アフリカ音楽を取り入れつつ、サンタナらしさも強く感じる傑作
Title:Africa Speaks
Musician:SANTANA
1969年のウッドストックフェスティバルへの出演も誇るご存じ、大御所中の大御所バンド、SANTANA。結成から50年以上を経た今でも精力的な活動を続けています。そんな彼らの約3年ぶりとなるニューアルバムはアフリカの音楽やリズムからインスピレーションを受けたという作品。そうだとしてもあまりにもベタなタイトルが目を惹くのですが、今回のアルバムではアメリカのラジオ局NPRで「史上最強のボーカリスト50人」にあげられたマヨルカ島出身のスペイン人シンガー、ブイカを全面的にボーカリストとして起用。またデフ・ジャムの創始者であり、レッチリやビースティーズ、アデルまで様々なミュージシャンへのプロデュースで知られるリック・ルービンをプロデューサーとして起用し大きな話題となっています。
そんなアフリカの音楽から強い影響を受けた今回のアルバム。特に特徴的なのがアルバム全体に奏でられているトライバルなリズムを刻むパーカッション。軽快で、時にはポリリズム的なリズムを刻むパーカッションのリズムが強い印象を受けます。そしてそんなパーカッション以上に強い印象を受けるのがなんといってもブイカのボーカルでしょう。彼女のボーカルはしゃがれ声気味なのですが、それがトライバルな雰囲気とマッチしなんともいえない味があります。さらに表現力ありパワフルなボーカルは、どこかエキゾチックな雰囲気を漂わせています。また、楽曲の多くがアフリカ音楽に良くみられるコールアンドレスポンスの形式を取っており、そういう意味でも全編的にアフリカ音楽からの影響を強く感じさせるアルバムになっていました。
ただし、単なるアフリカ音楽を取り入れたアルバム、というだけではサンタナのアルバムとしての面白味はありません。このアルバムが非常にユニークだったのはここからの話。トライバルなサウンドのに対抗するかのごとく、カルロス・サンタナのギターが奏でられています。そしてこのギターはいつも通りのサンタナ節といった感じで、全くアフリカ音楽に寄せられていません。ただ、サンタナのギターというと、良くも悪くも60年代の昔ながらもクラシカルなロック路線そのままのギターサウンドなのですが、これがアフリカ音楽のサウンドとマッチすることにより、全く新しい独特の様相を帯びてくるからユニーク。まさに文化と文化の融合とも言える独特の楽曲に仕上がっています。
またサンタナというとラテン・ロックというイメージが強いのですが、本作でも「Breaking Down The Door」のようにラテン風味の強い曲もあり、このようなラテンとの融合という点も含めて非常の強い独自性も感じられます。まさにサンタナの音楽とアフリカの音楽が非常に高い次元で融合した傑作と言えるかもしれません。
実際、今回のアフリカ音楽の取り入れ方も、決して全面的にアフリカらしさを取り入れた訳ではありません。パーカッションのサウンドにしろポリリズム的な要素も感じられるものの、全面的にポリリズムのサウンドを押し出した・・・といった感じにはなっていません。あくまでも基本はサンタナのアルバムであるということ。また、全面的にボーカルとして起用されたブイカにしても、彼女の両親はアフリカ、赤道ギニア出身らしいのですが、彼女自身は生まれも育ちもスペイン。ある意味、そんな彼女の生い立ちもこのアルバムのコンセプトにピッタリマッチしていると言えるかもしれません。
キャリア50年以上の大ベテランバンドの彼らですが、今なお新たな挑戦を続ける彼らのすごさにあらためて驚かされた傑作。また、アフリカの音楽をサンタナの音楽と上手く融合させることが出来たのは彼らの実力あってゆえでしょう。リーダーのカルロス・サンタナは既に70歳を超えた大ベテランですが、まだまだこれからも傑作を世に送り出してくれそう。現役感あふれる彼らのこれからの活躍にも期待です。
評価:★★★★★
Santana 過去の作品
Guitar Heaven:The Greatest Guitar Classics Of All Time
POWER OF PEACE(THE ISLEY BROTHERS & SANTANA)
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事
- 圧巻のステージ(2019.12.29)
- 前作と同じレコーディングで生まれた作品(2019.12.24)
- ゴスペル色が強い新作(2019.12.23)
- バラエティー富んだエレクトロサウンド(2019.12.22)
- 待望の続編!(2019.12.20)
コメント