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2019年7月 1日 (月)

生前の音源を基に

Title:TIM
Musician:AVICII

EDMの代表的なミュージシャンとして世界的に人気を博し、日本でも2016年に千葉マリンスタジアムでライブを行うなど、絶大な人気を誇ったミュージシャン、AVICII。そんな彼が昨年の4月、わずか28歳という若さで突然この世を去ったというニュースは世界中で衝撃をもって迎え入れられました。一説によると自殺だったという彼の突然の死でしたが、そんな彼が亡くなる直前まで録音を続けられていたという音源を、残された彼のメモ書きやEメールなどに基づき、彼の意思を受け継いだプロデューサー勢が完成させたアルバムが本作となります。

もともとAVICIIの楽曲というと、EDMと言われて一般的にイメージさせるような、とにかく踊らせることを重視したアップテンポな作品という感じではなく、メロディアスな歌を聴かせるエモーショナルなサウンドやメロが特徴的。今回のアルバムもそんないままでのAVICIIの作風を引き継いでいる哀愁感あふれるポップチューンの連続となっており、一言で言うと、実に彼らしい楽曲の並ぶアルバムに仕上がっていたと思います。

特に2曲目の「Heaven」はテンポよいリズミカルなエレクトロサウンドに叙情感あふれる悲しげなメロディーラインが印象に残るスケール感もある楽曲。「Bad Reputaion」も悲しいメロディーラインが胸をうつ哀愁感あふれる楽曲になっていますし、さらに「Ain't A Thing」は狂おしいまでの泣きメロを聴かせてくれ、胸が締め付けられるような切なさを覚えます。

また、アルバム全体としてはエモーショナルな作風で一貫しつつも、一方では様々なプロデューサーが参加した結果、バラエティー豊かな作風を聴かせてくれるのも今回のアルバムの特徴。例えば「Tough Love」ではエキゾチックな雰囲気のサウンドで聴かせてくれますし、ロックバンドのImagine Dragonsが参加した「Heart Upon My Sleeve」はまさにロックテイストのダイナミックなサウンドを聴かせてくれます。また日本人にとっては「Freak」で「上を向いて歩こう」のメロディーラインが登場してくるあたりはちょっとうれしいところかもしれません。

未完成だったアルバムを死後に完成させるアルバムは古今東西、少なくありませんし、本人にとって未完成だった作品を第三者が完成させて公表させてしまうのは賛否両論がわかれるところでしょう。そういう意味では今回のアルバムも否定的に捉える方も少なくないかもしれません。そういう意味では微妙な部分を含むアルバムであるのは間違いありませんが、ただそれを差し引いてもAVICIIの新作として、実に彼らしい、そしてよく出来たアルバムに仕上がっていたと思います。良くも悪くもその分、新鮮味に欠ける部分も感じたのですが、評価的にはこれが最期のアルバムであり、追悼の意を込めて・・・。これが最後というのは本当に残念。ただ、今後も未発表音源はリリースされそうな予感もしますが・・・。

評価:★★★★★

AVICII 過去の作品
True
True:Avicii By Avicii
STORIES
AVICII(01)


ほかに聴いたアルバム

ZUU/Denzel Curry

マイアミシーンを代表するラッパーで、現在、人気上昇中のDenzel Curryによる最新アルバム。トラップ的な要素も取り入れたダークな雰囲気のトラックとラップが特徴的ですが、曲によってはメロウなトラックを入れてきたり、メタリックなサウンドを聴かせたりとバラエティーがあり、意外とポップでメロディアスな傾向も強く、耳を惹かれます。今後もさらに注目度が高まっていくかも?

評価:★★★★

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