原点回帰
Title:No Geography
Musician:The Chemical Brothers
聴いていてとにかく気持ちいい!!ケミカルブラザーズの4年ぶりとなるニューアルバムは、まず聴いていてそんな感触を覚える傑作アルバムに仕上がっていました。今回のアルバムは彼らにとって原点に立ち返えり、かつ、固定概念を壊すような自由をテーマとしたアルバムになっているとか。「固定概念を壊す」といいつつこんなことを言うのはなんなのですが、ファンにとってはこれぞケミブラ!と喝采をあげたくなるような傑作アルバムに仕上がっていました。
まずアルバムの1曲目を飾る「Eve of Destruciton」のスタートから、徐々に盛り上がっていくエレクトロサウンドから一気にスタートするあたりに非常に心躍らされます。この曲で驚かされるのは途中、いきなり日本語のラップが入るところ。ここでも何回か紹介しているゆるふわギャングのNENEがラップで参加しており、彼女がラップする「ぶっ壊したい何もかも」というのはまさにアルバムのテーマに沿ったリリック。このラップの歌詞の意味がしっかりとわかるという点は今回のアルバムに関する日本人の特権ということで(笑)。
さらにタイトルチューンである「No Geography」などもトランシーなサウンドが軽快に響きつつ、途中、スペーシーなサウンドでスケール感を出すという、ある意味ベタな展開。ただわかりやすい壺を抑えたようなエレクトロサウンドにとにかく心が躍ります。後半の「Free Yourself」も淡々と「ダンス」とコールする女性ボーカルがカッコいいダンスチューンで、こちらも心躍らされるナンバーに。そこから同じくトランシーでよりビート感を強くした「MAH」への展開などは非常にかっこいいものがあり、ライブで聴いても気持ちいいんだろうなぁ、と想像させられます。
今回のアルバムでは全面的にノルウェーのシンガーソングライター、オーロラがゲストボーカルとしてフューチャーされているらしく、メタリックなリズムがインパクトの「We've Got To Try」ではソウルフルなボーカルを披露。ラストのチルアウト的な「Catch me I'm Falling」でも伸びやかな歌声を魅力的に聴かせてくれています。
そんな訳で良い意味でのベタさ、ケミブラらしさを感じたアルバム。ただ一方では決して今の時代の古さを感じさせない心地よいエレクトロチューンを聴かせてくれた作風にも仕上がっていました。原点に回帰しつつも、単純な回顧趣味に走るだけではなくしっかりと軸足を今につけていたといったところでしょうか。しっかりと彼らの現役感も感じられるアルバムだったと思います。
思えば前作「Born In The Echoes」リリース時はEDMブーム真っただ中。そんな中で単純なEDMのアルバムと思われないように、あえてEDMとは距離を置こうとしたアルバムをリリースしてきました。しかし、EDMブームも落ち着いた今、本作ではEDMとの距離を意識しないで彼らなりに自由に作ったアルバムのように感じます。そういう意味では今回のアルバムには非常に自由な雰囲気を感じられ、いい意味で彼らの肩の力が抜けているように感じました。まさに今年を代表する傑作とも言える1枚。心の底から気持ちよさを感じる作品でした。
評価:★★★★★
The Chemical Brothers 過去の作品
Brotherhood
Further(邦題:時空の彼方へ)
HANNA
Born In The Echoes
ほかに聴いたアルバム
This Life/Unbearably White /Vampire Weekend
5月15日にリリースが予定されているVampire Weekend待望のニューアルバム「Father Of The Bride」から先行配信的な形でリリースされた6曲入りのEP盤。アルバムの方向性を占い上で要注目のEP。基本的にはいままでの彼らの作品と同様、シンプルなサウンドとトライバル気味なリズムが印象的な曲が並ぶのですが、以前に比べるとポップになり、リズムよりもメロディーを前に出した楽曲になっています。結果として前作よりも若干エッジが鈍くなってサウンドに勢いがなくなった印象を抱いてしまいました。どれも悪い曲ではないのですが、若干アルバムの出来が気にかかってしまうようなEPでした。
評価:★★★★
VAMPIRE WEEKEND 過去の作品
VAMPIRE WEEKEND
CONTRA
Modern Vampire Of The City
3D 12345678/Kraftwerk
ご存知エレクトロポップス界の雄、クラフトワーク。先日、東京大阪で来日公演が行われたのですが、その来日公演に先立ってリリースされたのが本作。2017年にリリースされた8枚組のライブアルバム「3-D The Catalogue」を1枚のCDに集約した抜粋版で、彼らの過去の代表曲が今の音にアップデート。今でも全く衰えていない彼らのエレクトロサウンドの魅力を感じることができます。ちなみに「放射脳」の中では「原発反対」という日本語がサンプリングされていたりもして。今現在のクラフトワークとして楽しめる軽快なエレクトロポップのアルバムでした。
評価:★★★★★
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