アコースティックなサウンドと美しいメロが魅力的
Title:Titanic Rising
Musician:Weyes Blood
カリフォルニア州サンタモニカ出身のシンガーソングライター、ナタリー・メーリングのソロプロジェクト、ワイズ・ブラッド。ナタリーはもともとアメリカのエクスペリメンタル・ロックバンド、Jackie-O Motherfuckerのメンバーとして参加しており、さらにここでも何度か取り上げたことのあるAriel Pinkの作品にも参加したことがあるミュージシャンだそうです。
アルバムは最初、荘厳な雰囲気のあるエレクトロサウンドからスタートします。お、なるほどエレクトロ系のポップチューンなのか、と思いつつ曲を聴き進めると、途中から一転、ピアノとストリングスが流れ出し、その中で優しく包容力ある彼女のボーカルが美しく響いてきます。メロディーはしんみり美しく聴かせるメロディアスでフォーキーな楽曲。まずはそのメロディーラインの美しさに惹かれるポップチューンとなっています。
このシンプルでフォーキー、美しいメロディーを聴かせるというスタイルはその後も一貫して続いていきます。2曲目の「Andromeda」も同様のナンバーですし、続く「Everyday」なども軽快ながらもアコースティックなサウンドで楽しいナンバー。例えれば、爽やかな日差しの下、きれいな芝生の公園で流れ出してくるような、そんな爽快さを感じるポップチューンでした。
ただ、ちょっと雰囲気が変わってくるのがインターリュードのタイトルチューン「Titanic Rising」を挟んで後半から。続く「Movies」はエレクトロサウンドをバックに重厚さを感じるゴシック風なナンバー。続く「Mirror Forever」もエレクトロサウンドをバックに重厚にドリーミーに響いてくる楽曲。アルバムの中では前半からガラッと雰囲気が変わり、彼女の音楽性の幅広さを感じるナンバーになっています。もっとも、この2曲に関しても美しいメロディーラインと歌がしっかりと流れてくる作品になっており、本質的な部分では彼女の魅力は前半の作品と変わりません。
さらに後半は再び序盤と同様、アコースティックなサウンドをバックにフォーキーで美しいメロディーが特徴的なナンバーが続きます。特に事実上のラストナンバーとなる「Picture Me Better」のアコギをつま弾きながら聴かせるメロディーの美しいこと美しいこと・・・。その歌声に思わず聴きほれてしまう名曲に仕上がっています。
今回のアルバム、本人曰く「ボブ・シーガーmeetsエンヤ」らしいです。確かに「Movies」や「Mirror Forever」あたりの雰囲気はまさにエンヤといった感じでしょうか。また他の曲に関してもどこかドリーミーな雰囲気が漂っているのも、まさに「meetsエンヤ」といったイメージかもしれません。ただ、日本人にとっては、このアルバムを聴くとボブ・シーガーよりもむしろカーペンターズを思い起こす方が多いように思います。特に中盤の「Something to Believe」は、その歌い方を含めて、カーペンターズをまさに彷彿とさせるようなポップス。カーペンターズが好きな方なら間違いなく気に入るのではないでしょうか。
そんな訳で、アコースティックベースのサウンドに美しいメロディーラインに終始聴きほれる傑作アルバム。中盤のドリーミーで重厚な雰囲気もアルバムの中でほどよい味付けとなっており楽しむことが出来ました。シンプルなメロディーを主体としたアルバムなので、広い層が楽しめそうなアルバムかと思います。美しいメロディーラインのポップスのアルバムを聴きたい、という方には間違いなく薦められる1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Miss Universe/Nilüfer Yanya
2018年の期待の新人を選ぶ「BBC Sound Of 2018」にも選ばれたUKソウル界期待の女性ミュージシャンのデビューアルバム。ちなみに名前は読みにくいのですが、「ニルファー・ヤンヤ」と読むそうです。ジャンル的にはソウルにカテゴライズされるのですが、ギターサウンドをバックにメロディアスに歌い上げるスタイルの曲が多く、タイプ的にはロックとも親和性が強そうな印象も。哀愁感あるメロも魅力的で、これからに期待したいシンガーです。
評価:★★★★
Molo/Africa Express
blurのデーモン・アルバーンのサイドプロジェクト、Africa Expressの4曲入りのミニアルバム。もともとデーモン・アルバーンのアフリカ音楽への強い興味は有名な話ですが、まさに本作はそんな彼の趣味が前面に出たアルバム。スーパー・ファーリー・アニマルズのグリフ・リース、ヤー・ヤー・ヤーズのニック・ジナーらも参加したこの曲は全編トライバルなサウンドが前に押し出された、一般的にイメージされるアフリカ音楽をまさに体現化したような楽曲が並びます。ちょっとベタすぎるんじゃないか、と思いつつも、アフロビートあたりが好きなら文句なしにはまれそうな作品に。ちなみに夏にはフルアルバムもリリースも予定されているとかで、こちらも楽しみです。
評価:★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事
- 圧巻のステージ(2019.12.29)
- 前作と同じレコーディングで生まれた作品(2019.12.24)
- ゴスペル色が強い新作(2019.12.23)
- バラエティー富んだエレクトロサウンド(2019.12.22)
- 待望の続編!(2019.12.20)
コメント