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2019年5月28日 (火)

ちょっと雰囲気の異なる久しぶりの新譜

Title:Father of the Bride
Musician:Vampire Weekend

2008年にリリースされたデビュー作「Vampire Weekend」が大きな注目を集め、新進気鋭のインディーロックバンドとして話題を集めたVampire Weekend。その後、2010年にリリースされた2ndアルバム「Contra」はなんとビルボードチャートで1位を獲得。インディーズという枠組みを超えた人気を獲得しています。2016年にはキーボードのロンタム・バトマングリが脱退し、3人組となってしまいましたが、約6年ぶりの新作となった本作もビルボードチャートで1位を記録。これで3作連続1位を獲得し、その人気のほどを見せつけました。

ただ、久しぶりとなった今回のアルバムは、これまでのアルバムとは少々異なる雰囲気になっており、戸惑いも覚えました。具体的に言うと、いままでのタイトなアフロビートのリズムは後ろに下がり、メロディーラインを前に押し出した歌モノがメインになっており、良くも悪くもあか抜けたという印象を強く抱きました。

まずアルバムの1曲目「Hold You Now」からいきなりアコギを使ってフォーキーな作風に。ガールズロックバンドHAIMのダニエル・ハイムをゲストボーカルに迎えた爽やかさも感じるポップスに、いつもとは異なる作風を感じます。

続く「Harmony Hall」「Bambina」、先行シングルともなった「This Life」はシンプルでアフロ風のビートが楽しめる、比較的以前の彼らのイメージを引き継ぐようなポップスになっていたのですが、ポップなメロディーを前に押し出した歌モノの要素が強くなっています。もちろん彼らはいままでの作品もメロディーのポップさが大きな魅力だったのですが、メロディーラインは良くも悪くもあか抜けた印象を受けるインパクトあるものとなっていました。

特に後半は新たな要素を加えたようなポップが並びます。例えば「Rich Man」もタイトなリズムが流れつつも、優雅な雰囲気のストリングスが流れるポップに。同じくダニエル・ハイムを迎えた「Married in a Gold Rush」も男女デュオによる爽快なポップチューンになっていますし、さらに「My Mistake」に至ってはピアノが流れるジャジーなポップスになっており、いままでの彼らのイメージとは大きく異なる作風に驚かされます。

その後もラテンな要素を取り入れた「Sympathy」やAORな色合いを感じる「Sunflower」など新たな作風の曲が目立ちます。今回のアルバムは58分弱という長さながらも18曲入りという、1曲あたりが2、3分程度の短めの曲が並ぶなのですが、それだけに後半はいろいろなタイプの曲が次々と展開されるような構成になっていました。

正直言うと、本作の評価については難しいなぁ・・・というのが感想。いままでのタイトはアフロポップという方向性が薄くなってしまい、彼らの持ち味がちょっと薄れてしまった反面、新たなスタイルを提示できたかというとちょっと微妙な部分もあります。ただ一方、後半にみられる新たな挑戦は彼らの新たな可能性を示唆していますし、またいままでのアルバムでも感じることが出来た魅力的なポップなメロは健在。また、アフロっぽいリズムもそれなりに残ってはいないし、シンプルなサウンドという方向性は今回も変わりありません。

個人的には残念ながらいままで3枚のアルバムに比べると劣ってしまうかなぁ、とも思うのですが、それでも魅力的なポップである点は変わらないため下の評価で。次回作がどのような方向になるのかは気にかかるところなのですが・・・新たな一歩に踏み出した彼らのこれからも注目したいところです。

評価:★★★★★

VAMPIRE WEEKEND 過去の作品
VAMPIRE WEEKEND
CONTRA
Modern Vampire Of The City
This Life/Unbearably White


ほかに聴いたアルバム

Hurts 2B Human/P!NK

アメリカをはじめ全世界で絶大な人気を誇る女性シンガーソングライターP!NKの2年ぶりとなる新作。このアルバムも当然のように全米でチャート1位を獲得し、その人気のほどを見せつけています。基本的にR&Bをベースとしているのですが、男女デゥオでしんみり聴かせるバラードがあったり、エレクトロサウンドでリズミカルなダンスポップがあったり、レトロ調のポップがあったりとバリエーション豊富。インパクトあるポップチューンが並んでおり、彼女がこれだけ売れるのも十分理解できます。また、インパクトあるポップをごった煮的なジャンルで聴かせるというのは、ある種の「J-POP的」とすら言えるのかも・・・??

評価:★★★★

P!NK 過去の作品
FUNHOUSE
BEAUTIFUL TRAUMA

Free Spirit/Khalid

昨年のグラミー賞では最優秀新人賞含む5部門にノミネートされた期待の男性R&Bシンガー、カリードによる2枚目のアルバム。ただ楽曲的には比較的オーソドックスなR&Bという印象で、AORに近い作風もチラホラ。彼の写真を見ると、比較的ふくよかな感じなのですが、な~んとなく槇原敬之に似ている印象が・・・というか、楽曲もジャンル的にはちょっと違えど、シンプルに歌を聴かせるという点ではマッキーに近いタイプのような印象を受けました。日本でも今後、もっと売れそうな予感もするシンガーです。

評価:★★★★

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