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2019年8月12日 (月)

Blood Orangeの自己紹介的なミックステープ

Title:Angel's Pulse
Musician:Blood Orange

イギリスはロンドンで活動するシンガーソングライター、デヴ・ハインズのソロプロジェクト、Blood Orangeの新作は純粋なアルバムではなく「ミックステープ」という形で配信オンリーのリリースとなる作品になりました。もともと友人やストリートなどで会った人に渡すために「ミックステープ」という形での作品を準備しており、今回はそんな作品をリリースすることにしたということ。演奏、制作、ミックスすべてをデヴ・ハインズ本人が手掛けており、そういう意味ではプライベイト的な要素の強い、よりデヴ・ハインズの「コア」な部分が明確となった作品と言えるのかもしれません。

今回のアルバムの大きな特徴として1曲あたりの短さが大きなポイントとなっています。全14曲入り32分という短さ。直近のアルバム「Negro Swan」も1曲あたり平均3分強という短さでしたが、今回はさらに短く、1曲平均2分強という長さになっています。「ミックステープ」の役割として「友人やストリートで会った人に渡す」ということでしたので、はじめての人でも聴きやすくするためBlood Orangeのエッセンス的な部分を抽出し短くまとめた、ということでしょうか。

基本的に作品は最初から最後まで美しくメロウなフレーズが耳に残る歌モノがメイン。1曲あたり2分程度の長さのため、そのメロディーに心奪われてしんみりと聴き入るうちに曲が終わり、次の新しいフレーズが飛び込んでくる、という構成に。そのため、最初から最後までひと時たりとも耳の離せない構成になっており、ただでさえ32分という短い長さの作品ですが、文字通り、あっという間に終わってしまう作品となっています。

そんな中でも特に美しく印象に残るのが、まずはMVも作成された「Benzo」という、日本語のようなタイトルの作品。Blood Orangeのハイトーンボイスと時折バックに流れる女性コーラスが美しく、胸をかきむしられるような作品。アメリカの女性シンガー、Justine Skyeが参加している「Good For You」も微妙にボーカルやサウンドにノイジーなエフェクトがかけられており、幻想的な雰囲気がまた美しさを醸し出しているナンバーとなっています。

中盤から後半にかけても「Gold Teeth」「Tuesday Feeling」ではこちらもアメリカの女性シンガーTinasheの歌声が印象に残るメロウなナンバーを聴かせてくれますし、ミディアムテンポのサウンドにファルセットのボーカルが美しく絡みつくようにその歌声を聴かせる「Berlin」の幻想的な美しさにも強く耳を惹かれます。そんな夢見心地な中盤から後半にかけての展開で、いきなりそんな空間を切り裂くように展開されるのがリズミカルでダークなラップがいきなり飛び込んでくる「Seven Hours Pt.1」。ちょっと予想外の展開に驚かされます。

ただもっともラストは、またメロウで夢見心地なナンバー「Take It Back」へ。さらにポップでメロディアスなメロがインパクトのある「Happiness」へと続き、最後はアウトロ的な「Today」で締めくくり。最後の最後までドリーミーな雰囲気でメロウに聴かせるポップな楽曲で締めくくられていました。

そんな訳で、Blood Orangeの魅力がしっかりと凝縮されていた作品になっていた本作。さらに1曲あたり2分程度という長さもあって、あっという間の内容で何度も聴けてしまう、そのサウンドと歌声が癖になってしまうような傑作アルバム。とても心地よい作品でした。

評価:★★★★★

Blood Orange 過去の作品
Freetown Sound
Negro Swan


ほかに聴いたアルバム

Kingfish/Christone "Kingfish" Ingram

ジャケット写真もミュージシャンの見た目もとにかくインパクトありまくりの彼は、若干20歳の若きブルースギタリスト。これからのブルース界を引っ張っていく存在ということで高い注目を集めており、本作でもレジェンドであるBuddy GuyやKeb Mo'といった大物ミュージシャンが参加するなど大きな話題となっています。そんな本作の前半は、王道ともいえるギターをゴリゴリと聴かせるブルースナンバーが並んでいます。目新しさはないものの、感情たっぷりで聴かせるブルースナンバーは、確かに次世代のブルースシンガーとしての期待の高さもわかる感じも。一方後半はブルースというよりもAORの色合いが強いナンバーが並んでおり、いい意味で既存のブルースに囚われない、あらたな方向性を感じさせる曲が並んでいます。正直、後継者難が続くブルースシーンの中での数少ない後継者として後生大事に持ち上げられている感もなきにしもあらずですが、ただ今後が楽しみなブルースシンガーであることは間違いありません。次回作以降も楽しみです。

評価:★★★★

Purple Mountains/Purple Mountains

本作がデビュー作となるアメリカのインディーロックバンド。各種メディアで軒並み高い評価を受けており、一躍注目のバンドとなっているようです。ただ作品的にはレイドバックした昔ながらのブルースロックといった感じ。非常に泥臭さを感じさせるサウンドで、日本では正直、あまりうけないタイプかも。一回りまわって新しい感じか?郷愁感ただようサウンドとメロが魅力的な部分はありましたが、個人的にはメディアの高い評価ほどはピンとは来ませんでした。

評価:★★★★

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