轟音に圧倒
Title:Life Metal
Musician:Sunn O)))
アメリカのドゥームメタルバンド、Sunn O)))のニューアルバム。ドゥームメタルとはヘヴィーメタルのサブジャンルのひとつで、遅いテンポと重い音作りを特徴とするジャンル。Sunn O)))はそんなドゥームメタルの代表的なバンドのひとつだそうですが、そのため一般的にヘヴィーメタルといってまず思い浮かぶような、テクニック重視のハイテンポなギターにボーカルの高音シャフト、ハイテンポなドラミングという展開は全くありません。
今回のアルバムは1時間8分という長さの中にわずか4曲という構成。そのためその4曲は短くて11分台。ラストを飾る「Novae」に至っては25分という長尺の曲となります。そんな彼らのアルバムを聴いてまずは最初に耳に飛び込んでくるのは、埋め尽くすような轟音のギターノイズ。非常に重いギターノイズの和音が響き渡ります。1曲目「Between Sleipnir's Breaths」はまず、アルバムの幕開けを告げるようなダイナミックなサウンドからスタート。へヴィーなギターノイズが展開されるのですが、中盤、アイスランドのエレクトロニカバンド、mumのメンバーでもあるHildur Guðnadóttirがボーカルとして参加。重く暗い世界の中の一筋の光のような美しい歌声を聴かせてくれています。
基本的に轟音で埋め尽くされるギターの和音がゆっくりと少しずつ展開されるという構成はその後も同様。4曲あるのですが、正直なところ、1曲目に女性ボーカルが参加している以外は4曲とも音楽的には大きな変化はありません。ある意味、淡々としたギターノイズの世界が1時間以上続いていく、そんなアルバムになっていました。
そんな中に1曲目の女性ボーカルだったり、2曲目の「Troubled Air」にはトライアングルのような音が入っていたり、途中、ギターノイズの中に異質な音が混じってくるのもユニーク。ラストの「Novae」も後半にシンフォニックな雰囲気の音がふっと入ってきたりして、突然あらわれる違和感がアルバムにさらなる面白さを与えています。
また、肝心の轟音のギターノイズなのですが、微妙に不協和音が混じっているような音の作りになっており、妙に耳にひっかかってきます。さらに楽曲を通じて少しずつそんな和音が変化していくのですが、どこかメロディアスでポップスさを感じられるのが大きな特徴。この轟音に身をゆだねるのがただただ気持ちよく、同じような構成の楽曲が並びながらも、合計1時間強のアルバムに最後まで耳が離せませんでした。
ちなみに今回のアルバム、かのスティーヴ・アルビニと一緒に制作。レコーディングもシカゴにあるアルビニのElectrical Audioで行ったとか。どちらかというとオルタナ系の印象の強いアルビニと彼らのようなメタル系のバンドが一緒に仕事をするというのはちょっと意外な印象もあるのですが、サウンドに意外と人なつっこさを感じられるのはアルビニならでは、なのかもしれません。
圧倒的な轟音を長尺の曲でゆっくり聴かせるという意味ではメタルというイメージよりノイズミュージックに近いタイプでしょう。またバンドとしてはgodspeed you black emperorやMOGWAIのようなポストロックバンド系に近い立ち位置にも感じます。そういう意味では「メタルバンド」というカテゴライズの彼らですが、普段メタルを聴かないようなリスナー層も楽しめそうなアルバムになっていました。
久々となった新譜ですが、今年はもう1枚アルバムをリリースする予定ということ。今回のアルバムとはまた違った雰囲気のアルバムになるそうで、そちらも非常に楽しみ。私も今回、Sunn O)))のアルバムを聴いたのはこれが初めてだったのですが、その音に圧倒。次のアルバムも是非聴いてみたいです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
HOMECOMING:THE LIVE ALBUM/Beyonce
同タイトルのNetflixオリジナル映画の公開にあわせて配信オンリーでリリースされたBeyonceのライブアルバム。コーチェラ2018のパフォーマンスがおさめられたアルバムで、全40曲というボリューム。ただし、インタリュードやメドレー的にワンコーラスのみ披露した曲も多いため、長さ的には1時間50分程度におさめられています。とにかく終始、迫力満点のBeyonceのボーカルに圧巻されるアルバムで、特に黒人の女性の権利について意識的に主張するパフォーマンスも多く、男性としては「は、はいそうですね」としか言えなくなってしまいそうな迫力も(笑)。ちなみにDestiny's Child時代の曲も披露されているのは古くからのファンにとってはうれしいところ。圧巻のパフォーマンスという表現がピッタリくるような内容でBeyonceのミュージシャンとしてのすごさをあらためて見せつけられたライブアルバムになっていました。
評価:★★★★★
BEYONCE 過去の作品
I Am...Sasha Fierce
4
I AM...WORLD TOUR
Beyonce
Lemonade
Fudge Beats/Prefuse73
アメリカ・アトランタのミュージシャン、スコット・ヘレンのPrefuse73名義による新作。全15曲入りながらも41分という長さのため、1曲あたり平均3分弱という短さ。そのため、曲が次々と展開していき、そういう意味では最後まで飽きさせない構成になっていました。ただ、Prefuse73といえばエッジの効いた鋭いビートが特徴的なのですが、今回のアルバムに関しては比較的ビート感は弱めでメロディアスでポップという印象が。その分、アルバム全体に聴きやすくなった反面、聴いていて刺激が薄いというか、ちょっとインパクトは薄くなってしまったような気もします。最後まで文句なしに楽しめるアルバムではあったと思うのですが・・・。
評価:★★★★
Prefuse73 過去の作品
Everything She Touched Turned Ampexian
The Only She Chapters
Every Off Key Beat
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