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2019年6月30日 (日)

吹っ切れている

Title:GOTH ROMANCE
Musician:カジヒデキ

1989年にフリッパーズ・ギターに強い影響を受けたギターポップバンド、ブリッジを結成。ブリッジ解散後の1997年には「ラ・ブーム~だってMY BOOM IS ME」をスマッシュヒットさせたシンガーソングライター、カジヒデキ。半ズボンで少年っぽいいで立ちが特徴的だった彼も既に52歳(!)。しかし、前作「秋のオリーブ」でも80年代に一世を風靡したファッション雑誌「オリーブ」への愛情を歌うなど、アラフィフとなってもそのスタイルは30年前からほとんど変化はありません。

今回のアルバム「GOTH ROMANCE」も彼自身が影響を受けた「90年前後に最も刺激を受けたサウンドをベースに、過去と今が美しく結びつく接点のような作品作りを心掛けて」いるそうで、ビックリするくらい、90年代初頭の渋谷系サウンドがあまりにもそのまんまな楽曲が並んでいます。

アルバムの1曲目「フランス映画にしようよ」はタイトルからして「渋谷系」のイメージそのままなのですが、スネアドラムを細かく刻むマーチ的なドラムのリズムといい、渋谷系の楽曲をそのまま持ってきたような陽気なギターポップ。タイトルからしてそのままと言えば「夏の終わりのセシルカット」も軽快でちょっと切ないギターポップなサウンドもそのままですし、「セシルカット」のイメージも非常に渋谷系っぽさを感じます。ある意味、一番そのままなのは「5時から7時のマキ」で、エレクトロサウンドのディスコチューンは渋谷系のイメージとちょっと異なるものの、歌詞の中にそのままズバリ「渋谷系」という言葉が登場してきたりします。

他にも豪華なメンバーが顔をそろえているのが今回のアルバムの大きな特徴で、「さんでーべいべー」では渋谷系の大御所、野宮真貴とデゥエット。「そばかすミルク」では彼の師匠(?)でもある小山田圭吾がアコギで参加。そういえばこの曲のサウンドは妙に今風になっている印象を受けます。そんな渋谷系の大御所たちが名前をそろえているだけではなく、前作「秋のオリーブ」でも組んだ盟友、堀江博久や、かせきさいだぁ、おとぎ話やThe Wisely Brothersのような新進気鋭のバンド、さらにちょっと変わったところでは「ノンノン・ソング」ではタイトル通り、のんこと能年玲奈がボーカルで参加し、渋谷系というよりもヒットチャート本流だった90年代J-POP風n陽気なギターロックを聴かせてくれます。

アルバムタイトルの「GOTH ROMANCE」は彼が影響を受けたゴシックとネオアコ(=ロマンス)を並べたもの。ただし、ゴシックの要素は「秘密の夜会」の歌詞の部分だけだそうで、アルバム内容はもっぱらロマンスに偏っています。それだけにアルバム全体としてはある種の吹っ切れた感がつよく、前作「秋のオリーブ」もそうだったのですが、さすがにアラフィフになって「う~ん」と思ってしまう部分もないことはないのですが、この吹っ切れ方はすごいなぁ、と逆に感心してしまいます。

はっきりいって目新しさはゼロなのですが、純粋にポップソングとしては良く出来ていますし、アルバム1枚分、十分楽しめることが出来る内容だと思います。前作でも書いたのですが、もうここまで来たら最後まで吹っ切れいていてほしいなぁ、と思ってしまいます。還暦になっても、このスタイルのカジヒデキが見てみたいなぁ。

評価:★★★★

カジヒデキ 過去の作品
LOLIPOP
STRAWBERRIES AND CREAM
TEENS FILM(カジヒデキとリディムサウンター)
BLUE HEART
Sweet Swedish Winter
The Blue Boy
秋のオリーブ

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