大人の余裕
Title:UC100V
Musician:UNICORN
今年、再結成から10年を迎えたバンド、UNICORN・・・って、もう10年も経つのかよ、早いなぁ・・・。気が付けば、結成から最初の解散まで7年だった訳ですから、もうとっくにそれを超えてしまった訳ですね。これは何度か書いていると思うのですが、再結成後はライブ中心になったり、活動しているのかわからないようなバンドが少なくない中、10年間、コンスタントに作品をリリースし続けているというのも驚くべき話。本作はオリジナルアルバムとしては前作「ゅ 13-14」から約2年7ヶ月ぶりと間隔があいてしまいましたが、途中、企画盤的なアルバム「半世紀 No.5」もリリースしており、そこから2年が経過しているためちょっと久々な感もありますが、それでも積極的な活動が続いています。
前作「ゅ 13-14」はメンバー全員、自由度の高いバラバラな作風の楽曲が並んでいました。その後、メンバーのソロでの「お遊び」的な曲を寄せ集めた「半世紀 No.5」と続いたのでさすがにそこまでバラバラではない、ものの、メンバー全員が肩の力を抜いて自由にバンドを楽しもうとするスタンスを強く感じる作品になっていたように思います。
基本的にはシングルリリースされた「OH! MY RADIO」のようなシンプルなギターロックが主軸。EBIによる「大航海2020」や川西幸一による「気まぐれトラスティーNo.1」、さらに奥田民生の「55」はミディアムテンポなギターロックでダイナミックかつスケール感あるサウンドが耳を惹きます。
ただそんな中に、ハードロック調のテッシーによる「365歩のマッチョ」やEBIによるしんみりカントリー調の「GET WIND 360°」などメンバーそれぞれの個性が出たようなバリエーションある楽曲が魅力的。一番好き勝手にやっている感が強かったのが奥田民生で、横ノリでトロピカル風の「1172」やレイドバックしたようなサウンドがミディアムテンポのギターロック「うなぎ4のやきとり1」など、誰よりも肩の力を抜いたようなユニークな作風の曲が並んでいます。おそらく彼の場合はソロでもコンスタントに作品を発表しているだけにUNICORNではある意味、好き勝手に自由にやっているんでしょうね(もっともソロでもかなり好き勝手にやっている感はあるのですが・・・)。
逆にそんな中で全体のまとめ役となっている感があるのがABEDONで、ラストを締めくくる「OH! MAY RADIO」も彼の作曲による作品ですし、イントロの「10nuts」に、事実上1曲目でシンセも入ってスケール感あるギターサウンドがインパクトの「ZERO」もいかにも最初の曲のような盛り上げる感じがありますし、ちょうど真ん中に配置されている「青十紅」も自由度の高い他の作品の中でアルバム全体を引き締めるかのような聴かせるメロディアスな歌モノのポップとなっています。全体のバラバラ感がつよかった「ゅ 13-14」に比べるとアルバム全体が比較的引き締まった感があるのもABEDONの作品がアルバム全体をまとめあげているからでしょう。
バンドとしてのまとまりと、大人としての余裕を同時に感じさせるアルバムで、彼らだからこそ作れる、彼らしか作れないアルバムでしょう。もともと唯一無二のバンドだった彼らですが、その貫録も含めて「唯一無二」感がさらに強まっている感じがします。まだまだ彼らの活躍は続きそうです。
評価:★★★★★
ユニコーン 過去の作品
シャンブル
I LOVE UNICORN~FAN BEST
URMX
Z
ZII
Quarter Century Single Best
Quarter Century Live Best
イーガジャケジョロ
ゅ13-14
半世紀No.5
D3P.LIVE CD
ほかに聴いたアルバム
The Gospellers 25th Anniversary tribute「BOYS meet HARMONY」
タイトル通り、ゴスペラーズデビュー25周年を記念してリリースされたトリビュートアルバム。参加ミュージシャンの多くがアイドルテイストの強いボーカルグループだったのであまり期待していませんでしたが、その「予想通り」の内容。ボーカルとしての巧さはそれなりにあったので思ったよりは楽しめましたが、ただ淡白平坦なボーカルに面白味はゼロ。最後に登場するグループ魂、港カヲルの「ひとり」がまさかこれほどおもしろく感じられるとは思わなかった・・・。参加グループのファンならともかく、それ以外の方はあまり積極的に聴く必要はないアルバムかと。
評価:★★★
forme/YUKI
ソロデビュー17年目となるYUKIのニューアルバムは「2度目のデビューアルバム」という「売り文句」を使うように、かなりの意欲作となっています。とにかく様々な豪華ミュージシャンが楽曲を提供している点が大きな特徴となっており、細野晴臣、Chara、堀込泰行、川本真琴・・・などなど豪華なメンバーがズラリと並んでいます。ただ、結果、1曲1曲はそれなりの名曲になっているにも関わらず、全体的に統一感が薄く、アルバム全体としての印象が薄くなってしまっている印象が。逆に個々の参加ミュージシャンがそれぞれの個性を爆発させて好き勝手やっていればそれはそれで面白かったのでしょうが、こちらも逆にYUKIを意識しすぎてかいまひとつ個性を出し切れていない感も。決して悪いアルバムではないのですが、意欲だけ空回りしてしまった感が否めませんでした。思い出すとYUKIはソロデビューの頃はサブカル寄りを意識しすぎて空回り気味のだったのを思い出しますが、「2度目のデビューアルバム」ではソロデビューの頃の悪い側面も引き継いでしまった感も・・・ちょっと惜しい感のあるアルバムでした。
評価:★★★★
YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY
まばたき
YUKI RENTAL SELECTION
すてきな15才
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