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2019年8月

2019年8月31日 (土)

聴かれることをより意識したポップなアルバム

Title:Our Secret Spot
Musician:the HIATUS

ELLEGARDENの活動休止中に細美武士が立ち上げたロックバンド、the HIATUS。その後、細美はMONOEYESとしての活動もスタート。さらにELLEGARDENの活動を再開させるなど、現在、なんと3つのバンドを掛け持ちという事態になっています。そうするとthe HIATUSの活動は徐々に縮小していくのか・・・と思えばさにあらず。ここに来て約3年ぶりというニューアルバムをリリース。その後もこのアルバムをぶら下げて全国ツアーをスタートさせるなど、むしろthe HIATUSとしての活動をさらに活発化させています。

前作「Hands of Gravity」は伊澤一葉のピアノの美しさが光る「ポップ」なアルバムとなっており、MONOEYESとの違いを明確としたアルバムとなっていました。今回のアルバムに関してもその方向性が続くアルバム・・・というよりもより顕著になったアルバムだったように感じます。MONOEYESも活動を続け、さらにはELLEGARDENの活動も再開される中で、the HIATUSの方向性がより顕著となった作品といえるでしょう。

今回もやはり耳に強く残るのが伊澤一葉のピアノの音色。序盤は比較的バンドサウンドを前に出してロックな作風の曲が並ぶのですが、まず彼のピアノが強く印象に残るのが「Time Is Running out」。バンドサウンドの中でもダイナミズムさと美しさを同居させたピアノの音が強く耳を惹きます。さらに印象に残るのが悲しげなピアノの調べが強く耳を惹く「Silence」でしょう。そのピアノの美しさが強く印象付けられるナンバーになっています。

その後は基本的に伊澤一葉のピアノが軸となっている曲が続きます。時には美しく、また「Firefly/Life in Technicolor」のような軽快なリズムを聴かせる楽曲もあったり。そして最後の「Moonlight」は優しくメロディアスなピアノの音色で包み込むような、ちょっと切なさも感じるポップチューンでアルバムは幕を閉じます。

そんなピアノを主軸とした今回のアルバム。全英語詞となっており洋楽テイストも強い作風となっているのですが、それよりなによりもポップなメロディーを聴かせるという点に強い主眼を置かれたアルバムのように感じます。前述の楽曲もいずれもポップなメロが強いインパクトを持っていましたし、ほかにも「Chemicals」も切ないメロディーラインが強いインパクトを持つ、細美武士のメロディーメイカーとしてのセンスが光る楽曲になっていました。

また今回のアルバムのユニークな試みとしてストリーミングで聴かれることを前提に、中音域以上のゆがんだ音を削り、全体的に音数を減らすという試みが行われたそうです。あえてストリーミングという環境にターゲットを絞った制作方針もユニークですし、またそれだけthe HIATUSは「多くのリスナーに聴かせる」ということをより意識した曲作りをした、ということなのかもしれません。

そういう意味でも前述の通り、ELLEGARDENの活動が再開された今だからこそ、the HIATUSの方向性がよりクリアになった本作。もっとも、あえてthe HIATUSのベクトルを変えた、というよりもELLEGARDENやMONOEYESのような「ロック」を前に出したバンドではできないような曲をthe HIATUSで行っている、という印象を受けます。それだけに今後もthe HIATUSの活動はコンスタントに続きそう。しかし、それにしても細美武士の活動の精力さはすごいなぁ。次はELLEGARDENの新作を聴きたい、かも。

評価:★★★★★

the HIATUS 過去の作品
Trash We'd Love
ANOMARY
A World Of Pandemonium
THE AFTERGLOW TOUR 2012
Keeper Of The Flame
Hands of Gravity

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2019年8月30日 (金)

ねっとりとしたB級アジアンな雰囲気

Title:The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC
Musician:VIDEOTAPEMUSIC

ちょっと奇妙な名前を持つミュージシャン、VIDEOTAPEMUSICのニューアルバム。当サイトで紹介するのはこれが2作目となるのですが、公式サイトによると「地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。」だそうで、非常に独特の音作りが特徴的なミュージシャンです。

そんな彼の新作のサウンドは、非常に湿気を帯びた空気感が特徴的。イメージとしては一昔前のアジアのB級映画といった感じでしょうか。ダブやラテンの要素を加えてねっとりとした感じにまとめあげたサウンドはダウナーでとてもけだるい雰囲気。ただ、ラテン要素を加えているとはいえ、どこか感じる無国籍感もまた、アジアンっぽさを感じさせます。そしてそんな音楽には同時にどこか懐かしさを感じさせるのも特徴的。「懐かしさ」といっても日本の田舎の風景、というよりは、ちょっと怪しい雰囲気を感じさせる都会の雑居ビルの中から流れてくるような、そんな雰囲気を感じさせる音楽が独特の魅力をはなっています。

彼の曲をはじめて聴いた前作「ON THE AIR」はインスト曲中心のアルバムになっていましたが、今回のアルバムではゲストが数多く参加したボーカル曲主体のアルバムになっていました。ご存じクレイジーケンバンドの横山剣や最近話題のシンガーソングライター、折坂悠太、さらにはceroの高城晶平など豪華なゲスト陣がズラリと並んで、楽曲にバリエーションを与えています。

例えばceroの高城晶平が参加した「BALL」ではミディアムテンポのけだるい雰囲気のナンバーなのですが、メロウさが加わり爽やかさも。Mellow Fellowが参加した「Cocktail Moon」はニューウェーブ風な軽快なリズムが流れるポップなナンバーで、ちょっと懐かしいシティポップの要素が強い楽曲になっています。

もっともそんな中で一番強いインパクトがあったのが横山剣がゲストに参加した「南国電影」でしょう。まさに上に書いたようなB級アジアンな怪しげな雰囲気がプンプン漂うナンバー。横山剣らしい歌謡曲的な要素も強く加えた楽曲になっており、良い意味でベタな感じが大きな魅力となっている楽曲に仕上がっています。

全体的にはインスト中心だった前作と比べると、歌モノが増えて聴きやすさが加わったような印象を受けます。また結果としてVIDEOTAPEMUSICとして伝えたいことがより強く伝わるようになったのではないでしょうか。前作同様、音の実験的な要素も強く感じられる点は良くも悪くも変わらないのですが、聴いていて不思議な感覚になるのも前作同様。B級アジアンな不思議な世界に入り込めるアルバムです。

評価:★★★★

VIDEOTAPEMUSIC 過去の作品
ON THE AIR


ほかに聴いたアルバム

太陽がいっぱいPlein Soleil~セルフカヴァー・ベストII/徳永英明

昨年リリースしたセルフカヴァーアルバムの第2弾。前作もアコースティックなアレンジでジャジーにまとめたカバーが多かったのですが、今回はより意識的にジャジーなアレンジにまとめたアルバムになっています。原曲が文句なしの名曲揃いなだけにジャズアレンジの本作ももちろん十分楽しめるアルバムではあるのですが、悪い意味でよくありがちなアレンジに仕上がっており、どこかのBGMあたりで流れてきそうな出来に・・・。まあ、無難といえば無難な内容なのですが・・・。

評価:★★★

徳永英明 過去の作品
SINGLES BEST
SINGLES B-Side BEST

WE ALL
VOCALIST4
VOCALIST&BALLADE BEST
VOCALIST VINTAGE
STATEMENT
VOCALIST 6
ALL TIME BEST Presence
Concert Tour 2015 VOCALIST&SONGS 3 FINAL at ORIX THEATER
ALL TIME BEST VOCALIST
BATON
永遠の果てに~セルフカヴァー・ベストI~

NO SLEEP TILL TOKYO/MIYAVI

様々なミュージシャンとのコラボ作を収録した「SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -」からわずか半年ぶりとなるMIYAVIのニューアルバム。ただしここ最近、このコラボ作が続いており、純然たるオリジナルアルバムとしては「FIRE BIRD」以来、約3年ぶりとなる新作となります。そんな久々となる本作。ファンキーなギターについては文句なしにカッコよさを感じさせてくれる一方、ここ最近の傾向であるエレクトロサウンドの多様は相変わらず。個人的にはもうちょっとゴリゴリのギターサウンドを全面に据えてくれたほうがよりカッコいいと思うのですが・・・。全体的にはポップなメロディーラインも増え、いい意味で聴きやすさも増した感があるのですが、もうちょっとよりギターサウンドでロッキンな仕上げにした方がMIYAVIのギタリストとしてのカッコよさが生きるような感じがすると思うんだけどなぁ。

評価:★★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD
ALL TIME BEST "DAY2"
SAMURAI SESSION vol.2
SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -

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2019年8月29日 (木)

1位返り咲き

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はロングヒット中のアルバムがいきなり1位に返り咲きました。

今週1位を獲得したのはのオールタイムベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」。先週の4位からランクアップし、7月15日付チャート以来7週ぶりの1位返り咲きとなりました。オリコン週間アルバムランキングでも今週32万7千枚を売り上げ、先週の4位からランクアップし1位を獲得しています。これは当初の予想以上に予約が殺到し、小売価格を大きく上回る金額で売買される状況が生じたため、初回生産盤を追加で予約販売。その追加販売分が今週、発送された影響から売上を大きく伸ばしたようです。

2位初登場は韓国の男性アイドルグループMONSTA Xの日本では2枚目となるアルバム「Phenomenon」。CD販売数2位、ダウンロード数52位、PCによるCD読取数35位と、ファンズアイテムとしてCDを買うような固定ファン層中心のヒットでしたが、見事ベスト3入りを果たしました。オリコンでは初動売上4万5千枚で2位獲得。日本版アルバムとしては前作「PIECE」の初動売上2万3千枚(3位)よりアップしています。

3位には、最近はすっかりカントリーという枠組みを超えて広い人気を確保しているアメリカの女性シンガーソングライター、Taylor Swift「Lover」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数17位を獲得。オリコンでも初動売上2万2千枚で3位に初登場。前作「Reputation」の2万8千枚(3位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にウカスカジー「金色BITTER」が初登場でランクイン。ウカスカジーはMr.Childrenの桜井和寿とEAST ENDのGAKU MCによるユニット。もともとサッカー好きの2人がFIFAワールドカップ2014を盛り上げる目的で結成されたユニットだったのですが、その後も活動を続いており、本作は配信オンリーでリリースされたミニアルバム。ダウンロード数で見事1位を獲得し、配信オンリーながらも4位にランクインさせてきました。

6位には九星隊「ONE STAR」がランクイン。九州を拠点に活動する男性アイドルグループで、これで「ナインスターズ」と読むようです。本作は1枚目となるアルバム。CD販売数は4位でしたが、その他のランクではいずれも圏外となり、総合順位はこの位置に留まりました。オリコンでは初動売上1万3千枚で4位にランクイン。

7位初登場は須田景凪「porte」。もともと「バルーン」名義でボーカロイドソフトを使用して楽曲を発表していたボカロPだったのですが、その後、須田景凪名義で活動をスタート。本作はそんな彼の2枚目となるEPとなります。CD販売数7位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数52位。オリコンでは初動売上7千枚で7位を獲得。前作「teeter」の5千枚(10位)よりアップ。

8位にはmilet「us」が初登場。「謎めいた経歴」が売りの女性シンガーソングライター。CD販売数10位、ダウンロード数5位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上4千枚で11位初登場。前作「Wonderland EP」の3千枚(18位)からアップしています。

初登場組最後は10位に男性アイドルグループCoLoN:「禁情」がランクイン。本作が初となるアルバム。「女心を女言葉で歌うジャンダーレスユニット」が売りだそうです。CD販売数で5位を獲得したものの、その他は圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上7千枚で6位初登場。

一方ロングヒット組では、まずRADWIMPS「天気の子」。今週は先週の2位から2ランクダウンの4位に。ただこれで6週連続のベスト10ヒットとなり、CD販売数8位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数2位といずれも上位をキープ。まだまだヒットは続きそう。さらにBUMP OF CHICKEN「aurora arc」も9位と先週の7位からダウンしたもののベスト10をキープ。ロングヒットを続けています。一方、先週ベスト10に返り咲いたあいみょん「瞬間的シックスセンス」は今週13位にダウンし、残念ながらベスト10返り咲きは1週のみに終わりました。とはいえ、まだ十分ベスト10を狙える位置にあり、これからの動向にも注目されます。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年8月28日 (水)

ヒゲダン躍進中

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は米津玄師旋風が吹き荒れたHot100でしたが、その米津玄師に負けず劣らず旋風を巻き起こしているのがOfficial髭男dism。今週はなんとベスト3に2曲が同時にランクイン。まさに躍進を続けています。

まず2位には「Pretender」がランクイン。ストリーミング数が14週連続1位をキープしているほか、You Tube再生回数が4位から3位、ダウンロード数が7位から5位にアップ。CD販売数は83位までダウンしてしまっていますが、PCによるCD読取数は5位につけており、ロングヒットを続けています。さらに3位には「宿命」が先週の4位からアップし初のベスト3入り。こちらもストリーミング数が3週連続2位をキープしているほか、ダウンロード数が5位から3位にアップ。You Tube再生回数も10位から8位にアップしています。さらに同曲はラジオオンエア数も2位を獲得しており、ヒットの大きな要因となっています。

一方、これに今週も負けていないのが米津玄師「馬と鹿」は今週、2位から4位にダウンしたもののダウンロード数は2週連続で1位をキープ。「Lemon」も5位からダウンしてしまいましたが10位にランクインし、2週連続2曲同時ランクインを果たしています。さらに彼が作詞作曲プロデュースを手掛けるFoorin「パプリカ」は今週も先週と変わらず9位をキープ。こちらもロングヒットを続けています。加えて今週はおなじく米津玄師作詞作曲プロデュースの菅田将暉「まちがいさがし」が先週の11位から8位にアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きで通算ベスト10記録を13週に伸ばしています。結果、今週は米津玄師がらみの曲がベスト10のうちなんと4曲同時にランクイン。米津玄師旋風もまだまだ続きそうです。

さて、一方で今週1位を獲得したのはHey!Say!JUMP「ファンファーレ!」。メンバーの山田涼介出演のテレビ朝日系ドラマ「セミオトコ」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位、Twitterつぶやき数6位、その他は圏外という結果に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上22万3千枚で1位初登場。前作「Lucky-Unlucky」の19万9千枚(1位)からアップ。

他の初登場組は5位にFANTASTICS from EXILE TRIBE「Dear Destiny」が初登場でランクイン。名前の通り、EXILEの弟分的な男性ボーカルグループ。本作は哀愁感たっぷりのバラードナンバー。CD販売数は2位だったもののストリーミング数26位、ラジオオンエア数48位、PCによるCD読取数24位、Twitterつぶやき数24位と伸び悩み、総合順位ではこの位置に。オリコンでは初動売上6万8千枚で2位初登場。前作「Flying Fish」の6万3千枚(2位)よりアップしています。

今週の初登場組はあと1曲のみ。6位初登場は韓国の男性アイドルグループPENTAGON「HAPPINESS」。CD販売数は3位だったものの、他はTwitterつぶやき数が25位にランクインしたのみであり残りは圏外。総合順位もこの位置に留まりました。オリコンでは初動売上4万4千枚で3位初登場。前作「COSMO」の3万8千枚(4位)からアップ。

一方ロングヒット組ではあいみょん「マリーゴールド」が先週からワンランクダウンながらも7位とベスト10をキープ。こちらもストリーミング数4位、You Tube再生回数6位などまだまだ上位にランクインしており、ロングヒットはまだ続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年8月27日 (火)

「ほっとけないよ」の大ヒットでおなじみ

Title:Single Collection and Something New
Musician:楠瀬誠志郎

シンガーソングライター楠瀬誠志郎のベストアルバム・・・・・・と言われても、若い世代の方にはおそらく「誰?」といった感じのミュージシャンかと思うのですが、アラフォー世代にとっては1991年に大ヒットを記録した「ほっとけないよ」のミュージシャン、と言われれば「ああ、あの人」と思う方が多いのではないでしょうか。シンガーとしての彼は残念ながらこの曲の一発屋といっても仕方ない状況ではあるのですが、「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」を郷ひろみがカバーしてスマッシュヒットを記録したため、この曲も知っている、という方も少なくないかもしれません。また、90年代から2000年代にかけては数多くのシンガーに曲を提供し、むしろ作家としての活動が目立ちました。

そんなアラフォー世代にとっては懐かしいシンガー楠瀬誠志郎のベスト盤を今回あらためて聴いてみた最大の理由は、個人的にこの「ほっとけないよ」が大好きだったから。ちょうどその頃、高校生だったのですが、リアルタイムでかなりはまっていました。今回のベスト盤で久しぶりにこの曲を聴いてみたのですが、リリースから28年が経過した今、さらにアラフォーとなった今の私の耳で聴いても素直にいい曲だなぁ、と強く感じました。AメロからBメロ、さらにサビに至る曲のどんどん盛り上がっていく展開に聴いていてワクワクさせられるような楽曲になっており、特にサビのメロのインパクトも耳を惹きます。

ただ、正直言うと今回のベストアルバムを聴いて、楠瀬誠志郎に対して持っていたイメージが若干変わりました。私が前から知っていた彼の曲は、大ヒットした「ほっとけないよ」と「僕がどんなに君が好きか、君は知らない」、そして「ほっとけないよ」の次のシングル「君と歩きたい」やドラマ主題歌としてスマッシュヒットを記録した「しあわせはまだかい」くらいでした。いずれも爽やかなポップチューンで、その当時のイメージとしては、槇原敬之やKAN、あるいは東野純直あたりに連なる爽やかなポップ系の男性シンガーソングライターというイメージを持っていました。

しかし今回のベスト盤を聴いて感じたのは、特に彼の初期のナンバーについてはAORやシティポップ、もっと言えば山下達郎からの影響を強く感じさせました。もともとは山下達郎のバックコーラスがキャリアのスタートだったようなのでその傾向は当然といえば当然なのかもしれません。ただし初期のナンバー、もっと言えば大ヒットした「ほっとけないよ」以前の楽曲についてはその傾向が強すぎるあまり、単なる山下達郎のフォロワーになっており、楠瀬誠志郎としての個性がほとんど感じられませんでした。ほかにもカップリング曲となりますが「一時間遅れの僕の天使」などは完全に大瀧詠一そのまんまといった感じの楽曲になっていますし、「ほっとけないよ」以前の曲に関しては正直なところ、少々厳しいな、という印象を受けました。

それだけにこういう形でシングル曲や彼の代表曲をまとめて聴くと、ようやく「ほっとけないよ」で楠瀬誠志郎としての色を出すことが出来、そして、それが大ヒットにつながったんだな、ということを今回、強く実感しました。ただ残念ながらこの曲を超える曲を出すことが出来ず、結果として「一発屋」として終わってしまいました。確かに、このベスト盤を聴くと、「ほっとけないよ」を超えるインパクトを持った曲は「僕がどんなに君が好きか、君は知らない」くらいで、そのほかの曲に関してはいい曲だとは思うけど、ヒットするには厳しいかも、という印象を持ってしまいました。

ベスト盤全体としては決して悪いわけではありませんし、メロディーメイカーとしての実力も間違いなく感じられます。私のように「ほっとけないよ」が好きだったというアラフォー世代にはお勧めできるベスト盤と言えるでしょう。ただ、幅広く積極的に勧められるか、と言われると正直若干微妙な部分も・・・。ただ「ほっとけないよ」は本当に名曲だと思うので、若い世代もぜひとも聴いてほしいのですが・・・。

評価:★★★★

楠瀬誠志郎 過去の作品
LET'S SWEET GROOVE

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2019年8月26日 (月)

残暑激しい日のステージ

あいちトリエンナーレ2019 Chilla: 40 Days Drumming&円頓寺デイリーライブ

U-zhaan/butaji

会場 なごのアジール/円頓寺駐車場 日時 2019年8月22日(木)

その展示内容でいろいろと物議をかもしているあいちトリエンナーレ2019。愛知県内の複数会場で主に現代美術の作品を展示している国際芸術祭ですが、先日はその中でのイベントのひとつ、サカナクションの「暗闇」に参加してきました。今回のトリエンナーレでは数多くのポピュラーミュージックに関するイベントも予定されており、今回紹介するのはそんなイベントのひとつです。

正直言うと、「現代美術」自体には全く興味がなかったので、今回のトリエンナーレは基本的に音楽系のイベントだけ参加するつもりでした。ただ、いろいろと物議をかもして話題になっているということもあり、なんとなくせっかくだから、ということもあり1DAYパスを購入し、美術館などの展示物もめぐってみたのですが・・・これが予想外に楽しく、非常に興味深く見て回ることができました。

現代美術というとイメージ的には「よくわからない難解なもの」というイメージがありました。確かに展示物を見ていて「?」が何個も浮かぶような展示物も少なくはありませんでした。ただ一方で、「展示物」といっても単なる絵画やモニュメントとかではなく、映像や音楽を駆使している展示物も多く、作者の意図がすべて理解できなくても、見ていて純粋に楽しめる展示物が少なくありませんでした。またそんな展示物が美術館のみならず、街中の様々なところに展示しており、それを巡るだけで、いわば博覧会のパビリオンをまわっているような感覚が。そんな街歩きも楽しめるイベントとなっていました。

また、作家のテーマ性は時として哲学的で難解なテーマも少なくないのですが、作品としては概して理屈っぽく、ある意味、感性が求められるような一般的な絵画などに比べると、実はテーマ的にわかりやすい展示物も少なくなく、そういう意味でも楽しむことが出来ました。このイベント、私のように芸術に全く素養がなくても楽しめるイベントだったと思います。個人的には結構はまってしまいました。今回、見逃した展示物も何個かあったため、また足を運びたいです!

で、そんな中で紹介する音楽系の展示物、一つ目は名古屋駅の近くの円頓寺商店街の中の「なごのアジール」という場所で行われるタブラ奏者、U-zhaanが、Chilla(チッラー)と呼ばれる北インドの古典音楽家に伝わる厳格な修行の様子をそのまま公開するという「展示物」。この修行は小屋にこもって40日間音楽の演奏に没頭するという修行だそうですが、今回のイベントでは8月1日から9月9日までの12時から20時までの間、ひたすらU-zhaanがタブラの練習を続け、その模様を公開するというちょっと狂った企画。いや、世代的にはこれ「電波少年の企画です」と言われても違和感がない感じも・・・。

会場はワンルーム程度のスペース。最初、やはり修行はガラス越しに見るのかな、と思ったのですが、実際にはU-zhaanが練習を行っている部屋にまで入れて、彼とは簡単なロープ柵を隔てた程度でその模様を観覧することが出来ました。

U-zhaanはインド音楽を収録したiphoneの演奏に沿って、ひたすら一心不乱にタブラをたたき続けるという練習を続いていました。そのため、感覚的には一種のU-zhaanのライブのような感覚でその演奏を楽しむことが出来ます。インド音楽自体、変拍子の連続で複雑なリズムが特徴的なのですが、U-zhaanのタブラの演奏も、2つとして同じリズムが登場しないような複雑な演奏がひたすら淡々と進められます。ただ、単なる練習とは思えないような力強い演奏に、強く惹きつけられ、その演奏に聴き入りました。

当たり前ですが、時折休憩をはさむみたいで、20分程度練習が続くと、休憩ということで一度、その場を離れます。下の写真はそのタイミングで演奏した会場の模様。まさにライブ感覚で楽しめた「展示物」でとても満足度の高い内容でした。ちなみにU-zhaanは終始下を向いた状況でトークなども全くなかったのですが、時折、にやりと笑っていたりしたのですが、あれは満足のいく演奏のできた瞬間とかでしょうか??

Uzhaan_aichi1 

Uzhaan_aichi2 

続いて19時からは円頓寺駐車場に設けられた特設ステージで行われたライブへ。「デイリーライブ」と名付けられ、期間中の木曜日から日曜日にかけて毎日開催されるフリーライブ。この日はbutajiという男性シンガーソングライターのステージでした。butajiというミュージシャンは完全に初耳のミュージシャンだったのですが、この日、ちょうどU-zhaanを見に行ったということもあり、デイリーライブにも足を運ぶことにしました。

ステージはアコギ1本をかかえたbutaji本人と、あとエレキギターを抱えたギタリストの2人によるステージ。音楽ももちろんはじめて聴いたのですが、まずスタートしたのはしんみり聴かせるAOR。メロウな作風のシティポップといった感じなのですが、ボーカルは時折、力強く歌い上げるようなスタイルも聴かせてくれます。失礼ながらも普通のおっちゃんのような風貌ということもあり、楽曲はシティポップ的な爽やかさを感じつつ、同時に、どこかねっちりと暑さを感じさせるような楽曲でした。

Butaji_aichi 

一方ではその後の楽曲に関してはAORというよりもフォークの影響が強いような作品も。この日は途中、新曲ということで(・・・といってもどの曲もはじめて聴いた曲ばかりなのですが・・・)「same thing same time」と「中央線」という曲を披露。こちらはどちらもフォーキーな雰囲気のナンバーで、特に「same thing same time」では彼のファルセットボイスで美しく聴かせるボーカルも印象に残ります。

本編は全8曲。後半はAOR調のナンバーでしんみりと締めくくり。その後はアンコールが起き、再度の登場となったのですが、こちらは予想外に、いままでの雰囲気とは異なり、サポートがヘヴィーなギターサウンドを奏でる中、マイク1本でパワフルに、時にはシャウトも入れて力強く歌い上げるロッキンなナンバーに。最後の最後にちょっと異なる印象をリスナーに与え、約1時間のステージは幕を閉じました。

タイプ的にはAOR、シティポップの枠組みに入りそうなシンガーソングライター。ただ、一方ではそんな中でソウルフルなボーカルを入れてきたり、非常に暑さを感じさせるスタイルも特徴的。この爽やかさと暑さを同居させたようなスタイルが特徴的かつ彼の魅力のように感じます。この日は一時期ほどの酷暑は去ったものの、残暑激しい暑い日だったのですが、彼のようなスタイルのステージが夏の日にピッタリマッチしていたと思います。

個人的にはあまり期待していなかったのですが予想以上に楽しめたステージで満足して会場を去ることが出来ました。1時間という時間もフリーライブとしては長めですし、なにげに良い感じのイベント。今後も10月のトリエンナーレ閉幕時まで様々なミュージシャンによるフリーライブが予定されていますが、また足を運びたいです。

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2019年8月25日 (日)

デビュー20周年のシングルコレクション

Title:aikoの詩。
Musician:aiko

メジャーデビュー20周年を記念してリリースされたaikoの4枚組ベストアルバム。彼女のベストアルバムといえば2011年にベストアルバム「まとめⅠ」「まとめⅡ」が2枚同時にリリースされていますが(それからもう8年もたつのか・・・)、本作は彼女のシングル曲を網羅的に収録したシングルコレクション。Disc1から3にメジャーデビュー作「あした」から現時点での最新シングル「ストロー」までの全シングルが網羅され、Disc4はカップリング曲をあつめたアルバムとなっています。

そんなシングルコレクションの中で、良くも悪くも目立つのはDisc1の10曲目に収録されているメジャーデビュー作「あした」でしょう。ファンならご存知かと思いますが、この曲は小森田実が作詞作曲を手がけており、aikoの曲の中で唯一、彼女以外が楽曲を手がけた曲。そのためメロディーラインもaikoの曲の中ではかなり異質。疾走感ある伸びやかなポップチューンとなっているのですが、独特のグルーヴ感あるaikoの曲とはかなり異なり、良くも悪くもあっさり風味の作品になっています。彼女はこの曲の前に既にインディーズでCDもリリースしており、なぜ、メジャーデビュー作を他のライターが作った曲を歌わされるようになったのかいまひとつ不明なのですが、独特のあのメロディーが売れない、と思われたのか・・・。ただ、私、この曲をリアルタイムで聴いていたのですが、この曲がリリースされた段階で既に「大阪で話題のシンガー」のようにかなりプッシュされていたように記憶しています。それだけにあえてデビュー作だけ作風を変えさせられた理由は不明です。

ただ、実は私、この曲も結構好きだったりして、まあ、デビューアルバムにも収録されていたり、再発もされていたりするので決してよくありがちな「幻のデビュー作」とかではないのですが、こういう形でシングルコレクションに収録されていたりするのはやはりうれしく感じます。ちなみにこの「あした」の次のシングルは「ナキ・ムシ」でaikoらしい独特の展開が耳を惹くバラードナンバー。既にaikoの曲の世界観は確立されており、それだけに、なおさらデビュー作が彼女の作詞作曲による曲でなかったことが不思議で仕方ありません。

ちなみに今回のシングルコレクション、その並びはバラバラ。Disc1の1曲目は彼女のブレイク作となった「花火」からスタートするのですが、その次は2008年にリリースされた24thシングル「KissHug」への続きます。シングルコレクションによくありがちなリリース順に並べて彼女の歩みを知る、というよりもアルバム全体の流れを重視した形でしょうか。あえて言えばDisc1はアップテンポで明るいナンバー、Disc2はミディアムチューン中心となった構成になっているように感じました。

ただ時系列に沿わなくても彼女の過去の楽曲を全く違和感なく聴けてしまうというのは、それだけ彼女の楽曲がメジャーデビュー当初から完成されており、かつ、その完成度をデビューから20年、維持し続けているということでしょう。実際、前述のとおり、2枚目のシングルとなる「ナキ・ムシ」からaikoらしさは確立されていますし、最新シングル「ストロー」もインパクト十分のメロディーラインをしっかりと聴かせてくれています。正直、サウンド的には目新しさはほとんどなく、デビュー当初から今まで、愚直にピアノを中心としたポップチューンを聴かせてくれるのですが、それでも今なおその勢いに衰えを感じさせないのは、それだけ軸となっているメロディーラインと歌詞がしっかりとしている証拠でしょう。

もっともそんな中でもユニークさを感じたのはDisc4のカップリング曲集。明らかにシングル曲とは違う雰囲気の曲が並んでおり、たとえば裏打ちのリズムが特徴的な「こんぺいとう」、ギターサウンドを前に出した「どろぼう」、ジャジーなバラードナンバー「テレビゲーム」に、グルーヴィーなサウンドにソウルバラードという形容すらピッタリきそうな「ココア」など、独特でバラエティーに富んだ楽曲が並びます。ただどの曲もしっかりとポップな味付けがしており、シングル曲で彼女に惹かれた方でも戸惑うことなく楽しむことが出来る内容に仕上げています。ただ、このカップリング曲集では、ミュージシャンとしての彼女の実力をより感じさせる楽曲が目立ちました。

そんな訳で4枚組というフルボリュームながらも最後まで飽きることなく一気に聴けてしまうアルバム。あらためてaikoのシンガーソングライターとしての魅力を強く感じることが出来た作品でした。彼女はこれからもまだまだ名曲を世に送り出してくれそうですね。楽しみです。

評価:★★★★★

aiko 過去の作品
秘密
BABY
まとめI
まとめII

時のシルエット
May Dream
湿った夏の始まり

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2019年8月24日 (土)

メジャーを離れて

Title:モメントl.p.
Musician:クラムボン

2015年にアルバム「triology」のリリースを最後にメジャーシーンから離れたクラムボン。その後はインディーシーンに活動の拠点を移して活動をスタート。その後リリースされた「モメントe.p.」はライブ会場と、さらにその活動に賛同する商店に直接販売するというスタイルをあえて取りました。最近はインディーズも実質上はメジャー流通と同じく、多くのCD屋の店頭で普通に買うことが出来ることがほとんどなのですが、今回の彼女たちがとったスタイルは完全にそんなインディーシーンからも一線を画した、流通形態まですべて自分たちで管理するという、ある意味本当の「インディーズ」とも言えるスタイルを取っています。

残念ながら「モメントe.p.」は販売店が非常に限定(それもCD屋とかではなく、街の雑貨屋のような店舗で販売されている)ため、まだ聴いていません。しかし今回リリースされた、その「モメントe.p.」の作品から楽曲をピックアップし1枚にまとめた「モメントl.p.」は「モメントe.p.」と同様、フィジカルが限定店舗で販売される形となっているのですが、サブスクリプションでの配信もスタート。そのため、久しぶりにクラムボンの新作を聴くことが出来ました。

そんな訳でリリース形態的にかなり挑戦的な試みである「モメントe.p.」の楽曲なのですが、楽曲の内容自体はむしろポップな色合いが強くなっているように感じます。メジャー最終作となった前作「triology」はポップな色合いながらも様々な作風の楽曲も収録され、挑戦的な色合いも濃いアルバムに仕上がっていました。しかし今回の作品は挑戦的な流通形態とは裏腹に、楽曲自体はむしろ比較的シンプルで、クラムボンらしい心地よいポップチューンが目立ったように感じます。特にアルバムの前半に関しては、デビュー直後の彼女たちを彷彿させるような、ピアノやバンドサウンド主体の素朴なポップチューンが目立ちました。ピアノを主軸とした軽快なリズムが爽やかで楽しい「Lush Life!」に、ピアノポップにホーンセッションを取り入れて明るさを増した「Prosit!」「Flight」は分厚いシンセの音が響くナンバーとなっていますが、基本的には爽やかなピアノが耳を惹くポップチューンになっていますし、「希節」もアコギとストリングスで郷愁感あふれる、しんみり聴かせる楽曲となっています。

一方で後半は音楽的にも実験的な楽曲も耳を惹きます。エレクトロサウンドを全面的に取り入れた「WARP」「nein nein」では少々アバンギャルド風なサウンドも目立ちます。ただ、目立ってポップスの枠組みから外れようとしているサウンドはこの程度で、ラストを締める「Slight Slight-e.p.ver.」もピアノとバンドサウンドでしんみり聴かせるポップナンバーに。もともとオリジナルバージョンは2015年に日本武道館公演限定でリリースされた「幻」とも言えるシングル曲だったのですが、切なさを感じるメロディーラインは十分、通常のシングル曲としてヒットポテンシャルがあるくらいの出来栄えに仕上がっています。

メジャーシーンを離れてからのアルバムで、自由度も高い制作スタイルだったとはいえ、決してポップであることから逃げることはなく、むしろメジャー時代以上にポップであることに向き合った、ポップミュージシャンとしてのクラムボンの魅力あふれる作品に仕上がっていました。そもそも彼女たちのメジャー離脱ですが、メジャー最後のリリースとなった「triology」はオリコンで最高位13位を記録しており、決して人気的に落ち込んでいた訳ではありません。そういう意味でもミュージシャンとしての勢いは決して衰えた状況ではなく、今回のアルバムを聴く限りにおいてはむしろ脂ののっている状態、に近いのかもしれません。「モメントe.p.」の方は入手のハードルが少々高いのですが、一方、本作はサブスクリプションで聴くことが出来、容易に楽しむことが出来るアルバムになっています。そういう意味でも比較的広い方にお勧めできるポップアルバムに仕上がっていました。メジャーから離れてしまい、そういえばクラムボンって最近聴いていないなぁ・・・という方にも久しぶりにチェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★

クラムボン 過去の作品
Re-clammbon2
JAPANESE MANNER ep
2010

ワーナーベスト
columbia best

3peace2
LOVER ALBUM 2
triology


ほかに聴いたアルバム

マリアンヌの奥儀/キノコホテル

前作「プレイガール大魔境」が企画盤的な内容であったため、純粋なオリジナルアルバムとしては約3年ぶりと久々となるキノコホテルの新作。「踊れるキノコホテル」をコンセプトとしてアルバムだそうで、ディスコチューンの「ヌード」をはじめ、リズミカルな作品も目立ち、全体的にはポップで聴きやすい内容に仕上がっています。一方でキノコホテルらしい妖艶な雰囲気もしっかりと健在。いい意味でキノコホテルとしての魅力を残しつつ、よりポップで広い層に訴求力のある作品に仕上げられていたように感じました。

評価:★★★★★

キノコホテル 過去の作品
マリアンヌの憂鬱
マリアンヌの休日
クラダ・シ・キノコ
マリアンヌの恍惚
マリアンヌの誘惑
キノコホテルの逆襲
マリアンヌの呪縛
マリアンヌの革命
プレイガール大魔境

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2019年8月23日 (金)

ドリーミーな世界観が前面に

Title:King's Mouth:Music and Songs
Musician:The Flaming Lips

途中、ベスト盤のリリースはあったものの、オリジナルアルバムとしては約2年半ぶりとなるThe Flaming Lipsのニューアルバム。今回のアルバムはもともと、今年4月に行われた年に1度のレコードの祭典、レコード・ストア・デイでアナログ盤として4,000枚限定でリリースされた作品。このアルバムは、The Flaming Lipsのフロントマンでもあるウェイン・コインのアート作品「King's Mouth」のサントラ的な位置づけを持つアルバムだそうで、ほぼ全編にわたり、元The Clashのミック・ジョーンズがナレーションとして参加。リスナーを「King's Mouth」の世界へと誘導しています。ちなみにこの「King's Mouth」なる作品はインスタレーションによる作品だとか。インスタレーションとはWikipediaによると「ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術」と定義付られているのですが、この「King's Mouth」という作品は前衛芸術家としても活躍しているウェイン・コインによる、非常にシュールな作品に仕上げられているそうです。

そのこのアルバムの元となる「King's Mouth」なる作品については私は見ていないのですが、「シュール」というその作品に対する評価に合ったような、楽曲全体として非常にドリーミーな作風に仕上がっていました。アルバムはミック・ジョーンズのナレーションからスタートするのですが、それに続く「The Sparrow」もアコースティックなサウンドにスペーシーなエフェクトがかけられてメロディアスながらも幻想的な雰囲気の楽曲に。続く「Giant Baby」もミック・ジョーンズのナレーションからスタートし、それに続く楽曲もゆっくりと、まるで夢の世界を歩いていくような、エレクトロサウンドとアコースティックなサウンドのバランスが絶妙な作品に仕上がっています。

その後もバンドサウンドで不穏さを醸し出す「Feedaloodum Beedle Dot」やコーラスを用いてダイナミズムとドリーミーな雰囲気を出している「Funeral Parade」、ストリングスやピアノをバックに歌われるハイトーンボイスのボーカルで夢のような世界を作り上げている「Mouth of the King」など、もともとThe Flaming Lipsというバンドはもともとドリーミーなサイケポップを奏でるバンドなのですが、その方向性がより強調されるような世界観の楽曲が並んでいます。

そのため全体的にドリーミーなサウンドが前に押し出されメロディーラインとしてさほどはっきりとインパクトのあるポップな作風の曲は少ないのですが、それでもしっかりとThe Flaming Lipsの魅力であるポップでキュートなメロはアルバムの中の要所要所で楽しむことが出来ます。例えば「How Many Times」もドリーミーなサウンドの中でとても優しくメロディアスでポップなメロディーが耳を惹きますし、MVも作成された「All for the Life of the City」も、ハープの音色や鳥の声などを取り入れて夢のような世界観をサウンドで構築しつつも、メロディーラインはポップでとても心地よいものに仕上げています。

アルバムの最後を締めくくる「How Can a Head」もストリングスとシンセの音色でドリーミーな空間を作りつつ、彼ららしいキュートでポップなメロディーをしっかりと聴かせるナンバーになっており、アルバム全体を締めくくっています。The Flaming Lipsらしいサイケポップな作品に仕上げられていました。

アルバム全体としてはやはり「King's Mouth」というアート作品のサントラという位置づけからでしょうか、正直言ってわかりやすいインパクトや派手さはあまりありません。ただ一方、サントラというコンセプトがはっきりしていることもあってアルバム全体としてはまとまりがあり一貫性あるサウンドが楽しめるアルバムに仕上がっていたと思います。また、ドリーミーなサウンドという方向性をベースにしながらもサイケポップというThe Flaming Lipsの魅力をしっかりと生かしている作品になっていたように感じました。

前作「Oczy Mlody」はサイケなサウンドに正直、最後の方は聴いていて疲れてしまった作品になっていたのですが、今回は40分程度という長さもあり、またアート作品を生かすためか、音的には抑えめ気味な構成として仕上がっていたため、いい意味でアルバム全体としてもすっきりとしてまとまっていた内容に仕上げられていたように感じました。彼ららしいとても心地よいドリーミーなアルバムとなっていた本作。その世界観を最初から最後まで楽しめた傑作アルバムと言えるでしょう。

評価:★★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends
Oczy Mlody
GREATEST HITS VOL.1


ほかに聴いたアルバム

Order In Decline/SUM 41

カナダ出身のパンクバンドSUM 41の約3年ぶりとなるニューアルバム。パンク・・・というよりはメロコアやハードロックの色合いが強い楽曲が並んでいるのですが、哀愁感あふれるメロディーラインはインパクトはあり良い意味で日本人受けしそうなイメージも。全体的にはちょっと似たタイプの曲が多いかなぁ、という印象も受けるのですが、全36分という短さもあり、飽きることなく一気に聴き切れるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

SUM 41 過去の作品
UNDERCLASS HERO

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2019年8月22日 (木)

「天気の子」もロングヒットなるか

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週1位はKinki Kidsの堂本剛のソロアルバムが獲得です。

1位は堂本剛がENDRECHERI名義でリリースしたソロアルバム「NARALIEN」が獲得。ENDRECHERIではかなりファンクに傾倒した作品を聴かせてくれているようですが、新作のタイトルは、ファンクに欠かせない要素である宇宙と自身の出身地、奈良県を掛け合わせたタイトルだそうです。CD販売数1位、PCによるCD読取数は10位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万枚で1位獲得。前作「HYBRID FUNK」の7万7千枚(1位)よりダウン。

そして2位にはRADWIMPS「天気の子」が先週の3位よりアップし、この位置につけてきました。ダウンロード数及びPCによるCD読取数では1位を獲得。CD販売数も8位から6位にアップ。前作「君の名は。」は映画に合わせてアルバムもロングヒットを記録しました。映画「天気の子」も大ヒットを記録しているようですが、音楽の方も前作同様のロングヒットとなるのでしょうか。

3位初登場はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループSUPER★DRAGON「3rd Identity」。タイトル通り、これが3枚目となるアルバム。CD販売数は2位でしたが、ほかはランク圏外ということで総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上3万1千枚で2位初登場。前作「2nd Emotion」の3万6千枚(4位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に倉木麻衣「Let's GOAL!~薔薇色の人生~」がランクイン。CD販売数は4位でしたが、PCによるCD読取数37位に留まり総合順位ではこの位置に。オリコンでは初動売上1万9千枚で3位初登場。直近作は四季をテーマとしたコンセプトアルバム「君 想ふ~春夏秋冬~」で初動売上2万枚(3位)でしたので、同作からは微減。オリジナルアルバムとして前作「Smile」の初動2万1千枚(4位)からもダウンとなっています。

6位は女性声優でAqoursのメンバーでもある斉藤朱夏のソロデビューミニアルバム「くつひも」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数50位を獲得。オリコンでは初動売上1万3千枚で5位初登場。

初登場最後、9位には女性2人組アイドルユニットClariS「SUMMER TRACKS-夏のうた-」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数で8位を獲得。タイトル通り、夏をテーマとした企画盤的なミニアルバムで、オリジナル作のほか、カバー曲にも挑戦しています。オリコンでは初動売上5千枚で8位初登場。前作「Fairy Party」の1万1千枚(8位)から大きくダウン。

今週、初登場盤は以上でしたが、一方ではロングヒットも目立ちました。まずはのベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」。今週は7位から4位に再びランクアップ。まだまだロングヒットは続きそうです。またBUMP OF CHICKEN「aurora arc」も7位にランクインし、今週6週目のベスト10ヒットに。こちらも先週の10位からランクをあげており、根強い人気を伺わせます。

一方、ベスト10返り咲き組として、なんと今週、あいみょん「瞬間的シックスセンス」が先週の15位から10位にランクアップ。6月10日付チャート以来11週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これで通算15週目のベスト10ヒットとなりました。また菅田将暉「LOVE」も先週の13位から8位にランクアップ。こちらは2週ぶりのベスト10ヒットを記録しています。

今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年8月21日 (水)

米津玄師旋風ふたたび

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は米津玄師の新曲がランクインした影響もあり、米津玄師旋風が吹き荒れるチャートとなりました。

まず2位に米津玄師「馬と鹿」がランクイン。TBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」主題歌。9月11日にCDリリース予定ですが、先行配信によりダウンロード数1位、ラジオオンエア数4位、Twitterつぶやき数18位で総合順位では見事2位初登場となっています。また、このヒットにつられてか、「Lemon」も先週の13位から5位にランクアップ。5週ぶりにベスト10返り咲きを果たしています。特にダウンロード数が13位から6位にアップ。Twitterつぶやき数も50位から4位に大きくアップしており、今回のベスト10返り咲きの大きな要因となっています。

さらに今週は、彼が作詞作曲プロデュースを手がけたFoorin「パプリカ」も12位から9位にアップ。7月15日付チャート以来、6週ぶりのベスト10返り咲きに。ちなみに同作を米津玄師が歌ったバージョンも公開され大きな話題に。配信やCD販売等はないながらも、You Tube再生回数1位、Twitterつぶやき数2位という結果のみで18位にランクインしています。

この米津玄師に負けていないのがOfficial髭男dism「Pretender」は先週から変わらず3位をキープ。ストリーミング数は今週で13週連続の1位となり、ロングヒットを続けています。さらに「宿命」も先週から変わらず4位をキープ。ストリーミング数は先週から引き続き2位を獲得しており、ストリーミング数ではOfficial髭男dismが2週連続1、2フィニッシュを記録しています。

さらにロングヒット勢ではあいみょん「マリーゴールド」が先週の8位から6位にアップ。ストリーミング数も先週から変わらず3位をキープしており、相変わらずの強さを見せつけています。今週はとにかく米津玄師をはじめ、ロングヒット勢が目立つチャートとなりました。

一方、今週1位を獲得したのはAKB48の姉妹グループ、大阪を拠点に活動を行っているNMB48「母校へ帰れ!」が獲得。CD販売数は1位ながらも他はラジオオンエア数99位、PCによるCD読取数17位、Twitterつぶやき数10位にとどまりましたが、総合順位では1位獲得。オリコン週間シングルランキングでは初動売上19万5千枚で1位初登場。前作「床の間正座娘」の19万6千枚(1位)から微減。

今週、初登場はもう1曲のみ。8位にサザンオールスターズ「愛はスローにちょっとずつ」が先週の94位から大きくランクアップし、ベスト10入り。ダウンロード数3位、ラジオオンエア数1位、Twitterつぶやき数で51位を獲得。この曲、CD形態と配信でのリリースとなったのですが、CDはデビュー40周年を記念して販売された書籍「SOUTHERN ALL STARS YEAR BOOK『40』」への付属という形でのみのリリースに。通常のCD流通を通さない形での発売となっており、一応、おそらく年配層のファンを考慮してCDという形は残したのでしょうが、既にシングルCDにミュージシャンがほとんど価値を置かなくなったことがよくわかるリリース形態となりました。

今週のHot100は以上。Hot Albumsはまた明日!

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2019年8月20日 (火)

アフリカへのラブレター

Title:The Lion King:The Gift
Musician:Beyonce

先日から日本でも公開となり話題となっているディズニー映画の実写版「ライオン・キング」。映画にはなんとビヨンセが声優として参加しているのですが、その彼女が映画からインスパイアされ、プロデュース、キューレイターとして作成されたアルバム「The Lion King:The Gift」が急きょリリースされました。

アルバムは一般的なサントラ盤・・・ではなく、映画から影響を受けて作成された楽曲を収録したコンピレーションアルバム。以前、映画「ブラック・パンサー」にちなんだ、同じようなコンピレーションアルバムがリリースされましたが、基本的なスタイルはそちらに近い感じでしょうか。もちろん、Beyonce本人が参加している楽曲がメインとして収録されているのですが、とにかく参加しているミュージシャンが豪華。旦那であるJay-Zはもちろん、Kendrick LamarやPharrell Williamsなどといったミュージシャンが参加しています。

さらに今回のアルバム、「The Gift」というタイトルは、映画「ライオン・キング」の舞台となったアフリカン・ミュージックに対して敬意を示し、「アフリカに対するラブレター」を意味するものだそうです。そのため今回のアルバムにはYemi Alade、Burna Boy 、Tiwa Savageといった主にナイジェリアで活動するミュージシャンたちも数多く参加しています。

そのため全体的に今回のアルバムではトライバルな雰囲気の曲が多く、Yemi Aladeら、ナイジェリアのミュージシャンが中心となった「DON'T JEALOUS ME」ではトライバルなリズムとボーカルを聴かせてくれるリズミカルな楽曲となっていますし、Burna Boyによる「JA ARE E」もメロウな雰囲気のメロディーを漂わせつつ、そんな中でアフリカらしい勇壮な雰囲気が感じられるナンバーとなっています。また、「WATER」もトライバルなリズムが押し出されたナンバーに。ただ、Pharrell Williamsが参加しているこの曲は、彼らしい非常に軽快である種の楽しさも感じられるポップな楽曲に仕上がっています。

上でもチラッと書いた「ブラック・パンサー」のインスパイア・アルバム「Black Panther: The Album」でも南アフリカのミュージシャンが数多く参加し、トライバルな要素の強いアルバムになっていました。アメリカの黒人のミュージシャンたちにとっては、やはり自分たちのルーツであるアフリカに対する憧憬が強いのでしょうか。今回、アフリカのミュージシャンが数多く参加している背景には、「ライオン・キング」の舞台となっているという理由はもちろん、そんなアフリカン・アメリカンたちのアフリカに対するあこがれを強く感じさせる内容となっています。

ただ、全体的にはリズムなどでトライバルな要素を組み込んだだけ、といった感じで、例えば先日紹介したAfrica Expressのようにアフリカ音楽を積極的に取り込んで、という感じではなく、主軸となっているのはあくまでもアメリカのR&BやHIP HOP。そこにアフリカ的な要素を加えているという程度になっているため、アフリカ音楽を期待しているとちょっと違うのかもしれません。

もちろん、Beyonceも非常に力を入れたアルバムになっているだけにその内容には間違いありません。まさにアルバムのオープニングにふさわしい、何かがはじまるかのような力強さを感じる「BIGGER」からスタートし、Kendrick Lamarとコラボした「NILE」でもダウナーなトラックの中で彼女のボーカルとケンドリックのラップがほどよい気だるさをもって楽曲にインパクトを与えています。

ラストは映画にも使われている「SPIRIT」で締めくくられているのですが、こちらはある意味、ディズニー映画の主題歌らしい、スケール感を覚えるバラードナンバー。ただBeyonceのボーカルにもいつも以上に力が入っており、非常に迫力のある楽曲に仕上がっています。映画は、元のアニメ版を含めて見たことがないのですが、なんとなく映画のシーンにもピッタリと来る雰囲気のあるナンバーになっていました。

全27曲なのですが、楽曲の間には映画のセリフの一部をピックアップしたインターリュードが入っており、まさに映画に沿った形の構成となっている今回のアルバム。もちろん、映画を見たことのない方にとってもBeyonceの新しいアルバムという感覚で楽しめる作品になっていました。数多くのミュージシャンが参加しているだけに楽曲的にもバリエーションもあり最後まで楽しめる傑作アルバム。Beyonceの実力も感じさせてくれる作品になっていました。

評価:★★★★★

BEYONCE 過去の作品
I Am...Sasha Fierce

I AM...WORLD TOUR
Beyonce
Lemonade
HOMECOMING:THE LIVE ALBUM

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2019年8月19日 (月)

ブルースロック色がより強く

Title:NEW LOVE
Musician:B'z

先日、BUMP OF CHICKENのアルバム評の中で「BUMP OF CHICKENというバンドが何を求められているのか、メンバーがしっかりと理解しており、そしてそれにしっかりと答えることが出来た」ということを書きました。ミュージシャンとして長年活動を続け、さらに一定以上の人気を保持し続ける一番の秘訣は、この「ファンが自分たちに何を求めているかわかっており、かつそれにしっかりと答えられる」ということだと思うのですが、その点、おそらく良くも悪くもそういうことが出来る日本で一番のミュージシャンのひとつが間違いなくB'zではないでしょうか。昨年でデビュー30周年。いわば「大いなるマンネリ」な部分は否定できないのですが、長年、高い人気を保持し続ける大きな理由のひとつが、ファンがB'zに何を求めているのか、メンバーがよくわかっており、かつそれにしっかりと答えているというのが大きな要因であるのは間違いないでしょう。

今回、約1年半ぶりとなる新作なのですが、まず1曲目「マイニューラヴ」からギターリフを中心に構成されているハードロックテイストの強いナンバー。ある意味、リスナーがB'zに求めている「ロック」な部分を体現化したような楽曲からのスタートにリスナーはグッと惹きつけられます。

本作では比較的、このギターリフを主導としたハードなロックチューンが目立つ作品になっており、その後も「デウス」やへヴィーなサウンドが目立つ「Da La Da Da」など外連味なくロックなサウンドを聴かせる楽曲が目立ちます。ここらへん、下手なバンドだと中途半端に打ち込みを入れてきたり、下手に違うスタイルを目指そうとするのですが、B'zの場合は、ファンキーなリズムを入れたりホーンセッションを入れたりとそれなりに「色」をつけてくるのですが、コアの部分ではしっかりとB'zとして求められる要素を抑えており、聴いているリスナーを安心させます。ここらへん、彼らの非常に巧みな部分であるように感じます。

一方、もうひとつB'zらしさを感じさせるのはへヴィーなハードロック路線に反して意外と親しみやすく、かつ「歌謡曲」的であるメロディーライン。そこも今回のアルバムでもしっかりと抑えられています。例えば「兵、走る」もハードロック調のアレンジと反してメロディーはポップでわかりやすく、かつ前向きな歌詞が印象的ですし、「俺よカルマを生きろ」なども歌詞もメロディーも「歌謡曲」調な仕上がりとなっています。ここらへん、良くも悪くもJ-POP的であり、いわば「良心的なロックリスナー」からB'zが敬遠される要素のひとつではあるのですが、ただ一方では多くのリスナーに支持される大きな要因であるのも事実。そういうファンが彼らに求める要素を本作でもしっかりと抑えています。

ただ、そんな中でも今回のアルバムはタイトルの「NEW LOVE」が「自分たちが好きな音楽をやってますという気分をタイトルにした」と語っているように、比較的、彼らの作品の中では好き勝手に演った感の強いアルバムに仕上がっています。前作「DINOSAUR」もハードロック志向の強い作品になっていましたが、今回の作品はさらにハードロック寄り、もっといえばブルースロック寄りとなっておりサウンド的には泥臭さも感じます。あまり売れ筋を意識していないという意味とサウンドの方向性という意味では1994年の「The 7th Blues」に似たようなタイプの作品にも感じました。

しかし残念だったのは前作「DINOSAUR」でもメロディーのインパクトが薄いように感じたのですが、その傾向は今回の作品にも引き継いでしまいました。また、その結果でもあるのですが、全体的には終盤になるにつれて少々失速気味。最初は気持ちよく聴けていても、全55分というアルバムの長さとしてはちょうどよい長さではあるものの、終盤の方はちょっとダレてしまいました。そこらへん、やはりかつての勢いはなくなってしまったのかなぁ、ということも感じてしまった作品。ただ、最初から書いている通り、良くも悪くもB'zらしいアルバムではあるので、ファンなら安心して気持ちよく聴けるアルバムだったと思います。なんだかんだいってもこのスタイルを30年以上続けられるというのは彼らのすごさでしょう。まだまだその人気は続いていきそうです。

評価:★★★★

B'z 過去の作品
ACTION
B'z The Best "ULTRA Pleasure"
B'z The Best "ULTRA Treasure"
MAGIC
C'mon
B'z-EP
B'z The Best XXV 1988-1998
B'z The Best XXV 1999-2012

EPIC DAY
DINOSAUR

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2019年8月18日 (日)

強い「癖」を感じさせるピアノ曲

Title:BEST of PIANISM
Musician:三柴理

今回紹介するのは、ピアニスト三柴理のベストアルバム。三柴理・・・ロック好きならばその名前を何度も耳にする機会があるのでしょうか。もともとは筋肉少女帯で「三柴江戸蔵」としてメジャーデビュー。その後、筋少は脱退するものの、ソロとして数多くのミュージシャンとコラボを行い、また2000年からは筋少で一緒だった大槻ケンジと特撮を結成。最近ではくるりのアルバムにも多く参加しています。

個人的に彼は大好きなピアニストのひとり。身長180cmを超える巨漢でありながらも非常に繊細なピアノの音色を奏でつつ、そのメロディーは一種独特なもの。不協和音的に奏でられるメロディーをあえて入れてくるあたり、非常に大胆不敵であり、その繊細さと大胆さのミスマッチが彼のピアノの大きな魅力に感じます。

本作はそんな彼のキャリアを総括するようなソロ作のベストアルバム。自身が作曲したナンバーのみならず、筋少や特撮、クイーンやエマーソン・レイク&パーマーのカバーもおさめられています。もっともベスト盤といいつつ8曲までがこのベスト盤が初出だそうですので、オリジナルアルバム的にも楽しめる1枚となっています。

さて、三柴理の魅力はまず1曲目の「黎明第二稿」から存分に味わうことができます。本人作曲によるこのピアノ曲は大胆なピアノの演奏を聴かせてくれる一方、ダイナミックな演奏の中に流れるメロディーラインは繊細さも感じさせます。さらにこのピアノのフレーズも、単純に「美しい旋律」と言えない強い癖を感じられ、まさに三柴理の魅力を存分に感じられる作品になっています。

またアルバムの中で大きく印象に残るのが、本作が初出となるクイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」のカバー。ダイナミックなサウンドと力強いフレディー・マーキュリーの歌が印象に残るナンバーなのですが、これをピアノ1本でカバー。ただ、楽曲の持つダイナミックな雰囲気はそのままに、一方ではまるで歌うような感情的なピアノの音色も強い印象に残るカバーに仕上げており、まさに三柴理の魅力がつまったカバーとなっています。

基本的には叙情感たっぷりに聴かせつつも一方では非常に癖の強いフレーズが頻発する、個性あふれる演奏が大きな魅力。ただ一方では音楽的なバリエーションも非常に広く、筋少のカバーである「サンフランシスコ」ではメタリックなサウンドに仕上げていますし、シルヴァノ・ブソッティの「友のための音楽」は現代音楽にも挑戦している楽曲。一方ではもともと国立音大に在籍したこともあるようにクラッシックの素養も兼ね備えたミュージシャンなだけにショパンの「雨だれ(Prelude Op.28 No.15)」も難なくこなしています。ただどの曲も三柴理らしい一癖を加えており、しっかりと彼の曲として仕上げてきている点も大きな魅力といえるでしょう。

美しいピアノ曲のアルバムながらも、そんな中に強烈な三柴理の個性を感じさせるアルバム。この世界感、かなり癖になりそう。それだけに多くのミュージシャンが彼のピアノの音色を取り入れるのでしょう。今後も、彼の名前はいろんな場所で見かけることになりそう。また次の彼のソロアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Epitaph/Koji Nakamura

いままでNYANTORAやiLL名義で活動を続けていた元スーパーカーのボーカリスト、ナカコーこと中村弘二の本名名義での2枚目となるアルバム。もともとはストリーミングサービスで制作過程を公表する「Epitaph」プロジェクトで作成された楽曲をまとめた作品。エレクトロサウンドの中にHIP HOPやインダストリアル的な要素など様々な音楽性を感じさせ、その実験性を感じさせます。ただ、その当時の彼の気分がそのまま収められたアルバムではあるのですが、意外と全体としてはまとまりのある「ちゃんとしたアルバム」に仕上がっているあたりが興味深いところ。全体的にはドリーミーな雰囲気の作風に仕上がっており、ナカコーの「今」を楽しめる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

Koji Nakamura 過去の作品
Masterpeace

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2019年8月17日 (土)

真っ暗闇の中で流れる音楽

あいちトリエンナーレ2019 サカナクション 暗闇-KURAYAMI-

日時 2019年8月8日(木) 会場 愛知県芸術劇場大ホール

いままでサマソニやフジロックでは見たことがあったのですが、ワンマンとしてははじめて足を運ぶサカナクションのワンマンライブ・・・なのですが、この日参加したライブはちょっと普通のライブとは色合いの異なるステージでした。今回のライブは愛知県で行われる現代芸術のイベント「あいちトリエンナーレ」の一環として行われたイベントで、「暗闇-KURAYAMI-」と題された今回のライブは会場全体を一切の光も通さない真っ暗闇として、その中で「音」を流す試み。サカナクションの楽曲は基本的に行わず、暗闇の中で音がどのように響いてくるのかを実験・体験するという、このイベント自体が「芸術作品」という試みだそうで、その内容に興味が沸き、ライブに足を運ぶことにしました。

Kurayami1

Kurayami2

会場はあいちトリエンナーレのメイン会場のひとつである愛知芸術文化センターの中にある愛知芸術劇場のメインホール。事前にこの日のためのパンフレットも配られます。

Kurayami3 Kurayami4Kurayami5

ステージ上では上に遠目ではよくわからなかったのですがおそらくラップトップが載せられたメンバーの数の分だけの黒い台が並べられただけのステージ。さらにそれを途中、黒子のような黒い服に顔にも黒い幕をつけたスタッフにより、台の上のラップトップを囲むような覆いがセットされます。また、会場にも黒子のような格好のスタッフが、通路毎に待機していました。

やがて開演予定時間を5分程度過ぎるとメンバーが登場してくるのですが、普通のライブで発生するような観客からの拍手が起こりません。観客はただひたすらこれからはじまることをかたずをのんで見守るという不思議な雰囲気でのスタートとなりました。

そして最初にスタートしたのは「プラクティス チューニング リズムのずれ」と題されたセッション。ここで会場は真っ暗闇に。5分程度、暗闇の中でチューニングの音やメトロノームが鳴り響く空間を体験します。ただここのセッションはメンバーというよりも観客にとっての肩慣らし。この「暗闇」という雰囲気で不安を感じた場合にはライブの参加を取りやめてもらうためのセッションで、実際、何人か会場を立ち去る方も見受けられました。

この「プラクティス」が終わると本編がスタート。「第一幕 Ame(C)」のスタートです。会場には雨の音や雷の音が流れますが、全くの真っ暗闇ではなく、時折、雨や雷の映像がステージ上に流れては暗闇となる展開に。そんな自然の音がただ流れるだけの展開から後半はリズミカルな4つ打ちの打ち込みのサウンドが暗闇の中で鳴り響くという不思議な展開へと続いていきます。

続く第二幕は「変容」と名付けられます。この日、唯一、サカナクションの曲が流れたのがこのセッションで「茶柱」と「ナイロンの糸」が演奏されます。会場も暗闇だけではなく曲にあわせた映像も流れますが、ただ、映像の合間には真っ暗となり、暗闇の中でおなじみのサカナクションの曲を聴くという体験となります。さらに「茶柱」の最中では会場にお茶がたてられ、お茶っ葉のいい匂いが会場に流れます。耳と鼻からのみ音楽を体験するという実験的な試みとなっていました。

第三幕は「響」と名付けられ、ここでずっと覆いに囲まれた黒い台の後ろで演奏していたメンバーがステージの前に出てきます。メンバーはそれぞれ鈴や太鼓などを持ち、それらの楽器をそれぞれが鳴らすというスタイルに。鈴が鳴らされた時は観客席に配置された「黒子」も持っていた鈴を鳴らし、会場全体が鈴の音色に包まれるという、少々神秘的な雰囲気が作り出されます。

そして最後の第四幕は「闇よ 行くよ」と題され、ここでは完全に暗転。真っ暗闇の中でギターやシンセ、ドラムスの音などの様々な音が鳴り響くという空間となりました。サカナクションの既存曲が流された第二幕を除き、基本的には「音」が奏でられたいままでと異なり、第四幕では完全な暗闇の中で非常に実験的な内容とはいえ「音楽」が流されており、おそらく彼らが一番やりたかったのはこの第四幕なのでしょう。

その全四幕からなるステージはほぼ1時間で終了。最後はステージの後ろの幕も明けられます。芸術劇場の舞台は奥行も非常に広く、メンバーはまず観客にお辞儀をした後、その広いステージの後ろの方に静かに去っていくというラストで会場の幕を下ろしました。

さすがに基本的に暗闇でのライブなので1時間程度が見る側としても限度なのでしょう。ライブとしては比較的短いステージだったと思います。ただ、「暗闇で音を奏でる」ということ自体が一種の「芸術作品」だった今回のライブ、会場には全く光が入らない真っ暗闇。そのため、暗い中で目が慣れても何も見えないという状況に。ただそんな中で奏でられる音が嫌でも全身全霊で受け止めざるを得ず、非常に普段のライブでは味わえない独特な体験をすることが出来ました。

全くの暗闇の中で音だけが流れてきただけに、ひとつひとつの音がとてもクリアに、かつそれぞれの音が意味を持つかのように耳に飛び込んできます。いわば神経を研ぎ澄まして音に聴き入るという状況を意図的に作り出し、それを観客が共有する状況。ある意味、すごい試みなのですが、そんな客席の雰囲気を含めてひとつの作品としてとても興味深く体験できたイベントだったと思います。

ちなみに同公演はこの日だけではなく全4日間、昼・夜2回公演の計7回(1日、昼公演がない日があるので)となっており、「同じ会場で4日間連続で実施することで初めて可能になる緻密な演出」とあるので、おそらく他の日はまた違った形での公演となったのでしょう。普段のライブでは経験できないとても不思議でおもしろいイベント。貴重な経験が出来たと感じると共に、今回のイベントが今後のサカナクションの活動にどのようにつながっていくのか、とても楽しみです。

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2019年8月16日 (金)

ピアノオンリーながらもバリエーション豊かに

数多くのCMソングや映画音楽を手掛けるミュージシャン、高木正勝。最近では細田守監督の作品をよく手掛け、昨年公開された「未来のミライ」の映画音楽でも話題となりました。そんな彼が昨年から今年にかけて2枚のピアノアルバムをリリースしました。

Title:Marginalia
Musician:高木正勝

紹介するのがちょっと遅くなってしまいましたが、昨年11月にリリースされたピアノアルバムの第1弾。そして・・・

Title:MarginaliaⅡ
Musician:高木正勝

そして、こちらが前作に続けて今年リリースされた第2弾となります。楽曲はすべてピアノオンリーのサウンドであり、曲によっては女性の美しいコーラスが入ってきたりもします。彼の前作「かがやき」では京都の山村にて自然の音を取り入れたサウンドが特徴的だったのですが、今回のアルバムに関してもフィールドレコーディングを実施。ピアノの音色に自然の音が混ざった音の世界が繰り広げられています。

タイトルはいずれも「Marginalia」とつけられた上で「#+番号」で区別されています。基本的に小さい数字から順番に並べられているものの番号的には飛び飛びになっており、かつ「Marginalia」で飛ばされた番号が「MarginaliaⅡ」に収録されていたりします。おそらく、「#1」から順番に作っていき、イメージに合うものを曲の雰囲気に合わせて「Marrginalia」と「MargginaliaⅡ」に振り分けたということろではないでしょうか。

楽曲的にはいずれもシンプルなメロディーを聴かせてくれる曲ばかりで、いわば「現代音楽」のような聴き手を選ぶような曲はありません。いずれもピアノのみの曲ではあるものの、バリエーションは様々であり聴き手を飽きさせません。例えば「#1」はミニマル的な曲の構成が耳を惹きますし、「#3」はピアノの2つの音が寄り添ったり離れたりして展開していくユニークかつ可愛らしさを感じる曲。「#23」では女性の歌が入るのですが、この歌が何語なのか不明な言語。優しい雰囲気の曲なのですが、このボーカルのため不思議な感触のする曲となっています。

「Ⅱ」の収録曲の方でもピアノの早弾きで清涼感を覚える「#17」や女性のハイトーンボイスが加わり、どこか幻想的な雰囲気となっている「#35」、ループするようなサウンドが特徴的な「#13」や哀愁漂うメロディーが心に残る「#39」など、演奏はピアノのみにも関わらず、実に様々なタイプの楽曲が並んでおり、2作とも70分を超えるボリュームながらもリスナーを飽きさせません。

そんな訳で幅広い方にアピールできる傑作アルバムであることは間違いないのですが・・・このアルバムのもうひとつの狙いである「フィールドレコーディング」という側面からすると、ちょっと物足りなさも感じてしまう部分はありました。まず1作目の「Marginalia」に関しては、正直、ほとんど自然の音が入った曲はありません。鳥の声が効果的に入った「#8」や虫の声が入った「#23」あたりくらいでしょうか。一方、「MarginaliaⅡ」に関しては自然の音が積極的に取り入れられています。ただ、「#44」「#43」のように自然の音が効果的に用いられている曲もあるのですが、正直、それ以外の曲に関してはピアノが鳴っている後ろで、そういえば外の音が聞こえるような・・・という程度。あまり自然の音をうまく取り込んだ、という印象は受けませんでした。

ここらへんは若干、なんでだろう?と思う部分もあるのですが、ただそこの狙いは別として純粋にピアノ曲のアルバムとしては非常に良くできた傑作アルバムであることは間違いありません。その美しいピアノの響きとメロディーに最初から最後まで聴き惚れる内容で、高木正勝の実力を存分に感じる傑作になっています。基本的に小難しい部分はないため、広い層にお勧めできる作品。特に細田守監督の映画を見て「音楽がいいな」と思った方には無条件でお勧めできるアルバムです。その美しいピアノの世界に酔いしれてほしい作品です。

評価:どちらも★★★★★

高木正勝 過去の作品
Tai Rei Tei Rio
TO NA RI(原田郁子+高木正勝)
おむすひ
かがやき

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2019年8月15日 (木)

新人アイドルグループがいきなりの1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsは新人アイドルグループがいきなり1位を獲得しました。

今週1位初登場は女性アイドルグループ26時のマスカレイド「ちゅるサマ!」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数4位で総合順位も1位獲得となりました。26時のマスカレイドは本作がアルバムデビューとなる5人組の女性アイドルグループ。読モBOYS&GIRLSとファッション誌Zipperの合同オーディション企画から誕生したグループだそうで、メンバーのうち半数は読者モデルとして活躍していたそうです。ちなみにここで出てくる「読モBOYS&GIRLS」、いろいろと話題になっているようですが、ネットで調べてもいまひとつ的を射ない説明ばかりで、どんな「集団」なのかいまひとつ不明・・・どうもいろいろとみていくと、読者モデルの集団で、ネットメディアなどを中心に情報を発信していくプロジェクトのようですが・・・。ここらへん、アイドル的な人気に加えて、読者モデルとしての中高生あたりからの人気が今回のいきなりの1位獲得の要因でしょうか。ちなみにオリコン週間アルバムランキングでも初動売上3万6千枚で1位獲得となっています。

2位はジャニーズ系。A.B.C.-Z「Going with Zephyr」がランクインです。CD販売数3位、PCによるCD読取数では9位に留まりましたが、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「VS 5」(4位)から横バイ。

3位はRADWIMPS「天気の子」が先週からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。CD販売数は8位にダウンしましたが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数では見事1位を獲得しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には韓国の男性アイドルグループWINNER「WE」がランクイン。CD販売数では2位を獲得しましたが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数が圏外となり、総合順位では4位に留まりました。オリコンでは初動売上2万4千枚で4位初登場。前作「EVERYD4Y」の1万5千枚(5位)からアップ。

続く5位には森口博子「GUNDAM SONG COVERS」が初登場。CD販売数4位、PCによるCD読取数13位。森口博子といえば、ここ最近ではあまりその名前を聞かなくなってしまいましたが、90年代には「バラエティーアイドル」として一世を風靡したタレント。ただ一方で1985年にリリースしたデビューシングル「水の星へ愛をこめて」がアニメ「機動戦士Zガンダム」のオープニングテーマとなったり、1991年にリリースしたシングル「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」が映画「機動戦士ガンダムF91」のテーマ曲として起用され大ヒットを記録したりと、ガンダムシリーズとはシンガーとして縁の深い間柄にあり、なおかつその歌唱力には高い定評があり、歌手としても高い評価を得ています。そんな彼女がガンダム関連の楽曲をカバーしたのが本作。自身の楽曲はもちろん、「RE:I AM」といった比較的最近の曲もカバー。ガンダムファンの間では彼女の歌手としての評価が高いこともあり、見事ベスト10ヒットを記録しました。オリコンでも初動売上2万5千枚で3位初登場。ちなみに彼女のアルバムは、直近作は2013年のベスト盤「森口博子 パーフェクト・ベスト」以来。同作は最高位222位だったようですので、今回のアルバムはまさに彼女としては異例の大ヒット。彼女のアルバムでのベスト10入りは1991年のベストアルバム「ETERNAL SONGS」以来、28年ぶりという快挙となりました。

6位初登場は四ノ宮那月(谷山紀章) 「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 四ノ宮那月『SUKI×SUKIはなまる! 』」。女性向け恋愛ゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」登場キャラクターによるソロベストアルバム。CD販売数5位、PCによるCD読取数21位。オリコンでは初動売上2万1千枚で5位初登場。同シリーズの前作、聖川真斗(鈴村健一)「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム聖川真斗『HOLY KNIGHT』」の2万2千枚(6位)から微減。

8位には奇抜なお面をかぶったスタイルがインパクト大のアメリカのヘヴィーメタルバンド、slipknot「We Are Not Your Kind」がランクイン。CD販売数9位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数41位。オリコンでは初動売上9千枚で9位初登場。前作「5:The Gray Chapter」の1万7千枚(1位)よりダウン。

初登場組は以上。一方、ロングヒット組ではのベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」。今週で7週目のベスト10ヒットに。ただし順位は今週は4位から7位にダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年8月14日 (水)

アイドル勢を下し、三代目が1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まあ、三代目J Soul Brothersもアイドルの括りと言われればそうかもしれませんが・・・

まず今週1位を獲得したのは三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「SCARLET feat.Afrojack」。先週の22位からCDリリースにあわせてランクアップし、1位獲得となりました。David Guettaをプロデュースしたことでも知られるオランダのプロデューサー、Giorgio Tuinfortと、同じくオランダのプロデューサーAfrojackの共同プロデュースによるEDMナンバー。正直、若干「今更」感のある音ではあるのですが・・・。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数14位、ストリーミング数10位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数7位など上位にランクイン。その他、ラジオオンエア数は58位、You Tube再生回数は35位に留まりましたが、総合順位では見事1位を獲得しました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上6万2千枚で2位初登場。前作「Yes we are」の6万6千枚(2位)からダウンしています。

2位にはBEYOOOOONDS「眼鏡の男の子」がランクイン。これがデビュー作となるハロプロ系の新人女性アイドルグループ。CD販売数はこちらが1位でしたが、ダウンロード数30位、PCによるCD読取数11位、Twitterつぶやき数18位で、その他の順位は圏外と奮わず。総合順位では2位に留まりました。オリコンでも初動売上9万9千枚でこちらが1位を獲得しており、Hot100とは1位が異なる結果となりました。

3位には先週2位だったOfficial髭男dism「Pretender」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数は今週で12週連続の1位、ダウンロード数も6位から5位にアップ。残念ながらYou Tube再生回数は2位から3位にダウンしたものの、まだまだ圧倒的な強さを感じます。さらに今週は「宿命」も7位から4位に大きくランクアップ。ダウンロード数が10位から4位に、ストリーミング数も5位から2位にアップ。先週に続く2曲同時ランクインとなりました。

続いて4位以下の初登場曲です。まず6位に東京スカパラダイスオーケストラ「リボン feat.桜井和寿(Mr.Children)」が先週の82位からCDリリースに合わせてランクアップ。CD販売数、ダウンロード数及びPCによるCD読取数がいずれも7位、ラジオオンエア数は1位を獲得。桜井和寿のボーカルがやはり耳に行くポップチューンなのですが、軽快なスカのリズムにスカパラらしさを感じる曲。桜井のボーカルは強い個性を持っているにも関わらず、ミスチルっぽい感じにはならず、しっかりとスカパラの色を出しているのはさすがです。オリコンでは初動売上1万9千枚で5位初登場。前作「明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次」の9千枚(12位)から大きくアップ。ここらへんはさすがミスチル桜井の人気の高さを感じる結果となりました。

7位にはDA PUMP「P.A.R.T.Y. 〜ユニバース・フェスティバル〜」が先週の38位からCDリリースに合わせてランクアップ。ベスト10入りを果たしています。ただしCD販売数は4位、PCによるCD読取数は5位を獲得しましたが、ダウンロード数及びTwitterつぶやき数11位、ラジオオンエア数21位、You Tube再生回数22位と奮わず、総合順位ではこの位置に。あきらかに「U.S.A.」の2匹目のドジョウを狙ったトランス調のダンスナンバーなので、MVも「U.S.A.」と同様に「ダサカッコいい」を狙った感が強いのですが、「U.S.A.」に比べるとインパクトはかなり薄い感じ。特に「U.S.A.」で一番強かったYou Tube再生回数が22位と奮っていない点、全くリスナーにウケていないという事実が如実に感じられる結果となってしまっています。オリコンでは初動売上2万9千枚で3位初登場。前作「桜」の2万7千枚(5位)よりアップ。前作がミディアムテンポのナンバーでしたので、それよりはこういうダンスチューンを求めるファンが多いといった感じでしょうか。ただ2作連続CD売上はそれなりの水準を達成しており、「U.S.A.」で再度、固定ファンを獲得できたということは間違いなさそうです。

最後10位にはKing Gnu「飛行艇」が初登場でランクイン。ANAのテレビCMソング。ダウンロード数3位、ストリーミング数21位、ラジオオンエア数8位、Twitterつぶやき数39位を獲得。配信オンリーのリリースですが、見事ベスト10入りを果たしています。ミディアムテンポのダイナミックなナンバーに仕上がっています。

続いてロングヒット曲ですが、あいみょん「マリーゴールド」は見事今週も8位をキープ。ストリーミング数は先週から変わらず3位、You Tube再生回数も3位からダウンしたとはいえ5位をキープしており、まだまだ強さを感じさせる結果となっています。一方、菅田将暉「まちがいさがし」は今週9位から11位にダウン。連続ベスト10記録は残念ながら12週で途切れました。ただストリーミング数は4位とまだまだ強さを感じさせるため、来週以降の動向も気にかかります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年8月13日 (火)

アフリカと西洋の融合

Title:EGOLI
Musician:Africa Express

blurのデーモン・アルバーンが中心となりアフリカ音楽にスポットをあてるべく活動しているユニット、Africa Express。今年、EPの「Molo」がリリースされましたが、それに続き待望となるニューアルバムがリリースされました。本作でもデーモン・アルバーンはもちろんのこと、Supper Furry Animalsのグリフ・リース、Yeah Yeah Yeahsのニック・ジナーといったイギリス勢のミュージシャンが参加。一方、いままではマリのミュージシャンと組んでのリリースが多かったのですが、本作ではBCUC、ファカ、インフェイマス・ボイズといった南アフリカのミュージシャンたちと組んでのアルバムとなりました。

まずはアフリカらしい勇壮さも感じさせるトライバルなリズムが大きな魅力となっている本作。例えば「The River」ではトライバルなリズムにしゃがれ声で力強い男性ボーカルと伸びやかな女性ボーカルとのデゥオが印象的で、サウンドにはスケールの大きさを感じますし、ある意味、そのままなタイトルの「Africa To The World」ではリズミカルなリズムと郷愁感あるホーンの調べの対比が印象的な作品で、この対比が楽曲全体としてトライバルな雰囲気を生み出しています。さらに「Mama」のようなチープさも感じさせる打ち込みのリズムで奏でられるトライバルなサウンドもいかにも「アフリカ的」でありたまりません。

ただし、アルバム全体としてはそんなトライバルなリズムを要所要所に聴かせつつ、西洋音楽からの影響が強い、いわば「垢抜けた」印象を感じさせる曲が目立つ内容となっています。例えば「City In Lights」も軽快なリズムが心地よくも80年代風の打ち込みはむしろニューウェーブからの強い影響を感じますし、「Bittersweet Escape」もトライバルなリズムを奏でつつも重厚なサウンドと澄んだ歌声で力強く聴かせる女性ボーカルは非常に垢抜けたものを感じさせます。

またジャンル的にもバリエーションの多い音楽性が大きな魅力となっており、「Where Will This Lead Us To?」はシンプルなリズムは少々トラップの要素すら感じさせるHIP HOPのナンバーになっていますし、「Morals」もオーガニックな雰囲気が漂う作風はアフリカというよりもソウルミュージックに近いものを感じさせます。また「I Can't Move」に至っては完全に80年代のAOR。軽快なシティポップに都会な雰囲気すら感じさせます。

ただ個人的には単なるアフリカ音楽を模倣するのではなく、欧米のポップスと上手く融合させている部分がAfrica Expressの大きな魅力に感じます。単なる現地の音楽を奏でるのならば、現地でいくらでも優れた作品がリリースされている訳で、今の時代、賛否わかれる部分はあるのかもしれませんが、アフリカ音楽の要素を自国の音楽に上手く取り入れて融合させているからこそ、このアルバムが非常に独特で耳を惹く内容となっているのではないでしょうか。

もちろんそこには現地ミュージシャンへのリスペクトがきちんと感じられるという部分は間違いありません。単純なアフリカ音楽ではなくAfrica Expressでしかできない音楽をしっかりと奏でている傑作アルバムになっていました。新しい文化というのはこういう文化と文化の融合から生まれてくるのが常。ここから、新しい音楽がスタートする予感もする1枚でした。

評価:★★★★★

Africa Express 過去の作品
Molo

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2019年8月12日 (月)

Blood Orangeの自己紹介的なミックステープ

Title:Angel's Pulse
Musician:Blood Orange

イギリスはロンドンで活動するシンガーソングライター、デヴ・ハインズのソロプロジェクト、Blood Orangeの新作は純粋なアルバムではなく「ミックステープ」という形で配信オンリーのリリースとなる作品になりました。もともと友人やストリートなどで会った人に渡すために「ミックステープ」という形での作品を準備しており、今回はそんな作品をリリースすることにしたということ。演奏、制作、ミックスすべてをデヴ・ハインズ本人が手掛けており、そういう意味ではプライベイト的な要素の強い、よりデヴ・ハインズの「コア」な部分が明確となった作品と言えるのかもしれません。

今回のアルバムの大きな特徴として1曲あたりの短さが大きなポイントとなっています。全14曲入り32分という短さ。直近のアルバム「Negro Swan」も1曲あたり平均3分強という短さでしたが、今回はさらに短く、1曲平均2分強という長さになっています。「ミックステープ」の役割として「友人やストリートで会った人に渡す」ということでしたので、はじめての人でも聴きやすくするためBlood Orangeのエッセンス的な部分を抽出し短くまとめた、ということでしょうか。

基本的に作品は最初から最後まで美しくメロウなフレーズが耳に残る歌モノがメイン。1曲あたり2分程度の長さのため、そのメロディーに心奪われてしんみりと聴き入るうちに曲が終わり、次の新しいフレーズが飛び込んでくる、という構成に。そのため、最初から最後までひと時たりとも耳の離せない構成になっており、ただでさえ32分という短い長さの作品ですが、文字通り、あっという間に終わってしまう作品となっています。

そんな中でも特に美しく印象に残るのが、まずはMVも作成された「Benzo」という、日本語のようなタイトルの作品。Blood Orangeのハイトーンボイスと時折バックに流れる女性コーラスが美しく、胸をかきむしられるような作品。アメリカの女性シンガー、Justine Skyeが参加している「Good For You」も微妙にボーカルやサウンドにノイジーなエフェクトがかけられており、幻想的な雰囲気がまた美しさを醸し出しているナンバーとなっています。

中盤から後半にかけても「Gold Teeth」「Tuesday Feeling」ではこちらもアメリカの女性シンガーTinasheの歌声が印象に残るメロウなナンバーを聴かせてくれますし、ミディアムテンポのサウンドにファルセットのボーカルが美しく絡みつくようにその歌声を聴かせる「Berlin」の幻想的な美しさにも強く耳を惹かれます。そんな夢見心地な中盤から後半にかけての展開で、いきなりそんな空間を切り裂くように展開されるのがリズミカルでダークなラップがいきなり飛び込んでくる「Seven Hours Pt.1」。ちょっと予想外の展開に驚かされます。

ただもっともラストは、またメロウで夢見心地なナンバー「Take It Back」へ。さらにポップでメロディアスなメロがインパクトのある「Happiness」へと続き、最後はアウトロ的な「Today」で締めくくり。最後の最後までドリーミーな雰囲気でメロウに聴かせるポップな楽曲で締めくくられていました。

そんな訳で、Blood Orangeの魅力がしっかりと凝縮されていた作品になっていた本作。さらに1曲あたり2分程度という長さもあって、あっという間の内容で何度も聴けてしまう、そのサウンドと歌声が癖になってしまうような傑作アルバム。とても心地よい作品でした。

評価:★★★★★

Blood Orange 過去の作品
Freetown Sound
Negro Swan


ほかに聴いたアルバム

Kingfish/Christone "Kingfish" Ingram

ジャケット写真もミュージシャンの見た目もとにかくインパクトありまくりの彼は、若干20歳の若きブルースギタリスト。これからのブルース界を引っ張っていく存在ということで高い注目を集めており、本作でもレジェンドであるBuddy GuyやKeb Mo'といった大物ミュージシャンが参加するなど大きな話題となっています。そんな本作の前半は、王道ともいえるギターをゴリゴリと聴かせるブルースナンバーが並んでいます。目新しさはないものの、感情たっぷりで聴かせるブルースナンバーは、確かに次世代のブルースシンガーとしての期待の高さもわかる感じも。一方後半はブルースというよりもAORの色合いが強いナンバーが並んでおり、いい意味で既存のブルースに囚われない、あらたな方向性を感じさせる曲が並んでいます。正直、後継者難が続くブルースシーンの中での数少ない後継者として後生大事に持ち上げられている感もなきにしもあらずですが、ただ今後が楽しみなブルースシンガーであることは間違いありません。次回作以降も楽しみです。

評価:★★★★

Purple Mountains/Purple Mountains

本作がデビュー作となるアメリカのインディーロックバンド。各種メディアで軒並み高い評価を受けており、一躍注目のバンドとなっているようです。ただ作品的にはレイドバックした昔ながらのブルースロックといった感じ。非常に泥臭さを感じさせるサウンドで、日本では正直、あまりうけないタイプかも。一回りまわって新しい感じか?郷愁感ただようサウンドとメロが魅力的な部分はありましたが、個人的にはメディアの高い評価ほどはピンとは来ませんでした。

評価:★★★★

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2019年8月11日 (日)

自由度高い作風がポップミュージシャンの彼ならでは

Title:No.6 Collaborations Project
Musician:Ed Sheeran

おそらく、今、もっとも世界的に売れているポップシンガー、エド・シーラン。2017年にリリースされた直近のオリジナルアルバム「÷」は本国イギリスはもちろん、世界各地でヒットチャート1位を記録する大ヒットを記録しました。そんなアルバムに続く最新作は、数多くのミュージシャンたちとのコラボレーションを収録した企画盤的なアルバム。2011年、彼がブレイクする直前に、同じようなコラボレーションアルバム「No.5 Collaborations Project」をリリースしており、それに続く続編という形になります。

まさにヒットシーンの中心を行く彼のコラボアルバムなだけに参加ミュージシャンが実に豪華。Justin Bieberとコラボした先行シングル「I Don't Care」も大きな注目を集めましたが、Chance The RappaerやTravis Scottなど、今をきらめくミュージシャンやEMINEMといった大御所、さらに彼と同じく今、最も高い人気を誇るミュージシャンのひとり、Bruno Marsやちょっと毛色の違うところではカントリーミュージシャンのChris Stapletonなど、メインとなるのはHIP HOP系ミュージシャンとのコラボが多いのですが、実に多彩かつ豪華なメンバーとのコラボが収録されています。

そして、そんなコラボ作の特徴としてエド・シーランがコラボ相手にあわせる形で様々な音楽のスタイルを披露している点でしょう。R&BシンガーのKhalidとコラボした「Beautiful People」では力強くスケール感を持って歌い上げるナンバーを披露していますし、Camila CabelloとCardi Bという話題の女性ミュージシャンたちと組んだ「South of the Border」ではトライバル風なリズムをバックに彼女たちの歌声と一緒に軽やかに歌い上げています。

Chance The Rapperとのコラボ「Cross Me」ではトラップ風に仕上げていますし、逆にYEBBAとのコラボ「Best Part of Me」ではアコギでしんみりフォーキーに歌い上げる曲を聴かせてくています。インパクトが強いといえばEMINEMと50Centとのコラボ「Remember The Name」で、曲を聴けば一発でEMINEMの曲とわかるような強い個性はさすが。コミカルで軽快なラップなのですが、どこか不穏な雰囲気が漂ってくるのもEMINEMらしさを感じます。さらにラストのBruno MarsとChris Stapletonとのコラボ「BLOW」はヘヴィーなギターリフからスタート。シャウト気味のボーカルも聴かせるハードロックな楽曲に仕上がっており、ロックなエドを聴かせるしめくくりとなっています。

非常に面白いのは、エド・シーランがこのように様々なタイプのミュージシャンと見事にコラボを果たしているという点。自由度の高い作風が大きな魅力となっているのですが、ポップミュージシャンとして、あくまでもリスナーを楽しめることを重視する良い意味でのこだわりのなさが今回のコラボでは大きなプラス要素として働いているように感じました。

ポップミュージシャンとしての彼の利点が見事に生かされたコラボアルバムだと思います。また、これだけ豪華なメンバーをコラボ相手として集められたものエドの絶大な人気があってこそ。そういう意味では彼にしか作りえない、エド・シーランらしいアルバムだったと思います。難しい理屈抜きにして、とにかくポップな作品を楽しめる傑作でした。

評価:★★★★★

Ed Sheeran 過去の作品
+
÷


ほかに聴いたアルバム

Tears of Joy/MIKE

日本ではほとんど無名なのですが・・・ロンドンとニューヨークはブロンクスで育ったラッパーによる最新作。ムーディーな雰囲気にジャジーな要素も感じされるトラックにローファイ気味なラップが淡々と展開されるラップが大きな魅力に。ムーディーながらも一方ではサイケ気味なサウンドが入ってきたりもして、一筋縄でいかないようなラップも大きな魅力となっています。全20曲ながらも41分という短さで、1曲あたり2分程度の曲が並ぶため、次々と展開するアルバム構成もスリリング。最初から最後まで一気に楽しめる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Origin/Jordan Rakei

ロンドンを拠点に活動を続ける話題のシンガーソングライター、ジョーダン・ラカイのニューアルバム。メロウなボーカルにAORのサウンドが特徴的。ジャジーな雰囲気も取り入れてしんみりと聴かせる「大人のポップス」という雰囲気の強い作品を聴かせてくれます。全体的にはポップなメロで良くも悪くもサラリと聴けてしまうような印象もあり、良質なポップスであることは間違いないのですが、個人的にはちょっと薄味に感じました。

評価:★★★★

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2019年8月10日 (土)

「究極の100枚」というのはちょっと言い過ぎな気が・・・

今日も最近読んだ音楽関係の書籍の紹介です。

光文社新書から出版された「教養としてのロック名盤ベスト100」。以前から様々な形で出版されているロックの名盤集。著者は、以前、当サイトでも紹介した「日本のロック名盤ベスト100」の著者でもある音楽評論家の川崎大助氏。そういう意味で本著はその「日本のロック名盤ベスト100」の続編的な立ち位置と言えるかもしれません。

まず正直言ってしまうとこの「ベスト100」。日本における一般的な評価から考えるとかなり癖のあるリストになっています。その理由としては、同書でベスト100として選んでいるのは川崎氏の「主観」によるものではなく、アメリカの音楽誌「ローリング・ストーン」誌が2012年に発表した「500 Greatest Albums of All Time」とイギリスのNMEが2013年に発表した「The 500 Greatest Albums of All Time」を比較して、どちらのリストにもピックアップされているアルバムを抜き出した上、単純に順位に従ってポイントをつけて合算したもの、であるため。本人は「このような計算にもとづいたリストが公表されることは、僕が知るかぎり、国際的にみて前例はないはずだ」と自画自賛しているのですが、誰もが最初に思いつきそうなやり方だと思うのですが・・・・・・。まあ、膨大なリストを集計して得点化するというのはかなり大変な作業であることは間違いなく、それをやってしまった、という点には敬意を評したいところですが・・・。

ただ、その結果として、本人も後書き等で散々述べているのですが、日本で一般的に考えられている「名盤」がかなりランク圏外になっており、非常に癖のつよいランキングとなっています。同書でも具体的に述べられているのですが、レッチリやU2、ポリスもエルトン・ジョンもoasisもビョークもクイーンも載っていません。逆にPavementの「Slanted and Enchanted」とかBlondieの「Parallel Lines」などもランクインしているのですが、ここらへんは日本での名盤集では少なくともベスト100にはまず入ってくることはない気がします。同書では冒頭にこの100枚を「究極の100枚」と記載し、「あなたがロック通を自認していて、なおかつこの『100枚』のうち1枚でも聞き漏らしがあったらなー正直言ってちょっと『まずい』かもしれない」と書いているのですが、さすがに「それは言い過ぎでは?」と思ってしまいます。

もっとも、私たちが日本で「名盤だ」と思っているようなアルバムも、実は欧米ではそれほど高い評価を得てない、ある種の「ビック・イン・ジャパン」だったということだけなのかもしれませんし、そういう意味では「欧米」の基準を知ることが出来るという意味では興味深いリストと言えるかもしれません。逆にArctic MonkeysとかThe Strokesとか意外と欧米でも高い評価を得ているんだな、と気が付かされますし、個人的にはPixesの評価が高い点もうれしく感じました。

ネタバレになるので上位陣については書きませんが、ベスト10についてはオーソドックスなランキングで、1位についてもまあ納得感のある印象。「え?そんなに評価が高いの?」というアルバムも少なくありませんが、これを基準にして片っ端からアルバムを聴いていっても間違いなさそうなリストなのは事実。強い癖はあるものの、それなりにまとまっていた「名盤集」になっていました。

さて、そんな「名盤」を川崎大助氏が解説していくわけですが、正直言えばこちらにも癖があります(笑)。以前の「日本のロック名盤ベスト100」の感想でも書いたのですが、彼は今時珍しくなった「ロック至上主義」的な見方があり、それはそれで悪くはないのですが、ただちょっと思い入れが強すぎるような部分がありますし、それ以前に「ロック」系以外のCD評についてはちょっと雑に感じてしまう部分も。特にAretha Franklinの「Lady Soul」のCD評など、収録曲が売れてかついろいろとカバーされているという事実だけが記されており、正直思い入れがないんだろうなぁ、ということを如実に感じてしまいます。

また、偏りが多くて癖のあるリストと本人も言っているのだから、個人的には「+α」として10枚程度、ランク外になったものの聴くべき「名盤」をリストアップしてCD評を載せて欲しかったな、という感じもします。そこらへんは本のボリュームとして載せられなかったのは、それとも主観的な部分を徹底的に排除したかったのかは不明なのですが・・・それとも、それは巷にありふれている他の「名盤ガイド」を読んでくれ、ということなのでしょうか。

このように様々な側面から非常に癖の強い1冊であることは間違いありませんが、ただロックの名盤をいろいろと聴こうとする最初の一歩としては間違いはない感じ。また、ロック好きにとっても聴き漏らしがないかのチェックにもちょうどよいリストかもしれません。まあ、この手の「ベスト100」って日本だとロケノンがやってもミューマガがやっても強い「癖」のついたリストが出来上がるので、それに比べても幾分はマシかもしれませんし・・・。

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2019年8月 9日 (金)

BUMP OF CHICKENらしい作品

Title:aurora arc
Musician:BUMP OF CHICKEN

約3年5ヶ月ぶりとなるBUMP OF CHICKENの待望のニューアルバム。アルバムリリースの間隔としてはちょっと久しぶりということになった今回のアルバムですが、ただ、その間、比較的積極的な活動が目立っていたため、あまり久しぶりというイメージはありません。彼らに限らない最近の傾向として、シングルをCDでリリースすることが稀になり、この約3年5ヶ月の間にCDシングルのリリースは1枚のみでしたが、7曲も配信限定でのシングルをリリースしていました。

そしてリリースされた今回のアルバムですが、先行リリースされたシングルがすべて収録。全14曲中9曲までが先行リリースされたシングル曲という内容となっており、ある種のベスト盤的な感覚すら覚えるような内容となっていました。新曲が少な目という点は賛否両論わかれるところで(うち1曲はイントロ的なインスト曲ですし)、配信シングルもすべて追っているようなファンにとってはちょっと物足りなさを感じてしまう点は否定できません。

ただ一方ではシングル曲をまとめたアルバムということもあって、実にBUMP OF CHICKENらしいナンバーが並ぶアルバムになっていたように感じます。特に感じたのは、おそらくファンや、あるいは熱心なファンではないようなリスナー層にとって「これがBUMP OF CHICKENだ」と思わせるような曲が多かったように感じます。

例えばアルバムタイトルにもなっている「Aurora」もそうでしょう。爽快さのあるギターサウンドにちょっと切なさも感じるメロディーライン。リスナーに勇気を与えてくれるような歌詞の世界観に「宇宙」を感じさせる「Aurora」というタイトルまで含めて、まさにバンプらしい作品。同じく、「宇宙」を感じさせるタイトルの「シリウス」もそうでしょう。疾走感あるギターサウンドにちょっとファンタジックな要素を含む前向きなメッセージを含んだ歌詞も、バンプらしい楽曲。サビに入る部分の転調も藤原基央のある種の手癖を感じさせます。

「アンサー」も前向きなメッセージ性の強いファンタジックな歌詞の世界観がおそらく多くの方がバンプに期待するような歌詞でしょうし、続く「望遠のテーマ」もバンドサウンドの色合いが強いナンバーですが、こちらも前向きな歌詞に強い希望を感じさせます。今回の新曲でも「新世界」も彼ららしい明るいラブソング。「君といる僕が一等賞」という言葉の使い方が実に藤原基央らしい感じ。ただ打ち込みをつかったリズミカルでダンサナブルなナンバーになっており、アルバムの中でのひとつのインパクトとなっています。

BUMP OF CHICKENというバンドが何を求められているのか、メンバーがしっかりと理解しており、そしてそれにしっかりと答えることが出来た作品、今回のアルバムに関してはそんな印象を強く受けました。その結果としてアルバム全体として決して目新しさはありません。ただ、リスナーからの期待にしっかりと、それも高い次元で答えることが出来る彼らの実力を感じると共に、こういうことをしっかりと出来るあたりが長いこと人気を獲得し続ける大きな要因なのでしょう。聴き終わった後、いい意味で「BUMP OF CHICKENを聴いた」という強い満足感を得ることが出来るアルバム。彼らの人気はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

BUMP OF CHICKEN 過去の作品
orbital period
COSMONAUT
BUMP OF CHICKEN Ⅰ[1999-2004]
BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]

RAY
Butterflies


ほかに聴いたアルバム

留まらざること 川の如く/宮沢和史

2016年に体調不良のため歌手活動を無期限停止していた宮沢和史。その後、無事復活し、約3年ぶりにソロ名義でのアルバムリリースとなりました。全8曲入りという短い内容ながらも日本民謡や沖縄民謡、ラテンの曲など、彼の音楽的趣味がよくわかる構成になってました。ただ、うちセルフカバーが2曲、活動休止中に提供した映画主題歌1曲が含まれて全8曲という点、まだリハビリ中といった印象も受けるのですが、しっかりと彼の健在ぶりを感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

宮沢和史 過去の作品
寄り道
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
MUSICK

I'm not chick/noodles

ドラムスのayumiが脱退し、2人組となってしまった約2年ぶりとなるニューアルバム。とはいってもそのスタイルは以前から全く変わらず、特に本作では10年ぶりにthe pillowsの山中さわおがプロデュースを手掛けた作品ということもあって、以前以上に彼女たちらしい疾走感あるギターロックを聴かせてくれています。まあ、山中さわおプロデュースということもあり以前以上に「女版ピロウズ」という印象が強く感じるアルバムになっているのですが、その点を差し引いても、いい意味で外連味の無いポップなギターロックを楽しめる作品になっていました。

評価:★★★★★

noodles 過去の作品
SNAP
Explorer
Metaltic Nocturne

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2019年8月 8日 (木)

残念ながら3週連続はならず

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週まで2週連続RADWIMPS「天気の子」が1位を獲得していましたが、今週は残念ながら2位にダウン。ただ、CD販売数は4位にダウンしたものの、ダウンロード数は1位、PCによるCD読取数は2位を維持しているため、まだまだヒットは続きそうです。

一方、1位を獲得したのはKAT-TUNのニューアルバム「IGNITE」。CD販売数1位、PCによるCD読取数5位を獲得。今年、元メンバーの田口淳之介が大麻を所持していたとして逮捕された記憶が新しいのですが、KAT-TUNのアルバム自体は無事1位を獲得しました。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上10万4千枚で1位獲得。ただ、前作「CAST」の12万8千枚(1位)からはダウンしています。

3位も初登場。韓国の男性アイドルグループGOT7「LOVE LOOP」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数69位を獲得。オリコンでは初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「I WON'T LET YOU GO」の4万5千枚(1位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず6位に「TVアニメ『キャロル&チューズデイ』VOCAL COLLECTION Vol.1」がランクイン。タイトル通り、テレビアニメ「キャロル&チューズデイ」の挿入歌などを集めたアルバム。このアニメ「物語は人類が火星に移住してから約50年後、AIが音楽を提供するようになった時代において、2人の少女が協力して音楽を生み出しながらミュージシャンを目指す内容(Wikipediaより)」だそうで、昨今、音楽ネタとからめるとCDが売れて儲かるもんなぁ、という戦略的な狙いを率直的に感じるのですが、なんとFlying LotusやThundercatが参加していたり(残念ながらこのアルバムには未収録のようですが)、歌の部分は声優とは異なるシンガーに歌わせていたりと、かなり音楽的に力の入っているアルバムとなっています。CD販売数は7位、PCによるCD読取数は42位だったもののダウンロード数で3位にランクインし、総合順位ではこの位置に。オリコンでは初動売上7千枚で8位初登場。

8位には韓国の男性アイドルグループSHINeeのメンバー、テミンによるソロミニアルバム「FAMOUS」がランクイン。8月28日にCDでリリース予定のアルバムが配信のみ先行配信されたもの。ダウンロード数で2位にランクインし、配信のみでベスト10入りとなりました。

9位には平井大「THE GIFT」がランクイン。タイトルチューンが映画「ドラえもん のび太の月面探査記」主題歌となり一躍注目を集めたシンガーソングライターの最新作。CD販売数は12位に留まりましたが、ダウンロード数で6位にランクインし、総合順位でも見事ベスト10入りとなりました。オリコンでは初動売上4千枚で15位初登場。前作「WAVE on WAVES」の3千枚(18位)から若干のアップ。

初登場最後、10位に声優鈴木達央のバンドプロジェクトOLDCODEX「LADDERLESS」がランクインしています。CD販売数は6位でしたが、ダウンロード数30位、PCによるCD読取数62位で総合順位はこの位置に留まりました。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「they go,Where?」の1万枚(8位)よりダウンしています。

そしてロングヒット組。先週まで6週連続ベスト10入りしてきたサカナクション「834.194」は今週13位にランクダウン。ダウンロード数10位、PCによるCD読取数は9位とベスト10を維持していますが、さすがにここからの盛り返しは厳しそう。一方、のベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」は今週4位にランクインし、6週目のベスト10ヒットに。CD販売数3位、PCによるCD読取数1位とまだ上位にランクインしており、オリコンでも1万6千枚を売り上げ、まだ3位にランクインしているため、こちらもまだまだロングヒットが続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。ランキング評はまた来週の水曜日に!

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2019年8月 7日 (水)

今週はAKB系が1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週はTWICEとの直接対決にSKE48が敗れたのですが、今週は特に強力盤もなかったことから無事1位獲得となりました。

今週1位を獲得したのはAKB48の姉妹グループで瀬戸内地域を中心に活動するSTU48「大好きな人」。CD販売数1位、ラジオオンエア数23位、PCによるCD読取数12位、Twitterつぶやき数8位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上25万4千枚で1位初登場。前作「風を待つ」の27万6千枚(1位)からダウン。

2位はロングヒット中のOfficial髭男dism「Pretender」が先週の4位からランクアップ。6月3日付チャート以来、10週ぶりの2位獲得となり、これで連続ベスト10入り記録は13週目となりました。特にストリーミング数は11週連続1位を獲得し、ロングヒットの大きな要因に。You Tube再生回数も3位から2位にアップしています。米津玄師「Lemon」、あいみょん「マリーゴールド」に続く、2019年を代表するヒット曲になりそうな予感がします。ちなみに今週、「宿命」も先週の16位から7位にアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

3位はTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE「WELCOME 2 PARADISE」が先週の90位からCDリリースに合わせて大きくランクアップしベスト3入り。CD販売数2位、ストリーミング数4位、ラジオオンエア数36位、PCによるCD読取数11位、Twitterつぶやき数24位で総合順位はこの位置に。EXILE系の歌うサマーソングらしい、じめっと湿気の強い、暑い空気感を醸し出すナンバーに。オリコンでは初動売上5万7千枚で3位初登場。前作「THROW YA FIST」の2万3千枚(3位)からアップ。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場は1曲のみ。それが4位にランクインしてきた韓国の男性アイドルユニット東方神起「Hot Hot Hot」。先週の56位からCDリリースに合わせてランクアップしてベスト10入りとなっています。CD販売数3位、ダウンロード数33位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数では1位を獲得するものの、ラジオオンエア数やYou Tube再生回数がランク圏外となり総合順位はこの位置に。リズミカルなサマーチューンですが、私の世代だとこの世代は藤井隆の昔のギャグを思い出してしまう・・・。オリコンでは初動売上5万9千枚で2位初登場。前作「Jealous」の9万1千枚(1位)からダウン。

一方、ベスト10返り咲き組も。まず前述の通り、Official髭男dism「宿命」がベスト10返り咲きを果たしているほか、先週、ついにベスト10陥落となったあいみょん「マリーゴールド」が先週の11位から8位にランクアップ。通算33週目のベスト10ヒットを果たしています。まだまだストリーミング数及びYou Tube再生回数が3位、カラオケ歌唱回数も2位と上位をキープしており、ロングヒットはまた続きそうです。

ロングヒット組では菅田将暉「まちがいさがし」が8位から9位にダウン。ストリーミング数は先週と変わらず2位。ただYou Tube再生回数は2位から5位にダウンしておりベスト10ヒットも土俵際という印象・・・来週以降の動向に注目されます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年8月 6日 (火)

酷暑の夜の夏祭り

湯~とぴあ宝 夏祭り

マジカル♡パレードBEACH/SEAMO

会場 湯~とぴあ宝駐車場(笠寺) 日時 2019年8月1日(木)

比較的長かった梅雨がようやく明けて酷暑となった8月の初日、SEAMOの無料ライブが見れる、ということで出かけてきました。「湯~とぴあ宝」という名古屋郊外の日帰り入浴施設が主催する夏祭りイベント、湯~とぴあ宝夏祭り。この施設の駐車場に簡単なステージといくつかの屋台を設置し、ステージでは様々な催しが行われるイベントです。

Utopia20

会場はこんな感じで、ステージがあり、周りに食べ物などを売っている屋台がある感じ。ちょっとだけ夏フェスを意識(?)した感じもあるのですが、この日は圧倒的に家族連れが多く、夏フェスというよりも来ている人たちは街の夏祭りといった雰囲気の会場になっていました。

まず最初はマジカル♡パレードBEACHというユニットが登場。19時スタート予定だったのですが、5分程度早くスタートに。フロントに夏祭りらしい浴衣姿の女の子2人と巨体でモヒカン姿というインパクトのある男性DJの3人組。名前を聴くのも曲を聴くのもこの日がはじめてでした。

ステージは7月にリリースしたばかりのシングル「Fun!Fun!ビーチ」、明宝ハムのCMでもあるミディアムチューン「my sweet home」と続きます。楽曲的には良くありがちなJ-POPといった感じ。女性2人が基本的には歌い、途中、モヒカン姿のDJが軽くラップするスタイルなのですが、ラップは最小限で基本的には歌モノのポップス。「Fun!Fun!ビーチ」など明るいパーティーチューンといった感じで、そういう理屈抜きで楽しいパーティーチューンがメインなのかな・・・とも思ったのですが、そこまで底抜けに明るいといった印象もなく・・・。

あとちょっと残念だったのがステージ上の盛り上げ方がちょっと内輪的な感じがしました。ファンだけのライブなら悪くないのかもしれませんが、こういう不特定多数が集まるスタイルのステージではちょっと違和感が。ここらへん、まだステージ的にこなれていない印象も。それなりにポップで聴きやすい楽曲が続く楽しいステージだったとは思うのですが、残念ながら物足りなさも感じたステージでした。

そして彼女たちのステージが終わると、19時半頃からお待ちかねのSEAMOが登場!ステージに登場するととにかく会場を盛り上げます。そしておなじみの「ルパン・ザ・ファイアー」へ。音が悪くてサンプリングの音がほとんど聴こえなかったのが残念ですが、おなじみのヒットチューンで会場を盛り上げます。

この日はこういう夏祭りの会場ということもあって、おなじみのナンバーがメインの構成になっていました。続いては比較的最近のナンバーから「ON&音&恩」に「続・ON&音&恩」と続きます。ゲストラッパーの部分がどうしても録音になってしまう点、物足りなさを感じてしまうのですが、アップテンポなナンバーが続き会場を盛り上げます。途中のMCでは、地元民にはおなじみの「湯~とぴあたからっ!」というこの温浴施設のCMのジングルを叫ぶなど、地元出身らしい主宰者へのサービス(?)も。

その後は雰囲気が一転。「テノヒラ」でしんみり。さらにこちらもおなじみのヒット曲「マタアイマショウ」へと続きます。そしてラストは「威風堂々」をサンプリングした「CONTINUE」で締めくくり。分厚いサウンドで会場を盛り上げ、約40分程度のステージは幕を下ろしました。

こういう夏祭りの不特定多数が集まる会場で音も悪かったのですが、ただそれでも会場をしっかりと盛り上げていたSEAMOの手法はさすが!いい意味で非常にステージ慣れしているようにも感じました。この日は子供も多いということもあり、さすがに天狗のお面で登場することはなく、楽曲もはじめてでも聴きやすいタイプのナンバーがメイン。そのため「ルパン・ザ・ファイヤー」や「マタアイマショウ」を聴けたのはうれしかったです。

ただSEAMOは以前、SAKAE SP-RINGで見たのですが、その時に比べると「SEAMOのステージはこんなもんじゃないでしょ!」ということを感じてしまいました。ここらへんは音が悪いステージで、どうしても「万人向け」のナンバーをやらざるを得ない会場だったから、ということもあるのでしょう。特に最近のアルバムを聴くと、その勢いが再び増しているように感じるだけに、きっとワンマンではもっともっとすごいステージを見せてくれるのでは?ということを感じてしまう、おそらく彼にとっては8割程度の力でのステージだったように感じます。

もちろんそれなりに楽しめましたし、なにより無料のステージでしっかりと久々のSEAMOが見れたのはうれしかったのですが、ちょっと消化不良気味。うーん、これは一度ワンマンライブに行かないといけないかもしれませんね。ただこの酷暑の中、個人的にはビールを2杯も呑み、気持ちよいほろよい気分でイベントを楽しむことが出来ました。

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2019年8月 5日 (月)

圧巻する2枚組セルフタイトル作

Title:THA BLUE HERB
Musician:THA BLUE HERB

その独特なスタイルで熱烈な支持をうける札幌出身の3人組HIP HOPユニット、THA BLUE HERB。途中、ソロ作を挟みつつ、THA BLUE HERBとしては約7年ぶりとなる待望のニューアルバムが完成しました。そんな久々のニューアルバムは圧巻の2枚組、全30曲という構成。さらにはセルフタイトルの作品になっており、その力の入れようがわかります。さらには作品はあくまでもILL-BOSSTINO、O.N.O.、DJ DYEというメンバー3人のみで作られており、客演は一切なし。まさにセルフタイトルというスタイル通り、これぞTHA BLUE HERBだ、という作品になっています。

正直言うと、全30曲入りの今回のアルバム、楽曲のバリエーションとしてはさほど多くはありません。O.N.O.のトラックにしても今回のアルバムに関して言えば、決して目新しかったり斬新だったりする訳ではなく、ある意味、いつものTHA BLUE HERBといった感じ。ピアノを取り入れて物悲しく聴かせるトラックは、メランコリックでメロディアスでありつつ、どちらかというとBOSSのラップのサポートを第一としたトラック作りのように感じます。ただ一方では、非常に個性的でインパクトのあるBOSSのラップの後ろで鳴りつつ、トラック自体も「これぞO.N.O.のトラック」というような強いインパクトを持っていることは間違いありません。

ただ、楽曲の面からは決して目新しいといった印象を受けず、良くも悪くもいつものTHA BLUE HERBという印象を受ける内容になっているものの、それでも全30曲2時間半に及ぶアルバム、最後まで耳を離せず一気に聴いてしまうのは、BOSSが綴り、そしてラップで刻むそのリリックであることは間違いありません。BOSSの様々な思いのたけを綴られたリリックは、リスナーに楽曲をBGM的に聴くことを一切拒否しています。セルフタイトルらしい力の入れようを感じる圧巻のリリックが続いていました。

アルバムは「EASTER」「WE WANT IT TO BE REAL」さらには「介錯」とシーンの中での自らの決意を綴った曲からスタート。さらに新しいHIP HOPシーンに対する皮肉を込めたメッセージを綴った「AGED BEEF」などは今のシーンに対する率直で厳しいスタンスが耳に残ります。

さらに中盤は一転、「THERE'S NO PLACE LIKE JAPAN NOW」ではオリンピック批判をはじめとした日本の今について綴った社会派な内容に。さらに「REQUIEM」では戦争から戦後を生き抜いた人たちに対する挽歌とも言えるメッセージが強い印象を抱きます。そして間違いなくDisc1のハイライトとも言えるのが「TWILIGHT」。おそらく若くしてこの世を去った後輩について綴った歌詞で、亡くなった後輩に捧げるリリックが涙腺を緩くする内容になっています。

もっとも個人的に今回のアルバムで一番印象に残り、かつ泣けたのがDisc2の「UP THAT HILL(MAMA'S RUN)」。おそらくDVから離婚したシングルマザーの母親として決意と覚悟を綴った歌詞で、子どもを持つ親ならば間違いなく泣けてくる内容ですし、それにこんな歌詞、よく書けるなぁ、と非常に感心してしまいました。ちなみに父親視点からの「HEARTBREAK TRAIN(PAPA'S BUMP)」がこの曲の前にあるのですが、こちらは父親の勝手な言い分に男としてもあまり共感できない・・・。

その後も東日本大震災について綴った「スーパーヒーロー」や力強い前向きのメッセージが印象的な「LOSER AND STILL CHAMPION」など、最後の最後まで耳を離せないナンバーが続きます。まさにセルフタイトルのアルバムの通り、非常に力のこもったメッセージが次から次への展開される内容に。全体的にはあくまでもBOSSのラップとそのリリックを聴かせることに焦点をあてたようなアルバムになっているように感じました。もちろん、そんなBOSSのラップが生きてくるのもO.N.O.のトラックがしっかりとラップを支えているからなのは間違いありませんが、アルバムとしてはラップを聴かせるという点を重視したような構成に感じましたし、結果としてTHA BLUE HERBの魅力をしっかりと伝える作品になっているように感じました。

セルフタイトルという力の入れ方は伊達じゃない傑作アルバム。2枚組というフルボリュームでありつつ、一切ダレることがなく最後まで文句なしに聴き切れてしまう作品になっていました。決して派手な作風ではないもののTHA BLUE HERBここにありを強く感じさせるアルバムで、間違いなく今年を代表する1枚と言えるでしょう。彼らの実力を強く実感てきた作品でした。

評価:★★★★★

THA BLUE HERB 過去の作品
TOTAL


ほかに聴いたアルバム

TOKI CHIC REMIX/土岐麻子

土岐麻子が直近でリリースした2枚のオリジナル「PINK」「SAFARI」に収録されていた曲を、様々なミュージシャンがリミックスを手掛けたリミックスアルバム。リミックスをほどこしたのは曽我部恵一、砂原良徳、tofubeats、WONK、Awesome City Club、STUTSなど、ベテラン勢から新進気鋭のミュージシャンまで豪華なメンバーがズラリと並んでいます。「PINK」「SAFARI」はシティーポップなアルバムでしたが、今回参加しているミュージシャンたちも、基本的には「シティーポップ」と呼ばれる音楽を奏でるミュージシャンたち。そのため、基本的には軽快なエレクトロのリミックスが多かったのですが、原曲の雰囲気と土岐麻子のボーカルの持ち味をよく生かしたリミックスに仕上がっていたと思います。若干、その分、良くも悪くもあくのつよいリミックスはなかったけど・・・「PINK」「SAFARI」が気に入ったのなら、文句なしに楽しめる1枚です。

評価:★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK
HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-
SAFARI

テレビアニメ放送40周年記念 ドラえもん うたのコレクション

タイトル通り、テレビ放送40周年を記念して、過去の「ドラえもん」の主題歌・挿入歌を収録した4枚組のアルバム。Disc1,2は声優勢が一新された後の楽曲が、Disc3,4は懐かしい大山のぶ代時代の楽曲が収録されています。「大山ドラ」で育ってきた世代としては圧倒的にDisc3,4の方が懐かしいのですが、大人になって聴くと、Disc3,4の曲は出来の良し悪しの差が大きく、トータルでは「水田ドラ」時代の曲の方がしっかりと作られているという印象も。昔の曲から今の曲まで網羅されているので、「大山ドラ」で育ったパパママの世代と「水田ドラ」を触れている子供の世代が同時に楽しめるコンピになっています。

評価:★★★★

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2019年8月 4日 (日)

古き良きロックを今の時代に

Title:"Let's Rock"
Musician:The Black Keys

ヒットシーンの中で、すっかりHIP HOP勢に主役の座を奪われてしまった感のあるギターロック。ただ一方ではいかにも昔ながらのロックを貫いたThe Racounteursのアルバムがビルボードチャートで1位を獲得するなど、一方では根強い人気も感じられます。アメリカ・オハイオ州出身の2人組ロックバンド、The Black Keysもそんな昔ながらのロックナンバーを奏でながらも根強い人気を誇るバンドのひとつでしょう。前作「Turn Blue」では全米チャート1位を獲得し、その高い人気ぶりを誇りました。今回、約5年ぶりとなる新作はチャート的には全米チャート4位にダウンしたものの、根強いロック人気を感じさせる結果となりました。

今回のアルバムでも「Shine A Little Light」ではいきなり力強いギターリフからスタート。ちょっとくすんだ雰囲気もある「古き良き時代」のへヴィーロックの様相の強いナンバーとなっています。さらに「Eagle Birds」もヘヴィーなギターサウンドが軽快なロックンロールチューン。ギターリフ主導のナンバーは続く「Lo/Hi」もそうで、軽快ながらも力の抜けたギターリフはどこかローリングストーンズからの影響も感じさせます。まさにロックリスナーとしては壺をつきまくったロックチューンの連続。「Let's Rock」というある意味そのままなタイトルは伊達ではありません。

いかにもロックンロール然としたギターリフ主導の楽曲から一転、「Walk Across The Water」以降の中盤戦ではミディアムチューンのナンバーが並びます。ミディアムチューンのナンバーもヘヴィーでノイジーなギターサウンドを響かせつつ、60年代や70年代の雰囲気を感じさせる哀愁感漂うメロディーラインが大きな魅力に。こちらもしっかりと古き良き時代のロックを感じさせる楽曲となっています。

後半は郷愁感あふれる「Sit Around And Miss You」、軽快なギターサウンドに爽快さも感じる「Go」、ノイジーでダイナミックなサウンドを展開する「Breaking Down」と、オールドスタイルのロックという方向性は変わらないものの、比較的バリエーションある展開に。最後を締めくくる「Fire Walk With Me」はギターリフが展開されるサウンドに60年代あたりの雰囲気を感じさせるフォーキーでポップなメロが魅力的な、いかにも昔ながらもロックといった雰囲気の曲で締めくくり。最初から最後まで古き良きロックというスタイルが貫かれたアルバムになっていました。

前作「Turn Blue」は昔ながらのロックというスタイルよりもサイケな様相の強くなったアルバム。良くも悪くも彼らが新たな挑戦を行った作品という印象がありましたが、今回のアルバムは再び、彼らの本来の持ち味であるヴィンテージなロックナンバーに回帰した作品にように感じました。

こういうアルバムがそれなりに売れるということは、やはりロックらしいロックを聴きたいというリスナー層は少なくないってことなんでしょうね。個人的にもいかにも「ロックを聴いた」という満足感を強く覚えるアルバムになっていました。ロックが好きならば無条件でお勧めできるアルバムです。

評価:★★★★★

The Black Keys 過去の作品
EL CAMINO

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2019年8月 3日 (土)

2019年上半期 邦楽ベスト5

昨日に引き続き、今日は邦楽のベスト5です。

5位 underground/SPARTA LOCALS

聴いた当時の感想はこちら

2004年にデビューし、大きな注目を集めた福岡発のロックバンドSPARTA LOCALS。残念ながら2009年に解散したものの、2016年に復活。そして今年、約10年半ぶりとなる待望のニューアルバムがリリースされました。これがまさにデビュー時を彷彿とさせるようなエッジの効いたサウンドとビートのアルバムになっており、デビュー時の勢いを再び取り戻したかのような傑作アルバムになっています。これからまた再び、シーンをかき回してきそうなそんな予感のする1枚でした。

4位 三毒史/椎名林檎

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椎名林檎の新作は、男性ミュージシャンとのコラボ作と自身の単独作を交互にならべるという企画盤的とも言える内容に。ただ数多くの癖のあるミュージシャンたちとのコラボの中に、しっかりと椎名林檎としての個性と楽曲のバリエーションの多さを両立。さらには「生と死」をテーマとしたコンセプチュアルな歌詞も特徴的で、椎名林檎の魅力を様々な形で凝縮した傑作に仕上がっていました。彼女にしか作りえなかった、彼女の個性がアルバム全体からあふれ出してくるような、そんな作品です。

3位 834.194/サカナクション

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2枚組というボリューミーな作品となったサカナクションの新作は「意欲作」という表現が非常にピッタリと来る作品。タイトルの奇妙な数字の羅列は東京と、彼らが活動を開始した札幌との距離だそうで、2枚にわかれたアルバムの1枚目は「東京」をイメージした外へ向け意識的にポップにまとめ上げた作品に、一方、2枚目は「札幌」をイメージし、自らの好きなように曲作りを行った構成になっています。その結果、彼らの持つポピュラリティーな要素と挑戦的な要素が実に上手く混じり合った傑作アルバムに。ただポップな楽曲についても実は彼らなりの挑戦を強く感じさせる曲が多く、そういう意味でもまさに「意欲作」という表現がピッタリくる作品になっていました。

2位 30/電気グルーヴ

聴いた当時の感想はこちら

ご存じの通り、ピエール瀧の逮捕のため残念ながらCDを持っていない方にとっては事実上、聴くことが出来ない「幻の作品」に・・・。結成30周年を記念してリリースされた本作は、彼らの過去のターニングポイントになった曲を現在の視点から「リメイク」した作品になっており、電気グルーヴの活動を俯瞰するのは非常に優れた1枚であると同時に、彼らの実力をいかんなく感じられる傑作アルバムになっていました。それだけに現在、販売中止という状況は非常に残念。1日も早い販売再開を望みたいところです。ちなみにAmazonなどで中古で高値で販売されていますが、少なくとも「聴く」だけならレンタルでは通常通り取り扱いがあるそうなので、そちらを利用することを推奨します。

1位 PUNK/CHAI

聴いた当時の感想はこちら

前作「PINK」が傑作アルバムで完全に彼女たちにはまってしまったのですが、間にEPを挟み、それに続くニューアルバムは前作をやすやすと上回る傑作に仕上がっていました。昨今、とかくもてはやされがちな「かわいい」という者の味方にアンチを貫くスタイルに、前作以上に足腰の力が増したバンドサウンド、そして意外とポップでインパクトのある、邦楽ばなれしたカラッとした雰囲気のメロディーラインが大きな魅力に。聴いた当時に「このアルバムを評価せずに、どのアルバムを評価するの?」と書いたのですが、その考えは今も変わっていません。文句なしに今年上半期ベストアルバムです。

ほかのベスト盤候補としては・・・

あいつロングシュート決めてあの娘が歓声をあげてそのとき俺は家にいた/忘れらんねえよ
ドロン・ド・ロンド/チャラン・ポ・ランタン
THE ANYMAL/Suchmos
9999/THE YELLOW MONKEY
労働なんかしないで 光合成だけで生きたい/スガシカオ
Ride On Time/田我流

比較的、傑作揃いだった洋楽シーンと比べると若干物足りなさげか。ただ、それでも数多くの傑作に上半期は出会うことが出来ました。さて、あらためてベスト5を振り返ると

1位 PUNK/CHAI
2位 30/電気グルーヴ
3位 834.194/サカナクション
4位 三毒史/椎名林檎
5位 underground/SPARTA LOCALS

偶然ですが、タイトルに数字が入ったアルバムが多かったような・・・。下半期も多くの傑作アルバムに出会いたいですね!

ちなみに過去のベストアルバムは

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 年間1  上半期
2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
2017年 年間1  上半期
2018年 年間1  上半期

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2019年8月 2日 (金)

2019年上半期 洋楽ベスト5

今年も早くも恒例、上半期私的ベストアルバムの紹介がやってまいりました。まずは洋楽のベスト5から。

5位 Patience/Mannequin Pussy

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まずはアメリカ発、女性ボーカルによるインディーパンクバンドの最新作。荒削りでパンキッシュなサウンドがいい意味でインディーバンドらしく、またポップなメロディーラインはヒットポテンシャルも十分ですし、日本でも売れそうな予感も。一方では80年代インディーロックそのままなサウンドに、まだこういうサウンドでがんばっているバンドがいるんだ、というある種の驚きも。HIP HOPシーンに押され気味なロック勢ですが、まだまだ元気なバンドはたくさんいるんだ、ということを再認識させられる傑作でした。

4位 Weezer(Black Album)/Weezer

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正直言うと、どちらかという賛否分かれる形となっているアメリカのパワーポップバンド、Weezerの最新作。パワーポップバンドとしてロックなバンドサウンドを押し出したような楽曲はほとんどなく、ポップな曲調の作品が並ぶアルバムになっています。そのため、あの分厚く心地よいサウンドを求める方にはかなり物足りなさを感じるアルバムになっていたかもしれませんが・・・ただ、彼らのメロディーメイカーとしての才能が光る作品になっており、徐々にメロディーラインの美しさに惹かれていきました。Weezerの「ポップ」な側面が上手く機能していた傑作です。

3位 Africa Speaks/SANTANA

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大ベテランバンド、SANTANAの最新作は、アフリカ音楽を大々的に取り入れた作品に。マヨルカ島出身のスペイン人シンガー、ブイカを全面的にボーカリストとして、またリック・ルービンをプロデューサーとして起用しており、トライバルなリズムが全面的に展開。ただ、そんなトライバルな作風を切り裂くように響くカルロス・サンタナのギターも強く印象に残るアルバムになっており、SANTANAのサウンドとアフリカの音が高い次元で融合する傑作に仕上がっていました。既に「リビング・レジェンド」の位置にいる彼らですが、いまなお挑戦を続けるその姿勢には驚かされます。

2位 When I Get Home/Solange

聴いた当時の感想はこちら

3月に突如配信でリリースされたSolangeのニューアルバム。前作「A Seat At The Table」が高い評判を呼びましたが、本作もそんな前作に勝るとも劣らない傑作アルバムに仕上がっていました。エレクトロジャズを取り入れつつ、メロウで、酩酊感を覚えるサウンドが大きな魅力なのですが、それ以上に心を奪われるのがやはり彼女の歌声でしょう。Tyler,The Creatorをはじめ豪華なゲストが参加しつつも、彼女の歌声ゆえにしっかりとSolangeのアルバムとして統一感のある魅力的な傑作アルバムでした。

1位 Live In London/Mavis Staples

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そして上半期1位は、こちらもベテランミュージシャンによるライブアルバム。ソウルグループのThe Staple Singersのメンバーとして数多くのヒット曲を生み出してきたソウル界のリビング・レジェンドとも言える彼女。昨年7月にロンドンのユニオン・チャペルで行われたライブの模様を収録したライブアルバムなのですが、これが度胆を抜かれる凄さでした。当時79歳という彼女ですが、その年齢を感じさせない艶のあるボーカルに、逆に年齢ゆえの深みを感じさせる表現力が重なり、聴いていて鳥肌がたってくるような凄みのあるボーカルを聴かせてくれます。ちなみに今年リリースしたアルバム「We Get By」も大傑作。齢80歳にしてまだまだ現役の彼女。すごすぎます!

ほかのベスト盤候補としては・・・

Assume From/James Blake
Everything Not Saved Will Be Lost Pt.1/Foals
No Geography/The Chemical Brothers
Life Metal/Sunn O)))
HOMECOMING:THE LIVE ALBUM/Beyonce
U.F.O.F./Big Thief
Spirit/Rhye
LEGACY!LEGACY!/Jamila Woods
False Alarm/TWO DOOR CINAME CLUB
We Get By/Mavis Staples
Schlagenheim/black midi
Weezer(Teal Album)/Weezer

こう並べると、上半期は比較的良作が多かったような感じがします。そんな中でもMavis StaplesやSANTANAといったベテラン勢の活躍も目立った上半期。下期もさらなる名盤との出会いを期待したいところです。

あらためてベスト5を並べると・・・

1位 Live In London/Mavis Staples
2位 When I Get Home/Solange
3位 Africa Speaks/SANTANA
4位 Weezer(Black Album)/Weezer
5位 Patience/Mannequin Pussy

明日は邦楽の上半期ベスト5!

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2019年8月 1日 (木)

見事、2週連続

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事、2週連続1位となりました。

今週1位は先週から引き続きRADWIMPS「天気の子」が獲得。ダウンロード数では先週から引き続き2位をキープ。さらにCD販売数も先週の2位から1位にアップし、2週連続の1位となりました。オリコン週間アルバムランキングでも売上枚数は4万3千枚から2万4千枚にダウンしたものの、先週の3位から2位にダウン。さらに合算アルバムランキングではこちらも1位を獲得するなど、「君の名は。」に続くヒットの兆しが見える結果となりました。

2位はthe HIATUS「Our Secret Spot」が初登場で獲得。CD販売数、ダウンロード数共に2位、PCによるCD読取数は12位を記録。総合順位でも2位につけました。オリコンでも初動売上2万枚で4位初登場。前作「Hands of Gravity」の2万4千枚(5位)からダウン。もともと細美武士が自身のバンドELLEGARDEN活動休止中に立ち上げたバンドであったthe HIATUS。そのELLEGARDENが昨年、活動を再開しましたが、the HIATUSの方もコンスタントに活動を続けていくようです。細美武士といえばMONOEYESでの活動もありますが、こちらもライブを中心に活動を続けており、彼の非常にアグレッシブな音楽活動ぶりが目立っています。

3位は先週4位ののベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」がワンランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。

続いて4位以下の初登場盤です。4位には「Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~」が初登場でランクイン。UNISON SQUARE GARDENのバンド結成15周年を記念してリリースされたトリビュートアルバムでthe pillowsやクリープハイプ、ちょっと毛色の違うところではSKY-HIといったミュージシャンがUNISON SQUARE GARDENの代表曲をカバーしています。CD販売数3位、PCによるCD読取数9位で総合順位は4位を獲得。オリコンでは初動売上2万2千枚で3位初登場。

6位7位にはイケメン役者育成ゲーム「A3!」よりキャラクターソングアルバム「A3! BRIGHT AUTUMN EP」「A3! BRIGHT WINTER EP」が並んでランクイン。「AUTUMN」がCD販売数5位、PCによるCD読取数49位、「WINTER」がCD販売数6位、PCによるCD読取数22位を獲得。オリコンでは「AUTUMN」が初動売上1万8千枚で5位、「WINTER」が初動売上1万7千枚で6位に。前作は「A3! BRIGHT SPRING EP」「A3! BRIGHT SUMMER EP」で、初動売上はいずれも1万6千枚(6位及び7位)でしたので、前作からは微増という結果になっています。

8位には男性声優内田雄馬「HORIZON」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数28位、PCによるCD読取数31位を獲得。本作がアルバムとしてはデビュー作となります。オリコンでは初動売上1万5千枚で7位初登場。

初登場盤は以上。今週、ロングヒット作としては10位にランクインしたサカナクション「834.194」が6週目のベスト10ヒットとなりました。2枚組の意欲作となった本作。CD販売数は22位までダウンしましたが、ダウンロード数は6位、PCによるCD読取数は7位につけておりベスト10ヒットを続けています。ただ順位的にはここ3週、6位→7位→10位と下降気味であり、さすがに来週のベスト10ヒットは厳しいか?

今週のHot Albumsは以上。チャート評は来週の水曜日に!

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