豪華なゲストも話題の12年ぶりの新作
Title:To Believe
Musician:The Cinematic Orchestra
今年、結成20周年を迎えるイギリスのバンドによる約12年ぶりの新譜。もっとも12年前のアルバムは聴いたことがなく今回のアルバムの評判がよかったようなので、本作ではじめて彼らの音に触れてみました。ジャンル的にはトリップポップやニュージャズという紹介をされる彼ら。どちらかというとインディーシーンで知る人ぞ知るといったイメージでしょうか。
本作はかなり豪華なゲスト陣も大きな話題に。ボーカルには注目の新人SSW、モーゼス・サムニーやイギリスのHIP HOPシーンで活躍を続けるルーツ・マヌーヴァといったメンバーが参加。「A Caged Bird/Imitations of Life」ではオランダの交響楽団メトロポール・オーケストラが参加しているほか、ミックスエンジニアにはアデルやU2などといったミュージシャンも手掛け、グラミー賞も受賞しているトム・エルムハーストを起用。豪華なゲストがズラリと参加した作品になっています。
と、ここまで書くと、どうも「音楽通」向けの小難しい音楽・・・・なんてことをイメージしてしまうかもしれません。しかし実際にアルバムは決して初心者お断りといったタイプの小難しいポップスではありません。まずアルバムはタイトルチューン「To Believe」からスタートするのですが、この曲はピアノやアコギ、ストリングスなどの静かなサウンドをバックにモーゼス・サムニーのファルセットボイスで優しく静かに聴かせるメロディアスなナンバー。そのモーゼス・サムニーの狂おしいまでに美しい歌声とメロディーが心に響いてくるナンバーにまずは強く惹かれます。
その後も「Wait for Now/Leave The World」もロンドンで注目を集めるSSWのTawaiahが伸びやかなボーカルを聴かせるソウル風のバラードナンバー。こちらもいい意味で聴きやすいポップな唄モノ。「Zero One/This Fantasy」も優しい雰囲気の男性ボーカルによるメロディアスなポップチューンに仕上がっていますし、ラストを飾る「A Promise」もThe Cinematic Orchestraのライブではおなじみ(らしい)のハイディ・ヴォーゲルによる伸びやかで透き通る歌声が心地よいバラードナンバーで締めくくられています。
そんな訳で全体的にはまずはポップなメロディーや心に響いてくるボーカルがまずは印象に残るアルバムで、そういう意味では聴きやすさのあるポップなアルバムに仕上がっています。しかしもちろんそんなボーカルトラックが乗るサウンドも彼らの大きな魅力であることは間違いありません。ミュージシャン名通り、エレクトロサウンドをふんだんに取り入れて、映画音楽のようなスケール感を覚えるサウンドが彼らの大きな魅力。今回のアルバムでも唄モノの間にはインストチューンが組み込まれており、しっかりと彼らのサウンドも聴くことが出来ます。
ただし、これらのインストチューンに関しても「The Workes of Art」ではエレクトロサウンドにストリングスを組み込んだ壮大なサウンドを作り上げつつ、切ない哀愁感漂うメロディーがしっかりと流れてるナンバーになっていますし、「The King's Magician」もサックスを前に出したムーディーでジャジーな作風で、こちらも物悲しげなメロディーがしっかり流れているナンバーになっています。
そういう意味ではこれらのインストナンバーを含めてバンドとしての歌心を感じさせるアルバムに仕上がっている、といってもいいかもしれません。そんな訳で、知る人ぞ知る的なミュージシャンかもしれませんが、比較的広い層が楽しめそうなポップアルバムに仕上がっていました。どこかAOR的な色合いも感じさせるサウンドもいい意味で今風な印象も。サウンド面でもメロディーの側面でもまたボーカルもどこをとっても非常に魅力的な1枚でした。
評価:★★★★★
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