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2019年6月 8日 (土)

シンプルなサウンドと歌が魅力的

Title:Spirit
Musician:Rhye

ロサンジェルスを拠点に活動する男性2人組デュオ、Rhye。デビュー作「Woman」で大きな注目を集め、昨年リリースした2枚目のアルバム「Blood」も傑作アルバムに仕上がっていました。そんな彼らが続いてリリースしたのは前8曲入りのEP。うち1曲はイントロ的、あと1曲インターリュード的なインストナンバーが入り、実質6曲入り27分という短い作品ですが、今回のアルバムも彼らの魅力がしっかりと詰まった傑作アルバムに仕上がっていました。

さて、ピアノの静かな音色に彼らの澄み通るボーカルを聴かせるイントロ曲「Dark」に続くのが事実上の1曲目であり、ミュージックビデオが先行配信された「Needed」なのですが、まずこれが実に美しい!彼らのウイスパー気味のハイトーンボイスに静かなピアノやストリングスが重なるサウンドがとにかく美しいのですが、さらに静かに聴かせるメロディーラインがとにかく切なく、胸に染み入ってくるような楽曲になっています。

さらに「Patience」ではアイスランドのミュージシャン、オーラヴァル・アルナルズが参加。本作もピアノの音色とボーカルがとにかく美しいナンバーなのですが、特に本作では楽曲全体に流れるピアノの調べが非常に瑞々しい美しさを感じさせます。そしてインスト曲を挟み、「Wicked Dream」はメロディアスな歌を聴かせる、この中では比較的テンポが速めのポップチューン。シンセも入り、ちょっと懐かしさも感じるAORのテイストの強いナンバーに仕上がっています。

後半も美しい楽曲が続きます。「Awake」はピアノとストリングスの音色のみで伸びやかに美しく聴かせるバラードナンバー。幻想的な雰囲気はこのアルバム随一な楽曲に仕上がっています。そしてラストを締めくくる「Save Me」は切なく歌い上げるボーカルが印象に残るのですが、ピアノの音色は意外と可愛らしく、比較的明るくポップにまとまった楽曲に。最後は爽やかな印象でアルバムは幕を閉じます。

全編、ピアノやストリングスが入り静かに美しく聴かせるサウンドと、澄み切ったボーカルが歌う切ないメロディーが魅力的な楽曲が並びます。エレクトロサウンドなども取り入れていた前作「Blood」と比べると、打ち込みは抑えめとなり、ピアノとストリングスのアコースティックな音が目立つ構成になっています。その結果、サウンド的には暖かみが増したという印象を受けるのですが、一方、そのサウンドに呼応するようにボーカルには前作よりも包容力を感じさせます。ただしその一方で、前作の魅力だったボーカルのエロティシズムは本作からは皆無。もっともその歌声は前作から大きくは変わっているわけではなく、サウンドとのバランスにより絶妙にスタイルを変えてくる、そのボーカリストとしての表現力に舌を巻く内容になっていました。

楽曲的には決して今風といった感じではなく、シンプルなサウンドにあくまでも歌を聴かせる、いい意味でシンプルな、ある種の普遍性を感じさせるポップスが魅力的。特に今回の作品ではアコースティックなアレンジもあり、そのシンプルさがより前に出てきたように感じます。とにかく終始、その美しい歌声に聴きほれる傑作アルバム。シンプルなゆえに、その歌の魅力がより際立ったアルバムでした。

評価:★★★★★

Rhye 過去の作品
Blood


ほかに聴いたアルバム

Purse/Elvis Costello&The Imposters

4月13日のレコードデイ限定でリリースされたエルヴィス・コステロの4曲入りEP。その後、ストリーミングでも配信を開始し、そちらで聴くことが出来ました。全4曲入りの内容はコステロがボブ・ディラン、バート・バカラック、ジョニー・キャッシュ、ポール・マッカートニーという錚々たる面子とコラボした楽曲が収録された作品。どれもミディアムテンポで聴かせる曲が多く、いい意味で安定感を覚える楽曲に。正直言うと派手さはないのですが、安心して聴くことが出来る良質なポップスが4曲並ぶ作品になっていました。

評価:★★★★

Elvis Costello 過去の作品
Momofuku(Elvis Costello&the Imposters)
Secret,Profane&Sugarcane
National Ransom
Wise Up Ghost(Elvis Costello&The Roots)
LOOK UP(Elvis Costello&the Imposters)

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