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2019年7月16日 (火)

軽快なエレクトロポップが楽しい傑作

Title:False Alarm
Musician:TWO DOOR CINEMA CLUB

北アイルランド出身のロックバンド、TWO DOOR CINEMA CLUBによる約2年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。2010年にリリースされたデビューアルバム「Tourist History」が高い評価を受け、さらに続く2枚目のアルバム「Beacon」では全英チャートで2位、アメリカビルボードチャートでも17位と人気の面でもグッと飛躍を遂げました。

そして前作「Gameshow」でついにメジャーデビュー・・・となった訳ですが、残念ながら前作はサウンドが垢抜けた結果、よくありがちなポップバンドになってしまったという印象を受けるアルバムになっていました。その影響かどうかは不明なのですが、ちょっと久々となる最新アルバムは全英チャートでは69位と前作の5位を大きく下回る結果に。売上の面ではちょっと残念な結果に終わってしまっています。

ただし、アルバムの出来としては前作を大きく上回り、TWO DOOR CINEMA CLUBのポップな側面の魅力をいかんなく発揮した傑作アルバムに仕上がっていました。

まず楽曲の方向性としては80年代の雰囲気を感じるニューウェーヴ風のエレクトロサウンドに哀愁感を帯びたメロディーラインといういままでの彼らのスタイルからは大きくは変わりません。「Satellite」などちょっとスペーシーさを感じるエレクトロサウンドは完全に80年代といった感じですし、ラップを取り入れた「Nice To See You」もそのラップのスタイルを含めて、80年代的な懐かしさを感じさせるナンバーになっています。

一方、サウンドの方向性としてはそれなりにタイトなサウンドであるもののデビュー当初に比べると音数も増えた結果、スカスカなサウンドゆえのグルーヴィーさが薄れ、垢抜けた感じになってきたという意味では前作と共通。デビュー当初のいかにもインディーバンド然とした雰囲気を求める方には本作もちょっと方向性が違ったかもしれません。

ただ、ポップソングとしての強度は前作と比べて大きく増したような印象を受けます。シングルにもなった「Talk」は軽快なエレクトロポップなのですが、聴いていてワクワクするようなポップでインパクトあるメロディーラインを聴かせてくれますし、ミディアムチューンの「Break」もちょっと切ないメロディーが耳に残るナンバー。前述の「Satellite」も80年代らしいちょっとレトロフューチャーな雰囲気のあるサウンドが心地よいリズミカルな楽曲となっています。

サウンド的にも軽快なエレクトロポップの中に「Dirty Air」のようなダイナミックなバンドサウンドを聴かせるロックな作品を入れてきたりと緩急のある内容に。前作は似たようなタイプの曲が多かった結果、最後は少々飽きてしまったアルバムになってしまいましたが、今回のアルバムでは最後まで魅力なポップソングを存分に楽しめる作品に仕上がっていました。

デビュー当初の彼らのイメージからするとちょっと違うと感じるかもしれませんが、今の彼らの方向性としては彼らのひとつの到達点のようにも感じられる、実に魅力的なポップスを聴かせてくれる傑作アルバムに仕上がっていました。人気の面では少々低迷気味の彼らですが、これだけの傑作を聴かせてくれるのならば、また盛り上がるでしょう。ポップソング好きにはたまらない1枚でした。

評価:★★★★★

TWO DOOR CINEMA CLUB 過去の作品
Tourist History
Beacon
Gameshow


ほかに聴いたアルバム

Shepherd in a Sheepskin Vest/Bill Callahan

現在53歳。アメリカのインディーフォークシンガー、ビル・キャラハンのニューアルバム。全編、アコースティックギターでシンプルに聴かせるサウンドをバックに、フォーキーなメロディーが魅力的。アンダーグラウンドらしい、ちょっと荒々しい手触りも魅力的。一方でメロディーは万人の心をうちそうなシンプルでメロディアスなもの。知る人ぞ知る的なシンガーのようですが、多くのリスナーが楽しめそうな内容になっていました。

評価:★★★★★

Western Stars/Bruce Springsteen

約5年ぶりとなるブルース・スプリングスティーンの新作。かのトランプが大統領に就任した後、初となるアルバムなのですが、予想されていたような社会派なメッセージが強いロックンロールなアルバムではなく、その渋い歌声でゆっくりと歌い上げる、あくまでも歌を聴かせる包容力のあるアルバムに仕上がっていました。トランプのアメリカに限らず、自国中心主義的な思想が広がっていく中だからこそ、あえて対立をあおるのではなく、優しく包み込むのようなアルバムを作って来たということなのでしょうか。そんな彼のメッセージも感じる作品でした。

評価:★★★★

BRUCE SPRINGSTEEN 過去の作品
Working On A Dream
WRECKING BALL
High Hopes
1980/11/05 Tempe,AZ

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コメント

TWO DOOR CINEMA CLUBの新作は完全に古き良き80年代の英国ニューウェイブのノリの良さとポップさを完全に現代にアップデートした傑作だと思います。

投稿: ひかりびっと | 2020年3月 2日 (月) 21時43分

>ひかりびっとさん
いいアルバムでした。

投稿: ゆういち | 2020年7月 6日 (月) 22時17分

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