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2019年7月21日 (日)

ジェットコースターのようなアルバム

Title:
Musician:女王蜂

メンバー全員、年齢、国籍、性別まで不明という謎にみちたプロフィールに奇抜なファッションがとにかくインパクトのあるバンド、女王蜂。2011年のメジャーデビュー後も確実にその人気を伸ばしてきました。ただ個人的には彼らのスタイルが非常におもしろいと思う反面、楽曲がミュージシャンイメージのインパクトに負けてしまっていたというのがいままでの彼らのアルバムの感想でした。

しかし、今回のアルバムではついに、楽曲のインパクトが彼らのミュージシャンとしてのインパクトに追いついてきました。今回の彼らのアルバムについて一言で例えるとまるでジェットコースターのようなアルバムと言っていいかもしれません。最初から最後まで次々と楽曲のスタイルが変わっていく構成に最後まで耳の離せない、非常にスリリングな作品になっていました。

アルバムの1曲目「聖戦」はストリングスも入って優雅な雰囲気にスタート。哀愁感たっぷりのメロとダイナミックなバンドサウンドは女王蜂っぽいものの、端整なサウンドには逆に意外性も感じさせます。ただ続く「火炎」は琴の音色で和風を施したサウンドと打ち込みのリズムのアンバランスさがユニークな和風なナンバーに展開。さらに「魔笛」では和風なメロを奏でながらもファンキーなリズムでギターリフ主導のロックなナンバーに、と次々と異なるタイプの作風の曲が展開されていきます。

女王蜂の真骨頂的なのが中盤の「先生」。ファルセットを用いた中性的なボーカルスタイルに「むすんでひらいて」のメロディーを入れつつ、妖艶さとエロチシズムを感じさせる和のテイストのロックが、まさに女王蜂らしい怪しさがむんむん楽曲全体から漂ってくる楽曲。禁断の恋愛を描いた歌詞にもゾクゾクさせられます。まさに彼らのアーティストイメージが楽曲とピッタリマッチした楽曲に仕上がっていました。

さらにジェットコースターのような展開は後半も続いていきます。タイトルチューンの「十」は静かな雰囲気の前半から、後半は打ち込みやストリングスも入れたダイナミックで分厚いサウンドに変化。そこから「Serenade」はディスコ風のダンサナブルなナンバーに一気に変化。さらに「HALF」ではハードロック風なギターリフを聴かせるヘヴィーなロックチューンへと展開していきます。

最後を締める曲が「Introduction」というタイトルなのがまたユニーク。こちらは比較的ポップでリズミカルなギターロックチューン。ただ、ポップな曲調の中でもどこか怪しげな雰囲気を感じさせる部分がチラホラ感じられるのが女王蜂らしいといった感じでしょうか。最後の最後まで耳を離せない展開が続くアルバムになっていました。

ただ、これほどバリエーションのある内容ながらもアルバム全体としては女王蜂らしさがしっかりと貫かれており、統一感をちゃんと感じられる作品になっていました。こちらは女王蜂というミュージシャン自体が強いインパクトを持っている影響でしょうか。彼らが演っていれば、どんな曲でもしっかりと女王蜂の曲になる・・・そんなインパクトありすぎるミュージシャンイメージが、バラバラな作風の今回のアルバムではうまい方向に作用していたように感じました。

いままで少々物足りなさを感じることの多かった彼らのアルバムでしたが、今回のアルバムは文句なしの傑作といえる出来だったように感じます。今回のアルバムでは、アルバムとして初のベスト10ヒットを記録しましたが、そんな人気の高さも納得の1枚でした。

評価:★★★★★

女王蜂 過去の作品
孔雀
蛇姫様
奇麗
失神
Q


ほかに聴いたアルバム

SICK(S)/BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNTの新作は全6曲入りのミニアルバム。1曲目の「PREDATOR」は疾走感あるギターロックで垢抜けた感もあり非常にカッコいい楽曲に仕上がっていました。その後の楽曲に関しては1曲目と比べると若干平凡なギターロックという傾向にあったことは否定できないのですが、インパクトもありポップなメロをしっかりと聴かせる楽曲に仕上がっていたと思います。個人的にはもう一皮むけてほしい感のあるバンドなのですが、それなりに楽しむことの出来たミニアルバムでした。

評価:★★★★

BLUE ENCOUNT 過去の作品

THE END
VECTOR

Fetish/夜の本気ダンス

タイトル通り、ダンサナブルなロックが特徴的な夜の本気ダンスの3枚目となるアルバム。正直言って、いままで聴いた2枚のアルバムはあまりピンと来なかったのですが、今回のアルバムはメロディーにもインパクトが増し、またダンサナブルなビートと分厚いバンドサウンドのバランスも絶妙。ロックバンドとしてのダイナミズムさも兼ね備えてきており、いままでのアルバムの中では文句なしに一番楽しめました。ただ、サウンドにしろメロにしろ、あと一歩で傑作になりそうだったのにそこに至らなかったもどかしさを感じる面も。あと一歩、乗り越えてほしい壁も感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

夜の本気ダンス 過去の作品
DANCEABLE
INTELLIGENCE

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