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2019年4月19日 (金)

60年の歴史を網羅

Title:MOTOWN60

アメリカを代表するブラックミュージックのレーベル、モータウン。ブラックミュージックとポップミュージックをクロスオーバーした数々のヒット曲で特に60年代にはアメリカのポップスシーンを席捲。その特徴的なサウンドは「モータウンサウンド」と呼ばれ、世界中のポップスシーンに大きな影響を与えました。その音楽はいまなお絶大な影響を与えており、日本でもこのモータウンサウンドの影響を受けたポップスは、今でも少なくありません。

そんなアメリカを、いや世界のポップスシーンを代表するレーベル、モータウンは1959年にベリー・ゴーディ・ジュニアによりタムラ・レコードとして設立されたのがそもそものスタート。今年はこの偉大なレーベルが生まれてからちょうど60年目という記念すべき年であり、様々な企画が計画されているようです。そんな中でリリースされたのがこのコンピレーションアルバム。モータウンの60年に及ぶ歴史を網羅するコンピレーションアルバムで、全3枚組60曲に及ぶモータウンを代表するポップチューンがリリース順に収録されています。

一般的に「モータウンサウンド」といってイメージするのは60年代あたりのヒット曲なのではないでしょうか。The Supremesや初期のThe Temptations、あるいはJackson5あたりまでがモータウンとして一般的にイメージされる曲ではないでしょうか。ブラックミュージックの要素を色濃くいれつつもサザンソウルのような癖のあるボーカルやこぶしなどはなく、すんなりと耳になじむポップなメロディーラインがモータウンサウンドの特徴。もちろん今回のコンピレーションアルバムでもモータウンの第1弾シングルとなったBarrett Strongの「Money」からスタートし、ビートルズやカーペンターズのカバーでも知られるThe Marvelettesの「Please,Mr.Postman」、ご存じThe Supremesの「Baby Love」にThe Temptationsの「My Girl」、Jackson5の「I Want You Back」など一般的にモータウンサウンドとして知られるような曲がズラリと並んでいます。

しかし、いかにもなモータウンサウンドが並んでいるのはDisc1まで。このDisc1のラストがMarvin Gayeがモータウンの反対を押し切ってリリースし大ヒットを記録した社会派な歌詞が特徴的の「What's Going On」という点にある種の区切りを感じさせます。モータウン自体は1988年にMCAに買収されてから、数多くの会社の手をわたり、今日はキャピタル・ミュージックの傘下となっており、紆余曲折をたどりました。しかしモータウンとしてはその後もコンスタントにヒット曲をリリース。今回のコンピでは80年代以降も直近の作品までしっかりと網羅しているのですが、そのサウンドが時代時代を経て変化していく様がこのコンピでよくわかります。モータウンが決して自ら作り上げた「モータウンサウンド」に固執することなく、時代時代に応じたサウンドを作り上げていったのが、いろいろな企業に買収されたとはいえ、レーベルとして60年という長さ続いてきた大きな秘訣なのでしょう。

これもモータウンだったのか、とちょっと意外性に感じる曲も少なくなく、Boyz II Men「End Of The Road」あたりはモータウンだったよな、と認識していたのですが、Shanice「I Love Your Smile」などはリアルタイムでも知っていたヒット曲なのですが、これがモータウンだったのは意外。そんな中でも一番以外だったのが最近話題のHIP HOPミュージシャンMigosの「Stir Fly」。モータウンというレーベルはHIP HOPというイメージがなかっただけに、Migosがモータウンだった、というのはかなり意外に感じました。

そんな意外なメンツにレーベルとしての柔軟性を感じたのですが、ただこのコンピに収録されている曲に共通して感じたのはどの曲も至ってメロディアスでポップな曲ばかりという点でした。上にも書いた通り、もともとモータウンの大きな功績としてブラックミュージックを白人を含む幅広いリスナー層に広げた点があげられます。そして時代を経てサウンドの雰囲気こそ変化したのですが、このコンセプトは時代を変わらず共通しているんだな、ということを今回のコンピレーションでは強く感じました。

まさにモータウンの歴史が網羅的にわかるコンピレーション。数多くのヒット曲が収録されているアルバムとしても楽しめる内容ですし、なによりもどの曲も幅広い方が楽しめるポップチューンが並んでいる点が大きな魅力。サブスクリプション全盛の時代、ここに収録されている曲はともすれば簡単に聴けてしまうのですが、こうやってコンピとして並べられ、その歴史を感じられるという点で大きな意義を感じます。いろいろな意味で楽しめたコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ALLiSTER 20th ANNIVERSARY BEST ALBUM 「BEST OF… 20 YEARS & COUNTING」/ALLiSTER

アメリカのポップパンクバンド、ALLiSTERの世界デビュー20周年を記念してリリースされたベスト盤。スピッツや森山直太朗の曲をカバーしたり、ELLEGARDENとツアーを回ったり、またボーカルのスコット・マーフィーはWEEZERのリヴァース・クオモとJ-POPユニット「スコット&リバース」を結成。さらには細美武士を中心としたバンドMONOEYESに参加するなど、どちらかというと日本での活躍が目立ちます。そんなALLiSTERの楽曲をこのベスト盤ではまとめて聴ける訳ですが、確かにメロディーラインがわかりやすい、日本人受けしそうな軽快なポップスパンクのナンバーが並びます。ただ一方、底抜けに明るいメロディーラインは邦楽にはない洋楽的な要素も強く感じ、このわかりやすいメロという邦楽的な要素と底抜けに明るいメロという洋楽的要素のほどよいバランスが日本でうけた大きな要素のように感じます。全20曲入りのボリューム感ある内容ですが、ポップで楽しい楽曲ばかりなので一気に楽しめる反面、比較的似たタイプの曲も多く、少々平凡気味だな、ということも感じてしまったベスト盤。良くも悪くも昨今よくありがちなフェス向けのギターロックバンドに通じる雰囲気も・・・。

評価:★★★★

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