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2019年6月11日 (火)

多彩な女性ボーカルが参加

Title:I Am Easy To Find
Musician:The National

アメリカはニューヨーク、ブルックリンを拠点として活動しているインディーロックバンド、The National。2010年にリリースしたアルバム「High Violet」がアメリカビルボードチャートで3位にランクインするなどブレイク。特に前々作「Trouble Will Find Me」は各種メディアなどでも高い評価を受け、日本でも一気に注目が集まりました。ただ、彼ら自体の結成は1999年というから、なにげにキャリア20年を誇るベテランバンド。その作風からは長いキャリアに裏付けされた安定感も覚えます。

さて、そんな彼らの約2年ぶりとなるニューアルバム。本作もアメリカビルボードでは5位、イギリスのナショナルチャートでは2位にランクインするなど、人気の面でも安定してきています。The Nationalといえば、哀愁感と優しさを同居させたようなメロディーラインをシンプルに聴かせるポップバンドという点がひとつの大きな特徴。本作でも、その特徴な遺憾なく発揮されています。アルバムの冒頭を飾る「You Had Your Soul With You」もテンポ良い楽曲ながらもゆっくりと優しく包み込むのようボーカルで歌われる暖かみのあるポップソングが魅力的。まずは彼ららしい魅力的なポップチューンでアルバムの幕は開きます。

そして今回のアルバムの特徴は数多くの女性ボーカリストが参加している点。例えばボーカル、マット・バーニンガ-のボーカルに寄りそうように優しく歌われる「Roman Holiday」ではデイヴィット・ボウイのセッションミュージシャンとしても活躍したゲイル・アン・ドロシーが参加。彼女はどちらかというとバックコーラスとしての参加となるのですが、長いキャリアを持つ彼女らしい深みのあるコーラスが大きな魅力となっています。

またタイトル曲「I Am Easy To Find」ではThis Is the Kit名義でも活躍している女性シンガー、ケイト・ステーブルスが参加。静かな歌声で優しく聴かせてくれていますし、「So Far So Fast」ではアイルランドのシンガーソングライター、リサ・ハニガンがほぼメインボーカルとして参加。ドリーミーでサイケ気味なサウンドをバックに、その美しいボーカルを聴かせてくれています。

さらには女性ボーカルではありませんが、「Her Father In The Pool」「Dust Swirls In Strange Light」「Underwater」ではブルックリン青少年合唱団が参加。合唱団の美しく澄み切った歌声が、楽曲に神々さすら与えており、アルバムの中でも大きなインパクトとなっています。

そんな訳で女性ボーカリストの参加により楽曲がより美しく、優しさを感じさせるようになった今回のアルバム。それに呼応するためか、サウンド面でも前作に見受けられたガレージロック的な楽曲はなくなり、逆にピアノやストリングスを取り入れたアコースティック色の強い楽曲が多くなり、サウンド面でも優しさを感じさせるポップなアレンジに仕上がっていたように感じます。

ちなみに今回のアルバム、女性ボーカルが参加するも、あえて特定のボーカリストが参加するのではなく、多くのボーカリストが参加しているのは、マット曰く「人々のアイデンティティの構造をより多く表現しようと思った」からだそうで、その多様性もまたこのアルバムの大きな魅力となっています(ちなみに男性が参加していないのはマットが男は嫌だったからだそうです(笑))。

前作も比較的シンプルで優しいポップチューンが大きな魅力でしたが、今回は多様な女性ボーカルが参加することによりその魅力がより際立った傑作アルバムに仕上がっていたと思います。シンプルゆえに比較的多くの方に素直にお勧めできる傑作アルバム。ポップなメロディーが心に染み入る作品です。

評価:★★★★★

The National 過去の作品
Sleep Well Beast


ほかに聴いたアルバム

Rammstein/RAMMSTEIN

ドイツのメタルバンドによる約10年ぶり、久々となる新作。非常に重いメタリックなサウンドでダークに聴かせる楽曲が特徴的。このヘヴィーな楽曲の雰囲気に、ある種の堅苦しさを感じさせるドイツ語が妙にマッチしており、妙なインパクトを与えています。彼らのアルバムを聴くのはこれがはじめてですが、このドイツ語という点も含めて非常にインパクトを覚えるアルバムになっていました。

評価:★★★★

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