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2019年8月13日 (火)

アフリカと西洋の融合

Title:EGOLI
Musician:Africa Express

blurのデーモン・アルバーンが中心となりアフリカ音楽にスポットをあてるべく活動しているユニット、Africa Express。今年、EPの「Molo」がリリースされましたが、それに続き待望となるニューアルバムがリリースされました。本作でもデーモン・アルバーンはもちろんのこと、Supper Furry Animalsのグリフ・リース、Yeah Yeah Yeahsのニック・ジナーといったイギリス勢のミュージシャンが参加。一方、いままではマリのミュージシャンと組んでのリリースが多かったのですが、本作ではBCUC、ファカ、インフェイマス・ボイズといった南アフリカのミュージシャンたちと組んでのアルバムとなりました。

まずはアフリカらしい勇壮さも感じさせるトライバルなリズムが大きな魅力となっている本作。例えば「The River」ではトライバルなリズムにしゃがれ声で力強い男性ボーカルと伸びやかな女性ボーカルとのデゥオが印象的で、サウンドにはスケールの大きさを感じますし、ある意味、そのままなタイトルの「Africa To The World」ではリズミカルなリズムと郷愁感あるホーンの調べの対比が印象的な作品で、この対比が楽曲全体としてトライバルな雰囲気を生み出しています。さらに「Mama」のようなチープさも感じさせる打ち込みのリズムで奏でられるトライバルなサウンドもいかにも「アフリカ的」でありたまりません。

ただし、アルバム全体としてはそんなトライバルなリズムを要所要所に聴かせつつ、西洋音楽からの影響が強い、いわば「垢抜けた」印象を感じさせる曲が目立つ内容となっています。例えば「City In Lights」も軽快なリズムが心地よくも80年代風の打ち込みはむしろニューウェーブからの強い影響を感じますし、「Bittersweet Escape」もトライバルなリズムを奏でつつも重厚なサウンドと澄んだ歌声で力強く聴かせる女性ボーカルは非常に垢抜けたものを感じさせます。

またジャンル的にもバリエーションの多い音楽性が大きな魅力となっており、「Where Will This Lead Us To?」はシンプルなリズムは少々トラップの要素すら感じさせるHIP HOPのナンバーになっていますし、「Morals」もオーガニックな雰囲気が漂う作風はアフリカというよりもソウルミュージックに近いものを感じさせます。また「I Can't Move」に至っては完全に80年代のAOR。軽快なシティポップに都会な雰囲気すら感じさせます。

ただ個人的には単なるアフリカ音楽を模倣するのではなく、欧米のポップスと上手く融合させている部分がAfrica Expressの大きな魅力に感じます。単なる現地の音楽を奏でるのならば、現地でいくらでも優れた作品がリリースされている訳で、今の時代、賛否わかれる部分はあるのかもしれませんが、アフリカ音楽の要素を自国の音楽に上手く取り入れて融合させているからこそ、このアルバムが非常に独特で耳を惹く内容となっているのではないでしょうか。

もちろんそこには現地ミュージシャンへのリスペクトがきちんと感じられるという部分は間違いありません。単純なアフリカ音楽ではなくAfrica Expressでしかできない音楽をしっかりと奏でている傑作アルバムになっていました。新しい文化というのはこういう文化と文化の融合から生まれてくるのが常。ここから、新しい音楽がスタートする予感もする1枚でした。

評価:★★★★★

Africa Express 過去の作品
Molo

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