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2019年7月13日 (土)

ソロ時代の曲を「発掘」したセルフカバーアルバム

Title:ブリトラ埋蔵金
Musician:ブリーフ&トランクス

ご存じ「半径5メートル以内の日常生活」をテーマにユニークな視点からの歌詞と高校時代からの友人という2人の息のあったハモリが特徴的なデゥオ、ブリーフ&トランクスの最新作。2012年の再結成後もほぼ毎年のようにニューアルバムをリリースし積極的な活動を続けています。ただし今回の作品はベスト盤を挟んで約2年ぶりとなるアルバム。また、この間、ポニーキャニオンから自主レーベルに移籍し、その第1弾となるアルバムとなります。そんな本作は、今回のアルバムは2000年の解散後、伊藤多賀之がソロとしてリリースした作品の中からピックアップし、ブリトラの曲としてカバーした、いわばセルフカバーアルバム。「埋蔵金」というタイトルになっていますが、そのタイトルの通り、伊藤ソロの作品として埋まっていた「隠れた名曲」をあらためてブリトラとして発掘したアルバムということになります。

ただし、伊藤多賀之のソロといっても基本的なスタイルはブリトラの曲とほとんど変わりません。公園にある子どもに見せるには不具合な存在を、子どもの視点から描いた「公園」などは、まさにブリトラらしいスタイルですし、「しこり胸」「戦争ごっこ」のように、最初のA,Bメロの歌詞のヘヴィーさとサビで展開されるオチの下らなさのギャップがユニークな曲もまたいかにもブリトラらしい楽曲。「ユニットバス」のようにムーディーな曲調と歌詞の下ネタというギャップがユニークなのもブリトラならではといった感じ。「ミジンコフェチ」のように、ちょっと変わった人にスポットをあてているのもブリトラでよくありがちなパターンですし、さらにラストの「必要のない君へ」はまじめな曲で締めくくっており、こういう笑いの要素のない曲を入れてくるのもいままでのブリトラと同じ構成になっています。

ただ一方、もともとは伊藤のソロで好きにやっていた曲だったからでしょうか、ブリトラの曲よりは全体的にドギツイ感のある歌詞が多かったように思います。例えば「しこり胸」の家庭崩壊の歌詞はかなりヘヴィーですし、「団地妻の説教」もストレートに浮気がテーマで歌詞もリアル。まじめ曲の「必要のない君へ」もブリトラの曲よりも重いテーマとなっています。ただ、個人的には「ふとん乾燥機」の歌詞はちょっと引いてしまったのですが・・・。

またネタ的にもインディーズでソロで自由にやっていた曲だから練りこみが足りない部分があるのでしょうか、ここ最近の曲に比べるとネタ的にはちょっといまひとつだったように感じます。特にこれはソロ曲のカバーなので仕方ないといえば仕方ないのですが、2人のハーモニーをいかしたような曲はほとんどなく、その点は残念な感じ。「公園」にしてもユニークさを出すために後ろで(無意味な)「カバディ」を連呼しているだけだし・・・。そういう意味ではブリトラの良さを生かし切れていないような印象を受けました。

そういう意味では比較的良作の続いていた再結成後の作品の中ではちょっと残念な印象を受ける部分もあったアルバム。また、途中レコード会社の移籍ということがあったものの、ベスト盤を挟んで久々となる新譜がカバーアルバムというのは、ネタ切れ気味?と若干心配になってしまいます。もっとも、ネタが集まっていないのに無理にリリースするよりも、こういう形で間をつなぎつつ、傑作をリリースしてくれたほうがうれしいのは間違いありません。そんな訳で、次の新譜に期待したいところ。もちろん、ちょっと残念な部分もあったものの本作もブリトラが好きなら十分楽しめるアルバムであることは間違いありません。残念ながら再びメジャー契約が切れてしまったようですが、これからの彼らの活躍にも期待したいところです。

評価:★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛
ブリトラ依存症
手のひらを満月に
ブリトラBESTバイブルⅠ~家族で聴いても恥ずかしくない曲集~
ブリトラBESTバイブルⅡ~ひとりでこっそり聴いた方がいい曲集~

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