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2019年8月19日 (月)

ブルースロック色がより強く

Title:NEW LOVE
Musician:B'z

先日、BUMP OF CHICKENのアルバム評の中で「BUMP OF CHICKENというバンドが何を求められているのか、メンバーがしっかりと理解しており、そしてそれにしっかりと答えることが出来た」ということを書きました。ミュージシャンとして長年活動を続け、さらに一定以上の人気を保持し続ける一番の秘訣は、この「ファンが自分たちに何を求めているかわかっており、かつそれにしっかりと答えられる」ということだと思うのですが、その点、おそらく良くも悪くもそういうことが出来る日本で一番のミュージシャンのひとつが間違いなくB'zではないでしょうか。昨年でデビュー30周年。いわば「大いなるマンネリ」な部分は否定できないのですが、長年、高い人気を保持し続ける大きな理由のひとつが、ファンがB'zに何を求めているのか、メンバーがよくわかっており、かつそれにしっかりと答えているというのが大きな要因であるのは間違いないでしょう。

今回、約1年半ぶりとなる新作なのですが、まず1曲目「マイニューラヴ」からギターリフを中心に構成されているハードロックテイストの強いナンバー。ある意味、リスナーがB'zに求めている「ロック」な部分を体現化したような楽曲からのスタートにリスナーはグッと惹きつけられます。

本作では比較的、このギターリフを主導としたハードなロックチューンが目立つ作品になっており、その後も「デウス」やへヴィーなサウンドが目立つ「Da La Da Da」など外連味なくロックなサウンドを聴かせる楽曲が目立ちます。ここらへん、下手なバンドだと中途半端に打ち込みを入れてきたり、下手に違うスタイルを目指そうとするのですが、B'zの場合は、ファンキーなリズムを入れたりホーンセッションを入れたりとそれなりに「色」をつけてくるのですが、コアの部分ではしっかりとB'zとして求められる要素を抑えており、聴いているリスナーを安心させます。ここらへん、彼らの非常に巧みな部分であるように感じます。

一方、もうひとつB'zらしさを感じさせるのはへヴィーなハードロック路線に反して意外と親しみやすく、かつ「歌謡曲」的であるメロディーライン。そこも今回のアルバムでもしっかりと抑えられています。例えば「兵、走る」もハードロック調のアレンジと反してメロディーはポップでわかりやすく、かつ前向きな歌詞が印象的ですし、「俺よカルマを生きろ」なども歌詞もメロディーも「歌謡曲」調な仕上がりとなっています。ここらへん、良くも悪くもJ-POP的であり、いわば「良心的なロックリスナー」からB'zが敬遠される要素のひとつではあるのですが、ただ一方では多くのリスナーに支持される大きな要因であるのも事実。そういうファンが彼らに求める要素を本作でもしっかりと抑えています。

ただ、そんな中でも今回のアルバムはタイトルの「NEW LOVE」が「自分たちが好きな音楽をやってますという気分をタイトルにした」と語っているように、比較的、彼らの作品の中では好き勝手に演った感の強いアルバムに仕上がっています。前作「DINOSAUR」もハードロック志向の強い作品になっていましたが、今回の作品はさらにハードロック寄り、もっといえばブルースロック寄りとなっておりサウンド的には泥臭さも感じます。あまり売れ筋を意識していないという意味とサウンドの方向性という意味では1994年の「The 7th Blues」に似たようなタイプの作品にも感じました。

しかし残念だったのは前作「DINOSAUR」でもメロディーのインパクトが薄いように感じたのですが、その傾向は今回の作品にも引き継いでしまいました。また、その結果でもあるのですが、全体的には終盤になるにつれて少々失速気味。最初は気持ちよく聴けていても、全55分というアルバムの長さとしてはちょうどよい長さではあるものの、終盤の方はちょっとダレてしまいました。そこらへん、やはりかつての勢いはなくなってしまったのかなぁ、ということも感じてしまった作品。ただ、最初から書いている通り、良くも悪くもB'zらしいアルバムではあるので、ファンなら安心して気持ちよく聴けるアルバムだったと思います。なんだかんだいってもこのスタイルを30年以上続けられるというのは彼らのすごさでしょう。まだまだその人気は続いていきそうです。

評価:★★★★

B'z 過去の作品
ACTION
B'z The Best "ULTRA Pleasure"
B'z The Best "ULTRA Treasure"
MAGIC
C'mon
B'z-EP
B'z The Best XXV 1988-1998
B'z The Best XXV 1999-2012

EPIC DAY
DINOSAUR

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