残暑激しい日のステージ
あいちトリエンナーレ2019 Chilla: 40 Days Drumming&円頓寺デイリーライブ
U-zhaan/butaji
会場 なごのアジール/円頓寺駐車場 日時 2019年8月22日(木)
その展示内容でいろいろと物議をかもしているあいちトリエンナーレ2019。愛知県内の複数会場で主に現代美術の作品を展示している国際芸術祭ですが、先日はその中でのイベントのひとつ、サカナクションの「暗闇」に参加してきました。今回のトリエンナーレでは数多くのポピュラーミュージックに関するイベントも予定されており、今回紹介するのはそんなイベントのひとつです。
正直言うと、「現代美術」自体には全く興味がなかったので、今回のトリエンナーレは基本的に音楽系のイベントだけ参加するつもりでした。ただ、いろいろと物議をかもして話題になっているということもあり、なんとなくせっかくだから、ということもあり1DAYパスを購入し、美術館などの展示物もめぐってみたのですが・・・これが予想外に楽しく、非常に興味深く見て回ることができました。
現代美術というとイメージ的には「よくわからない難解なもの」というイメージがありました。確かに展示物を見ていて「?」が何個も浮かぶような展示物も少なくはありませんでした。ただ一方で、「展示物」といっても単なる絵画やモニュメントとかではなく、映像や音楽を駆使している展示物も多く、作者の意図がすべて理解できなくても、見ていて純粋に楽しめる展示物が少なくありませんでした。またそんな展示物が美術館のみならず、街中の様々なところに展示しており、それを巡るだけで、いわば博覧会のパビリオンをまわっているような感覚が。そんな街歩きも楽しめるイベントとなっていました。
また、作家のテーマ性は時として哲学的で難解なテーマも少なくないのですが、作品としては概して理屈っぽく、ある意味、感性が求められるような一般的な絵画などに比べると、実はテーマ的にわかりやすい展示物も少なくなく、そういう意味でも楽しむことが出来ました。このイベント、私のように芸術に全く素養がなくても楽しめるイベントだったと思います。個人的には結構はまってしまいました。今回、見逃した展示物も何個かあったため、また足を運びたいです!
で、そんな中で紹介する音楽系の展示物、一つ目は名古屋駅の近くの円頓寺商店街の中の「なごのアジール」という場所で行われるタブラ奏者、U-zhaanが、Chilla(チッラー)と呼ばれる北インドの古典音楽家に伝わる厳格な修行の様子をそのまま公開するという「展示物」。この修行は小屋にこもって40日間音楽の演奏に没頭するという修行だそうですが、今回のイベントでは8月1日から9月9日までの12時から20時までの間、ひたすらU-zhaanがタブラの練習を続け、その模様を公開するというちょっと狂った企画。いや、世代的にはこれ「電波少年の企画です」と言われても違和感がない感じも・・・。
会場はワンルーム程度のスペース。最初、やはり修行はガラス越しに見るのかな、と思ったのですが、実際にはU-zhaanが練習を行っている部屋にまで入れて、彼とは簡単なロープ柵を隔てた程度でその模様を観覧することが出来ました。
U-zhaanはインド音楽を収録したiphoneの演奏に沿って、ひたすら一心不乱にタブラをたたき続けるという練習を続いていました。そのため、感覚的には一種のU-zhaanのライブのような感覚でその演奏を楽しむことが出来ます。インド音楽自体、変拍子の連続で複雑なリズムが特徴的なのですが、U-zhaanのタブラの演奏も、2つとして同じリズムが登場しないような複雑な演奏がひたすら淡々と進められます。ただ、単なる練習とは思えないような力強い演奏に、強く惹きつけられ、その演奏に聴き入りました。
当たり前ですが、時折休憩をはさむみたいで、20分程度練習が続くと、休憩ということで一度、その場を離れます。下の写真はそのタイミングで演奏した会場の模様。まさにライブ感覚で楽しめた「展示物」でとても満足度の高い内容でした。ちなみにU-zhaanは終始下を向いた状況でトークなども全くなかったのですが、時折、にやりと笑っていたりしたのですが、あれは満足のいく演奏のできた瞬間とかでしょうか??
続いて19時からは円頓寺駐車場に設けられた特設ステージで行われたライブへ。「デイリーライブ」と名付けられ、期間中の木曜日から日曜日にかけて毎日開催されるフリーライブ。この日はbutajiという男性シンガーソングライターのステージでした。butajiというミュージシャンは完全に初耳のミュージシャンだったのですが、この日、ちょうどU-zhaanを見に行ったということもあり、デイリーライブにも足を運ぶことにしました。
ステージはアコギ1本をかかえたbutaji本人と、あとエレキギターを抱えたギタリストの2人によるステージ。音楽ももちろんはじめて聴いたのですが、まずスタートしたのはしんみり聴かせるAOR。メロウな作風のシティポップといった感じなのですが、ボーカルは時折、力強く歌い上げるようなスタイルも聴かせてくれます。失礼ながらも普通のおっちゃんのような風貌ということもあり、楽曲はシティポップ的な爽やかさを感じつつ、同時に、どこかねっちりと暑さを感じさせるような楽曲でした。
一方ではその後の楽曲に関してはAORというよりもフォークの影響が強いような作品も。この日は途中、新曲ということで(・・・といってもどの曲もはじめて聴いた曲ばかりなのですが・・・)「same thing same time」と「中央線」という曲を披露。こちらはどちらもフォーキーな雰囲気のナンバーで、特に「same thing same time」では彼のファルセットボイスで美しく聴かせるボーカルも印象に残ります。
本編は全8曲。後半はAOR調のナンバーでしんみりと締めくくり。その後はアンコールが起き、再度の登場となったのですが、こちらは予想外に、いままでの雰囲気とは異なり、サポートがヘヴィーなギターサウンドを奏でる中、マイク1本でパワフルに、時にはシャウトも入れて力強く歌い上げるロッキンなナンバーに。最後の最後にちょっと異なる印象をリスナーに与え、約1時間のステージは幕を閉じました。
タイプ的にはAOR、シティポップの枠組みに入りそうなシンガーソングライター。ただ、一方ではそんな中でソウルフルなボーカルを入れてきたり、非常に暑さを感じさせるスタイルも特徴的。この爽やかさと暑さを同居させたようなスタイルが特徴的かつ彼の魅力のように感じます。この日は一時期ほどの酷暑は去ったものの、残暑激しい暑い日だったのですが、彼のようなスタイルのステージが夏の日にピッタリマッチしていたと思います。
個人的にはあまり期待していなかったのですが予想以上に楽しめたステージで満足して会場を去ることが出来ました。1時間という時間もフリーライブとしては長めですし、なにげに良い感じのイベント。今後も10月のトリエンナーレ閉幕時まで様々なミュージシャンによるフリーライブが予定されていますが、また足を運びたいです。
| 固定リンク
「ライブレポート2019年」カテゴリの記事
- 2019年ライブまとめ(2019.12.30)
- いつも違うレキシ…?(2019.12.21)
- 貴重な初期楽曲を中心に(2019.12.01)
- 最後の「デイリーライブ」(2019.10.18)
- 結成30周年の記念ライブ(2019.10.13)
コメント