アフリカとラテンの融合
Title:Celia
Musician:Angelique Kidjo
西アフリカはベナン共和国出身の女性シンガーソングライター、アンジェリーク・キジョーの最新作。グラミー賞を3度受賞しているほか、ザ・ガーディアン紙では「世界で最も影響力を持つ女性100人」に選ばれているなど、すっかりアフリカを代表するミュージシャンとして活躍しています。
そんな彼女の前作は、Talking Headsの名盤「Remain In Right」をアルバムごとカバーしたアルバムとして多いに話題となり、当サイトでも紹介させていただきました。アフロビートを取り入れた西洋音楽をアフリカの視点から解釈したというユニークなアルバムでしたが、本作のコンセプトもある意味、前作から続くもの。今回のアルバムは、伝説的なサルサ歌手、セリア・クルスに捧げた作品。サルサをアフリカ音楽の視点から再解釈しているユニークなアルバムになっています。
そもそもサルサという音楽はキューバからの難民によりニューヨークで生まれた音楽。西洋音楽と非西洋音楽の融合から生まれたという意味では、前作で彼女がカバーした「Remain In Right」と似たような構図かもしれません。また、そのサルサもルーツをたどるとやはりアフリカ音楽に結びつくわけで、そんなサルサという音楽をアフリカ音楽の視点から再解釈した試みは非常に興味深く感じます。
実際にサルサというジャンルとアフリカの音楽の相性はとてもよくマッチしているように感じます。例えば1曲目「Cucala」はアフリカ的なポリリズム風のビートやコールアンドレスポンズというスタイルと、サルサの要素を感じる爽快感あるホーンやギターの音色が非常に上手くマッチ。「Toro Mata」も哀愁感あふれるメロディーラインはまさにラテンといった感じなのですが、これにトライバルなパーカッションが実に上手く融合されています。
また「Sahara」のようにピアノとストリングス、さらには静かなパーカッションをバックに哀愁感たっぷりに伸びやかに歌い上げる楽曲は完全にラテン風。また、その歌声には彼女のボーカリストとしての実力を感じされます。さらに軽快なパーカッションとホーンセッションが楽しい「Baila Yemaya」もラテンのテイストが強いナンバーに仕上がっています。
このようにラテンテイストの比較的強いナンバーが並ぶ今回のアルバムですが、その一方、アルバム全体としてトライバルなパーカッションが一貫して流れている作品に。また、アフリカ音楽的なコールアンドレスポンスやポリリズムも多く取り入れており、そういう意味ではラテン色とアフリカ色を見事に両立されているアルバムになっていました。まさに彼女なりにサルサを解釈したアルバムと言える1枚で、前作に引き続き、間違いなく傑作と言える作品に仕上がっていたと思います。アフリカ音楽が好きな方にもラテンが好きな方にも文句なしでお勧めしたい作品です。
評価:★★★★★
Angelique Kidjo 過去の作品
Remain in Light
ほかに聴いたアルバム
Retroactive-EP1/Keane
2013年にリリースしたベスト盤を最後に無期限の活動休止となったイギリスのロックバンドKeane。ただ昨年、待望の活動再開がアナウンスされ、9月には待望の新譜も予定されています。本作はそんなニューアルバムに先駆けてリリースされたEP盤。過去のライブ音源やデモ音源を収録した4曲入りの作品で、どちらかというとファンズアイテム的な様相の強いアルバムになっています。活動再開へのご挨拶的な作品と言えるでしょうか。ただ、ピアノを主体としたサウンドに狂おしいまで美しい彼らのメロディーに、Keaneの魅力を再認識させ、また来るべきアルバムが楽しみになってくるような、そんな作品でした。
評価:★★★★
KEANE 過去の作品
Perfect Symmetry
NIGHT TRAIN
Strangeland
The Best Of Keane
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