最初で最後のベスト盤
Title:NEGOTO BEST
Musician:ねごと
2010年にミニアルバム「Hello "Z"」でメジャーデビュー。2011年にリリースした「ex Negoto」がチャートで6位にランクインするなど一躍ブレイクを果たしました。その後もアルバムを計5枚、ミニアルバムをデビュー作含めて2枚リリースし積極的な活動を続けていたものの昨年末に2019年のツアーを最後に解散することを発表。そんな中リリースされたのが彼女たち最初でおそらくラストとなるベストアルバムでした。
ねごとの前身となるバンドが結成したのが2006年。2006年といえばちょうどチャットモンチーが「シャングリラ」でデビューした年。その後デビューした彼女たちはイメージとしてはチャットモンチーに続いて出てきたガールズバンドの走りというイメージ。事実、彼女たちもチャットモンチーのトリビュートアルバムに参加するなど、チャットモンチーを受けたバンドの一組であることは間違いなさそう。本作に収録されている作品でも、特に初期の作品、「ワンダーワールド」などは露骨にチャットモンチーの影響を感じる作品になっていたりします。
ただ、そんな初期のギターロック作品は結局のところ、チャットモンチーのフォロワーというイメージを払拭しきれずにいたのでしょう。彼女たちの方向性として徐々にエレクトロサウンドを取り入れて、バンドとしてのスタイルを確立しようとしました。そしてそんなエレクトロサウンドを大胆に取り入れてリスナーを驚かせたのが2016年にリリースされた「アシンメトリー」。この曲ではギターバンドというよりはエレクトロのミュージシャンとしての彼女たちのベクトルをはっきりと見せた作品になっています。
もっとも、今からこのベスト盤を聴くと、彼女たちは比較的初期の作品からエレクトロサウンドを取り入れていたことい気が付かされます。例えばデビューシングルでもある「カロン」などは楽曲的にはチャットモンチーからの影響を感じる作品ながらもシンセのサウンドを取り入れていますし、2012年にリリースしたシングル「Lightdentity」もエレクトロロックの作品に。こうやってあらためて彼女たちの過去の代表作を聴くと、「アシンメトリー」は突然変異の楽曲ではなく、ある意味、彼女たちの活動の中では必然だったのかな、とも感じてしまいます。
ただし、今回のベストアルバムで彼女たちの過去の代表作を聴いてあらためて感じたのは、残念ながら全体的にどうも中途半端だったかな、という印象でした。初期の作品についてはシンセのサウンドを入れてそれなりに個性を出しつつも、やはり全体的にはチャットモンチーのフォロワー的なイメージはぬぐえませんでしたし、エレクトロサウンドに大々的にシフトした後期の作品についても、正直言って果敢に挑戦するそのスタイルは絶賛に値するものの、サウンド的には決して目新しいものではなく、ロックバンドがエレクトロにシフトという方向性もよくあるパターンという印象を受けてしまいます。
彼女たちは2011年にリリースした「ex Negoto」でベスト10ヒットを記録。翌年リリースしたシングル「sharp #」も「機動戦士ガンダムAGE」オープニングテーマというタイアップの良さもありベスト10ヒットを記録しましたが、その後は売上的には伸び悩み、残念ながら売上的には下降傾向が最後まで続いてしまいました。ただ残念ながら今回のベスト盤で彼女たちの歩みを聴くと、リスナーの耳は正直だな、という印象を受けてしまいます。それなりにインパクトあるポップなメロディーはヒットポテンシャルはあるものの、確かに、これでその人気を持続させるのは厳しいだろうなぁ・・・と思ってしまいました。
メンバーはねごと解散後、おそらくそれぞれソロとして音楽活動をスタートさせるでしょう。いろいろと大変とは思いますが、これからの彼女たちの活躍を期待しつつ、是非、このねごとを超えるような曲を期待したいところ。彼女たちのこれからの活動にも注目していきたいです。
評価:★★★★
ねごと 過去の作品
Hello!"Z"
ex Negoto
5
"Z"OOM
VISION
アシンメトリe.p
ETERNALBEAT
SOAK
ほかに聴いたアルバム
Transducer/VOLA&THE ORIENTAL MACHINE
今年、突如発表されたNUMBER GIRL再結成のニュース。久しぶりにスポットを浴びるようになったナンバガですが、そのベーシスト、アヒト・イナザワがギターボーカルとして率いるバンド、VOLA&THE ORIENTAL MACHINEも久々の新譜がリリースされました。もともとナンバガとは異なるエレクトロサウンドを積極的に取り入れていた彼らでしたが、本作はエッジの効いたギターサウンドを前面に押し出したロックな色合いの濃いナンバーに、一方後半はいままでの彼らと同じくエレクトロサウンドを前に出したポップな色合いが濃いナンバーが並び、VOLAの幅広い音楽性を感じさせるアルバムになっています。
今回のアルバムも約4年半ぶりだったり、その前も4年のスパンが空いていたりと、正直、バンドとしては散発的な活動となってしまっている彼ら。このタイミングでアルバムというのもこれを逃すとナンバガ再結成があるためまとまった時間が取れないということなのでしょうか。そんな散発的だからこそ、バンドとしての個性やまとまりがちょっと弱い感じがしてしまうのは残念なのですが・・・次回はもっと短いスパンでアルバムがリリースされるとうれしいのですが。
ちなみにアヒト・イナザワといえば2010年にリリースしたアルバム「PRINCIPLE」収録の「Flag」という曲が非常に右翼的ということで一部左派のバッシングにあったことで話題となりました。確かにこの曲を歌詞を読むと、典型的な保守派の主張といった感じで、個人的には相いれません。ただ、正直主張内容については保守系のオーソドックスな主張であって、「特ア」という表現は若干差別的ニュアンスはあるものの、全体として許容されるべき意見の範囲内であって、これを「レイシスト」などと排除するのは、左翼的な主張を一方的に「政治的」と断じて排除しようとする右派のやっていることと大差ないように感じます。反対意見を述べるのはともかく、こういう歌詞を書くこと自体を叩くことはちょっと残念な気がします。
評価:★★★★
VOLA&THE ORIENTAL MACHINE 過去の作品
Halan'na-ca Darkside
SA-KA-NA ELECTRIC DEVICE
SUPER MUSIC/集団行動
元相対性理論の真部脩一と西浦謙助が組んだ新バンドの3枚目となるアルバム。かつての相対性理論を彷彿とさせるような独特な言葉の言い回しやシンプルながらもエッジの効いたリズムが非常に魅力的な1枚。そんな中、へヴィーなギターリフが入ったり、ニューオリンズ風に仕上げたりとバラエティーもグッと増しています。特にラストの「チグリス・リバー」はトライバルなリズムを入れつつ幻想感を覚えるサウンドが魅力的な独特の個性を感じさせる楽曲に。ただ一方、いまひとつボーカルの弱さを感じさせてしまう部分が残念な点。そこらへん気になる部分はあるものの、そろそろ大傑作が聴けそうな予感のする、そんな「何かがはじまる前」を感じるアルバムでした。
評価:★★★★
集団行動 過去の作品
充分未来
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