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2019年6月29日 (土)

40年のキャリアが良きにつれ悪しきにつれ

Title:Scheduled by the Budget
Musician:吾妻光良&The Swinging Boppers

結成から40年。日本を代表するジャンプ・ブルースバンドの大御所、吾妻光良&The Swinging Boppersの約6年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。もっとも彼らは結成から40年という長いキャリアを誇りつつ、メンバーのほぼ全員が普通のサラリーマンとしての肩書も持っているそうで、活動も断続的。そのため、40年目にしてアルバムとしてはわずか8枚目となるアルバム。リーダーの吾妻光良も評論家として活躍しているほか、長年、日本テレビに社員として従事し、現在は日本デジタル放送システムズの代表取締役社長というお偉いさんだったりします。

ちなみに彼らが奏でるジャンプ・ブルースというジャンルはビッグバンドの影響を受けた、ホーンセッションなどを入れて楽しく奏でるアップテンポなナンバーがメイン。1930年代から40年代にかけて成立し、後のロックンロールにも大きな影響を与えたジャンルで、そのため一般的に「ブルース」といってイメージされるような「しんみり聴かせる」というイメージはほとんどありません。

今回のアルバムでももちろん、特にアルバム前半にはホーンセッションにピアノを入れた、ビックバンドやスウィングの要素を取り入れたご機嫌な楽曲が並んでいます。お酒に関する大人のたしなみ(?)を陽気に歌った「大人はワイン2本まで」やタイトル通りの内容で、ある意味、元も子もない「やっぱ見た目だろ」など、結成40年のベテランバンドらしい、まずは音楽を楽しんでいるような陽気なナンバーが並んでいます。

一方、後半に関してはオーティス・レディングの歌唱でも知られる「Try a Little Tenderness」をムーディーに聴かせたり、焼肉と恋愛を重ねわせたダブルミーニングの歌詞が、ある意味「ブルース」らしい「焼肉アンダー・ザ・ムーンライト」をジャジーに聴かせてくれたりと、こちらもこちらで大人の魅力を感じさせる曲が並んでいます。

そんなメロやサウンド的には魅力的な曲が並ぶ今回のアルバムですが、歌詞に関してはかなり気になる部分が多々ありました。一言で言ってしまうと、悪い意味でおやじ臭い。歌詞の中にいかにも今時な言葉や若者文化を取り入れつつも、価値観的には完全に昭和。かく言う私も昭和生まれのアラフォーなので、完全に「おやじ世代」なのですが、そんな私が聴いても、正直言って、ちょっとイラッとさせられるような歌詞が少なくありませんでした。

例えば1曲目の「ご機嫌目盛」ではいきなりラップが登場してくるのですが、さすがに「YO!YO!」的なノリこそありまえんでしたが、本格的にHIP HOPに挑戦するわけではなく、あくまでもノリ的に取り入れてみました的な中途半端なもので、まだHIP HOPに対する偏見が多かった10年くらい前ならともかく、すっかりHIP HOPが定着した今頃にこのノリは・・・。ほかにもSNSだのスマホに関する用語だの、今時の言葉が目立つのですが、今時の言葉を取り入れてみました、的な感じが癇に障る感じで・・・。正直、今時の言葉を取り入れて薄っぺらくするよりも、もっと年齢なりの歌詞を聴きたかったように思います。

もちろん、上にも書いた通り、キャリア40年の年齢に応じた実力と魅力をしっかりとみせている部分がありつつ、一方では年齢が悪い意味でマイナスになってしまった感も否めなかったアルバム。総じていうと、それなりに楽しめたアルバムだったとは思うのですが・・・。ただ、リーダーの吾妻光良は評論家としての文章の中でもこういう悪い意味でのおやじらしさが気になる部分が多いので、良くも悪くもこういうキャラクターなんだろうなぁ・・・。純粋に楽しい部分も多かっただけに惜しさを感じるアルバムでした。

評価:★★★★

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