総合順位でもこの位置に。オリコンでは初動売上3万5千枚を記録して3位初登場。

8位にはDivision All Stars「ヒプノシスマイク-Alternative Rap Battle-」がランクイン。男性声優によるラップ音楽をメインとしたプロジェクト「ヒプノシスマイク」の新曲で、12月配信予定のソーシャルゲーム「ヒプノシスマイク-Alternative Rap Battle-」の主題歌。この手の曲といては珍しく配信オンリーでのリリースとなっていますが、ダウンロード数3位、Twitterつぶやき数4位を記録し、見事ベスト10入り。ただしストリーミング数は50位、You Tube再生回数は20位に留まっています。良くも悪くも男性声優っぽい、いかにもアイドル然とした声色や若干ラップも拙い部分もあるのは気になりますが、意外なほど本格的なラップに仕上がっています。

初登場組最後は10位に手塚翔太「会いたいよ」が先週の47位からCDリリースに合わせてランクアップ。初のベスト10入りとなりました。本作は今、大きな話題となっているドラマ、日本テレビ系「あなたの番です-反撃編-」主題歌で、俳優の田中圭が劇中のキャラクターに扮して歌う曲となっています。CD販売数6位、ダウンロード数22位、ストリーミング数24位、ラジオオンエア数66位、PCによるCD読取数20位、Twitterつぶやき数31位、You Tube再生回数47位、カラオケ歌唱数92位といずれのチャートにも顔を出しているのが特徴的。もともと配信が先行しており、7月15日付チャートではダウンロード数で2位を記録するなど、ドラマの人気にあわせてヒットを記録しています。ドラマも話題となっていますし、ロングヒットを狙えそうな感もありますが、ただストリーミング数やYou Tube再生回数などの順位が思ったほど伸びていないので、これ以上のヒットはちょっと厳しいか?来週以降の動向にも注目できそうです。

さて、続いてロングヒット組。あいみょん「マリーゴールド」は先週から変わらず6位をキープ。一度はベスト10から陥落したこの曲ですが、再び徐々に順位を上げてきており、根強い人気を見せています。特にストリーミング数はここ数週、3位→4位→5位と徐々にダウンしてきましたが再び3位に返り咲いており、まだまだロングヒットが続きそうな予感がします。一方、先週8位にランクアップしたKing Gnu「白日」は残念ながら今週、13位にダウン。ただストリーミング数は5位と相変わらず上位をキープしており、4度目のベスト10返り咲きもあるか?

今週のHot100は以上。Hot Albumsはまた明日に!

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2019年9月10日 (火)

一挙6枚のEPがリリース

白人3人組という編成ながらもHIP HOPシーンに偉大な業績を残し、今なお多くのミュージシャンのリスペクトを受ける3人組ユニットBeastie Boys。2012年、メンバーのひとりMCAがわずか47歳という若さで癌により急逝し、その後、事実上の活動休止状態となっています。そんな彼らが1989年にリリースした2枚目のアルバムが「Paul's Boutique」。大ヒットしたデビュー作「Licensed to Ill 」から売上面では落ち込んでしまった2枚目ですが、音楽的には高い評価を受けている本作。今回、その「Paul's Boutique」リリース30周年を記念して、6枚のEPが順次配信リリースされました。今回はその6作を一挙に紹介!

Title:An Exciting Evening At Home With Shadrach, Meshach & Abednego
Musician:Beastie Boys

Title:Love American Style
Musician:Beastie Boys

まず第1弾としてリリースされたのがこの2枚。どちらももともとは1989年にリリースされたEP盤で、いずれもレコードのみのリリースのため、配信で聴くことができるというのはやはりファンにとってはうれしいニュースだったのではないでしょうか。楽曲はいずれもスカスカながら大きな音をたてるドラムのリズムとシャウト気味のボーカルが特徴的な、今となっては「いかにも」といった印象のオールドスクールの作品になっています。

ただ、今の耳で聴いても間違いなく楽しくワクワクさせられるようなナンバーが並んでおり、掛値なしに明るいスタイルの楽曲が耳を惹きます。特に「Paul's Boutique」にも収録されている「Shadrach」はロッキンなダイナミックも兼ね備えつつ、時々入るホーンの音色とドラムのリズムが非常にファンキーで楽しませてくれる作品に。ほかにもビースティーファンなら絶対に楽しめるポップなナンバーが並んでおり、文句なしに楽しめるEP盤でした。

評価:どちらも★★★★★

Title:Hey Ladies(Remixes)
Musician:Beastie Boys

で、第2弾としてリリースされた1作目のEPが「Hey Ladies」のリミックス盤。5曲入りなのですが、それぞれが個性的なリミックスが楽しい感じ。よりファンキーにまとめたPaul Nice RemixやメロウながらもどこかコミカルなCount Base D Remixなどが特に耳に残った印象。またループするサウンドが心地よいFred C Remixも印象に残ります。全体的には80年代的なにおいを残しつつ、「Hey Ladies」をリミキサーそれぞれの切り口で再構築した、5曲5様の楽しいリミックスでした。

評価:★★★★★

Title:Shadrach(Remixes)
Musician:Beastie Boys

こちらも5曲入りのリミックスアルバム。リミキサーそれぞれの個性が強く出ていた「Hey Ladies」のリミックスに比べると、全体的にサウンドが抑え気味の構成になっており、シャウト気味でパワフルなビースティーズのラップがただ目立つようなリミックスになっていたように感じます。それはそれで、もちろんビースティーズのラップをよく生かしたリミックスと言えるのかもしれませんが・・・。

評価:★★★★

そして第3弾として配信されたのがまず・・・

Title:Shake Your Rump(Remixes)
Musician:Beastie Boys

収録曲は3曲のみで、「EP」というよりも「シングル」という感じかもしれません。ただ、2曲目のLatch Brothers Remixがとてもユニークで楽しいリミックス。タブラのリズムでエキゾチックにスタートしたかと思えば、様々な音をサンプリングした賑やかで、でもどこか異国情緒を感じさせるトラックがとても楽しい感じ。今回のリミックスの中では一番聴いてみて楽しかったかも。ちょっと3曲のみというのは物足りなさもありましたが・・・。

評価:★★★★

Title:Looking Down The Barrel Of A Gun (Remixes)
Musician:Beastie Boys

で、ラストを飾るのが4曲入りとなった本作。ビートを前が押し出したリミックスになっています。ただ、そんな中でもメロウさを押し出したDub Hackers Remixや逆にダイナミズムを前に押し出したOD Remix、もの悲し気にまとめたDJ Moe Love Remixなどバリエーションあるリミックスに仕上がっていました。

評価:★★★★

そんな訳で一挙6作配信リリースされた今回のEP盤。残念ながらおそらくBeastie Boysとしての新譜はもうリリースされることはないでしょうから、こういう形でのリリースはうれしい話です。彼らがあらためて魅力的なグループだったんだな、とも感じられる作品でした。

Beastie Boys 過去の作品
HOT SAUCE COMMITTEE PART 2

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2019年9月 9日 (月)

あいちトリエンナーレの企画へ、再び

あいちトリエンナーレ2019 Chilla: 40 Days Drumming&円頓寺デイリーライブ

U-zhaan/奇妙礼太郎

会場 なごのアジール/円頓寺駐車場 日時 2019年9月6日(金)

以前も足を運び、ここでレポートを紹介したあいちトリエンナーレの企画、Chilla: 40 Days Drummingと円頓寺デイリーライブ。U-zhaanのChilla:40 Days Drummingにもまた足を運びたいと思っていたのですが、デイリーライブもまた、奇妙礼太郎のライブにも興味があったので、また足を運んできました。

Uzhaan_aichi3

まずはU-zhaanのChilla:40 Days Drummingを見るために、再び、円頓寺商店街をちょっとはずれた所にあるなごのアジールへ。以前、足を運んだ時は、中で見ている人は数人で余裕をもって楽しむことが出来たのですが、この日行ってみるとビックリ。18時15分頃に着いたのですが、会場はほぼ満員で、まるでライブハウスのよう。この企画、あいちトリエンナーレの閉幕に先駆け、9月9日(月)で終了。さらに最終日の9月9日は非公開ということもあり、平日の夜ではこの日が最終日。そういう意味で詰めかけた方も多いのかもしれません。

Uzhaan_aichi4

そんな中、一心不乱にタブラの演奏に取り組んでいるU-zhaan。以前と同じようにiphoneに(おそらく)シタールの音色を取り込んで、その音色をバックにタブラを演奏するスタイルで演奏に取り組んでいました。40日のタブラ修行の終盤ということもあって、以前に来た時と比べて明らかに疲れている様子が・・・。ただ、タブラの演奏自体は衰えを感じさせないどころか、以前に比べて、より最小限にムダのない動きをしてエッジの効いた音になったような印象すら感じました。40日の修行でその演奏に凄みが増した・・・というのは、言い過ぎのせいでしょうか?

10分程度演奏をした後、休憩に。写真はその時に撮ったものです。電飾がついていて「あれ?周りのモニュメント的なものが増えたんじゃないか?」と思ったのですが、8月22日に行った時の写真を見ると、この電飾、その時もありましたね。その時はただ電気がついていなかっただけでした・・・。ちなみに休憩の時にいきなり横の扉からU-zhaan本人が登場してビックリ。思わず凝視してしまいました・・・すいません。客席に知り合いがいたみたいで、その方とちょっとお話をされ、練習場に戻ったかと思うと、敷物を持ってきて、「ここに座るといいよ」とわざわざ敷物を敷いてくれていました。かなりお疲れのご様子でしたが、やさしい方なんですね♡

休憩は10分弱程度で再び練習がスタート。今後はiphoneからの演奏抜きでタブラのみでの演奏に。かなりハイテンポでアグレッシブな演奏が続きます。あらためてタブラのみで演奏をじっと聴いてみると、わずか2つの太鼓にも関わらず、実に多種多様な音が飛び出していることにあらためて気が付かされます。それを自由にあやつり、単なるリズムではなくタブラが歌っているような演奏を聴かせてくれるU-zhaan。あらためて彼の実力を強く感じました。

で、30分程度U-zhaanの演奏を聴き入った後、後ろ髪を引かれる思いでなごのアジールを後にします。続いては19時からのデイリーライブ。奇妙礼太郎のステージなのですが、この日は会場の駐車場からはみ出るほどの観客スペースが設けられて人もギッシリ。奇妙礼太郎って、こんなに人気だったんだ・・・と正直なところ、ちょっと驚きました。

Kimyo_endoji

スタート時間の19時をちょっとだけまわったところでこの日は奇妙礼太郎1人のみがアコギをかかえて登場。最初はそのインパクトあるタイトル&メロディーもあって、彼の代表曲ともなっている「エロい関係」からスタート。公道のすぐ横にあるステージでこの歌を聴けるとは(笑)。さらにサビの「エロい関係」の部分を観客に歌わせるなど、のっけから盛り上がるステージとなりました。

さらにこの歌の最中に蚊にさされたそうで「蚊に刺された~♪」と即興で「蚊に刺された歌」を作って会場を笑わせます。その後、「ダンスミュージック」「君はセクシー」「Nobody Knows」とAORやフォークの色合いの強い、メロウでどこかセクシーさも感じさせる楽曲を聴かせてくれます。奇妙礼太郎は1枚、アルバムを聴いたことがあるのですが、この日のステージはそのアコギ1本でしんみり聴かせる歌声に非常に惹かれる内容に。色っぽいメロディーラインも実に魅力的で、アルバムではそこまでインパクトに残らなかったのですが、ライブではその素晴らしい曲にすっかり魅了されてしまいました。

その後は一度椅子に座って「汚れた天使」という曲を。しんみりとフォーキーに聴かせるのですが、この曲がまたエロい歌詞が印象的。ただ、一方では人間の内面をそのままあらわしたような歌詞が印象的で、そういう歌詞の世界も彼の大きな魅力ということに気が付かされます。さらに「年号が変わった時に作った曲」ということで「礼はいらない」という曲を。曲のスタートがいきなり「れいわ、いらない」からスタートしており、「なるほど・・・」と思ってしまいました(笑)(歌詞の内容は年号の令和とは一切関係ないんですけどね)。さらにその後は松田聖子の「赤いスイートピー」のカバー。これがアコギ1本で叙情感たっぷりに歌を聴かせるカバーになっており、その歌声にゾクゾク来てしまうようなステージでした。

そして椅子から立ち上がりアコギをかき鳴らしながらいきなりスピーカーが置いてある台の上で。「Johnny B. Goode」のギターのイントロを聴かせたかと思えば、なぜかスタートしたのは「お富さん」(笑)で、観客をあおります。その後はカバー曲。尾崎豊の「ダンスホール」、TOMATOSの「Rock Your Baby」、さらには西岡恭蔵の「プカプカ」と、前に歌った「赤いスイートピー」もそうですが、多種多様なカバーの選曲も魅力的。これをまたアコギ1本で、かつ感情たっぷりに歌い上げ、実に魅力的なカバーに仕上げており、そのボーカリストとしての実力も存分に感じさせてくれます。さらに最後は友人が作ったという「しらん節」という曲で締めくくり。最後は観客に「愛してるよ!」と叫ばせ、「5、4、3、2、1、8時!!」とカウントダウンをして8時ピッタリに終了。ほぼピッタリ1時間のステージでした。ちなみにアンコールはなし。回りに民家もある公共の場ですし、会場で音を出していいのが8時までなんでしょうね。

そんな訳ではじめて見た奇妙礼太郎のステージだったのですが、これが実に素晴らしい内容でした。AORとフォークの要素を取り入れたアコギ1本のステージは感情たっぷりながらもどこかエロさも感じさせる雰囲気が魅力的。メロディーにもインパクトがあり、彼がこんなに素晴らしいミュージシャンだったんだ、ということを今回のライブで気が付かされました。ちなみに曲の途中でいきなり「しゃちほこ~♪」「ういろう~♪」なんてフレーズを入れてきたり、いろいろな部分でユーモアの要素を詰め込んでおり、そういう点でもとても楽しいステージに。とても素晴らしいステージで、また是非足を運びたい、そう感じさせるライブでした。

満足度たっぷりで会場を後にしたデイリーライブ。1時間ピッタリのステージでこれが無料というのは実にお得感満載。これが2度目なのですが、今後も魅力的なステージが続くようですので、また是非足を運んでみたいです!U-zhaanともども、満足度の高い企画でした。

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2019年9月 8日 (日)

予想以上にロックでカッコイイステージ

ベッド・イン TOUR 2019「男女6人秋物語」

日時 2019年9月5日(木)19:00~ 会場 名古屋JAMMIN'

 「日本に再びバブルの嵐を起こすべく、80年代末〜90年代初頭へのリスペクト精神により完全セルフプロデュースで活動中。」の自称地下セクシーアイドルグループ、ベッド・イン。バブル期の日本の空気感をそのまま取り入れた楽曲が大きな話題となっている2人組ユニットなのですが、以前から一度ライブにも足を運んでみたく、ようやくはじめてのライブに足を運ぶことが出来ました。会場は名古屋伏見のJAMMIN'。今回、はじめて足を運んだライブハウスです。比較的新しい箱のため、中はとてもきれいな感じ。キャパは300人程度。この日の客の入りは2/3程度でちょっと寂しいかな、といった印象。ただ見る分には余裕をもって見ることができたのでよかったのですが・・・。ただ客層が、これは完全に予想していたのですが、アラフォー世代以上がほとんど。ベッド・インの「ネタ」がわかるのって、40歳以上ですからね~。もちろん、もうちょっと若い世代もいたのですが、客層的には予想通りといった感じでした。

19時を5分程度過ぎたところで会場が暗くなります。まずはサポートメンバーの4人が出てきて、そしておもむろにベッド・インの2人が登場。まずは「CO・CO・ROグラデーション」からスタート。原曲と比べてロック度が増したパワフルなアレンジとボーカルとなっており、会場を沸かせます。さらにWinkのカバー「Sexy Music」に「GO TO HELL・・・!」と続き、序盤からいきなりヒートアップしてきます。

そしてMCなのですが、これがバブル期から90年代の流行語をちりばめつつ、下ネタ満載のかなりどぎついMC(笑)。2人ともそのキャラクターから一歩も出ずに、まさに「バブル期のセクシーアイドル」という様相を貫きとおしたMC。下ネタの連続に子持ちアラフォーでもちょっとドギマギしてしまったのですが(笑)、非常によく考えられているトークにある意味、感心してしまいました。

Bedinn1 

そんな下ネタ満載のMCとは裏腹に、「あゝ無情」「ZIG ZAGハートブレイク」とロックなナンバーが続くのですが、これがとにかくカッコいい!もともとロックバンド出身の2人だけにロック路線の方がある意味「本職」。ジャンル的にはこちらも80年代のハードロックといった感じなのですが、特に「ZIG ZAGハートブレイク」では中尊寺まいが思いっきりギターをかき鳴らすのですが、そのプレイスタイルに魅入ってしまいました。ディスコチューンの「真夜中のディスタンス」で会場全体を踊らせた後、ベッド・インの2人は会場を去ります。

↓ ちなみにバブル期アイテムの象徴的なジュリ扇がお決まりのアイテムで、この日は思いっきりジュリ扇が会場で舞っていました。

Bedinn2

で、サポートメンバーだけ残ったかと思えば、いきなりサポートメンバーの一人、舐める派JAPANのMCとなりました。なるほど、ベッド・インの2人はあのキャラがあるから、もっとフランクリーなMCはサポートメンバーが担当する訳か・・・。で、なんとサポートメンバーのみで1曲、BOOWYの「B.BLUE」を披露。これがカッコいい+懐かしいカバーでアラフォー世代にはうれしい1曲でした。

さらにメンバーが登場するかと思えば、懐かしの「アメリカ横断ウルトラクイズ」で使われたアメリカの国旗をかたどった帽子をかぶったおじさんが登場。彼が司会者となり、ベッド・インの2人とサポートメンバー4人が2組にわかれてゲームで競うという「お楽しみコーナー」がスタートとなりました。「お楽しみコーナー」では最初は哺乳瓶による牛乳早飲み対決、次に指定されたキャラクターの絵をお手本なしで書いて、より似ている方が勝ちというお絵かき対決、さらに最後はベッド・インの2人により、身体につけた万歩計の歩数をいかに多くカウントさせるかという対決。結果、中尊寺まいチープが完勝。益子寺かおりチームの3人はゴムパッチンの罰ゲームを受けていました。

そんなバラエティー番組のような展開が続いた後に後半戦がスタート。後半戦もいきなり飛ばしていきます。懐かしいカバー曲「SHOW ME」からスタートしたかと思えば、「消えちゃうパープルバタフライ」「女豹-PANTHER-」「♂×♀×ポーカーゲーム」さらには「劇場の恋」と盛り上がるナンバーが連続。最初は後ろでおとなしく見ていた私も、徐々に盛り上がり、みんなと一緒に手を振り上げて盛り上がりはじめました。さらにここで、大きなフラフープのような輪っかにカーテンをぶら下げた装置が登場。懐かしのテレビ番組「スーパージョッキー」(もう名前すら半分忘れていた・・・)の「生着替え」コーナーとなり、ベッド・インの2人はここでお着換え。で、2人ともセクシーなビキニ姿で登場し、会場を沸かせます。

終盤は「GOLDの快感」「SEXY HERO」と来て、この日、最高のテンションとなった「C調び~なす」そしてラストは「ジュリ扇ハレルヤ」でジュリ扇がこの日一番、激しく会場で舞います。この日最高のテンションの中、本編は終了。メンバーは一度、会場を去ります。

もちろんその後は大きなアンコールならぬ「マンコール」へ。「マンコール」ではメンバー全員、この日のツアーTシャツを着て登場。「Kiss Me Kiss Me」、そして久宝留理子の大ヒット曲「『男』」のカバー。もともとハイテンポなロックチューンのこの曲ですが、この日もゴリゴリのロックアレンジで披露。特にこちらも中尊寺まいがTシャツ姿でギターを弾く姿がとてもロックで様になっており、カッコよさを感じました。そしてラストはこれまたロックなナンバー「男はあいつだけじゃない」で終了。その後、客席を含んで写真撮影が行われ、全編約2時間半。ボリューム満点のライブが幕を下ろしました。

そんな訳ではじめて足を運んだベッド・インの「おギグ」。一言、楽しかった~~~!予想以上に楽しめたステージ。ベッド・インの2人は最初から最後までバブル期のセクシーアイドルというスタイルを崩さず、MCでもバブル期から90年代の流行語を散りばめ、よくよく考えられたトークもとても楽しめました。

ただそれ以上に満足感があったのが、彼女たちの演奏。もともとロックバンド出身の2人なだけに、予想以上に本格的なロックのステージに。楽曲も原曲以上にバンドサウンドを前に押し出したアレンジになっており、MCでは「セクシーアイドル」になる2人ですが、演奏中は間違いなく「ロックバンド」としての(サポート入れて)6人の姿がありました。特にステージ上ではパワフルに歌う益子寺かおりとギターを弾きまくる中尊寺まいの姿の中には間違いなくロックミュージシャンとしての「顔」を何度も覗かせていました。

「地下セクシーアイドル」としてもユニークなMCやパフォーマンスでとても楽しめますし、その一方でロックバンドとしての実力も感じさせますし、予想以上に楽しめてはまってしまったステージでした。以前からおもしろいユニットと思っていたのですが、音楽的な実力も十分に感じられるステージ。正直、もうちょっと売れてもいいユニットだと思うんだけどなぁ。予想以上に楽しめた「おギグ」で満足して会場を去ることが出来ました。これはまた行きたいなぁ!近いうちにまた足を運びたいです。

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2019年9月 7日 (土)

アフリカ音楽の歴史を探るコンピ第2弾

Title:Early Congo Music 1946-1962:First Rumba,To The Real Rumba

以前、当サイトでアメリカ初のポピュラーミュージックと言われるパームワインの1930年代から60年代の貴重なSPを収録したコンピレーションアルバム「PALMWINE MUSIC OF GHANA」を紹介しました。今回はその第2弾ともいえるアルバム。同作を監修・選曲した音楽評論家の深沢美樹氏選曲・監修によるコンピレーションアルバムで、「ルンバ」と呼ばれるコンゴのポピュラーミュージックのうち1946年から1962年のSP音源を収録したコンピレーションとなっています。

この1946年から62年にかけて「ルンバ」という音楽スタイルが確立していったそうで、本作はそのスタイルが確立していく過程を追ったコンピレーションアルバムとなっています。まさにサブタイトルである「最初のルンバから真のルンバへ」というのがこのアルバムのキーフレーズ。「最初のルンバ」というのは「ルンバ」の音楽スタイルが確立していない40年代あたり、単なる「カッコいい音楽」的な意味で「ルンバ」という呼称が使われていたとか。それが徐々に「ルンバ」という音楽のスタイルを確立していく過程がこのアルバムで体感することが出来ます。

実際、このコンピレーションを聴いて強く感じるのがこの16年間におけるコンゴの音楽の大きな進歩でした。アルバムは「ルンバ」と記載されたコンゴ・ポピュラーミュージック史上最初のレコード、Orchestre Odeon-Kinoisというバンドの「Fatouma」「Jeanne」という曲からスタートするのですが、正直、素人の吹奏楽団レベルのイメージのちょっとチグハグさを感じる曲。独特なテンションを感じるリズム感に独自性は感じるのですが、音楽的スタイルも確立していませんし、全体的に未熟さを強く感じます。

Disc1はまさにそんな「ルンバ」が音楽的に確立される前の「最初のルンバ」を集めたもの。楽曲的には確かにスタイルは確立されておらず、トライバルな色合いが濃い曲や、冒頭でも書いたパームワインからの影響も濃い曲などが並びます。もちろん、後の「真のルンバ」につながるようなラテンテイストの強い曲も。全体的には「ルンバ」といっても統一感が薄く、音楽的にも未熟さが残る感があるのですが、ただ個人的にはこの未熟さが楽曲の勢いにもつながっており、Disc1の収録曲は結構気に入っています。

一方、Disc2になると、まさに「真のルンバ」として音楽的に確立した後の曲。ラテンらしいリズムパターンも確立し、演奏も洗練されてきています。Moujos executee par L'Orchestre O.K.Jazzというグループの「Yo Te Ilma Moucho」はキューバンな雰囲気もかなり強く、一般的な「ルンバ」のイメージにも近い印象もあります。

ただその反面、どこか感じるアフリカらしい独特のリズム感が大きな魅力に感じるのもDisc2の曲で、Henri Bowane na bana Loningisaの「Yo Kolo Ye Kele」はメロディーやギターの演奏こそメロウで洗練されているのですが、手拍子のリズムやコール&レスポンスのコーラスにトライバルな部分を強く感じさせる曲となっています。

Disc2の最後の60年代あたりの演奏となるとさらに演奏も洗練。録音状況がよくなったという部分も大きいのですが、Disc1の最初から聴くと、隔日の感があります。ある意味、「たった16年」なのですが、その間の大きな進歩には驚かされました。

ちなみに本作のもうひとつ大きな目玉が41ページにもわたる深沢美樹氏による楽曲解説。「ルンバ」成立に至る過程がかなり綿密に記載されており、このコンピレーションのガイドブックとして、解説片手に音楽を聴き進めると、よりコンゴの音楽を深く知ることが出来ます。まさに力作ともいえるブックレットで、ストリーミングがメインとなりつつある最近の音楽シーンの中で、このような分厚い解説の存在こそ、フィジカルが今後も力を持ち続ける道のように感じます。ただ一方、こちらの解説、固有名詞が多く、正直なところ若干わかりづらい部分も・・・。また、「ルンバ」というと一般的にはキューバの音楽をイメージするのですが、その「ルンバ」とコンゴの「ルンバ」との関係性なども知りたかったような・・・。

そんな訳で、実に聴きごたえのあるコンピレーションアルバムだった本作。ちょっとマニアックな感がなきにしもあらずなのですが、その点を差し引いても、純粋にアフリカの音楽的魅力を存分に味わえることの出来る作品でした。

評価:★★★★★

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2019年9月 6日 (金)

伝説のバンドのラストギグ

1980年代の日本のロックシーンにおいて一世を風靡し、伝説のバンドとして今なお絶大な人気を維持しているロックバンド、BOOWY。そんな彼らの事実上、ラストライブとなった1988年4月4日、5日の東京ドームでのライブの模様を収録したライブアルバムがリリースされました。

Title:LAST GIGS -1988.04.04-
Musician:BOOWY

Title:LAST GIGS -1988.04.05-
Musician:BOOWY

もちろん、この公演を収録したライブ盤のリリースは今回がはじめてではありません。そもそも公演から約1ヶ月後の1988年5月3日には「LAST GIGS」としてリリース。ミリオンセールスの大ヒットを記録しています。ただしこの時は4月5日の公演のうちわずか12曲のみを収録という、かなりの出し惜しみのあったアルバムになっていました。その後、何度かのリマスターを行ったのですが、2008年には「"LAST GIGS"COMPLETE」としてリリース。ただし本作も4月5日の公演のみを収録し、一部、4月4日の公演を混ぜてくるなど、必ずしも「COMPLETE」と言えるような内容ではありませんでした。

今回、ようやく4月4日と5日の公演の全てがCD化。全4枚のCDとしてリリースとなりました。特に4月4日の公演の音源は、今回ほぼ初登場ということもあり、大きな話題となっています。さて、そんなBOOWYの話題のライブ音源。BOOWYといえば、いわば日本のビートロックを誕生させ、その後のJ-POPに大きな影響を残したバンド。ロックというジャンルを歌謡曲にもっともうまい形で融合させたバンドというイメージが個人的には強く持っているのですが、ライブ音源を聴くと純粋にロックバンドとしてのカッコよさを強く感じます。

特に今回、4月4日と5日の音源を比較すると4日の音源の方がロックバンドとしての迫力を感じ、勢いも感じます。5日の音源はサビを観客に歌わせる部分も多く、4日で力を若干使い果たしてしまった部分もあるかな?とすら感じるほど。BOOWYとしての最後の日ということで、いままで5日の音源が主に使われてきたのでしょうが、4日の方がロックバンドBOOWYとしての本質を感じることが出来るように思います。

また、もう30年以上前のライブ音源なのですが、全く古さを感じさせない点も驚かされます。80年代といえば、猫も杓子もシンセを取り入れて、今となってはそのシンセの音がとてもチープに感じられ、それが良くも悪くも時代性を感じさせるのですが、彼らのサウンドはあくまでも4人のストイックなロックバンドとしての演奏に終始。そのため、今聴いても古さを感じさせません。

ただ一方でそれは必ずしもポジティブな側面だけではなく、逆に言えばこの30年間、彼らのスタイルから日本のロックがほとんど進歩していない、という証拠でもあったりするのですが・・・もちろん30年前にこういうスタイルを確立したBOOWYのすごさではあるとは思うのですが、いまだにBOOWYの縮小再生産のようなバンドが時々出てくるような現状を考えると、そろそろこの音が古く感じるような大きな地殻変動が日本の音楽シーンにも起きて欲しいのですが、と思ったりもしてしまいます。

ちなみに今回のライブ音源でもオリジナルに比べると若干の修正が入っているとか。そういう意味では今後、さらに修正が入って、「Ultimate」みたいなタイトルを付けた完全版がリリースされる可能性も??まだまだこの手の小出しのBOOWY商法は続いていきそうですが、それだけ人気を維持しているということなのでしょう。まだまだBOOWY人気は続きそうです。

評価:どちらも★★★★★

BOOWY 過去の作品
BOOWY THE BEST "STORY"

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2019年9月 5日 (木)

見事2週連続

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事2週連続の1位獲得です。

先週、1位に返り咲いたのオールタイムベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」が今週も引き続き、見事2週連続の1位獲得となりました。CD販売数及びPCによるCD読取数で共に1位獲得しています。

2位はヨルシカ「エルマ」が初登場でランクイン。ボーカロイドを使った楽曲配信で人気を集めた、いわゆるボカロPのn-bunaが女性ボーカリストのsuisと組んで結成したユニット。CD販売数3位、PCによるCD読取数は4位でしたがダウンロード数で1位を獲得。総合順位でも2位となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上3万5千枚で3位初登場。前作「だから僕は音楽を辞めた」の2万枚(5位)からアップしています。

3位には韓国の男性アイドルグループSHINeeのテミンによるソロアルバム「FAMOUS」。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数39位、PCによるCD読取数29位と振るわず、総合順位ではこの位置に。先行配信が行われたため8月12日で初登場8位を獲得し、今回はCDリリースにあわせてのベスト10返り咲きとなりました。オリコンでは初動売上5万枚で本作が1位獲得。日本盤としては前作となる「TAEMIN」の初動6万3千枚(2位)よりダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。まずは4位にロックバンドTHE ORAL CIGARETTESの初となるベストアルバム「Before It's Too Late」がランクインしています。メンバー選曲による2枚組のアルバム。CD販売数4位、ダウンロード数20位、PCによるCD読取数16位。オリコンでは初動売上1万9千枚で5位初登場。直近のオリジナルアルバム「Kisses and Kills」の2万5千枚(1位)よりダウン。ベスト盤の売上がオリジナルを下回るというのは固定ファン層が多いアイドル系ではよくある話。ただ、彼らのような勢いのあるロックバンドでこの傾向がみられるということは、固定ファン以外への人気や知名度の波及が低いということで、今後の彼らの人気がどうなっていくのか、ちょっと気になります。

7位は関西出身の男性アイドルグループDREAM MAKER「WE ARE DREAM MAKER 2」がランクイン。正直、グループ名もアルバムタイトルも少々「やっつけ」感のある印象が・・・。CD販売数は5位だったものの、それ以外がすべてランク圏外で総合順位ではこの位置に。オリコンでは初動売上1万2千枚で6位初登場。前作「WE ARE DREAM MAKER」の1万4千枚(7位)から若干のダウン。

8位にはロックバンドcoldrain「THE SIDE EFFECTS」が初登場。CD販売数8位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数30位。オリコンでは初動売上8千枚で10位初登場。前作「FATELESS」の1万枚(8位)よりダウン。前々作「VENA」も初動売上8千枚であり、配信もあるので一概に言えない部分もあるのですが、人気上昇中ながらもいまひとつ伸び悩んでいる印象も。

9位初登場は韓国のアイドルグループSUPERNOVA「PAPARAZZI」。以前、「超新星」と名乗っていたグループが昨年、SUPERNOVAに改名。本作は改名後初となるアルバムです。メンバーの徴兵の関係で、グループとしては約4年ぶり、久々のアルバムとなりました。CD販売数は6位だったもののダウンロード数36位、PCによるCD読取数圏外で、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上9千枚で8位初登場。前作「7IRO」の2万6千枚(3位)から大幅減。さすがに4年間のスパンは大きかった模様。

初登場最後、10位にはこちらも韓国のアイドルグループX1「飛翔:Quantum Leap」がランクイン。韓国のテレビ番組「PRODUCE X 101」によって選ばれたメンバーにより結成されたグループで、本作はデビュー作となります。輸入盤のためHot AlbumsではCD販売数はランク対象外となり、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数56位で総合順位ではベスト10入り。オリコンでは輸入盤の売上が計上されるため、2万9千枚を売り上げ、4位初登場となっています。

続いて、ロングヒット組はRADWIMPS「天気の子」が先週の4位からワンランクダウンの5位にランクイン。CD販売数は13位でしたが、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数2位と上位にランクインし、総合順位でもベスト10入りを継続しています。一方でBUMP OF CHICKEN「aurora arc」は今週14位にダウン。残念ながらベスト10ヒットは7週で終了しました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年9月 4日 (水)

ロングヒットが目立つ中、ジャニーズ系が1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は初登場が少なめのチャート。ただそんな中、1位を獲得したのはジャニーズ系でした。

今週1位初登場はジャニーズ系アイドルグループKing&Prince「koi-wazurai」。メンバーである平野紫耀の主演映画「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」主題歌。軽快なラブソングが良くも悪くも王道なアイドルポップといった感じに。CD販売数及びPCによるCD読取り数1位、Twitterつぶやき数2位、ラジオオンエア数8位を獲得。アイドル系としては比較的、ラジオオンエア数が高いチャートとなっています。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上39万8千枚で1位獲得。前作「君を待ってる」の39万1千枚(1位)からアップ。

そして今週も2位3位にヒゲダンことOfficial髭男dism「Pretender」「宿命」がそれぞれ2位、3位に並びました。ちなみにストリーミング数は今週もそれぞれ1位、2位を獲得。ちなみにストリーミング数3位は同じくOfficial髭男dismの「ノーダウト」(総合順位は11位)でしたのでベスト3をヒゲダンが独占という状況になっています。さらにダウンロード数でも両者は3位、4位と並んでいるほか、「Pretender」はYou Tube再生回数で先週の3位から2位にアップ。2曲同時のロングヒットという状況になっており、その勢いは止まりません。

続いて4位以下の初登場曲ですが、初登場はあと1曲のみ。4位にEXILEの弟分のボーカルグループ、GENERATIONS from EXILE TRIBE「DREAMERS」がランクイン。CD販売数2位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数で8位を獲得。一方、ダウンロード数32位、ストリーミング数28位、ラジオオンエア数23位と振るわず、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上3万4千枚で2位獲得。3ヶ月連続リリースの第2弾で、1ヶ月前にリリースした前作「Brand New Story」の2万5千枚(7位)からアップしています。

さて、今週は初登場は上記2曲のみ。一方、ベスト10返り咲きもありました。それが先週の12位から8位にアップしたKing Gnu「白日」。7月22日付チャート以来7週ぶりのベスト10返り咲き。これで通算17週目のベスト10ヒット。ベスト10返り咲きは3度目と、根強い人気を見せています。今回、ストリーミング数が5位から4位、ダウンロード数が20位から17位などランクを伸ばしていますが、全体的には先週から劇的に注目度が増したというよりは、大型の新譜の少なさから来る相対的なランクアップという傾向が強い感じが。

そしてロングヒット組では今週も相変わらず強いのが米津玄師「Lemon」は先週から変わらず10位をキープ。「馬と鹿」は先週からワンランクダウンの5位と3週連続2曲同時ランクインとなっています。特に「馬と鹿」はダウンロード数で3週連続1位とその人気のほどを見せつけています。また米津玄師絡みでは彼が作詞作曲プロデュースを手掛けるFoorin「パプリカ」が9位から7位にアップ。ここに来て、自己最高位を記録しています。また同じく米津玄師作詞作曲プロデュースの菅田将暉「まちがいさがし」も8位から9位にダウンしているものの今週もベスト10をキープ。ベスト10記録を通算14週に伸ばしています。

さらにあいみょん「マリーゴールド」は先週の7位から6位にアップ。ストリーミング数が4位から5位にダウンしたものの、You Tube再生回数が6位から4位にアップ。まだまだヒットは続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年9月 3日 (火)

デビュー20周年のベストアルバム

Title:bird 20th Anniversary Best
Musician:bird

1999年にシングル「SOULS」でデビュー。今年、デビュー20周年を迎えた女性シンガーbirdの活動を総括したベストアルバムがリリースされました。birdといえば1999年、大沢伸一のレーベルからシングル「SOULS」でデビュー。当時はMISIAが大ブレイクし、「女性R&Bシンガー」が一種のブームとなっていた頃。彼女もそんな「R&Bシンガー」の枠組みの中でレコード会社からもかなりのプッシュを受けていた記憶があります。残念ながらデビューシングル「SOULS」はさほど大ヒットとはいかなかったのですが、その後リリースしたデビューアルバム「bird」は見事ベスト10ヒットを記録し、大きな注目を集めました。

そんなことをリアルタイムに覚えているだけに、それから20年というのは個人的には早いなぁ・・・と思ってしまいます。残念ながら人気の面では一時期ほどではなくなってしまったものの、今でも一定以上の人気を確保し、コンスタントにアルバムもリリースし続ける彼女。本作は彼女の代表曲が発表順に並べられており、まさに彼女の音楽活動を俯瞰できるベストアルバムとなっています。

彼女は高音域をアピールすることが多い女性シンガーの中でも比較的中音域で魅力的な歌声を聴かせてくれるシンガーで、楽曲も含めてオーガニックな雰囲気が強い作風が大きな個性と魅力となっています。ただ彼女の作品は基本的にいままでのアルバムもコンスタントに聴いてきたのですが、個性もありシンガーとして魅力的、かついままでもいろいろな作風にも挑戦しているのですが、全体としてどうもパンチの弱さが気になってしまっていました。

今回のベストアルバムで彼女の過去の作品を発表順に聴くことが出来たのですが、やはりそれでもこのパンチの弱さというのが気になりました。そのひとつの要因として考えられるのが、いろいろな作風の曲に挑戦はしているのですが、いろいろな方向に吹っ切れていない、というのがひとつの要因ではないでしょうか。

例えば今回のアルバムの中、彼女のいろいろな作風への挑戦が感じとれます。ファンキーなリズムがカッコいい「マインドトラベル」やシタールを入れてエキゾチックな要素を加えた「チャンス」「髪をほどいて」は作曲が堀込高樹のため、完全にキリンジなAORになっていますし、「童神」では沖縄民謡にも挑戦。「ah」は歌謡ロックな楽曲に仕上がっていますし、さらに「道」ではここ最近のジャズの傾向に沿ったサウンドを入れてきています。

このバリエーションの多さ、フットワークの軽さは間違いなく彼女の魅力でしょうし、もちろんそれはプラスに働いている部分も多々あります。ただ一方、それらの音楽的要素の取り入れ方にどうも中途半端さを感じてしまいます。全体的には初期のbirdと同様のオーガニックな要素を貫いていて、それはひとつの個性であることは間違いないのですが、どうせならそんなイメージを完全に崩すようなひとつの方向に突っ走ってしまった方がおもしろいのでは?

・・・とまあ、ここまでマイナス方向の感想のみ書いてきましたが、もちろん基本的に収録されているのは良作ばかり。特に「マインドトラベル」を含めたこの頃の作品が、シンガーとしても一番脂がのった感じがあり楽曲にも勢いのある名曲が揃っています。今後、彼女がどのような方向に進むのかわかりませんが、まだまだいろいろと挑戦して、数多くの名曲も残してくれそう。これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★

bird 過去の作品
BIRDSONG EP
MY LOVE
NEW BASIC
9
lush
波形


ほかに聴いたアルバム

調べる相対性理論/相対性理論

相対性理論初となるライブアルバム。2016年に行われた日本武道館公演「八角形」以降のステージからピックアップしたライブ音源を収録した内容。原曲に比べるとバンドサウンドを前に押し出したような構成となっており、原曲に比べると楽曲からいわば「人間味」を感じさせる楽曲となっています。そういう意味で原曲とはまた異なった相対性理論の魅力を感じさせる内容に。さらに楽曲は真部脩一と西浦謙助脱退前の曲も収録されており、やはりこの頃の相対性理論の曲はよかったなぁ、と感じさせるような選曲になっていました。

評価:★★★★★

相対性理論 過去の作品
ハイファイ新書
シンクロニシティーン
正しい相対性理論
TOWN AGE
天声ジングル

Kenichi Hagiwara Final Live~Forever Shoken Train~ @Motion Blue yokohama/萩原健一

今年3月に急逝したショーケンこと萩原健一が、事実上、ラストライブとなってしまった昨年6月10日に行われたMotion Blue Yokohamaでのライブの模様を収録したライブアルバム。私の世代だとショーケンといえばもっぱら俳優のイメージでミュージシャンとしての印象は皆無なのですが、もともとはザ・テンプターズのボーカル出身ですし、その後も音楽活動を断続的ではあるものの続けてきたようで、今回のアルバムでもそんなミュージシャンとしてのショーケンを聴くことが出来ます。分厚いバンドサウンドをバックに歌うロックな彼の姿を感じることはできるのですが、録音の状況もあるのかもしれませんが、残念ながらいかんせん声があまり出ておらず、正直言うとちょっと厳しい印象も・・・。純粋な評価的には3つだと思うのですが、これが最期という追悼の意を込めて下の評価に・・・。

評価:★★★★

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2019年9月 2日 (月)

ドラマのスコアをまとめた最新作

Title:Kiri Variations
Musician:CLARK

最近ではオーケストラや舞台音楽などへの楽曲提供など精力的な活動を見せているCLARK。今回のアルバムは前作「Death Peak」から約2年4か月ぶりとなる新作となります。ただ、純然たる新作ではなく「Kiri」というイギリスのテレビドラマに使われた楽曲をまとめたアルバムになっています。

前作「Death Peak」はメタリックで複雑なビートで構成された、比較的挑戦的な意欲作となっていたように感じます。ただ今回のアルバムに感じたのは、やはりテレビドラマに使われた楽曲ということもあってでしょうか、前作に比べると良くも悪くも聴きやすい作品に仕上がっていたという感想抱きました。

例えばアルバムの2曲目「Simple Homecoming Loop」はピアノにシンセの音色が重なり、とても美しい空間を作り出している楽曲になっていますし、続く「Bench」もバイオリンのメロディアスな音色が印象に残ります。さらに「Kiri's Glee」はシンプルな笛の音をアコギによってシンプルで可愛らしい雰囲気の楽曲に仕上げています。

その後も悲しげなストリングスが印象に残る「Tobi Thwawrted」やエレクトロニカのビートに載せて男女のボーカルが厳かに静かに歌う、歌モノの「Cannibal Homecoming」など、楽曲によって様々なアイディアを取り込んだエレクトロサウンドをベースとしつつも、全体的には聴きやすく、メロディアスという印象の強い曲が並びます。

また、ドラマのイメージなのでしょうか、アルバムを通じて荘厳な雰囲気を感じさせるアレンジが多く、「Primary Pluck」「Banished Hymnal」など、シンセを取り入れつつ、少々ゴシック調な要素も感じさせる曲も目立ち、アルバム全体としても重厚な雰囲気を強く感じさせるアレンジが大きな特徴に感じられました。

もちろん一方では「Forebode Pluck」のようにゴシック風のチェンバロが不協和音のアルペジオを奏でるようなナンバーや、「Forebode Knocker」のようにピアノの単音でサウンドが構成されているような、挑戦的なナンバーもチラホラ。そういう意味ではもちろん単純なポップのアルバム・・・とはちょっと異なるのは言うまでもありません。

そういう意味でいろいろと聴きどころのあるアルバムには間違いありません。ただアルバムの後半の方はピアノやシンセを用いて荘厳な雰囲気をただ作り出しているだけといった感じの、どちらかというと良くも悪くもドラマのBGM的な曲も多く、若干飽きてしまった部分も。もちろん総じて彼のファンならば満足できる作品だとは思うのですが、傑作が続いていたここ最近の作品に比べると若干見劣りがする・・・かな?

評価:★★★★

CLARK 過去の作品
Totems Flare
Iradelphic
CLARK
Death Peak


ほかに聴いたアルバム

Brandon Banks/Maxo Kream

本作がメジャーデビュー作となるアメリカのラッパーによるアルバム。トラップを取り入れたダークでダウナーな雰囲気のラップとサウンドが特徴的ですが、ポップな要素に加えてどこかコミカルさも感じさせる楽曲もあり、アルバム全体としてはいい意味で聴きやすさを感じます。全47分という長さながらも15曲入りと1曲あたり3分程度の長さであるため、次々と曲が展開していく構成も聴きやすさの要因に。今後のブレイクも予感させる1枚です。

評価:★★★★

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2019年9月 1日 (日)

楽しいポップソングの中にロックな要素も

Title:Duck
Musician:Kaiser Chiefs

イギリスの人気ロックバンド、カイザー・チーフスの約1年9ヶ月ぶりとなるニューアルバム。デビュー当初はイギリスで期待のバンドということで日本でも多くメディアに取り上げられていたのですが、ここ最近は以前ほど日本では話題に上ることが少なくなってしまったように感じます。ただ、イギリス本国では相変わらず高い人気を誇っており、前作「Stay Together」もイギリスのナショナルチャートで4位にランクイン。ちょっと久々となった本作も3位に入ってくるなど、変わらぬ人気を感じさせます。

なんてこと書いていながらも、実は私自身、彼らのアルバムを聴くのは2008年の「Off with Their Heads」以来、11年ぶり。その間にアルバムを3枚もリリースしていたのですが、え?そんなにスルーしていたっけ??とちょっと意外な感じもしました。もっとも今回のアルバムを聴いてみたのも、なにか強いきっかけがあった訳ではなく「なんとなく」なんですが・・・。

そんな久々に聴いてみた彼らのアルバムなのですが、とにかく外連味のない楽しさあふれるポップチューンの連続で最初から最後までワクワク楽しめるポップアルバムに仕上がっていました。もともと以前のカイザー・チーフスのイメージもブリット・ポップの正当な継承者という印象の強い、ポップなギターロックバンドというイメージがありました。さすがに今となって「ブリット・ポップ」といった感じもないのですが、ストレートにポップで楽しい作風というのは今も変わっていません。

特に今回のアルバムではエレクトロサウンドを取り入れたリズミカルで楽しいポップチューンが並んでいることが大きな特徴。「Wait」「Record Collection」「The Only Ones」さらには「Electric Heart」といったリズミカルな曲が並んでおり、聴いていて純粋にワクワクさせられる構成となっています。そもそもアルバムの最初を飾る「People Know How to Love One Another」からしてホーンセッションを取り入れて爽快でとても明るい雰囲気をかもしだしているポップチューン。リスナーは最初の最初からワクワクした気持ちでアルバムを聴き進めることが出来ます。

そのほかも「Northrn Holiday」「Kurt vs. Frasier (The Battle for Seattle)」などポップなメロディーラインが光るメロディアスな楽曲ならも並んでおり、終始、彼らのメロディーセンスが光る楽しいアルバムに仕上がっています。一方、ユニークなのが、例えば「Golden Oldies」のようにバンドサウンドの泥臭さがちょっとしたアクセントとして加えられている曲も見受けられる点。アルバム全体としてはポップという印象の強い作品だったのですが、その中でも確実にロックバンドとしての主張を感じられる部分が多々あり、このロックバンドとしての部分がアルバムの中でほどよいインパクトとなっていたようにも思います。

前述のように日本では以前ほど名前を聞かなくなってしまった彼らですが、本国での人気が示すとおり、楽曲の魅力は以前から全く変わっていませんでした。私も本作が久々に聴いてみたアルバムとなってしまいましたが、今後はコンスタントにアルバムをチェックしてみないと・・・。これだけの傑作をリリースしているのであれば、彼らの人気はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Kaiser Chiefs 過去の作品
Your Truly,Angry Mob
Off With Their Heads

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