« 1位は圧倒的な強さで | トップページ | ロックバンドとして »

2019年7月 5日 (金)

「人生」を歌ったメッセージが重く

Title:fierte
Musician:岡村孝子

今年4月、非常にショッキングなニュースが入ってきました。岡村孝子が急性白血病で公表。発表されていたライブ公演もキャンセルし、闘病生活に入りました。白血病は言うまでなく「血液のガン」とも言われる重い病気。彼女も療養生活も長期になることが見込まれ、一日も早い回復が望まれます。そしてそんな中、当初の予定通りのリリースされたのが約6年ぶりとなるニューアルバムである本作。このアルバム自体は白血病発覚前に制作されたアルバムなので彼女の病気を反映された内容ではないのですが、それでも今から聴くと彼女の今の境遇と重ね合わせて、胸に来るものがあるものもありました。

まず、正直に言ってしまうと、病気云々関係なく、彼女自身は脂にのって勢いがある、といった感じでは決してありません。6年ぶりのアルバムにも関わらず、わずか9曲入りでそのうち2曲は過去の曲のリメイク。今回のオリジナル曲に関しても、良くも悪くも岡村孝子らしい、金太郎あめのような似通った作風の曲、アレンジのナンバーが続いており、目新しさはゼロ。かつ、アルバムの中であきらかに耳を惹くのが過去作のリメイクの2曲であって、それだけオリジナル曲の勢いのなさが目立ちます。

しかしそんな中、今回のアルバムは人生について歌ったような曲が目立ちました。例えば「遥かなる旅路」

「限りのある命の日々を
燃やし尽くしたいから

やがて夜が明ける
明日はまだ見えないけど
この悲しみの果てに
遥かなる夢を抱いて」
(「遥かなる旅路」より 作詞 岡村孝子)

という歌詞は図らずも今の彼女の境遇と重ね合わせられますし、「Hello」でも

「ありがとう 同じ時代 こうしてくぐりぬけて
長い旅を続けている このままどこまでも
あなたとめぐりあって 喜び分かちあって
この小さな命燃やし 明日へ歩いていく」
(「Hello」より 作詞 岡村孝子)

「命」という単語を出しつつ、非常に前向きなメッセージを聴かせてくれます。この前向きなメッセージソングというのは良くも悪くも彼女の歌詞の特徴で、今回の歌詞についてもある意味、いつも通りの彼女のスタイルともいえるのですが、ただ、まるで病気のことを察していたような歌詞とも感じられ、胸に来るものがあると同時に、私たちの心に響くものもあります。

そんなアルバムの最後を飾るのが「Happy Song」というのも偶然ながらもまさに彼女の病気のことを思うと、非常に重いメッセージ性を感じさせます。特にこの曲では

「人生は案ずるより
素敵なものだと
いつの日も変わらず
信じさせていてね

あなたと歩いてく」

(「Happy Song」より 作詞 岡村孝子)

という歌詞で締めくくられており、こちらも前向きのメッセージソングながらも彼女から発せられると、重いメッセージ性を感じます。

偶然だったのでしょうが、彼女がその病気を察したかのような「人生」について歌った曲が目立つ今回の作品。前向きなメッセージソング自体は彼女のいつものスタイルであり、目新しいものではありません。ただ、今回、彼女の病気と重ね合わせることにより、その歌詞に重さが加わり、私たちの心にもズシリと響くような曲になっていました。とにかく、1日も早い回復を心からお祈り申し上げると共に、次のアルバムではその病気にかかったことも前向きにとらえられるような、また彼女らしいメッセージソングをその澄み切った歌声で聴かせてほしい、その日が1日も早く来ることを心から祈っています。

評価:★★★★

岡村孝子 過去の作品
勇気
After Tone IV
DO MY BEST Ⅱ


ほかに聴いたアルバム

Sweet Candy Power/少年ナイフ

約3年ぶりとなる少年ナイフのニューアルバム。レトロなロックンロール風のナンバーやポップなナンバーなど、ここ最近のアルバムの中ではバラエティーが豊富な内容になっています。ただ、基本的にはいつも通りの陽気で軽快なガレージロックという方向性は変わらず。良くも悪くも安定感があり、安心して聴けるアルバムになっていました。

評価:★★★★

少年ナイフ 過去の作品
スーパーグループ
フリータイム
大阪ラモーンズ
Pop Tune
アドベンチャーでぶっとばせ!
ALIVE! in Osaka

GUITARHYTHM VI/布袋寅泰

彼のライフワークである「ギタリズム」シリーズの最新作。「Thanks a Lot」では元BOOWYの松井常松、高橋まことが参加したことでも大きな話題に。一方では、MAN WITH A MISSIONやCorneliusといったミュージシャンとのコラボがあったりと、若手から(・・・ってMAN WITH A MISSINもそろそろ中堅どころか)ベテランまで様々なミュージシャンとの意欲的なコラボも特徴的。彼の音楽への挑戦心を感じられます。ただ、エレクトロサウンドを取り入れた楽曲は正直言ってどうも中途半端。ギターのダイナミズムさも薄く、正直、タイトルの由来となっている「ギター」と「リズム」が上手く融合されていないような印象を強く受けました。久々の「ギタリズム」シリーズながらもちょっと残念な印象を受けてしまったアルバムでした。

評価:★★★

布袋寅泰 過去の作品
51 Emotions -the best for the future-
Paradox

|

« 1位は圧倒的な強さで | トップページ | ロックバンドとして »

アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 1位は圧倒的な強さで | トップページ | ロックバンドとして »