11年ぶりの突然の新作
Title:Help Us Stranger
Musician:The Raconteurs
途中、ライブ活動などで断続的な活動は続けていたものの、オリジナルアルバムとしては11年ぶりとなる、ジャック・ホワイト率いる4人組ロックバンドの新作。ファン待望の・・・というよりも、まさかいまさらリリースされるとは思わなかった、と思った方も多いのではないでしょうか。個人的にも率直に言ってしまうと、まだ活動していたのか・・・とすら思ってしまいました。
もともとルーツ志向的な傾向が強いジャックですが、今回のアルバムでも60年代や70年代の、ロックが最も輝いていた時代の音楽を、思う存分に奏でています。メンバー自ら「The Whoを彷彿とさせる」と語っている疾走感あるロックナンバー「Bored and Razed」からスタートし、「Only Child」も70年代あたりの匂いを感じさせるくすんだ雰囲気が特徴的な楽曲。「Shine The Light On Me」はピアノが入ってメロディアスなナンバーなのですが、The Beatlesっぽさを強く感じます。
その後も、これまた70年代風のブルースロック「Somedays(I Don't Feel Like Trying)」と続き、ラストの「Thoughts And Prayers」もカントリーの雰囲気を入れてしんみり聴かせる、これまた70年代あたりを彷彿とさせるナンバー。アルバムを通じて、古き良きロックに対するバンドの愛情を強く感じさせます。
ただ、このバンドのおもしろい点は単なる懐古趣味のロックではない、という点でしょう。例えばオールドスタイルのロックだけではなく、「Don't Bother Me」などは力強いギターリフにハードロックやメタルからの影響も感じさせます。さらに特徴的なのはアルバムの終盤。パンキッシュな「Live A Lie」は昔ながらのロックというよりはむしろ90年代以降のグランジの影響を色濃く感じます。全体的にもバンド全体の音量の大きななども含めて、単純に昔ながらのロックを追随するのではなく、現代としての視点を感じさせるアレンジになっており、しっかりとThe Raconteursのロックと作り上げていました。
そしてそんなアルバム全体に共通するのは、ただただ音量の大きなギターロックと勢いのあるメロに感じさせる心地よさとロックを聴いたという満足感。楽曲をいろいろと聴くと、前述のような理屈をこねられるのですが、純粋にリスナーとしてはそんな屁理屈などどうでもよくなるような、大音量のロックサウンドに身をゆだねられる、そんなアルバムに仕上がっていました。
ちなみに久しぶりのアルバムにも関わらず、全米チャートでは見事1位を獲得したとか。ヒットチャートの主役がすっかりHIP HOPに置き換わってしまった今、これほど「ロック」らしいアルバムが1位を獲得するのは快挙といえるかもしれませんが、逆に言えば、今でもこのアルバムのように大音量のバンドサウンドを聴きたいと思っているリスナー層は大きいという証左でしょう。次は11年後・・・なんて言わないで、また近いうちにアルバムを作ってほしいなぁ。ロック好きにはたまらない1枚でした。
評価:★★★★★
The Rancounteurs 過去の作品
Consoler Of The Lonely
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事
- 圧巻のステージ(2019.12.29)
- 前作と同じレコーディングで生まれた作品(2019.12.24)
- ゴスペル色が強い新作(2019.12.23)
- バラエティー富んだエレクトロサウンド(2019.12.22)
- 待望の続編!(2019.12.20)
コメント