ねっとりとしたB級アジアンな雰囲気
Title:The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC
Musician:VIDEOTAPEMUSIC
ちょっと奇妙な名前を持つミュージシャン、VIDEOTAPEMUSICのニューアルバム。当サイトで紹介するのはこれが2作目となるのですが、公式サイトによると「地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。」だそうで、非常に独特の音作りが特徴的なミュージシャンです。
そんな彼の新作のサウンドは、非常に湿気を帯びた空気感が特徴的。イメージとしては一昔前のアジアのB級映画といった感じでしょうか。ダブやラテンの要素を加えてねっとりとした感じにまとめあげたサウンドはダウナーでとてもけだるい雰囲気。ただ、ラテン要素を加えているとはいえ、どこか感じる無国籍感もまた、アジアンっぽさを感じさせます。そしてそんな音楽には同時にどこか懐かしさを感じさせるのも特徴的。「懐かしさ」といっても日本の田舎の風景、というよりは、ちょっと怪しい雰囲気を感じさせる都会の雑居ビルの中から流れてくるような、そんな雰囲気を感じさせる音楽が独特の魅力をはなっています。
彼の曲をはじめて聴いた前作「ON THE AIR」はインスト曲中心のアルバムになっていましたが、今回のアルバムではゲストが数多く参加したボーカル曲主体のアルバムになっていました。ご存じクレイジーケンバンドの横山剣や最近話題のシンガーソングライター、折坂悠太、さらにはceroの高城晶平など豪華なゲスト陣がズラリと並んで、楽曲にバリエーションを与えています。
例えばceroの高城晶平が参加した「BALL」ではミディアムテンポのけだるい雰囲気のナンバーなのですが、メロウさが加わり爽やかさも。Mellow Fellowが参加した「Cocktail Moon」はニューウェーブ風な軽快なリズムが流れるポップなナンバーで、ちょっと懐かしいシティポップの要素が強い楽曲になっています。
もっともそんな中で一番強いインパクトがあったのが横山剣がゲストに参加した「南国電影」でしょう。まさに上に書いたようなB級アジアンな怪しげな雰囲気がプンプン漂うナンバー。横山剣らしい歌謡曲的な要素も強く加えた楽曲になっており、良い意味でベタな感じが大きな魅力となっている楽曲に仕上がっています。
全体的にはインスト中心だった前作と比べると、歌モノが増えて聴きやすさが加わったような印象を受けます。また結果としてVIDEOTAPEMUSICとして伝えたいことがより強く伝わるようになったのではないでしょうか。前作同様、音の実験的な要素も強く感じられる点は良くも悪くも変わらないのですが、聴いていて不思議な感覚になるのも前作同様。B級アジアンな不思議な世界に入り込めるアルバムです。
評価:★★★★
VIDEOTAPEMUSIC 過去の作品
ON THE AIR
ほかに聴いたアルバム
太陽がいっぱいPlein Soleil~セルフカヴァー・ベストII/徳永英明
昨年リリースしたセルフカヴァーアルバムの第2弾。前作もアコースティックなアレンジでジャジーにまとめたカバーが多かったのですが、今回はより意識的にジャジーなアレンジにまとめたアルバムになっています。原曲が文句なしの名曲揃いなだけにジャズアレンジの本作ももちろん十分楽しめるアルバムではあるのですが、悪い意味でよくありがちなアレンジに仕上がっており、どこかのBGMあたりで流れてきそうな出来に・・・。まあ、無難といえば無難な内容なのですが・・・。
評価:★★★
徳永英明 過去の作品
SINGLES BEST
SINGLES B-Side BEST
WE ALL
VOCALIST4
VOCALIST&BALLADE BEST
VOCALIST VINTAGE
STATEMENT
VOCALIST 6
ALL TIME BEST Presence
Concert Tour 2015 VOCALIST&SONGS 3 FINAL at ORIX THEATER
ALL TIME BEST VOCALIST
BATON
永遠の果てに~セルフカヴァー・ベストI~
NO SLEEP TILL TOKYO/MIYAVI
様々なミュージシャンとのコラボ作を収録した「SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -」からわずか半年ぶりとなるMIYAVIのニューアルバム。ただしここ最近、このコラボ作が続いており、純然たるオリジナルアルバムとしては「FIRE BIRD」以来、約3年ぶりとなる新作となります。そんな久々となる本作。ファンキーなギターについては文句なしにカッコよさを感じさせてくれる一方、ここ最近の傾向であるエレクトロサウンドの多様は相変わらず。個人的にはもうちょっとゴリゴリのギターサウンドを全面に据えてくれたほうがよりカッコいいと思うのですが・・・。全体的にはポップなメロディーラインも増え、いい意味で聴きやすさも増した感があるのですが、もうちょっとよりギターサウンドでロッキンな仕上げにした方がMIYAVIのギタリストとしてのカッコよさが生きるような感じがすると思うんだけどなぁ。
評価:★★★★
MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD
ALL TIME BEST "DAY2"
SAMURAI SESSION vol.2
SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -
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