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2019年7月19日 (金)

Princeの音楽性の広さを実感

Title:Originals
Musician:Prince

ファンクミュージックの第一人者として絶大な人気を誇り、数多くのヒット曲をこの世に送り出しながらも2016年にわずか57歳という若さで突然この世を去ったPrince。そんな彼は生前、自ら歌うのみならず数多くのミュージシャンたちに楽曲を提供してきましたが、本作は彼が他のミュージシャンたちに提供した楽曲を自らが歌ったデモ音源を収録した企画盤。いわば楽曲提供を行うためのガイドボーカル的な録音をおさめたアルバムになっており、ファンにとっては実にうれしいアルバムになっています。Princeは特に80年代に、シーラ・EやThe Timeといった「プリンス・ファミリー」と呼ばれるようなミュージシャンたちのプロデュースを手掛け、楽曲を提供してきたこともあり、今回、それらの曲のPrince版の録音が数多く収録されています。

ほかのミュージシャンに提供した楽曲とはいえ、当たり前といえば当たり前ですがPriceが歌うと実に彼らしい、軽快なファンクチューンが並んでいます。ハイトーンボイスで軽快にファンキーに歌う「Sex Shooter」からスタートし、The Timeに提供した「Jungle Love」もダンサナブルなリズムが心地よいナンバー。また「Noon Rendezvous」はピアノのシンプルな演奏でPrinceの歌声をこれでもかと聴かせるバラードナンバーになっており、Princeファンにとっては感涙ものの、魅力的な楽曲となっています。

また、Princeが楽曲提供を行っていた時期は主に80年代に固まっており、いかにも80年代的な楽曲が多いのも今回のアルバムの特徴。ラップを聴かせる「Holly Rock」も、いかにも80年代のオールドスクール的なHIP HOPナンバーになっていますし、「The Glamorous Life」もある意味80年代的なチープとも言える打ち込みのサウンドが特徴的。「Dear Michaelango」も、特にドラムのサウンドなど80年代の空気を色濃く感じさせるナンバーになっています。ここらへんは良くも悪くも時代を感じさせるのですが、一方では非常に懐かしさを感じさせる楽曲にもなっていました。

さらに今回のアルバムで非常におもしろかったのはPrinceらしい楽曲が並んでいる中に、ちょっと彼のイメージからすると毛色の違う楽曲が紛れ込んでいる点でしょう。前述の「Holly Rock」もオールドスクールなHIP HOPチューンになっていますし、「Manic Monday」もファンク色の薄いフォーキーでメロディアスなナンバー。「You're My Love」もAORの色の濃いメロディアスなミディアムチューンとなっており、Princeらしいファンク色は薄くなっています。ここらへん、逆に他のミュージシャンへの楽曲提供だからこそPrinceの普段の作風とは異なる色を出せたということでしょうか。非常に興味深く感じるとともに、彼の音楽性の幅の広さを感じることが出来ました。

そんな訳でPrinceらしい楽曲を楽しめると同時にPrinceの音楽性の広さをあらためて感じることが出来るアルバムに。ファンにとっては間違いなく実にうれしいアルバムになっていたと思います。また熱心なファンでなくてもオリジナルアルバム感覚でPrinceの魅力に触れられる傑作に。突然の逝去から3年がたった今でも彼の楽曲の魅力はまだまだ多くのリスナーを魅了しそうです。

評価:★★★★★

PRINCE 過去の作品
PLANET EARTH

ART OFFICIAL AGE
PLECTRUMELECTRUM

HITnRUN Phase One
HITnRUN Phase Two
4EVER
Piano&A Microphone 1983


ほかに聴いたアルバム

Black Star Dancing/NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS

ノエル・ギャラガーの新作はリミックス込み全5曲入りのEP盤。表題曲は先日の来日公演でも披露してくれましたが、打ち込みのリズムが軽快なサイケ的な要素も入ったダンスチューンで、oasis時代では聴けなかったような方向性の曲調が魅力的。2曲目は哀愁感たっぷりに聴かせるナンバーに、3曲目はカントリー風の軽快な楽曲になっており、どちらもノエル・ギャラガーのメロディーメイカーとしての才を感じさせる出来となっています。今年はあと2枚のEPのリリースを予定しているそうで、今後の新曲、そしてその後に控えているであろうフルアルバムも楽しみになってきます。

評価:★★★★★

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS 過去の作品
NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS
CHASING YESTERDAY
Who Built the Moon?
Wait And Return EP

Loom Dream/Leif

The XXやFKA TWIGSを生み出したイギリスのレーベル、YOUNG TURKS傘下のサブレーベルWHITIESからリリースされたイギリスのプロデューサー、Leifによる新作。基本的にドリーミーなエレクトロサウンドを聴かせるアンビエントなのですが、その中にパーカッションが加えられており、なにげにアルバム通じてリズミカルな作風になっているのがユニーク。しんみり聴き入りつつも、独特なリズムに妙な癖のあるアルバムでした。

評価:★★★★★

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