独特の世界観は相変わらず
Title:光の中に
Musician:踊ってばかりの国
独特なサイケフォークロックのサウンドでリスナーを虜にしている踊ってばかりの国。このたび、自主レーベル「FIVELATER」を設立。約1年ぶりとなるアルバムは、そのレーベル第1弾のアルバムとなりました。
以前は社会派な歌詞を書いてくることでも特徴的だった彼らですが、前々作「SONGS」以降は社会派な歌詞が鳴りを潜め、「歌」を聴かせるスタイルの曲が目立っています。今回のアルバムも基本的にその「歌」を聴かせるスタイルが続いている「歌モノ」のアルバムに仕上がっていました。
そんな中で目立ったのが、まずは歌を聴くとその場の光景が目に浮かぶような、風景描写を軸とした楽曲。郷愁感ある歌詞が胸をうつ「シンクロナイズド」や幻想的な風景を描く「ナイトライダー」、悲し気な歌詞が印象的な「water」や「帰るからね」のような歌詞の中にはっきりと風景が描写された歌詞が目立ち、今回のアルバムの大きな魅力となっています。
また「殺し合いはやめて歌おうぜ」と歌う「world is your's」や「どんな時でも音楽は君の味方なんだよ」と歌うラストチューンの「ロープ」のように、音楽に対する賛歌も目立つ今回のアルバム。そして今回のアルバムを方向づける決定的な特徴がやはりタイトルチューンの「光の中に」でしょう。「光の中に君を連れていくよ」と歌うこの曲は、とても前向きな明るさを感じさせます。アルバム全体としてもどこか悲しげな雰囲気や闇の部分を歌詞の中に覗かせつつも、聴き終わった後は前向きな明るさも感じさせるアルバムになっていたように感じました。
サウンド的にはギターサウンドを前に押し出してロック色が強かった前作と比べると、横ノリでサイケ風のフォーク色が強い楽曲が目立ちます。そのボーカルやサウンド的には気だるい雰囲気がより強くなったような印象も受けました。もっとも後半はノイジーなギターロックの「マリブコーク」や60年代のガレージロック風の「トルコブルー」などギターロックの色合いが強い曲も並び、アルバムの中で大きなインパクトとなっていました。
アルバム全体としてはバンドとしての独特の世界観は相変わらず。いい意味での安定感を覚える彼らしか出来ない世界を作り上げていました。新しいメンバーで5人組となってからこれで2作目となりますが、バンドとして安定してきたということでしょうか。これからの彼らの活躍も楽しみです。
評価:★★★★★
踊ってばかりの国 過去の作品
グッバイ、ガールフレンド
世界が見たい
SEBULBA
FLOWER
踊ってばかりの国
サイケデリアレディ
SONGS
君のために生きていくね
ほかに聴いたアルバム
沸騰 沸く~FOOTWORK~/ケンモチヒデフミ
いまや「水曜日のカンパネラ」としての活動がすっかりおなじみとなったトラックメイカー、ケンモチヒデフミの約8年半ぶりのソロアルバム。本作は、シカゴ発のクラブミュージック、Jukeを取り入れた作品になっています。JukeとはBPMの80,120,160を行き来する、緩急あるリズムトラックが特徴的なダンスミュージックだそうで、タイトルになっている「FOOTWORK」とはそのJukeにあわせてダンサーが踊る、超高速で足を動かすダンスのスタイルのことだそうです。
そんな訳で、緩急つけた刺激的なダンストラックが大きなインパクトとなっている今回のアルバム。ポップでユニークさがある水カンと異なり、至ってストイックなクラブチューンが展開されるアルバムになっています。まさに今の音楽を取り入れている刺激的で挑戦的なアルバム。これが今度、水カンにどのように反映されるのか、楽しみになってくるようなアルバムでした。
評価:★★★★
Dream Baby Dream/EGO-WRAPPIN'
途中、ベスト盤のリリースは挟んだものの、実に6年ぶりとなるEGO-WRAPPIN'のニューアルバム。いままでの彼女たちの曲にあったスウィングの要素やキャバレーロック的な怪しげな雰囲気が薄くなった一方、エキゾチックな雰囲気漂う「Arab no Yuki」やミディアムファンクの「Shine Shine」、レトロポップ風の「心象風景」など、今まで以上にバリエーションが増えた作品に。ユニークさを感じるサウンドでメロディアスに聴かせるアルバムになっており、ベスト盤リリース後の新生EGOの第一歩を感じさせるアルバムになっていました。
評価:★★★★★
EGO-WRAPPIN' 過去の作品
ベストラッピン 1996-2008
EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX
ないものねだりのデットヒート
steal a person's heart
ROUTE 20 HIT THE ROAD
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