アフリカン・アメリカンの「レガシー」をテーマに
Title:LEGACY!LEGACY!
Musician:Jamila Woods
前作でデビュー作であるアルバム「Heavn」が、各種メディアの年間アルバムランキングで上位にランクインし高い評価を得たシカゴのR&BシンガーJamila Woods。最近では話題のHIP HOPミュージシャン、Chance the Rapperの「Sunday Candy」に参加していることでも大きな注目を集めました。そんな彼女の約3年ぶりとなる2枚目のニューアルバムが本作。今回、彼女のアルバムをはじめて聴いたのですが、このデビュー作の高い評判に違わぬ傑作アルバムに仕上がっていました。
まず本作で印象的だったのは彼女の歌声。アルバムの1曲目を飾る「BETTY」は静かな雰囲気のトラックでしんみりと聴かせる楽曲になっていましたが、包み込むような雰囲気のボーカルが魅力的。ちょっとしゃがれた雰囲気の声も大きな魅力となっており、一言でいえばスモーキーという表現がピッタリ来るのでしょうか。ボーカリストとしての深みを感じるそのボーカルが大きな魅力になっていました。
また今回のアルバムは「LEGACY!LEGACY!」というタイトルが示すように彼女が今までの人生で影響を受けてきた芸術作品がテーマになっています。実際、特にアフリカン・アメリカンの芸術家の名前を冠した楽曲が並んでおり、「ZORA」は1920年代から40年代に活躍した作家、ゾラ・ニール・ハーストンの名前ですし、「MILES」はまさにジャズの巨人、MILES DAVISの名前。同じくジャズミュージシャンの「SUN RA」の名前を付けた曲もありますし、「MUDDY」なる曲はやはりMUDDY WATERSの名前を冠した曲ということでしょうか。アフリカン・アメリカンの偉大なる業績を伝えるテーマ性の強いアルバムになっています。
もっとも楽曲的にはそんな偉人たちの影響をそのまま受けた・・・というよりはしっかりとジャミーラの色と付けた、聴かせるメロウなソウルチューンが並びます。アルバムとしてはしっかりと歌を聴かせる楽曲が並んでおり、シンプルに彼女の歌声を聴かせる楽曲が耳を惹きました。
そんな中でも例えば「SONIA」ではラップを取り入れ、エレクトロなトラックの中には今風のリズムを入れてきていますし、「MILES」ではその名前の通りか、エレクトロジャズの要素も。また、「MUDDY」では力強いギターの音も取り入れたり、楽曲によりバラエティーを感じさせまず。全体的には彼女のスモーキーなボーカルを含め、昔ながらのソウルの要素を強く感じつつ、一方では強いリズムトラックが耳を惹く、比較的今風にアップデートされたサウンドが大きな魅力に感じました。
今回のアルバムがはじめて聴いた彼女のアルバムとなるのですが、その歌声とメロディーに強く惹かれる傑作アルバムだったと思います。まだ本作が2作目となるキャリア的にはまだまだのミュージシャンですが、ボーカルにはある種の貫禄すら感じますし、これからの活躍が非常に楽しみなミュージシャン。ソウルやR&Bが好きなら間違いなく要チェックの1枚です。
評価:★★★★★
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