« ブルースロック色がより強く | トップページ | 米津玄師旋風ふたたび »

2019年8月20日 (火)

アフリカへのラブレター

Title:The Lion King:The Gift
Musician:Beyonce

先日から日本でも公開となり話題となっているディズニー映画の実写版「ライオン・キング」。映画にはなんとビヨンセが声優として参加しているのですが、その彼女が映画からインスパイアされ、プロデュース、キューレイターとして作成されたアルバム「The Lion King:The Gift」が急きょリリースされました。

アルバムは一般的なサントラ盤・・・ではなく、映画から影響を受けて作成された楽曲を収録したコンピレーションアルバム。以前、映画「ブラック・パンサー」にちなんだ、同じようなコンピレーションアルバムがリリースされましたが、基本的なスタイルはそちらに近い感じでしょうか。もちろん、Beyonce本人が参加している楽曲がメインとして収録されているのですが、とにかく参加しているミュージシャンが豪華。旦那であるJay-Zはもちろん、Kendrick LamarやPharrell Williamsなどといったミュージシャンが参加しています。

さらに今回のアルバム、「The Gift」というタイトルは、映画「ライオン・キング」の舞台となったアフリカン・ミュージックに対して敬意を示し、「アフリカに対するラブレター」を意味するものだそうです。そのため今回のアルバムにはYemi Alade、Burna Boy 、Tiwa Savageといった主にナイジェリアで活動するミュージシャンたちも数多く参加しています。

そのため全体的に今回のアルバムではトライバルな雰囲気の曲が多く、Yemi Aladeら、ナイジェリアのミュージシャンが中心となった「DON'T JEALOUS ME」ではトライバルなリズムとボーカルを聴かせてくれるリズミカルな楽曲となっていますし、Burna Boyによる「JA ARE E」もメロウな雰囲気のメロディーを漂わせつつ、そんな中でアフリカらしい勇壮な雰囲気が感じられるナンバーとなっています。また、「WATER」もトライバルなリズムが押し出されたナンバーに。ただ、Pharrell Williamsが参加しているこの曲は、彼らしい非常に軽快である種の楽しさも感じられるポップな楽曲に仕上がっています。

上でもチラッと書いた「ブラック・パンサー」のインスパイア・アルバム「Black Panther: The Album」でも南アフリカのミュージシャンが数多く参加し、トライバルな要素の強いアルバムになっていました。アメリカの黒人のミュージシャンたちにとっては、やはり自分たちのルーツであるアフリカに対する憧憬が強いのでしょうか。今回、アフリカのミュージシャンが数多く参加している背景には、「ライオン・キング」の舞台となっているという理由はもちろん、そんなアフリカン・アメリカンたちのアフリカに対するあこがれを強く感じさせる内容となっています。

ただ、全体的にはリズムなどでトライバルな要素を組み込んだだけ、といった感じで、例えば先日紹介したAfrica Expressのようにアフリカ音楽を積極的に取り込んで、という感じではなく、主軸となっているのはあくまでもアメリカのR&BやHIP HOP。そこにアフリカ的な要素を加えているという程度になっているため、アフリカ音楽を期待しているとちょっと違うのかもしれません。

もちろん、Beyonceも非常に力を入れたアルバムになっているだけにその内容には間違いありません。まさにアルバムのオープニングにふさわしい、何かがはじまるかのような力強さを感じる「BIGGER」からスタートし、Kendrick Lamarとコラボした「NILE」でもダウナーなトラックの中で彼女のボーカルとケンドリックのラップがほどよい気だるさをもって楽曲にインパクトを与えています。

ラストは映画にも使われている「SPIRIT」で締めくくられているのですが、こちらはある意味、ディズニー映画の主題歌らしい、スケール感を覚えるバラードナンバー。ただBeyonceのボーカルにもいつも以上に力が入っており、非常に迫力のある楽曲に仕上がっています。映画は、元のアニメ版を含めて見たことがないのですが、なんとなく映画のシーンにもピッタリと来る雰囲気のあるナンバーになっていました。

全27曲なのですが、楽曲の間には映画のセリフの一部をピックアップしたインターリュードが入っており、まさに映画に沿った形の構成となっている今回のアルバム。もちろん、映画を見たことのない方にとってもBeyonceの新しいアルバムという感覚で楽しめる作品になっていました。数多くのミュージシャンが参加しているだけに楽曲的にもバリエーションもあり最後まで楽しめる傑作アルバム。Beyonceの実力も感じさせてくれる作品になっていました。

評価:★★★★★

BEYONCE 過去の作品
I Am...Sasha Fierce

I AM...WORLD TOUR
Beyonce
Lemonade
HOMECOMING:THE LIVE ALBUM

|

« ブルースロック色がより強く | トップページ | 米津玄師旋風ふたたび »

アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ブルースロック色がより強く | トップページ | 米津玄師旋風ふたたび »