« 感慨も深い30周年のベスト盤 | トップページ | はっぴいえんどフォロワーながらもサウンドに独特な個性が »

2019年6月 1日 (土)

洗練されたフォークロックが魅力

Title:U.F.O.F.
Musician:Big Thief

アメリカはニューヨーク、ブルックリンを拠点としている4人組インディーロックバンドBig Thief。ソロでも大きな評価を受けている女性シンガーソングライター、エイドリアン・レンカーを中心としたバンドで、2016年にリリースしたデビューアルバム「Masterpiece」が文字通りの傑作アルバムとして大きな評価を受け、一躍注目を集めたバンド。本作ではインディーレーベルの名門4ADに移籍。満を持しての2ndアルバムとなりました。

そんな注目のバンド、Big Thiefは、「大泥棒」という名前とは裏腹に全編メロディアスに聴かせるフォークロックのバンド。アコースティックギターを中心としたシンプルなサウンドが持ち味で、エイドリアン・レンカーのウィスパー気味の透き通るようなボーカルを聴かせるメロディアスで静かな歌が持ち味のバンドとなっています。

切なさを感じる美しいメロディーラインが魅力的で、タイトル曲である「U.F.O.F.」は澄みきった歌声を美しいアコギのアルペジオをバックに聴かせる、どこか切なさを感じさせる楽曲になっていますし、「Open Desert」などもギターを入れてちょっとドリーミーなアレンジになっていながらも静かに聴かせるフォーキーなメロが大きな魅力に。また個人的に一番気に入ったのが「Terminal Paradise」で、エイドリアンのウィスパーボイスに重なる男性のコーラスのバランスが絶妙。時折、こぶしを利かせたような歌い方を入れ、力強さも感じさせます。

インディーロックバンドらしいギミック的なものはほとんどなく、アルバムは終始、アコースティックでフォーキーなサウンドと美しいメロディーラインで構成された歌モノのポップスが続きます。あえていうのならば1曲目「Contact」の終盤にノイジーなギターが入ってくる点と終盤の「Jenni」がへヴィーでノイジーなギターが流れるダウナーなロックに仕上がっている点くらい。ここらへんもアルバムの中ではちょうどよいインパクトとなっていました。

アメリカのこの手のバンドとしてありがちなカントリーの色合いはほとんどなし。また、それと同時にアメリカのバンドにありがちな泥臭さもほとんどなく、ジャケット写真から想像できるようなヒッピー的な雰囲気もほとんどありません。いい意味で爽やかさを感じる垢抜けたメロディーラインが大きな特徴で、ブルックリン出身らしい都会のバンドっぽい洗練さを感じさせます。田舎の空気を感じさせるバンドももちろん魅力的なのですが、そういうバンドはいかにもアメリカらしさが良くも悪くも特徴的。それに比べて彼らのサウンドは洗練されているがゆえに日本人にとってもすんなりとなじみやすい作品になっていたように感じます。

今回のアルバムも既に高い評価を得ているようですが、日本ではまだまだ知名度も低い彼ら。ただ、インディーロック好きなら文句なしにはまりそうなアルバムですし、これから注目度もどんどん増していきそう。基本的に楽曲はシンプルな歌モノがメインなだけに小難しさはありませんし、広い層にアピールできるアルバムだと思います。ポップス好きなら要注目の1枚です。

評価:★★★★★

|

« 感慨も深い30周年のベスト盤 | トップページ | はっぴいえんどフォロワーながらもサウンドに独特な個性が »

アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 感慨も深い30周年のベスト盤 | トップページ | はっぴいえんどフォロワーながらもサウンドに独特な個性が »