« 今週も初登場は少な目 | トップページ | 最初で最後のベスト盤 »

2019年5月16日 (木)

70年代以降の楽曲のみ収録したベスト盤

Title:Honk
Musician:The Rolling Stones

デビューから50年以上の年月が経過しながら、いまだに世界を代表するロックンロールバンドとして活躍を続けるローリング・ストーンズ。最近ではミック・ジャガーの心臓手術なんていうニュースが飛び込み、ファンを心配させましたが、手術は無事成功したようで、ファンを安心させました。ただ、2016年に久々となるアルバム「Blue&Lonesome」がリリースされたものの純粋たる新譜はちょっとご無沙汰。一方ではライブ音源などのリリースが相次いでおり、ファンを喜ばせながらも、ファンの多くが高齢化し、金銭的な余裕があるファンが増えたからでしょうか、ファンに大金を費やさせるような高価なアイテムのリリースが続いています。

そして今回リリースされたアイテムも、彼らのベストアルバム。え?ベスト盤って、オールタイムベストの「GRRR!」をリリースしたばかり(・・・といってももう6年半前の話なのですが)じゃない?と思ってしまいます。ただし、今回のアルバムは「GRRR!」のようなオールタイムベストではなく、71年のアルバム「Sticky Fingers」以降の楽曲のみを集めたベスト盤になります。

なので、彼らの初期の代表作である「Satisfaction」も「Paint It,Black」も「Jumpin' Jack Flash」も「Street Fighting Man」も入っていません。なんでそんなベストを?という感じもしてしまうのですが、そこらへんの事情は「Rockin'On」のサイトのレビューに記載がしていました。

異常に盛り上がってくるこの内容に間違いはない

ただ、あきらかにプロモーションのためのレビュー記事であり、記載内容には若干の疑問があります。初期の作品については、「Beggars Banquet」や「Let It Bleed」などの名盤を聴けばそれで足る、と記載されていますが、初期の彼らはアルバムよりもシングル曲が活動の中心になっており、特にイギリス盤ではシングル曲がアルバムに収録されていない場合も多く、むしろ初期の作品の方がコンピレーションで聴くという形が向いています。また、初期の彼らの作品は、ブルースの純粋なカバーバンドとしてのスタート地点から彼らのオリジナルティーを徐々に確立し、「Their Satanic Majesties Request」という問題作を経つつも、ロックバンドとしてのスタイルを確立する過程を知ることができる重要な時期。さすがに「Sticky Fingers」以降の曲を聴けば足る、というのはちょっと言いすぎじゃない?と思ってしまいます。

もっとも彼らのオリジナリティーが確立されて圧倒的なクオリティーの作品がこの時代の続いているというのは間違いない事実。実際、「Tumbling Dice」「Wild Horses」「Angie」などおなじみの彼らの代表曲がこのアルバムにも多く収録されています。ただ一方でこの時期の彼らは「Beggars Banquet」「Let It Bleed」の時期に確立したスタイルを再生産していく、ある種の「大いなるマンネリ」気味であるのも事実。昔、タナソーがロック系の入門書の中で、「Beggars Banquet」「Let It Bleed」の彼らは新しいことを何もやっていない、というった趣旨のことを書いていて、それが個人的に妙に印象に残っているのですが、確かにブルースを基調としたロックンロールというスタイルに大きな変化はこの時期にありません。

もちろん例えば彼らがディスコを取り入れたということで話題となった「Miss You」みたいな曲もありますし(ただ、今聴くと、やはりブルースの要素は色濃く入っているのですが)、「One More Shot」ではファンクを取り入れていたり、「Undercover (Of The Night)」では80年代のハードロックの影響を感じさせたりと、決して旧態依然とした70年代のサウンドに彼らが縛られていたわけではありません。ただ、それらの曲に関しても基本的には彼らにとってはちょっとした寄り道であり、次の曲ではまたいつも通りのブルース・ロックが流れ出す、という展開になっています。

ただし、この「同じスタイルを続けている」というのは彼らにとって決して貶し文句ではありません。前述のタナソーの指摘も、だからその後のストーンズはダメだ、という話ではなかったと記憶しています。むしろ、彼らのスタイルをこの時期に徐々に磨き上げていき、彼らしか奏でえない唯一無二のスタイルに仕立て上げており、楽曲がつまらないという印象は全くありません。特に上のように所々で新たなスタイルにも挑戦しているだけに最近の曲に関しても決して古臭さは感じませんし、また一方ではストレートなブルースナンバーも所々に挟んでおり、新たな挑戦をしつつもしっかりと原点を忘れないとする彼らの愚直なまでのブルースに対する愛情も感じることが出来ました。

正直言うと、彼らの入門盤としてはさすがにちょっとおすすめしがたい部分はある作品。ただ一方、「Sticky Fingers」以降の楽曲のみを収録されているため、各種のコンピレーションでは比較的取り上げられにくい楽曲も収録されており、そういう意味ではベスト盤を聴いて、過去の名盤を聴いて、その次に最近のアルバムに手をつける前に聴くにはちょうどよいコンピレーションと言えるかもしれません。もちろん、名曲ぞろいなだけに一番最初にこれを聴いても、ストーンズにはまるのは間違いないかと。ともかく、若干お金持ちのファンからお金をまきあげる企画なんじゃない?と穿つことも出来るコンピではあるのですが、ストーンズの魅力が存分につまった作品であることは間違いなし。非常に魅力的なコンピレーションでした。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut


ほかに聴いたアルバム

Every Off Key Beat/Prefuse73

先日リリースされた彼のニューアルバム「Fudge Beats」からの先行配信的なリリースとなる4曲入りのミニアルバム。4曲でわずか7分程度の長さという短い曲がピックアップされており、どちらかというと「Fudge Beats」のプロモーション的な感のあるアルバムですが、ダークな雰囲気のサウンドに強烈なビート感の心地よい作品になっています。さすがにこの長さは短すぎる感はあるのですが、それだけにアルバムが楽しみになってしまうような内容でした。

評価:★★★★

Prefuse73 過去の作品
Everything She Touched Turned Ampexian
The Only She Chapters

Begin Again/Norah Jones

約2年半ぶりとなるNorah Jonesのニューアルバム。WILCOのジェフ・トゥイーディーとの制作も話題となったわずか7曲入りの短さなのですが、ただ一方でいままでの彼女のイメージにとらわれない意欲作に。タイトルチューンである「Begin Again」はジャズというよりもスモーキーなソウルのテイストを感じますし、アコギでしんみり聴かせる「A Song With No Name」もフォーキーな作風の曲調となっています。いままでのノラのイメージからすると新たな挑戦も感じますし、おそらくタイトルもそんな彼女の意気込みをあらわしたのでしょう。それだけにいままでのノラを期待すると少々肩すかしに合うかもしれませんが・・・新たな一歩として今後が楽しみになるアルバムです。

評価:★★★★★

NORAH JONES 過去の作品
THE FALL

...FEATURING NORAH JONES(ノラ・ジョーンズの自由時間)
LITTLE BROKEN HEARTS
COVERS(カヴァーズ~私のお気に入り)
foreverly(BILLIE JOE+NORAH)
DAY BREAKS
First Sessions

|

« 今週も初登場は少な目 | トップページ | 最初で最後のベスト盤 »

アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 今週も初登場は少な目 | トップページ | 最初で最後のベスト盤 »