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2019年7月 6日 (土)

ロックバンドとして

Title:QUIZMASTER
Musician:NICO Touches the Walls

途中、「OYSTER-EP-」「TWISTER-EP-」という2枚のEP盤を挟みつつ、フルアルバムとしては約3年3ヶ月ぶりとなるNICO Touches the Wallsのニューアルバムは、一言で言って、彼らにとって大きなターニングポイントとなるような作品となっていました。

思えばNICO Touches the Wallsといったら「ミスチルの亜流」といったイメージのあったギターロックバンドでした。ポップなメロが特徴的なバンドではあったものの、楽曲の構成として明らかにミスチルに似ている部分があり、彼らの個性が薄い、そう感じてしまうアルバムが続いていました。ただ、前々作「Shout to the Walls!」はいままでと比べてメロがグッと垢抜けたメロに彼らの成長を感じ、前作「勇気も愛もないなんて」では大きなインパクトを持ったメロディーラインが素直に楽しめる、バンドとして一皮むけた傑作に仕上がっていました。

さらにその後リリースされた2枚のEPもいままでの彼らにない曲調のナンバーが収録されており、彼らのさらなる進化を感じさせる作品になっていたのですが、続く今回のアルバムに関しては、彼らのバンドとしての大きな成長を感じ、ロックバンドとして強度が非常に強くなったアルバムに仕上がっていたように感じます。

アルバム1曲目の「18?」からシャウト気味のボーカルに力強いストロークを奏でるアコギの音色がまずは「ロック」として聴かせる曲になっていますし、続く「KAIZOKU?」もノイジーで非常にヘヴィーなギターサウンドを聴かせる曲になっており、いままでのニコではあまり聴かせることのなかったヘヴィネスさを感じるサウンドが強いインパクトを受けます。さらに「マカロニッ?」もテンポのよいガレージロックのナンバーになっており、こちらも彼らのロックな側面が強調された楽曲になっています。

また、後半の「2nd SOUL?」などもストリングスを入れスケール感を出し、伸びやかに歌う楽曲構成などはいままでの彼らと同様のJ-POP的な側面を強く感じるのですが、ただそんな曲でも分厚いバンドサウンドが加わり、ロックバンドとしての底力を見せるなど、明らかに「バンド」としての大きな進化を感じさせる楽曲に仕上がっていました。

一方で軽快なポップチューンの「サラダノンオイリーガール?」「3分ルール?」などインパクトあるポップなメロを聴かせるような曲も並んでおり、ここらへんは従来のポップバンドとしての彼らの魅力も感じます。ただ、残念ながらポップなメロを聴かせるという側面においては今回はちょっと後退してしまった印象も受けます。もっともメロに関しても以前にような「ミスチルフォロワー」的な部分はかなり薄れており、そういう意味ではしっかりとニコとしての個性を感じられる作品になっていたと思います。

そんな訳でNICO Touches the Wallsはロックバンドである、ということを改めて主張し、かつバンドとして力のあるところを見せつけたアルバム。いままでのポップス路線ではなく、今後はよりロックとしての強度を強めた作品を作り上げていくという彼らのスタンスを感じさせる作品になっており、そういう意味では彼らにとっての大きなターニングポイントになったアルバムだったと思います。正直、メロディーの良さなども含めた出来としては前作の方が上だったと思うのですが、彼らのバンドとしての進化という点を含めて非常に意義深い作品に仕上がっていたと思います。あらたなる進化を遂げたニコ。これからの活躍が非常に楽しみになってきます。

評価:★★★★★

Title:Howdy!! We are ACO Touches the Walls~STAR SERIES~
Musician:NICO Touches the Walls

で、こちらはもともと2枚のEP「OYSTER-EP-」「TWISTER-EP-」と上記「QUIZMASTER」のボーナス盤としてついてきたアコースティックバージョンの作品をひとつにまとめた配信限定の企画盤。「QUIZMASTER」を含め、比較的、メロよりもバンドサウンドに重きを置いたような作品が並んでいただけに、アコースティックアルバムでは彼らのメロディーにより力点を置いた・・・と思ったのですが、アコースティックバージョンでも比較的、ロックバンドとしてのニコに力点を置いたような作品が目立っていました。

「FRITTER」などでは正統派ブルースのようなイントロにまず驚かされます。ただ、残念ながら歌がはじまるとブルース的な要素が薄くなってしまうのですが・・・。原曲でもガレージ色が強かった「マカロニッ?」はアコースティックバージョンとなるとキャバレーロックとしての様相が強くなり、また「別腹?」などではジャジーな要素が加わったりしてユニーク。同じバンドサウンドに力点を置きつつ、オリジナルとアコースティックバージョンで違いを見せるあたり、非常におもしろさを感じます。

ただ、「QUIZMASTER」のオリジナルで感じたのと同様にアコースティックバージョンにすると、若干メロの弱さを感じてしまう部分は否定できず。アコースティックバージョンだからこそ、それがより強く感じてしまう部分はありました。そういう点はちょっと残念にも感じるのですが、その点を差し引いてもロックバンドとしての彼らの魅力を感じさせるアルバム。これからの彼らの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

NICO Touches the Walls 過去の作品
Who are you?
オーロラ
PASSENGER
HUMANIA
Shout to the Walls!
ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト
Howdy!! We are ACO Touches the Walls
勇気も愛もないなんて
OYSTER-EP-
TWISTER-EP-


ほかに聴いたアルバム

FEEL GOOD/SIR UP

以前はKYOtaro名義で活動していた大阪出身のシンガーソングライターが、SIR UPと名義を変えてリリースした初のソロアルバム。現在、人気上昇中で、本作では初となるベスト10ヒットを記録しています。楽曲のタイプとしてはメロウでフィーリーなソウルミュージックをベースとしたポップチューン。昨今のシティポップブームの流れで出てきた印象を強く受けます。メロのインパクトはあり、グルーヴィーなサウンドに惹きつけられますが、正直言うと、よくありがちというイメージが強く、SIR UPならではの独自性は薄い印象も。そのため、最初は非常に惹きつけられるものの、後半はちょっとダレて来てしまいました。次回作以降、もうちょっと彼らしい個性が欲しいところかも。今後に期待。

評価:★★★★

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