デビュー20周年のシングルコレクション
Title:aikoの詩。
Musician:aiko
メジャーデビュー20周年を記念してリリースされたaikoの4枚組ベストアルバム。彼女のベストアルバムといえば2011年にベストアルバム「まとめⅠ」「まとめⅡ」が2枚同時にリリースされていますが(それからもう8年もたつのか・・・)、本作は彼女のシングル曲を網羅的に収録したシングルコレクション。Disc1から3にメジャーデビュー作「あした」から現時点での最新シングル「ストロー」までの全シングルが網羅され、Disc4はカップリング曲をあつめたアルバムとなっています。
そんなシングルコレクションの中で、良くも悪くも目立つのはDisc1の10曲目に収録されているメジャーデビュー作「あした」でしょう。ファンならご存知かと思いますが、この曲は小森田実が作詞作曲を手がけており、aikoの曲の中で唯一、彼女以外が楽曲を手がけた曲。そのためメロディーラインもaikoの曲の中ではかなり異質。疾走感ある伸びやかなポップチューンとなっているのですが、独特のグルーヴ感あるaikoの曲とはかなり異なり、良くも悪くもあっさり風味の作品になっています。彼女はこの曲の前に既にインディーズでCDもリリースしており、なぜ、メジャーデビュー作を他のライターが作った曲を歌わされるようになったのかいまひとつ不明なのですが、独特のあのメロディーが売れない、と思われたのか・・・。ただ、私、この曲をリアルタイムで聴いていたのですが、この曲がリリースされた段階で既に「大阪で話題のシンガー」のようにかなりプッシュされていたように記憶しています。それだけにあえてデビュー作だけ作風を変えさせられた理由は不明です。
ただ、実は私、この曲も結構好きだったりして、まあ、デビューアルバムにも収録されていたり、再発もされていたりするので決してよくありがちな「幻のデビュー作」とかではないのですが、こういう形でシングルコレクションに収録されていたりするのはやはりうれしく感じます。ちなみにこの「あした」の次のシングルは「ナキ・ムシ」でaikoらしい独特の展開が耳を惹くバラードナンバー。既にaikoの曲の世界観は確立されており、それだけに、なおさらデビュー作が彼女の作詞作曲による曲でなかったことが不思議で仕方ありません。
ちなみに今回のシングルコレクション、その並びはバラバラ。Disc1の1曲目は彼女のブレイク作となった「花火」からスタートするのですが、その次は2008年にリリースされた24thシングル「KissHug」への続きます。シングルコレクションによくありがちなリリース順に並べて彼女の歩みを知る、というよりもアルバム全体の流れを重視した形でしょうか。あえて言えばDisc1はアップテンポで明るいナンバー、Disc2はミディアムチューン中心となった構成になっているように感じました。
ただ時系列に沿わなくても彼女の過去の楽曲を全く違和感なく聴けてしまうというのは、それだけ彼女の楽曲がメジャーデビュー当初から完成されており、かつ、その完成度をデビューから20年、維持し続けているということでしょう。実際、前述のとおり、2枚目のシングルとなる「ナキ・ムシ」からaikoらしさは確立されていますし、最新シングル「ストロー」もインパクト十分のメロディーラインをしっかりと聴かせてくれています。正直、サウンド的には目新しさはほとんどなく、デビュー当初から今まで、愚直にピアノを中心としたポップチューンを聴かせてくれるのですが、それでも今なおその勢いに衰えを感じさせないのは、それだけ軸となっているメロディーラインと歌詞がしっかりとしている証拠でしょう。
もっともそんな中でもユニークさを感じたのはDisc4のカップリング曲集。明らかにシングル曲とは違う雰囲気の曲が並んでおり、たとえば裏打ちのリズムが特徴的な「こんぺいとう」、ギターサウンドを前に出した「どろぼう」、ジャジーなバラードナンバー「テレビゲーム」に、グルーヴィーなサウンドにソウルバラードという形容すらピッタリきそうな「ココア」など、独特でバラエティーに富んだ楽曲が並びます。ただどの曲もしっかりとポップな味付けがしており、シングル曲で彼女に惹かれた方でも戸惑うことなく楽しむことが出来る内容に仕上げています。ただ、このカップリング曲集では、ミュージシャンとしての彼女の実力をより感じさせる楽曲が目立ちました。
そんな訳で4枚組というフルボリュームながらも最後まで飽きることなく一気に聴けてしまうアルバム。あらためてaikoのシンガーソングライターとしての魅力を強く感じることが出来た作品でした。彼女はこれからもまだまだ名曲を世に送り出してくれそうですね。楽しみです。
評価:★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事
- 彼女の幅広い音楽性を感じる(2019.12.26)
- 80年代に一世を風靡した女性ロックシンガー(2019.12.28)
- 2つの異なるスタイルで(2019.12.14)
- ミュージシャンとしての矜持を感じる(2019.12.17)
- 2019年最大の注目盤(2019.12.13)
コメント
ゆういちさん、こんばんは。
メジャーデビュー曲がaikoの自作曲ではない理由ですが、「あした」は映画「トイレの花子さん」の主題歌として制作された曲で、aikoはこの曲を歌うシンガーとしてのスポット契約で本来はこの一曲で契約終了の予定だったんです。ところがそれを知った当時ほぼ大阪にしかいなかったaikoファンがこの曲のCDを買いまくり、「今度はミュージシャンとしてCDを出させてほしい」と嘆願したところ無事レコード会社と再契約して現在に至るとのことです(現にCDがめっちゃ売れてた当時に、大阪のタワレコのランキングで2位にランクインしていました)。
投稿: 通りすがりの読者 | 2019年8月26日 (月) 01時17分
>通りすがりの読者さん
返事がかなり遅くなってしまってすいません。情報ありがとうございます。なるほど、そういうことだったんですね。この曲、かなり違和感がありますよね・・・。
投稿: ゆういち | 2019年11月 2日 (土) 21時58分