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2019年4月 2日 (火)

アルバムのテーマも強いインパクトに

Title:Design&Reason
Musician:槇原敬之

例のピエール瀧の一件で、変な形で名前を聞く機会が増えてしまったマッキー(笑)。まあ、こればかりは「自業自得」なんで仕方ないんですが、いい意味で彼にとっては逮捕という事件は完全に過去の話になりましたね。相変わらず順調な音楽活動を続ける彼の、約2年2ヶ月ぶりとなる新作です。

ここ最近、メロディーラインに関してはいい意味で安定感ある作品が連続しているのですが、今回のアルバムに関してもメロディーについては文句なしの出来栄えとなっていました。アコーティックなサウンドにのってミディアムテンポの美しいメロディーが耳を惹く「朝が来るよ」やファンキーなリズムとマイナーコード主体のメロがインパクトのある「だらん」、シンセを入れてエレクトロ調のサウンドに爽やかなメロディーラインがピッタリの「記憶」など、いい意味で安心して聴いていられるポップ職人の実力が発揮された珠玉のチューンが並んでいます。

歌詞についても「どーもありがとう」のような説教臭い曲もあったりもするのですが、前作のようなちょっと微妙な感のある社会派ソングは今回はなし。「In The Snowy Site」「ただただ」のような往年の彼を彷彿とさせるようなラブソングが聴けるあたりは、昔からのファンとしてはやはりうれしくなってしまいます。一方、「微妙なお年頃」のような歌謡曲風なメロにのせて歌うコミカルなナンバーも。彼のコミカル路線の曲はあまり笑えない微妙なナンバーもあったりするのですが、この曲に関しては、この歌の対象とする同じくらいの年代に突入しようとする私にとっても共感できてしまう、思わずクスリと笑えるポップチューンに仕上がっていました。

さて、そんな今回のアルバムですが、本作はひとつのテーマ性のあるアルバムになっていました。それはラストのタイトルチューンである「Design&Reason」の中の

「この顔で体で心で
あそこに生まれますと
ぼんやり遠くに浮かんだ
青い星を指さして
心配そうに見つめている
神様の方を向いて
行ってきます!と飛び出した
自分を想像してみる」

(「Design&Reason」より 作詞 槇原敬之)

と歌われている考え方。要するに「自分の体や心は産まれる前から自分たちで決めたことなんだよ」という考え方であり、まさにタイトル通り、自分自身のデザインにはリーズン(理由)がある、ということがこのアルバムにひとつ流れるテーマとなっています。

実はこの考え方、マッキーの以前の曲にも見受けられる思想で、正直言って個人的には決して賛同する考え方ではなく、彼の歌詞に対して最近感じている違和感の理由のひとつだったりします。ただ今回のアルバムについては、彼がこの考え方に沿って書かれた歌詞に、彼の強い意思を感じる部分があり、強く印象に残りました。それは「2 Crows On The Rooftop」という曲。パッと聴いただけだとフォーキーな美メロの彼らしいラブソング、にも思えるのですが、この曲の中に、こういうフレーズがあります。

「こんな自分で生まれてくると
自分で決めたと思いたい
何か訳があると」

(「2 Crows On The Rooftop」より 作詞 槇原敬之)

この曲の歌詞の内容自体は、明け方に恋人と2人で屋根に上って町を眺めているという歌詞です。ただ、そんな恋人との日常を描いた歌の中にこの歌詞が入ってくるあたり、この曲は彼が事実上公言している同性愛について歌った歌ではないか、と思われます。実際、恋人2人を「遠くから見たら2羽のカラスが止まっていると思うだろう」と歌っているのですが(それが歌詞のタイトルの意味なのですが)、背丈が違うはずに男女のカップルを2羽のカラスと例えるのも少々不自然。それを含めて、ここに登場する2人のカップルは男性同士ではないだろうか、と思われます。

そんな中でマッキーがその自分のあるがままを受け入れる姿勢について、強い感銘を覚えましたし、その結果としてアルバムの中のテーマ性としても彼にとって強い意味のあるものであるということを感じました。

そんな訳で今回のアルバム、メロディーと歌詞の良さもさることながら、歌詞のテーマ性にも強いインパクトを受けた作品となっていました。そのテーマ性を含めて、全体としてもここ数年の中でも出来のよい良作だったと思います。メロディーの充実度もまだまだ高いままですので、そろそろ久々のヒット曲も出そうな、そんな予感すらするアルバムでした。

評価:★★★★★

槇原敬之 過去の作品
悲しみなんて何の役に立たないと思っていた
Personal Soundtracks
Best LOVE
Best LIFE

不安の中に手を突っ込んで
NORIYUKI MAKIHARA SYMPHONY ORCHESTRA CONCERT CELEBRATION 2010~SING OUT GLEEFULLY!~
Heart to Heart
秋うた、冬うた。
Dawn Over the Clover Field

春うた、夏うた。
Listen To The Music 3
Lovable People
Believer


ほかに聴いたアルバム

HOWLS/ヒトリエ

いわゆるボカロPとしても活躍するwowaka率いるロックバンドのフルアルバムとしては約2年3ヶ月ぶりとなるニューアルバム。「ウィンドミル」のような爽快感あるナンバーもありつつ、全体的にはマイナーコードのメロディーラインが中心となる楽曲。王道路線のギターロックがメインで、もうちょっと楽曲のバリエーションが欲しいような印象もあるのですが、ある意味、方向性としてはかなり愚直なものを感じ、またバンドとしての体力も以前より増した感じも。ロックバンドとしての成長も感じた作品でした。

評価:★★★★

ヒトリエ 過去の作品
イマジナリー・モノフィクション
モノクロノ・エントランス
DEEPER
IKI
ai/SOlate

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