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2019年8月16日 (金)

ピアノオンリーながらもバリエーション豊かに

数多くのCMソングや映画音楽を手掛けるミュージシャン、高木正勝。最近では細田守監督の作品をよく手掛け、昨年公開された「未来のミライ」の映画音楽でも話題となりました。そんな彼が昨年から今年にかけて2枚のピアノアルバムをリリースしました。

Title:Marginalia
Musician:高木正勝

紹介するのがちょっと遅くなってしまいましたが、昨年11月にリリースされたピアノアルバムの第1弾。そして・・・

Title:MarginaliaⅡ
Musician:高木正勝

そして、こちらが前作に続けて今年リリースされた第2弾となります。楽曲はすべてピアノオンリーのサウンドであり、曲によっては女性の美しいコーラスが入ってきたりもします。彼の前作「かがやき」では京都の山村にて自然の音を取り入れたサウンドが特徴的だったのですが、今回のアルバムに関してもフィールドレコーディングを実施。ピアノの音色に自然の音が混ざった音の世界が繰り広げられています。

タイトルはいずれも「Marginalia」とつけられた上で「#+番号」で区別されています。基本的に小さい数字から順番に並べられているものの番号的には飛び飛びになっており、かつ「Marginalia」で飛ばされた番号が「MarginaliaⅡ」に収録されていたりします。おそらく、「#1」から順番に作っていき、イメージに合うものを曲の雰囲気に合わせて「Marrginalia」と「MargginaliaⅡ」に振り分けたということろではないでしょうか。

楽曲的にはいずれもシンプルなメロディーを聴かせてくれる曲ばかりで、いわば「現代音楽」のような聴き手を選ぶような曲はありません。いずれもピアノのみの曲ではあるものの、バリエーションは様々であり聴き手を飽きさせません。例えば「#1」はミニマル的な曲の構成が耳を惹きますし、「#3」はピアノの2つの音が寄り添ったり離れたりして展開していくユニークかつ可愛らしさを感じる曲。「#23」では女性の歌が入るのですが、この歌が何語なのか不明な言語。優しい雰囲気の曲なのですが、このボーカルのため不思議な感触のする曲となっています。

「Ⅱ」の収録曲の方でもピアノの早弾きで清涼感を覚える「#17」や女性のハイトーンボイスが加わり、どこか幻想的な雰囲気となっている「#35」、ループするようなサウンドが特徴的な「#13」や哀愁漂うメロディーが心に残る「#39」など、演奏はピアノのみにも関わらず、実に様々なタイプの楽曲が並んでおり、2作とも70分を超えるボリュームながらもリスナーを飽きさせません。

そんな訳で幅広い方にアピールできる傑作アルバムであることは間違いないのですが・・・このアルバムのもうひとつの狙いである「フィールドレコーディング」という側面からすると、ちょっと物足りなさも感じてしまう部分はありました。まず1作目の「Marginalia」に関しては、正直、ほとんど自然の音が入った曲はありません。鳥の声が効果的に入った「#8」や虫の声が入った「#23」あたりくらいでしょうか。一方、「MarginaliaⅡ」に関しては自然の音が積極的に取り入れられています。ただ、「#44」「#43」のように自然の音が効果的に用いられている曲もあるのですが、正直、それ以外の曲に関してはピアノが鳴っている後ろで、そういえば外の音が聞こえるような・・・という程度。あまり自然の音をうまく取り込んだ、という印象は受けませんでした。

ここらへんは若干、なんでだろう?と思う部分もあるのですが、ただそこの狙いは別として純粋にピアノ曲のアルバムとしては非常に良くできた傑作アルバムであることは間違いありません。その美しいピアノの響きとメロディーに最初から最後まで聴き惚れる内容で、高木正勝の実力を存分に感じる傑作になっています。基本的に小難しい部分はないため、広い層にお勧めできる作品。特に細田守監督の映画を見て「音楽がいいな」と思った方には無条件でお勧めできるアルバムです。その美しいピアノの世界に酔いしれてほしい作品です。

評価:どちらも★★★★★

高木正勝 過去の作品
Tai Rei Tei Rio
TO NA RI(原田郁子+高木正勝)
おむすひ
かがやき

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