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2019年5月19日 (日)

魅力的な客演が数多く

Title:ベストバウト2 RHYMESTER Featuring Works 2006-2018
Musician:RHYMESTER

この音楽サイトで紹介しているように、個人的にいろいろなタイプの音楽を紹介しているのですが、そんな中、もっともゲストミュージシャンとして最もその名前を聴く機会が多いミュージシャンのひとつが間違いなくRHYMESTERです。以前からジャンル問わず様々なミュージシャンのゲストとして参加する彼らですが、そんな彼らの客演集を集めた企画盤がリリースされました。もともと2007年に「ベストバウト」として同じく客演集がリリースされていますが、本作はその「ベストバウト」の第2弾アルバムとなります。

ゲストミュージシャンとしての彼らが目立つのは、やはりその数も影響しているのでしょうが、彼らのプレイ自体が非常に個性的で、聴けばすぐにRHYMESTERだ!と気づくというのが大きな要因だと思います。Mummy-Dと宇多丸はどちらもラッパーとしてインパクトある声と個性を持っており、唯一無二ともいえる存在。逆にだからこそ多くのミュージシャンからゲストとして呼ばれるのでしょう。

ただ、数多くのミュージシャンとコラボを重ねる彼らですが、その面子を見ると、決して「仕事を選ばない」というスタイルではありません。その仕事ぶりは多岐に及び、今回のアルバムでもゴスペラーズのようなR&B、スキマスイッチのようなポップス、Base Ball Bearのようなギターロックや10-FEETのようなパンク、さらにはSOIL&"PIMP"SESSIONSのようなジャズから果ては加山雄三まで様々なジャンルの曲が並びます。ただ、どのミュージシャンも間違いなく一定以上の実力を持ったミュージシャンばかり。以前からRHYMESTERが参加しているミュージシャンは一定の信頼感が置けたのですが、こうやって並べると、決してジャンルに壁は設けていないものの、彼らなりにいい意味でしっかりと仕事を選んでいる様子もうかがえます。

また今回のアルバムも「客演集」とはいえ、スキマスイッチの「ゴールデンタイムラバー」やBase Ball Bearの「The Cut」のように、あくまでもそれぞれのミュージシャンの曲の中に、チラッとRHYMESTERのラップが重なるだけの、まさに文字通りの「ゲスト」として参加している曲もあれば、一方ではRHYMESTER名義の「本能」のように、RHYMESTERの曲の中で椎名林檎の「本能」をサンプリングしている曲だったり、加山雄三名義の「旅人よ」のように、同じくRHYMESTERの曲の中に加山雄三の曲がサンプリングされているというスタイルだったり、むしろ相手のミュージシャンの方が「ゲスト」扱いだったりする曲も少なくありません。そういう意味でもバラエティーのある内容のアルバムになっていました。

また、意外とRHYMESTERが参加するようなタイプの曲は比較的似たような方向性の曲が多く、具体的にはファンクやジャズなどの要素を色濃く入れた楽曲が目立ちました。そんなファンクやジャズの要素とメインのミュージシャンの音楽性が上手くマッチしている曲も多く、それこそがRHYMESTERとのコラボの醍醐味と言えるのかもしれません。そんな理想的なコラボに数多く出会えるアルバムになっていたと思います。

そしてなんといってもよかったのがラストを飾るSCOOBIE DOとのコラボ「やっぱ音楽は素晴らしい」でしょう。もともとファンクバンドであるSCOOBIE DOとRHYMESTERの相性は抜群。そして、音楽を心から愛する2つのグループによって歌われるタイトル通りのメッセージは聴いているこちらもワクワク楽しくなってくるような曲。まさに本編のラストを飾るにふさわしい名曲でした。

そんな訳でRHYMESTERの魅力がしっかりとつまった、まさに「裏ベスト」と呼ぶにふさわしい企画盤でした。RHYMESTERのファンはもちろんですが、参加ミュージシャンのファンも是非。これを機に、RHYMESTERの魅力にはまるかも・・・。

評価:★★★★★

RHYMESTER 過去の作品
マニフェスト
POP LIFE
フラッシュバック、夏。
ダーティーサイエンス
The R~The Best of RHYMESTER 2009-2014~
Bitter,Sweet&Beautiful
ダンサブル


ほかに聴いたアルバム

panta rhei/tacica

ミニアルバムだった前作「新しい森」から約1年8ヶ月ぶり。フルアルバムとしては「HEAD ROOMS」から実に3年ぶりとなるギターロックバンドtacicaの新作。tacicaのイメージというと良くも悪くもシンプルなギターロックバンドという印象で、どうも個性が薄いという印象があります。今回のアルバムに関しても比較的シンプルなギターロックといった印象で、強烈な個性といったものはありません。ただ今回の作品、外連味の無いバンドサウンドが楽曲にうまくマッチしており、メロディーも決して派手なフックが効いているわけではないのですが、すんなり耳になじむポップチューンに。派手さはないのですが、ついつい聴き進めてしまう魅力のあるアルバムになっていました。個人的には彼らのいままでの作品の中で一番の出来だったかも。次にも期待したくなる作品でした。

評価:★★★★

tacica 過去の作品
jacaranda
jibun
HOMELAND 11 blues
LOCUS
HEAD ROOMS
新しい森

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