ライブのたびに新曲!
世の中を斜めから見たようなユニークな視点で切り取った歌詞が大きな魅力のシンガーソングライター、TOMOVSKY。そんな彼が昨年のはじめに、ライブのたびに新曲を発表し、年末にそれをまとめたアルバムをリリースすると宣言。結果として毎回、ライブのたびに必ず新曲を発表し、アルバムを発表。見事、公約を達成しています。今回紹介するのは、そうしてリリースされた2枚のアルバムです。
Title:SHINKYOKU TIME 2018-1
Musician:TOMOVSKY
Title:SHINKYOKU TIME 2018-2
Musician:TOMOVSKY
この「ライブのたびに新曲を披露する」という公約のすごいところは、本当に文字通り、「ライブのたび」という点。ワンマンや対バン形式のライブ、イベントなどはもちろん、インストアライブのような類のライブでも新曲を作ってきているようで、そのスタンスはかなり徹底しています。
また、新曲が誕生するその瞬間をとらえているという点も大きな特徴で、全編、新曲披露時のライブ録音。そのため、録音環境が整っていないような会場ではかなり音が悪い曲もあるのですが、新曲発表に際してのTOMOVSKYのMCや、その時の観客の反応もそのまま収められており、一種のドキュメンタリーのような感触のある作品にもなっていました。
そんな肝心の楽曲の方なのですが、基本的にはおそらく2度とライブでは演らないだろうなぁ、というような即興的な曲やネタ曲がメイン。特に地方ライブではその地方のネタをそのまま取り込んだような曲が多く、ライブハウスの名前そのままな「FANDANGO」やら「九州ピーポー」やら、さらにそのまま「マツモト」「名古屋」なんて曲まで登場しています。
ほかにもアカペラのラップだけというスタイルの「無意味に燃えてるぜ」みたいな「これで新曲でいいの?」と思うような曲もあったり、「食っとけよ」のような替え歌があったり、そこで見たポスターの標語をそのまま歌詞にしただけだろ?といった感じの「犯罪者が恐れるのはあなたの視線」なんて曲もあったりします。
ただし、そんなネタ曲なども含めて、彼らしいユニークな視点を取り込んだ歌詞も目立ち、ライブのたびに作られる即興的な新曲にも関わらず、TOMOVSKYの魅力をしっかりと感じられる曲が多く収録されていました。視覚から与える影響についてユニークに歌った「トンボのめがねと同じしくみ」だったり、郷愁的な雰囲気を漂させつつ、「流氷もあの雲もただの水」と根も葉もないことを歌う「流氷もあの雲も」だったり、異常気象のことを「天気の神がバランス感覚ないからだ」と歌う「お天気の神」など、ユニークな視点は冴えまくっています。
ほかにもふたの留め具がバカになってパカっと空いてしまうコロコロを「自我が芽生えた」と歌うシュールな「ピンクコロコロに自我」という曲もあったり、「ギリギリセーフ」なんかはハロウィンをテーマとした一発ネタが笑える曲になっていますし、即興的なテーマでも強いインパクトを受ける曲が少なくありません。
またもちろんそんな即興的な曲ばかりではなく、例えば「平成の次はまた昭和」なんかは「また昭和が来るからやり直せる」というユニークながらもちょっと切ない歌詞も印象に残る曲で、次のアルバムに収録されていても不思議ではないしっかりとした曲になっていましたし、幼い頃の思い出を歌った「お盆」も子供の頃の思い出の中の父親が今の自分よりも年下という歌は、おそらくある一定の年代以上の方にとっては強く共感できそうな内容で、こちらも次のアルバムに収録されていても不思議ではない内容になっていました。
彼のオリジナルアルバムは、比較的一本のテーマに従った曲が多く、それもまた魅力的なのですが、今回のアルバムはテーマ性がなかっただけに自由度がより広く、そういう意味ではテーマに従ったオリジナルアルバム以上に、ありのままのTOMOVSKYの魅力を強く感じることが出来たアルバムとも言えるかもしれません。確かに即興的なネタ曲も少なくありませんでしたが、その誕生の瞬間をとらえたというユニークさも併せて、聴きごたえのある魅力的なアルバムでした。
評価:どちらも★★★★★
TOMOVSKY 過去の作品
幻想
秒針
いい星じゃんか!
終わらない映画
BEST3
SHAAA!!!
FUJIMI
ほかに聴いたアルバム
ALIVE -The live history-/KOKIA
KOKIAの最新作は2010年から2018年に行われたライブから曲をピックアップして収録した2枚組のライブベスト。オーケストラアレンジのスケール感あるアレンジからアコースティックのシンプルなアレンジから自由自在に歌いこなす彼女の、透明感があってファンタジックなボーカルスタイルが大きな魅力。序盤のちょっと説教じみたMCにはちょっと引いてしまった部分はありましたが、最後までその世界観が楽しめるライブベストに。正直、少々感情過多な部分もあり、その点は賛否別れそうな部分はあるのですが、その点を差し引いても実に強い魅力を感じるライブ盤に仕上がっていました。
評価:★★★★
KOKIA 過去の作品
The VOICE
KOKIA∞AKIKO~balance~
Coquillage~The Best Collection II~
REAL WORLD
Musique a la Carte
moment
pieces
心ばかり
Where to go my love?
I Found You
EVOLVE to LOVE-20 years Anniversary BEST-
Tokyo Mermaid
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