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2019年7月20日 (土)

齢80歳にして圧巻の傑作

Title:We Get By
Musician:Mavis Staples

主に60年代から70年代にかけてソウルグループのThe Staple Singersのメンバーとして活躍した女性シンガーMavis Staples。いわばリビング・レジェンド的な立ち位置の彼女ですが、しかし、ミュージシャンとしての勢いは全く止まっていません。今でも2、3年に1度はオリジナルアルバムを作成する精力的な活動を続けていますが、ただ単にアルバムを作っているだけではなく、そのどれも傑作アルバムとなっているから驚き。さらに今年2月にリリースしたライブアルバムでも若手ミュージシャンにはとても真似できないすごみのあるボーカルを聴かせてくれており、その実力のほどを見せつけています。

今回のアルバムもオリジナルアルバムとしては約1年半という、ベテランシンガーとしては非常に短いスパンでリリースされたアルバム。そんな彼女はなんと今年、御年80歳(!)。さすがにここ最近、還暦を超えても精力的に活動を続けるミュージシャンが珍しくはなくなりましたが、80歳を過ぎてもここまで精力的に、現役感ある活動を続けるミュージシャンも珍しいように思います。

前々作と前作はWilcoのJeff Tweedyプロデュースによる作品が続いていましたが、今回のアルバムはアメリカのミュージシャン、Ben Harperが全面的にプロデュース及び作詞・作曲を手掛けています。Ben Harperも今年50歳を迎えるベテランミュージシャンですが、Mavisから見ればおそらくまだまだ若手のうち(笑)。そんなミュージシャンと新たにコラボするあたりも彼女のミュージシャンとしての現役感があらわれているように思います。

今回、プロデューサーが変わった影響でしょう、前作までと比べて作風が変化しました。その最大の特徴はギターサウンドが前に押し出された曲が多かったという点。1曲目の「Change」も力強いギターが印象的ですし、続く「Anytime」もブルージーなギターが耳に残ります。Ben Harper自らも演奏に参加しているタイトルチューン「We Get By」も哀愁感たっぷりのギターを聴かせるバラードナンバーですし、「Brothers And Sisters」もファンキーなギターが大きな魅力となっています。

ただこのアルバムでなんといっても素晴らしいのは彼女のその歌声。静かに聴かせるボーカルながらも迫力とある種の凄みのあるボーカルで、失礼ながらもその年齢故の円熟味した深みを感じさせます。一方で彼女くらいの年齢になると普通はやはり声に艶やはりがなくなってくるのですが、彼女のボーカルにはそんな年齢ゆえの衰えは全く感じさせません。ボーカリストとしてこの年齢でありながらもここまでの現役感を維持するというのは驚きですらあります。

特にそんなボーカルの迫力を存分に感じされるのが中盤の「Heavy On My Mind」。ギターが静かに流れるだけのサウンドをばっくに噛みしめるように静かに歌い上げる彼女の歌声はまさに文字通り、胸に突き刺さってきます。さらに「Stronger」のような静かに力強く歌うボーカルは包容力たっぷりという表現がまさにピッタリくるような、スケール感も覚えるボーカルが大きな魅力となっていました。

また前作「If All I Was Was Black」は強いメッセージ性を込めたアルバムになっていましたが、今回のアルバムも彼女の強いメッセージが込められている点も大きな特徴。1曲目の「Change」では「世の中を良くするためには変わらなくてはいけない」と歌い上げていますし、「Brothers And Sisters」でも不平等に立ち向かおうというメッセージを発信しています。さらにアルバムの最後「One More Change」でも、どんなに大変であっても変わらなくてはいけないという強いメッセージで締めくくっています。80歳となった今でもなお、さらに世の中を良くして行こうというスタンスも彼女の活力の大きい理由のように感じます。

2月にリリースされたライブ盤も今年を代表しそうなベスト盤候補でしたが、本作もそれに勝るとも劣らない傑作アルバムに仕上がっていました。本当にその歌声とメッセージに圧倒された作品。まだまだ彼女は傑作をこの世に送り出してくれそう。これからもまだまだ楽しみなシンガーです。

評価:★★★★★

Mavis Staples 過去の作品
One True Vine
If All I Was Was Black
Live In London


ほかに聴いたアルバム

Late Night Feelings/Mark Ronson

ブルーノ・マーズをゲストに迎えた「Uptown Funk」が大ヒットを記録。日本でも昨年、星野源とコラボライブを実施し大きな話題となったマーク・ロンソンの新作。本作では全編女性ボーカルをゲストに迎えたアルバムになっており、マイリー・サイラスやアリシア・キーズといった豪華なゲストも参加。そんな女性ボーカルを生かしつつ、ダンサナブルだったりドリーミーだったり、またちょっとレトロな雰囲気を入れてきたりと魅力的なポップソングを並べてきています。無難という印象もあるのですが、良くできたポップスアルバムといった印象を強く受けるアルバムでした。

評価:★★★★

Mark Ronson 過去の作品
Uptown Special

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